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書籍紹介(交通事故)

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【素因減額】

2017年3月 1日 (水)

【素因減額】 約6年前の事故でヘルニアを有していた59歳主婦に14級認定し、4割の素因減額を適用した裁判例 横浜地裁平成28年7月15日判決

 自保ジャーナルNo1984号で紹介された裁判例です。

 まず、後遺障害認定について、原告は、本件事故により腰椎捻挫のほか、不安障害及び不眠症等を発症したが、最終的には腰椎捻挫が残存したものであり、損害保険料率算出機構によって、腰椎捻挫について障害等級14級9号の認定されたことを考慮すると、原告には、本件事故による腰椎捻挫について、同14級9号の後遺障害が残ったと認めるのが相当である。

 他方で、原告には平成18年当時からすでにヘルニアによる腰椎があり、平成19年の前件事故により再発したこと、前件事故時も椎間板の膨張、左椎間孔の狭小化が存在したことからすると、本件事故により腰椎捻挫を発症したのは、原告のこれらの器質的素因による影響を否定できないのであり、認定のとおり腰椎捻挫の受傷機転が極軽微であるにもかかわらず、本件事故により腰椎捻挫の後遺障害が残存したことを考慮すると、原告の身体的素因が腰椎捻挫に及ぼした影響は、少なくとも4割をくだらないと、4割の素因減額を適用しました。

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2016年12月24日 (土)

【素因減額】 過去のPTSDで、20%の素因減額

 交通事故民事裁判例集第48巻第6号が送られてきました。

 京都地裁平成27年11月4日判決です。

 追突事故を受け、左上肢の可動域制限・知覚低下・麻痺・知覚過敏、冷汗・発汗異常、左手指第4・5指の冷感等の自覚症状について、

 左上肢反射性交感神経性ジストロフィー(左上肢CRPS)の診断を受けた反訴原告(女・事故時44歳・症状固定時49歳・歯科助手としてパートタイム勤務)の傷害につき、

 後遺障害認定基準(関節拘縮・骨萎縮・皮膚変化)においてRSDとして取り扱われている病態と異なるが、あるいは、それに至らないものと解されると認めた上で、

 反訴原告の症状が事故当時の衝撃と不釣り合いに強度で、長期間継続する原因は明らかではないが、

 ① 症状固定時期としては、医師としての判断は尊重されるべきであり、その診断日までの治療については本件事故との因果関係があると認める一方、

 ② 反訴原告が、以前にPTSDによる入院治療歴があり、その症状についても精神科のフォローを必要としていたことなどを勘案すると、症状の遷延化には、反訴原告の心因的要素(脆弱性)が影響しているとして、長期化した症状固定までの損害については、民法722条2項を類推適用して、20%の素因(心因的素因)減額を認めました。

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2016年11月 3日 (木)

【素因減額】 31歳女子の事故と左下肢の外傷後ジストニア発症との因果関係を認め、7級4号を認定し、心因性から3割の素因減額を適用した 京都地裁平成28年1月26日判決

 自保ジャーナルNo1976号で紹介された京都地裁平成28年1月26日判決です。

 素因減額について、本件事故時の衝撃の程度からすると不釣り合いともいうべき重篤な症状(ジストニア)について、医学的な機序は明確にはなっていないこと、主治医であるE医師も、ジストニアの発症の原因について、心因性とはいいきれない或いは心的外傷によるとの見解を示していること、すなわち、心因性の要素があることは否定できないとしており、鑑定人も、局所の運動能力の低下と筋委縮が引き金となってそれに関連する膝、大腿、股関節周囲筋の協調運動不全を引き起こし、徐々に意識しない状態で心因性を思われる要素も加わって、局所すなわち左下肢の硬直・痙攣というジストニアの状態を完成させた、本件事故と症状に因果関係が存在するが、上記記載のとおり心因性が加わってできているので、絶対的因果関係は存在しないとの鑑定意見を述べていることに勘案すると、

 原告のジストニアについては、心因性の要因が寄与しているというべきであるから、原告の損害額の算定にあたっては、民法722条2項を類推適用して、原告の損害額から30%の減額を行うと、原告に30%の素因減額を適用しました。

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2016年10月21日 (金)

【素因減額】 軽度脊柱管狭窄及び全般的不安障害

 交通事故民事裁判例集第48巻第5号で紹介された京都地裁平成27年10月28日判決です。

 原告(事故時50歳・高校生の息子と二人暮らしの主婦・生活保護受給)の事故による外力の程度(軽微なもの)と受傷内容(器質的損傷は右上腕部の軽度の膨張と発赤)に鑑みれば、

 症状固定までに1年3か月あまりを要した治療経過には、

 原告の既往症(軽度脊柱管狭窄)及び精神的素因(全般的不安障害)が相当程度影響しているものと考えらえるとし、

 民法722条2項を類推適用して、10%の素因減額を行いました。

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2016年9月12日 (月)

【素因減額】 40歳男子の右上肢抹消神経障害は無症状の脊柱管狭窄症が本件事故により発症したと事故との因果関係を認め、20%の素因減額を適用した事例 

 自保ジャーナルNo1972号で紹介された名古屋地裁平成28年2月26日判決です。

 本件事故により、脊柱管狭窄症を発症し、右上肢抹消神経障害(自賠責非該当)の12級13号後遺障害を残したとする事案について、

 原告の頸椎には後縦靭帯骨化症による脊柱管狭窄の所見が見られ、頸椎の脊柱管前後径は最小で8.52ミリメートルであり、本件事故とは関係なくそもそも高度の狭窄が生じていたことが認められるから、本件事故の前においても、いつ症状が現れてもおかしくない状態にあったというべきであるが、

 原告は本件事故前に上肢のしびれを自覚したことはないというのである。

 そして、一般的に後縦靭帯骨化症の症状は緩徐に進行することが多く、急激に症状が悪化するのは例外的な場合といえるところ、原告は、それまで自覚しなかった上肢のしびれを、本件事故での直接的な打撲による疼痛が緩解するとともに自覚するようになり、その後、右手については概ね同程度の症状が継続している等から、

 原告の右上肢抹消神経障害は、原告の既往症として有していた無症状の後縦靭帯骨化症による脊柱管狭窄が、本件事故という外傷の寄与により発症したものと解するのが最も合理的である。

 したがって、原告の右上肢抹消神経障害は、本件事故と因果関係があるものと事故と右上肢抹消神経障害との因果関係を認めました。

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 素因減額については、原告の治療期間がやや長期間に及ぶとともに、右上肢抹消神経障害の後遺障害が生じたことについては、本件事故前から原告に存在した後縦靭帯骨化症の影響があったことが明らかであるところ、

 原告が本件事故当時40歳であったこと、

 狭窄度が高いことなどに照らせば、単なる加齢的変性の程度を超えた原告の疾患に当たるというべきであるから、原告の既往症が損害拡大に寄与したというべく、損害の公平な分担という損害賠償法の理念に照らし、素因減額を行うべきである。

 そして、これまでに認定してきた既往の後縦靭帯骨化症の程度等に照らし、原告の上記損害発生額全体から20%を減じた約1034万円をもって、本件事故に帰責すべき損害額と認めるとして、20%の素因減額を適用しました。

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2016年5月30日 (月)

【素因減額】 両下肢麻痺の既存障害と素因減額

 自保ジャーナルNo1966号で紹介された東京高裁平成28年1月20日判決です。

 頸部痛や両上肢の痛み・痺れのあるXにつき、Yは、Xが両下肢麻痺の既存障害があることから、8割の素因減額がなされるべきであると主張されました。

 しかしながら、高裁は素因減額を否定しております。以下理由を述べます。

 神経には、それぞれ支配領域があり、脊髄損傷の場合、脊髄損傷の生じた高位(部位)以下に不全あるいは完全横断麻痺が生じること、

 本件既存障害は、第9胸椎圧迫骨折による脊髄損傷であり、支配領域としてはT9に当たり、運動機能としては腹筋・傍脊柱筋以下に障害が残り、知覚機能としては臍より少し上の部分以下に障害が残るため、頸椎や上肢に運動障害又は知覚障害を及ぼすことはないこと、

 他方、頸椎や上肢は支配領域としてはC3ないしT2に当たり、T9とは支配領域を異にすることが認められるとし、

 本件既存障害と認定の本件症状とでは、神経の支配領域が異なるから、本件既存障害が本件症状の内容を重篤化させるなどの損害の発生に寄与しているとは認められないとして、素因減額を否定しております。

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