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【人身傷害補償特約】

2019年8月 4日 (日)

【人身傷害補償特約】 単純に支払い基準が、訴訟基準になるわけではない!?

 最近の保険は、人身傷害補償特約が付保されており、また、その内容が各社で異なることから、非常に悩ましい問題となっております。

 我々弁護士は、約款基準、訴訟基準云々と人身傷害補償特約で議論するために、裁判すれば、単純に訴訟基準にまでUPすると勘違いしていることがあります。

 保険会社の中には、自己負担額の算定にあたって、訴訟基準を採用するに過ぎないものもあります。

 この場合、例えば、訴訟基準による損害額が1500万円、約款基準が1000万円、過失相殺率50%として、示談交渉の結果、賠償義務者から受領から750万円を受領したとします。

 この場合、被害者は、250万円を人傷社から受け取ることが可能ですが、双方からの手取り総額1000万円のままです。

 これであれば、最初から、人傷社から1000万円もらった方が作業効率からいえば合理的です。

 では、裁判の結果、賠償義務者から750万円をうけとった場合はどうでしょうか?

 自己負担部分は、訴訟基準の1500万円から約款基準の1000万円を控除した500万円となります。

 加害者から受け取った750万円はさきに自己負担部分に充当されますので、これにより自己負担部分はなくなります。

 その結果、被害者は、約款基準の1000万円から超過した250万円を控除した750万円を人傷社から受け取ることが可能です。

 その結果、訴訟基準での金額を同じ金額を被害者は結果的に得られるということになります。

 要は、加害者から受領した金額は自己負担部分を消す効果があるということです。但し、支払いの上限は、約款基準で計算されることになります。

 

2019年7月 4日 (木)

【人身傷害補償特約】 人身傷害補償特約の落とし穴!?

 人身傷害補償保険ですが、怖い落とし穴があります。

 人身傷害保険は、請求権代位の対象となり、一定の範囲で、被害者の損害賠償請求権は、人傷社に移転します。

 そして、人傷社が自賠責保険会社に対して、自賠責保険金を請求し回収します。

 この場合、被害者に過失がなければ、人身傷害保険金全額について、人傷社が代位するので、問題が生じません。

 問題なのは、被害者に過失阿ある場合、人傷社が代位の範囲を超えて自賠責保険金回収してしまうことです。

 人傷社が自賠責保険金を回収した場合に、被害者への自賠責保険金の支払いと同視して、損害賠償額から控除できるのかという論点があります。

 考え方としては、A人傷社への支払いを被害者の支払いと同視して、人傷社が回収した自賠責保険金は全額損害から控除できるという見解と、B被害者への支払いは異なるとして、被害者が支払いを受けていない自賠責保険金は損害賠償額から控除できないという見解があります。

 裁判例としては、東京地裁平成21年12月22日判決が、Bの見解を採用しております。

 平成23年赤い本講演録の森謙二裁判官は、Bの見解を不当利得認容説として支持しております。

 損害保険料率算出機構の方の論文によれば、現在は、次のとおり運用されているようです。

 自賠責保険実務においても取り扱いを変更し、人傷社による人傷保険金の支払及び自賠責保険金の回収後、当事者間訴訟の判決に基づき賠償金を支払った対人社から清算請求がなされた事案のうち、加害者の賠償額の認定にあたり人傷社が回収した額の全額が損益相殺の対象と認められないものについては、自賠社は、人傷社への支払額を修正した上で請求に応じる(人傷社は回収済みの額と修正後の額の差額について自賠社に返還する)ということにしたということにした。ただし、訴訟において人傷保険金に関する主張がないものは上記の取扱いの対象とはならず、人傷社による人傷保険金の支払および自賠責保険金の回収後、裁判外紛争処理機関で示談が成立した場合も、本取扱いの対象外である。

 任意社が示談交渉に応じてくれなくなる可能性があるってことですね!?

 

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2016年6月12日 (日)

【人身傷害補償特約】  人身傷害補償特約の落とし穴 !? 東京地裁平成27年12月15日判決

 自保ジャーナルNo1967号で紹介された東京地裁平成27年12月15日判決です。

 まず、事案を紹介いたします。

 原告自動車を運転中、Y自動車に衝突され、頸椎捻挫等から自賠責併合14級認定の後遺障害を残し、Yと自動車保険契約を締結する乙損保と総損害額527万1888円、原告とYの過失割合を1対9とし、乙損保が過失相殺後の額から既払い金200万5596円を控除した残額を支払う旨の「和解契約」を締結したことから、原告が自動車保険契約を締結する甲損保に対し、人身傷害補償特約に基づき、過失相殺後の保険金を求める事案

 次に、判決要旨です。

 保険約款は、多数の保険契約を画一的に規律するものであり、その文言は厳格に解釈すべきところ、本件計算条項の文書からは、人傷基準額から控除する額を保険金請求者の権利を害しない範囲」に限定して解釈すべきと読み取ることはできない。

 また、上記限定解釈は、保険金請求権者に裁判基準損害額が確保されるように解釈すべきとするものと解されるところ、確かに、保険会社が定める算定基準に従い算出される人傷基準損害額の方が、裁判基準損害額よりも少額であるのが通常であり、これを前提にすると、先に保険金を受領する場合と比較して、先に損害賠償金を受領する場合に被害者側の回収額が減少することがある。

 しかし、本件計算条項によれば、賠償義務者に対する損害賠償請求訴訟に係る判決又は裁判上の和解において、甲損保が定める算定基準に従い算出された金額の合計額を超える額が認められ、かつ、その額が社会通念上妥当であると認められる場合には、当該額が人傷基準損害額とみなされるのであるから、保険金請求権者が裁判基準損害額を確保する手段は用意されているといえ、本件計算条項につき、上記限定解釈をする必要はない

 甲損保は、本件保険契約に係る人身傷害補償特約に基づいて、原告に対し、本件過失割合相当額の保険金支払義務を負わないとして、原告の請求を棄却しました。

 本件は、依頼を受けた弁護士に対するクレームが発生してもおかしくはない事案です。

 受任の際に、まずは、クライアントにきちんと説明がされること、また、クライアントが契約されている損保会社との連絡を密にすることが、お客様からのクレームを防ぐ有効的な方法といえます。

 Kimg2040                (日比谷公園)

2016年6月11日 (土)

【人身傷害補償特約】  人身傷害補償特約の落とし穴 !?

 人身傷害補償特約という優れものの特約があります。

 交通事故って、当事者双方に過失がある場合が多いです。

 簡単にいえば、お客様の過失部分についてはお客様が契約している保険会社がカバーするという保険です。

 例えば、Xさんが運転する車と、Yさんが運転する車が交差点で出合頭に衝突して、Xさんが大けがをしたとします。なお、XさんとYさんの過失割合は、計算しやすいように50%とします。

 Xさんが、弁護士Zに依頼して、Yさんに対して、怪我の賠償請求をしたとします。

 弁護士Zが頑張って、Xさんの損害額を100万円として、過失分を控除した50%に相当する50万円を受け取りました。

 そうすると、単純に考えると、残りの50万円を、Xさんが加入している人身傷害補償特約の保険会社に請求するということになります。

  安心、安心

 ではなかったのです。

 交渉の場合、人身傷害補償特約で規定されている約款での計算によります。仮に、保険会社がXさんの損害の合計を40万円と見積もった場合には、Xさんは40万円以上のものを受け取っているから、人身傷害補償特約から支払われるものはないのです。

 この点がまさに問題となったのが、東京地裁平成27年12月15日判決です。

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              (日弁連会館から日比谷公園を望む)

 人身傷害補償特約の理解について不十分な弁護士が少なくなく、当事務所では、過失が考えられる事案の受任に際しては、人身傷害補償特約の有無を確認するようにしております。

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