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書籍紹介(交通事故)

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2020年5月

2020年5月30日 (土)

【むち打ち症例】 駐車場内で駐車中に後退被告乗用車に衝突された女子原告主張の後頚部痛等の14級後遺障害の残存を否認 金沢地裁令和元年6月13日判決

 自保ジャーナルNo2062号で紹介された金沢地裁令和元年6月13日判決です。

 

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 平成27年10月31日、女子原告が店舗駐車場で乗用車に乗車したまま駐車中、後退してきた被告乗用車に衝突され、頚椎捻挫、全身打撲、頚部筋炎、症候性神経痛の傷害を負い、後頚部痛、両肩痛、背部痛等から14級9号後遺障害を残したと主張する事案です。
 ただ、このケースですが、平成28年12月2日に示談を成立させ、12月15日に損害保険料率算出機構から後遺障害非該当という回答を得たことから、示談金120万円を支払ったという特異な流れになっております。
 そして、原告に弁護士がついて、異議申し立てを行いましたが、平成29年8月9日にやはり非該当という回答を受け、提訴に至っております。
 ① 頚部X線写真では異常所見なし。生理的前弯減退の可能性はあるが、医師は異常所見なしと回答している。
 ② 交通事故の程度が軽微である。
 ③ 他覚的な神経学的な異常所見が全くない
 ④ 愁訴に一貫性・整合性がない
 ⑤ 診療録には愁訴を裏付ける記載がない
 ⑥ 仕事ができている
 ⑦ 自賠責保険で2度にわたり非該当という結果
 ⑧ 心因性の可能性も否定できない
 という理由で、14級9号が否定されました。
 平成30年に提訴され、令和元年6月までかかっておりますので、請求金額(約190万円)に比しては、難事件だったと思います。
 

2020年5月28日 (木)

【書籍】 労災補償 障害認定必携(R2・3出版)

 平成28年に出版されていた労災補償障害認定必携が、今年の3月に改訂されましたので、早速、購入しました。

 交通事故を取り扱う弁護士にとっても、必携の書です。

 ただ、願わくは、どこがどう変わったのかもう少し変わったのかを明示して欲しいと思います。

 なお、序説には、「本書では、これまでの障害補償制度の沿革、障害等級認定の基本的な考え方、障害等級の認定方法等の障害等級認定実務に必要な事項について、できるだけわかりやすく解説するという編集方針を踏襲しております。また、前回改定(平成28年3月)から4年を経過し、この間において改正された関係法令等を反映し、最新の情報を掲載するなど、障害認定に携われる方がより使いやすいよう編集しました」と書かれています。

 

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(今治・笠松山)

2020年5月27日 (水)

【書籍】 交通事故が労災だったときに知っておきたい保険の仕組みと対応(R2・5出版)

 日本法令から出た「交通事故が労災だつたときに知っておきた保険の仕組みと対応」です。

 社会保険労務士さんのグループによるものです。

 弁護士の場合、労災の手続や仕組みがよくわからない、社労士の場合、損害賠償の手続やその内容がよくわからないといことがあるかもしれません。

 本書は、交通事故労災を取り扱う社労士の先生向けの書籍ですが、同じく、交通事故賠償を扱う弁護士にとっても役立つ内容となっております。

 

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2020年5月26日 (火)

【書籍】 交通事故事件社会保険の実務(R2・4出版)

 学用書房から出版された「交通事故事件社会保険の実務」です。

 交通事故を取り扱う弁護士の場合、民法や自賠法上の損害賠償請求には通じていても、保険法や社会保障法に通じた弁護士は田舎弁護士が仄聞する限り、多いとはいえない。

 人身傷害補償保険や労災保険等については余り気にしていない方も、少なくないのではないだろうか。

 最近は、保険法については、古笛先生の良書が最近でましたが、社会保険についても、やっと出ました。

 

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2020年5月25日 (月)

【書籍】 交通事故損害賠償の軌跡と展開(R1・12月出版)

 ぎょうせいから出版された交通事故損害賠償の軌跡と展開です。4編で構成されています。

 実務論文としては、①いわゆる損益相殺と過失相殺の先後(過失相殺がされる場合における社会保険給付と損害賠償請求権の調整)、②遅延損害金と民法405条、③弁護士費用の賠償、④損害の拡大にかかわる過失は、自動車損害賠償保障法3条ただし書の自動車の運行に関する注意に当たらないか、⑤異時事故と共同不法行為の成否、⑥後遺障害逸失利益の中間利息控除の起算時 です。

 いずれも、交通事故事案に詳しい裁判官の手によるものです。

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 ぎょうせいの交通民集の編集会議の話が雑談のところで紹介されていました。各地の裁判所から集められた判例を、チェックの段階で、新たな判断であるなど広く紹介すべき判例といえるか、活用いただいている皆様に情報提供すると役立ちそうかといった観点から、判例要旨には担当編集委員がそれぞれA~Cのランク付けをしているようです。進行は、Cの評価に誤りがないか、A・B評価の中で、どの判例を取り上げるかを編集委員の間で意見交換しながら検討されるようです。

 田舎弁護士も、田舎弁護士が関与した裁判例が、交通民集で複数回取り上げられたことがあります。このような過程を経て、掲載される裁判例が決まっているのだなと思いました。

2020年5月24日 (日)

【物損】 弁護士費用特約を活用した物損交通事故の実務(R2・2出版)

 学用書房から出た「弁護士必要特約を活用した物損交通事故の実務」を購入しました。

 

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 ①総論、②物損事件解決のための基礎知識、③物損事件解決の実務からなっております。
 数年くらい、損保弁護士をすれば得られる知識がほとんどですが、経験の差を埋めるためにも、損保と提携されていない若手の弁護士さんは交通事故(物損)をされるのであれば、購入して読んでおくべき書籍だと思います。

2020年5月23日 (土)

【慰謝料】 高齢者の死亡慰謝料額の算定 大島眞一判事

 判例タイムズNo1471で照会された大島裁判官の「高齢者の死亡慰謝料額の算定」という論文です。

 判例時報No2402号で杉浦徳宏裁判官が「医療訴訟における高齢者が死亡した場合の慰謝料の一考察」で、医療事故における高齢者の死亡慰謝料額が高すぎる、最低額を200万円としてそこから上乗せするのが相当であるという、驚天動地と感じた論文に対する批判論文です。田舎弁護士も同じに思います。

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 大島裁判官は、「そう遠くない時期に余命を全うするから死亡させても多額の賠償金を支払う必要はないというのは、生命の尊さを忘れたものであると思う」、「人の生命は、あらゆる保護法益の中で、最も重いことを忘れてはならない。」と述べておられます。

 

2020年5月22日 (金)

【人身傷害補償特約】 人身傷害保険会社による自賠責保険金の回収

 人身傷害保険会社(A社)を利用した場合に、加害者側の保険会社(B社)と示談ができなくなる場合があります。

 例えば、何らかの事情で、被害者Xが、B社の対人保険ではなくて、A社の人身傷害保険を利用したとします。人身傷害保険は、請求権代位の対象となり、一定の範囲で、被害者の損害賠償請求権が人傷社であるA社に移転します。A社が、自賠責保険会社に対して、自賠責保険金を請求し、回収することがあります。

 被害者Xに過失がなければ問題がありませんが、被害者Xに過失がある場合には、結果的に、人傷社が代位の範囲を超えて、自賠責保険金を回収してしまうことがあります。

 

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 本来、人傷社が自賠責保険金を回収せず、被害者Xが自賠責保険金を受領した場合には、自賠責保険金は、損益相殺の対象となり、損害賠償額から控除します。
 しかしながら、人傷社が自賠責保険金を回収した場合に、被害者への自賠責保険金の支払いと同視して、損害賠償額から控除できるか否かが問題となります。
 考え方は、2とおりあります。
 
 A説は、被害者への支払いと同視して、人傷社が回収した自賠責保険金は全額、損害賠償額から控除できるという見解
 B説は、被害者への支払いとは異なるとして、被害者が支払いを受けていない自賠責保険金は損害賠償金から控除できないという見解(不当利得認容説とも呼ばれています)
 論文についてはいくつか出ております。
 谷山智光弁護士(oike Library No38)では、被害者に人傷社との調整を図ることで解決すべきだとして、A説が妥当と解説されています。
 但し、この点については、東京地裁平成21年12月22日判決(交通事故民事裁判例集42巻6号1660頁)が、B説をとり、その後、実務上の運用で解決されています。
 ネットで拾った人身傷害保険(オレンジ勉強会)(2019年6月21日弁護士有馬明仁)によれば、保険会社の運用として、次のとおり解説されています。
 
 「ア 前提 ・自賠責保険と任意保険会社は同じ会社のことが多いが、別会社である。
       ・訴訟になって、判決が出ているか、和解の場合のみの対応
  イ 損害保険料率算出機構を通じた返金処理
    加害者側の任意保険会社から損害保険料率算出機構に対して、返金をしてもらいたい旨の申請をし、稟議をしてもらう
    その上で、損害保険料率算出機構が加害者側の任意保険会社に返金をすべきだと判断したら、自賠責の保険会社に連絡をして、さらに、自賠責の保険会社から任意保険の会社に返還すべき金額の通知をする。
    そして、損害保険料率算出機構が、自賠責の保険会社に返金をした後、自賠責の保険会社から加害者側の加入する任意保険会社に返金をすることになる。」
 古笛恵子弁護士の「人身傷害保険をめぐる実務上の問題点」にも、「人身傷害保険金を受領した被害者の加害者に対する損害賠償請求訴訟において、人傷社が既に受領していた自賠責保険が、損益相殺の対象となるかという問題について、東京地判平成21年12月22日は、これを否定、受領した人傷保険金のうち、被害者の過失部分を上回る部分を控除した残は、人傷社が自賠責保険会社から回収したか否かにかかわらず被害者に支払われるべきものとした。これは、自賠責保険の処理についても訴訟基準差額説を貫く不当利得認容説と言われている。不当利得認容説を前提に、被害者を巻き込むことなく保険者間での必要性が指摘されていたが、その後、実務上の運用で解決されている。」
 損害保険料率算出機構の植草桂子氏の人傷一括社と自賠責保険金の回収をめぐる問題点にも、「問題事案の発生を根本から絶つ方法として、
(ア)①人傷社は、被保険者(被害者)等に、まず自賠責保険に被害者請求(自賠法16条請求)をするよう案内し、自賠責保険から支払がなされた後、②人傷基準で算定した損害額から自賠責保険金を控除した額を保険金額の限度で支払う方法と、
(イ)①人傷社は、先に被保険者(被害者)等に人傷保険金を支払うものの、自賠社に精算請求は行わず、②自賠責保険への被害者請求を行うよう案内し、不足分について自賠責保険から支払いを受けさせる方法(この場合、自賠責保険支払基準で算定した損害額から、既払の人傷保険金を控除した額が、自賠責保険の保険金額の限度で支払われる)が考えられる。
 しかし、(ア)(イ)いずれの方法によっても、特に、訴訟を予定していない被保険者(被害者)等にとっては、人傷一括払(狭義)サービスが行われた場合に比べ、人傷保険の特長であり、発売開始時高く評価された被保険者(被害者)の「迅速な救済」に欠ける結果となることは否めない。(ア)(イ)いずれの方法もとらず、従前通り人傷一括払(狭義)サービスを継続するのであれば、トラブルを回避するためにも、少なくとも人傷社は請求者に対して、自賠責保険金の立て替払い分については、人傷保険金の支払いではなく、自賠責保険金の立て替え払いであることを明確に説明する必要があると考える。」
 田舎弁護士も、1度この陥穽に入ってしまったことがあり、オレンジ勉強会で紹介されている方法で解決したことがあります。つまり、示談交渉では、解決できず、提訴を余儀なくされることになります。
 これを避けるためには、植草氏が述べている方法をとらざるをえず、被害者請求手続を行ってから、人身傷害補償保険金の請求を行うよう、心がけています。

 

2020年5月21日 (木)

【脳脊髄液漏出症】 ありがちな裁判例

 自保ジャーナルNo2061号で紹介された神戸地裁令和元年9月20日判決です。

 追突された30歳女子主張の12級13号脳脊髄液漏出症及び左胸胸郭出口症候群の受傷を否認し、自賠責同様頚部痛・腰痛等の併合14級後遺障害を認定しました。

 判決文を紹介します。

 原告が、第1回入院時には天候が悪いと起きられない位頭が痛くなることを訴え、平成24年11月11日には朝に頭痛がしたが、雨が上がって調子がよくなつたと述べ、平成25年12月19日には寒さで痛みが出現し、頭痛がきついと訴えていること、

 原告が、本人尋問において、頭痛の症状について、気圧の変化を受け、台風の時が一番きついと供述していることからすれば、原告に生じた頭痛は天候などに左右されるものというべきであって、原告に起立性頭痛が生じていたと認めることはできないと起立性頭痛を否認し、

 画像所見については、厚労省基準によれば、CTミエロフラフィーの結果、穿刺部位と連続しない硬膜外への造影剤漏出が認められれば、脳脊髄液漏出症の「確実」所見であるとされているが、

 G医師は、CTミエロフラフィー画像によって造影剤の硬膜外漏出を認めたとするが、他方で、被告の協力医であるB医師は、意見書において、G医師の指摘する漏出所見が神経根を映したものであるとしていること、同日のCTミエロフラフィー画像を読影した医師にも特段の異常所見を指摘していないことを踏まえると、上記画像によって硬膜外への造影剤漏出が認められるとすることについては疑いが残る他、

 RI脳槽シンチグラフィー画像において非対称性RI異常集積が認められ、脊髄MRI画像においてFDSS及びFESSが認められたとしても、これらの所見はいずれも厚労省基準において疑所見としか認められていないから、これらをもって脳脊髄液漏出症の受傷が裏付けられるとはいえないと否認しました。

 結局のところ、自賠責同様頚部痛、腰痛等で併合14級にとどまっております。

 なお、労災においても、認定を受けており、頭痛、頚部痛で、12級の12、腰痛で、14級だつたようです。労災との乖離がみられる事案は、よくトラブルになります

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2020年5月20日 (水)

【弁護士費用特約】 「弁護士以外の士業」による「(自賠責保険)被害者請求手続等」については、その報酬についてご注意ください。

 田舎弁護士の場合にも、交通事故事案において、自賠責保険会社に対して、被害者をサポートして、被害者請求手続を行うことがあります。

 旧弁護士会の規程ですと、被害者請求手続については、着手金・報酬金ではなくて、手数料とされ、手数料の金額は、3万円か、受け取った本件金の2%ということになっております。

 多くの損保会社が契約しているLACの規程も同じです。

 ですから、田舎弁護士が数多く取り扱っている案件であるむち打ち症例で、14級9号を獲得できたという事案であれば、手数料は、3万円+税のみとなります(いつも安いなと内心は思います。)。

 医師の画像鑑定費用でも10万円程度かかります。

 ところが、ご相談事案の中には、後遺障害申請手続を行うに際して、弁護士ではない士業に依頼していたという事案もあります。

 驚いたのは、被害者請求手続で、自賠責保険金の20%を報酬金として請求していたのです。また、そのような報酬体系にもかかわらず、着手金を計上しているところもあります。

 むち打ち症例事案で、初回被害者請求手続で、20%をとれるとした場合、後遺障害部分だけでも、75万円×20%の15万円(弁護士であれば3万円)、怪我の部分が既払い金120万円に達しておらず100万円入金された場合には、20万円(弁護士であれば3万円)となります。

 一般的な弁護士の通常費用の、5倍以上の費用となっております。

 LACの規程ですと、例えば、被害者請求手続を行わない場合でも、示談や裁判の結果、300万円獲得した場合でも、後遺障害を争っていない事案の場合には、なんと75万円部分については手数料で計算するということになっております。

 弁護士でこのような体系の報酬規程を掲げていたら、弁護士会の懲戒を受けるのではないかと思います。

 もちろん、異議申し立て事案等難易度があるものについては、それなりの費用というのは理解できます。

 ネットで検索すると、異議申し立ての場合には、報酬金がなんと30%というのがありました。弁護士の場合だと、仮に、報酬をとるとしても、報酬金は、標準額は10~16%です。  

 他の士業から、弁護士に依頼すると、費用が高くなると言われたという話を相談者からきいたことがありますが、ごくごく一般的な弁護士であれば、自賠責保険について、手数料方式を採用するのであれば、3万円か、2%のどちらか高い方です。

 もちろん、各損保会社において、タイムチャージを採用している場合には、被害者請求手続に、タイムチャージを採用することもあります。ただ、これは、損保会社が弁護士費用を支払っていただける場合の例外的な場合ですし(またいくらタイムチャージとはいえ、被害者請求手続で10万円を超えていたら損保会社から疑念を抱かれるでしょう。)、また、後遺障害を獲得できた場合には、タイムチャージだと全体的な弁護士費用は小さくなることもあります。

 いずれにせよ、弁護士費用特約がついていないような事案において、初回の被害者請求手続で費用が20%というのは、原則としてとりえないのではないかと思います。

 このような事務所の中には、「相談料無料」で、集客しているところもあるようです。

 ご依頼される場合には、事前に、必ず、報酬体系をご確認ください。

 万が一の場合にも、クレームが容易にだせる、地元の弁護士がいいと、田舎弁護士は思います。

2020年5月18日 (月)

【自賠責等級よりも下がった裁判例】 自賠責併合8級  → 裁判併合10級

 自保ジャーナルNo2061号で紹介された大阪高裁令和元年9月26日判決です。争点となりがちな「脊柱変形障害」ですが、8級の程度に達してたものが11級までランクダウンしております。 

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 以下、判決要旨を紹介します。
 Xは、ハローベストの装着を終えた際にD医師によつて頚部の回旋状態を確認されたが、特段問題にされておらず、フィラデルフィアカラーをはずした平成23年7月ころも問題にされた形跡はなく、D医師が作成したE整形外科クリニック宛ての紹介状にも頚部の可動域制限に関する記載はない。
 
 また、D医師は、リハビリ不要と判断しており、実際、Xが希望して通院したE整形外科クリニックにおいて、直ちに頚部のリハビリを開始しなければならない状態ではなく、通院から5ヶ月経過してから頚部のリハビリが開始された。
 
 さらに、頚部のリハビリが開始された後、Xは頚部回旋の可動域制限を特段訴えておらず、後ろを向くこともできるなどの改善がみられた。
 仮に、頚部の回旋の可動域制限角度が左右とも15度程度又25度程度であるとか、Xが陳述書に記載し又は本人尋問において陳述するように頚部の屈曲・伸展に強度の可動域制限があるとすれば、日常生活を営む上で著しい不自由・不具合が生じるはずであるが、E整形外科クリニックやGセンターにおけるリハビリの経過において、Xによるそのような訴えはなく、いずれの医療機関においても理学療養士によって日常生活動作は問題がないと評価されている上、これに沿うように、Xは、平成23年9月頃からパン屋の店頭で接客業に従事している
 Xの頸椎の回旋運動が参考可動域の2分の1に制限されているということはできない。
 頚部の可動域角度について、E整形外科クリニックにおいてされた測定結果及びGセンターにおいて平成26年11月30日にされた測定結果は、上判断に沿うものであるとし、
 他方、画像ゑ宇、Xに椎体に及ぶ歯突起の骨折が認められ、明らかな脊柱圧迫骨折、脱臼等を残しているものと同様に捉えられるから、軸椎骨折後の脊柱の障害につき、脊柱に変形を残すものとして、11級7号に該当すると認められると、11級7号脊柱変形を認めました。
  脊柱変形が、8級から、11級に等級ダウンしてしまいました。
  11級の脊柱変形は、逸失利益の際の労働能力喪失率が度々問題となりますが、このケースでは、8級が11級に等級ダウンするという、被害者にとっては納得しがたい結果となつております。
  約4800万円の請求に対して、第1審は、約2000万円、第2審は、約2500万円となっております。
 
 

2020年5月17日 (日)

【非器質性精神障害】 40歳代兼業主婦主張の12級非器質性精神障害を自賠責同様14級認定し、実収入を基礎収入に10年間5%の労働能力喪失で後遺障害逸失利益を認めた事例。名古屋地裁令和元年9月27日判決

 自保ジャーナルNo2061号で紹介された名古屋地裁令和元年9月27日判決です。

 非器質性精神障害の後遺障害の判断基準を理解しやすい判決です。 

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(卯之町)
 乗用車を運転して停車中、被告乗用車に追突され、頚部捻挫等の傷害を負い、自賠責14級9号首の痛み等、同14級9号非器質性精神障害認定も、労災基準に基づく12級13号非器質性精神障害が残存したと主張する40歳代女子原告の事案につき、
 
 労災補償の障害認定基準では、12級の12に認定されるためには、能力に関する8つの判断項目のうち、4つ以上について時に助言・援助が必要と判断される障害を残している必要があるが、
 
 原告が主張する能力に関する5つの判断項目のうち、少なくとも3つについて、時に助言・援助が必要と判断されるものとは認められないから、原告の非器質性精神障害の後遺障害に関して、能力に関する8つの判断項目のうち、4つ以上について時に助言が必要と判断される状態にるとは認められず、労災補償の障害認定基準によったとしても、原告の後遺障害の程度が、後遺障害等級第12級に該当すると認めることはできないと否認した。
 後遺障害認定につき、非器質性精神障害については、
 原告は、精神科専門医であるD医師によるカウンセリングや薬物療法を継続的に受け、同医師は、PTSDを傷病名とした上で、原告にめまいや耳鳴りなどの症状が後遺障害として残存している旨の後遺障害診断書を作成しており、これに基づく自賠責保険の後遺障害等級認定手続において、原告の症状は、非器質性精神障害として後遺障害等級14級9号に該当する旨の判断がされていること等から、
 原告には、本件事故により、身体表現性障害としてのめまいや耳鳴り等の症状が残存したと認めることが相当であり、これは、非器質性精神障害に該当すると自賠責同様14級9号後遺障害を認定しました。
 なお、後遺障害逸失利益の労働能力喪失期間については、10年と認定しております。
 

2020年5月 9日 (土)

【関節機能障害】 自賠責非該当 → 判決 12級7号

 交通事故民事裁判例集第52巻第2号で紹介された京都地裁平成31年3月1日判決です。 

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(笠松山)
 右足関節の機能障害について、
 自賠責保険においては、当該部位に骨折等の外傷性異常所見や神経損傷等が認められないとして後遺障害非該当とされたところ、
 判決では、被害者の胸部や腹部の損傷が著しく、長期間臥床を余儀なくされたことによる廃用症候群(原疾患の治療中に、臥床などによる身体活動低下により引き起こされる病的状態)であるとして、事故との間に相当因果関係を認め、12級7号の1下肢の三大関節中の1関節の機能に障害を残すものに該当するものと認めた事例
 当該部位に骨折等の外傷性の異常所見は認められず、また神経損傷等も認められないことから、関節可動域制限の原因となる客観的な所見に乏しくということで、自賠責は非該当です。
 長年自賠責保険の異議申し立てばかりしていると、自賠責保険の考え方が身についてしまい、それを超える判断が難しくなります。
 目から鱗です。

2020年5月 8日 (金)

【むち打ち損傷】 47歳男子のクレーン車の金属製部品が頭部に落下し自賠責14級9号認定の項部痛は十分な他覚的所見が得られていると12級13号認定した事例 名古屋地裁令和元年9月25日

 自保ジャーナルNo2060号で紹介された名古屋地裁令和元年9月25日付判決です。 

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(笠松山)
 項部痛事案で、神経学的異常所見は認められていないという事案です。
 しかしながら、裁判所は、12級13号と認定するために必要な他覚的所見として神経学的異常所見の存在が重視されるのは、典型的にはむちうち症のように、受傷部位と神経症状が現れている部位とが必ずしも一致せず、その神経学的な整合性が問題となり得る場合があるからであるところ、
 原告は、第7頚椎棘突起が偽関節になったことにより異常可動性を生じ、その結果、周辺部位である項部に疼痛が生ずるようになったものであり、かかる機序について神経学的な疑義は特段ないのであるから、原告について神経学的異常所見がないことを殊更重視するのは相当でないと考えられる
 原告の後遺障害について、第7頚椎棘突起の偽関節との画像所見をもって十分な他覚的所見が得られているというべきである
 よって、12級13号と認める
 後遺障害診断書の傷病名は、第7頚椎棘突起骨折 で、自覚症状が、項部痛ということでした。
 自覚症状にひきずられて、自賠責は、いわゆるむち打ち損傷の手法で認定したわけですが、裁判所は、そもそも頚椎骨棘の偽関節なんだから、それだけで他覚的証明ありという認定です。
 
 目から鱗が落ちました。

2020年5月 7日 (木)

【むち打ち損傷】 49歳女子の自賠責14級認定の頚部痛を他覚的所見が認められるとして12級後遺障害を認定された事例

 自保ジャーナルNo2060号で紹介された福岡地裁令和元年9月17日判決です。 

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(笠松山)
 頚部痛について、自賠責は14級9号でしたが、裁判所は、なんと12級13号を認めました。
 裁判所の判断は以下のとおりです。
 原告は、症状固定時において、頚部痛、首から肩にかけての疼痛、両腕から手のしびれ及び腰痛が生じていることが認められる。
 本件MRI検査の結果によれば、原告の頚椎について、C6/7及びC5/6において椎間板が突出していることが認められるところ、C7が支配する皮膚感覚帯は肩から腕の中央の背部及び一指し指及び中指とされ、C6が支配する皮膚感覚帯は肩から腕の外側及び親指とされているから、本件MRI検査で椎間板突出が認められる頚椎に対応する神経根と、本件神経症状のうち頚部痛と両腕から手の知覚障害(しびれ)との間には対応関係があるということができる。
 以上によれば、本件後遺障害症状は、C5/6及びC6/7の椎間板突出との他覚的所見があり、一定期間での寛解が具体的に見込まれるといえないため、局部に頑固な神経症状を残すものとして、12級13号を認めています。
 神経学的検査は、スパーリングテスト右+左-、ジャクソン両-、上腕二頭筋腱反射及び腕橈骨筋腱反射は両側とも正常(+)、SLRやFNSは- という結果です。
 う~ん。
 被害者にとっては、とても良い結果となっております。
 ただ、判決文からは、追突の具体的な内容は不明です(車の損傷の大きさとか)。
 また、12級であれば、ありがちな素因減額もなされておりません。
 被害者側としては、ほとんどいうことのない判決内容ではないかと思います。
 

2020年5月 6日 (水)

【線維筋痛症】 42歳女子主張の5級繊維筋痛症及び9級PTSDの発症を否認し、頚部痛及び非器質性精神障害の自賠責同様併合14級認定した事案

 自保ジャーナルNo2060号で紹介された名古屋地裁令和元年10月11日判決です。 

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(笠松山)
 42歳女子原告が青色信号交差点の横断歩道を自転車で横断中、右後方から被告乗用車が左折進入してきて衝突され、自賠責14級9号頚部痛・頭痛・両上肢しびれ、同14級9号腰痛、同14級9号非器質性精神障害から、併合14級後遺障害認定を受けるも、5級2号繊維筋痛症・脊椎関節炎、9級10号PTSDから併合4級後遺障害を残したと主張する事案について、
 被告車は本件交差点に左折進入するに当たって相当程度減速していること、
 原告が被告車に引きずられた事実及び原告が転倒後路面を滑走した事実は認められないこと、
 原告自転車の損傷も前かご及び泥除けに多少ゆがみが凹損が生ずる程度にとどまっていることからすると、
 本件事故によって原告がその身体に受けた衝撃の程度は比較的軽いものであったと推認でき、本件事故が原告において発症したとされる繊維筋痛症の病因となつたとは考え難いとし、
 原告の身体の症状は、本件事故から1年以上もの間、外傷性頚部症候群や腰部挫傷によるものとして了解可能な内容及び程度の症状として各医療機関において治療が行われていたのに対し、
 原告は、本件事故から約1年3か月後の平成25年4月頃から急に、外傷性頚部症候群や腰部挫傷による症状としては説明できないような態様で激しい身体の症状を訴えるようになったものと認められる。
 繊維筋痛症の発症の原因はいまだ特定されていないことを併せ考慮すると、原告が繊維筋痛症を発症したと認められるとしても、その発症機序は明らかでなく、本件事故によって原告が繊維筋痛症を発症したとは認められない。
 線維筋痛症では、14級の認定を受けるのがせいぜいという印象を抱きます。
 本件でも、約8300万円の請求ですが、判決では、350万円程度にとどまります。
 ただ、時間がかかる難事件であることが通常ですので、裁判体も合議となっております。
 

2020年5月 5日 (火)

【高次脳機能障害】 35歳男子主張の3級高次脳機能障害は、意識障害認められず、器質的異常所見も認められないこと等から否認し、後遺障害の残存も否認した事例 大阪地裁令和元年10月28日判決

 自保ジャーナルN02060号で紹介された大阪地裁令和元年10月28日判決です。

 

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(笠松山)
 平成25年9月7日、店舗駐車場内を歩行中、後退してきた被告乗用車に衝突され、腰部、右上肢及び後頭部打撲等の傷害を負い、自賠責非該当も、3級3号高次脳機能障害又は非器質性精神障害、12級13号両上肢筋力低下及び感覚障害の併合2級後遺障害を残したと主張する35歳男子原告の事案です。
 原告は、平成25年の事故以前においても、平成12年、平成17年、平成20年の3度の事故にあっております。平成23年には生活保護の申請を行い、平成25年12月まで、生活扶助等の支給決定を受けております。
 ところが、原告は、平成25年9月8日から解雇日の前日である平成26年8月まで欠勤を余儀なくされたとして、休業損害を請求してきています。裁判所は、原告が生活保護を受けていたこと、休業損害を証明する公的な資料が何ら提出されていないこと、解雇通知の内容も信用ができないことから、休業損害を認めませんでした。
 なかなか大変そうな雰囲気がする事例です。
 なお、裁判所は、高次脳機能障害については、
 本件事故後の原告の状況及び治療経験等、とりわけ、原告は、救急車を呼ぶことを拒否したり、気持ちの悪さを訴えたりするなど、自身の意思を表示することができ、G病院への搬送時、意識は清明であり、歩行により入室したこと、
 原告は、G医師に対し、頭部に関する外傷の申告をせず、自覚症状は腰痛であったこと、
 原告の身体に明らかな打撲痕はなく、明らかな神経学的異常所見も認められず、腰部打撲傷及び腰椎捻挫と診断されるにとどまったこと、
 
 本件事故の2日後である平成25年9月9日に実施された頭部CT検査では、明らかな頭蓋内出血は認められず、両側前頭葉底部に低吸収域は認められなかったこと、
 同月13日の東部MRI検査では、明らかな頭蓋内出血、脳腫瘍及び虚血性病変を含む器質的異常所見は認められなかったことから、本件事故によって原告が頭部を受傷したと認めるには足りず、意識障害の状態に陥ったと認めるには足りないとし、
 頭部MRIについても明らかな器質的所見は認められない。
 そして、同年9月9日の頭部CT及び平成28年9月30日の頭部CTを比較しても明らかな脳委縮や脳室拡大の進行は認められず、平成25年11月28日の頭部MRIと平成28年9月30日の頭部MRIを比較しても、脳委縮や脳室拡大の進行は認められないとして、高次脳機能障害の発症を否認しました。
 この事案は、原告が約2億6000万円程度の請求をしておりますが、判決は、原告の請求を棄却するという結果が確定しております。
 損保弁護士(損保から定期的に依頼を受けている弁護士)を標ぼうしていたころは、このような事案は加害者側で大小経験したことが時折あります。被害者側の代理人も大変な負担だと思いますが、加害者側の代理人も負担が大きいです。平成25年の事故で、判決が令和元年10月ですから、解決(?)まで時間がかかつております。
  
 

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