【高次脳機能障害】 脳外科医による高次脳機能障害 勝つためのポイント
メディカルリサーチセミナーを受講しました。講師は、佐藤俊彦先生(放射線科専門医)です。
講義のポイントです(田舎弁護士の印象)。
〇 高次脳機能障害の裁判例分析
① 自賠責委員会報告書が診断基準、②自賠責で非該当は裁判でも非該当、③自賠責より上位の等級なし、④CTやMRIに所見がないのは、非該当、⑤受傷直後の意識傷害がなければ、画像所見があっても、12級
〇 自賠責専門部会でも、画像所見の見落としがある。
放射線科の専門医に画像を確認してもらう。
〇 画像上の損傷部位と症状の整合性
特に前頭葉の脳挫傷では損傷部位と症状の相違に注意
〇 経時的な脳委縮の進行
福岡地裁行橋支部平成30年3月20日判決 脳委縮や脳室拡大は高次脳機能障害に必ず生じるものではない。
脳神経外科学改訂12版、2021頁
〇 画像所見ありでも、意識障害で非該当になりうる。
意識障害なし、意識障害の程度が軽微で持続時間も短い
福岡地裁平成31年2月1日判決 「自賠責診断基準においても・・・」そもそも自賠責診断基準は存在しない。
自賠責保険における高次脳機能障害認定システムの充実について これは、診断基準ではないと明記。
平成30年5月31日の変更点 軽度意識障害は、JCS一桁 JCA二桁は、軽度ではない。
〇 頭部外傷後の意識障害についての所見
診療録で初診時の意識レベルと経過を確認する
救急車の搬送記録を入手して確認する
→誤った記載が非該当の一因となった例も少なくない。
〇 神経心理学的検査
神経心理学的検査で障害を見つけるものではない。
現在、日常生活または社会生活に制約があり、その原因が高次脳機能障害の症状によるものといえる(高次脳機能障害による後遺障害を主張する際の大原則)
神経心理学的検査結果が悪すぎると信頼されない。
専門医からみれば、まじめにしているのかどうかはわかる。特に患者に面談するとわかる。
神経心理学的検査による最終評価 ガイドライン 受傷後6~12か月前後 (頭部外傷治療・管理のガイドライン第4版201頁)
受傷後から2,3か月、半年、1年 と、3回くらい行うとよい。点数が変わらなければ症状固定と考える。
MMSE、HDS-Rのみで評価することは勧められない。全般的認知機能を評価する。次に、各障害に応じた検査を実施する。WAIS-Ⅲは必須。
〇 参考図書の紹介
入門書
※高次脳機能障害ポケットマニュアル(医歯薬出版)
用語
※高次脳機能障害の症候辞典(医歯薬出版)
ガイドライン
※頭部外傷治療・管理のガイドライン(第4版)
最近の知見
※頭部外傷と高次脳機能障害(日本高次脳機能障害学会)
※脳神経外科学12版(金芳堂)
※機能解剖高次脳機能障害
〇 信頼できる専門医による鑑定がおすすめです。
(光明岩に彫り込まれた文字)
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