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🚓交通事故の一般的な書籍🚓

2023年10月 1日 (日)

【施術費】 整骨院の施術費が否認された事案

 整骨院の施術費が高額な場合のご相談事案は、裁判になった場合に、裁判所から否認されるのではないかという視点が重要です。

 自保ジャーナルNo2142号で掲載された京都地裁令和4年12月1日判決も、整骨院の施術費を否認しております。

 判旨の要旨は以下のとおりです。

 貨物車を運転して停止中の原告が、被告乗用車に追突されたB車に玉突き追突され、頸部捻挫、腰部捻挫などの傷害を負い、約7ヶ月通院したという事案での、118日通院した本件整骨院の施術費が損害として認められるかが争点になりました。

 裁判所は、本件病院の医師は、本件整骨院で具体的にどのような施術がされていたかまで把握しておらず、本件整骨院での施術が医師の管理によるものとは認められない他、

 本件病院の医師が、整骨院での施術を受けることを指示したり、同意していたとも認められないとし、

 原告は、本件整骨院において、頻繁に施術を受けているところ、本件整骨院の施術録を見ても、施術を受けて原告の症状がどのように推移したか詳細は明らかにならず、抽象的に回復傾向にあったことが記載されるにとどまり、原告が受けた高頻度の施術の必要性・相当性を肯定し得る事情が明らかにならない上、

 かえって、頻繁に施術を受けてもなお症状が継続していたり、本件事故から3か月以上経過してから右上肢しびれが発現したことなどからすると、施術の有効性に疑問が残ることから、

 整骨院での施術を受けることについて、医学的な必要性・相当性を認めるに足りないから、本件整骨院にかかる施術費については、本件事故による損害とは認められないとして、本件事故による整骨院施術費を否認しました。

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 このケースでは、整骨院の施術費は、50万円位、病院の治療費は、10万円位だったようです。

 神経症状があったから施術されたと思いますが、被害者になかなか厳しい判決です😟

2023年9月16日 (土)

【CRPS】 男子主張の左上下肢CRPSの発症は慢性期の主要3症状の①関節拘縮②骨萎縮③皮膚の変化はみとめられない他、損害賠償金を得ることを意識していた等からCRPSの発症を否認し、事故後約3ヶ月で症状固定と認定した事案。京都地裁令和4年12月22日判決

 自賠責非該当にもかかわらず、左下肢CRPSから8級7号左足関節用廃、7級10号左足偽関節、10級10号左足関節機能障害、左上肢CRPSから10級10号左肘関節機能障害、9級10号左上肢用廃性症候群等の併合6級の後遺障害を残したとして、約2億6000万円の請求をしたところ、裁判所は、その請求を全て認めませんでした。

 CRPSについては、自賠責認定上の労災基準の①関節拘縮②骨萎縮③皮膚の変化が認められないこと、受傷当初は打撲、頸椎捻挫程度とされていたにもかかわらず途中で不自然な程筋力が低下していること、さらに、このような経過については損害賠償金を得ることを意識し症状についての記載を診療録への記載を求めていたことから、CRPSについては認めませんでした。

 また、原告の休業損害ですが、原告は年収860万円を前提に請求されていますが、平成26年の所得を示す公的な資料は提出されておらず、H会社が作成したとする休業損害証明書を提出されているものの、H会社が実在するのかどうか疑問も呈されており客観的な裏付けとして認められないということで、休業損害についても、認定しておりません。 

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(サギソウ)
 これは提訴する際に裁判所におさめる印紙代だけでも相当な金額になります 
 いろんな意味で引き受けられた弁護士さんは大変だつたでしょう。

2023年9月15日 (金)

【高次脳機能障害】 労災2級   ⇒ 裁判5級   広島地裁福山支部令和4年3月24日判決

 自保ジャーナルNo2141号で掲載された広島地裁福山支部令和4年3月24日判決です。

 信号交差点を自動二輪車で直進中の42歳男子Xが、対向の右折Y乗用車に衝突され、外傷性脳損傷等の傷害を負い、2級1号高次脳機能障害(労災2級認定)を残したと主張する事案です。

 裁判所は、①Xは、平成29年4月28日に症状固定となり、Dリハビリテーションを退院し、その後、一人暮らしをしていること、

 ②Xは、同年9月ころから、就労継続支援B型(一般企業等に就労することが困難であって、雇用契約に基づく就労が困難である者を対象とするもの)事業所を利用しているが、同施設の利用に関しての特段の問題は生じていないこと、

 ③Xは、一人暮らしをしている間に、一週間に1回程度、居宅介護サービスの提供を受けていたことがあり、サービス内容は家事援助であった等から、

 Xの生活状況を考慮すると、少なくともXにおいて2級1号に該当する後遺障害が残存していたことを認めるに足りないと判断した上で、

 Xの後遺障害の程度につき、

 D医師が、「Xについて単純繰り返し作業などに限定すれば、一般就労も可能。ただし新しい作業を学習できなかったり、環境が分かると作業を継続できなくなるなどの問題がある。このため一般人に比較して作業能力が著しく制限されており、就労の維持には、職場の理解と援助を欠かすことができないもの」といえる可能性があることを前提とした供述をしていることを考慮すると、少なくとも、5級2号よりも重い後遺障害が残存したことについては、合理的な疑いを容れる余地があるとして、5級2号の限度で後遺障害を認定しました。

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                             (浅尾の沈下橋)

 労災の等級は、注意をしないと、裁判になれば、下がるリスクの可能性がそこそこありそうな気がします。この事案は、労災は当初5級認定でしたが、Xの審査請求を受けて、2級に等級がUPしたという事案のようです。

2023年9月14日 (木)

【PTSD】追突された28歳女子主張の12級PTSDは衝撃は大きいものではあったが傷害としては他覚的所見のない打撲等に留まっている等から診断要件には該当しないとPTSDの発症を否認し、心因的要因により5割の素因減額を適用した事案 名古屋地裁令和4年9月14日判決

 自保ジャーナルNo2141号で紹介された名古屋地裁令和4年9月14日判決の案件です。

 平成29年9月5日、乗用車に同乗して停止中の28歳女子原告が、被告乗用車に追突され、頸部捻挫、腰部打撲等の傷害を負い、心的外傷後ストレス障害(PTSD)に罹患し、12級非器質性精神障害を残したとして、約860万円程度の損害が発生したとして請求した事案です。

 裁判所は、PTSDの発症を否認し、且つ、50%の素因減額を行い、結果として、約140万円程度の賠償を認めています。

 PTSDについては、「PTSDと診断されるためには、『実際にまたは危うく死ぬ、重症を負う、性的暴力を受ける出来事あるいは状況』を要する」とし、「本件自己により原告に加わった衝撃は大きいものであったと推認できるとしても、本件事故による原告の身体的な傷害としては、他覚的所見のない頸部、腰部及び下肢の挫傷、捻挫ないし打撲傷等に留まっていること、他の原告車の乗員にも重傷者はおらず、原告自身が救急搬送さえされていないことからすれば、上記要件に該当せず、PTSDの他の診断基準を満たすか否かを検討するまでもなく、本件事故によりPTSDを発症し、これが後遺障害として残存した旨の原告の主張は採用できない」として、PTSD発症を否認しました。

 また、平成30年3月末日までの精神科への通院治療には必要性及び相当性が認められるとしつつも、原告に精神科の既往症がないことを考慮しても、本件事故により精神科の症状が出現し、治療を要すべき状態になったこと、休業期間が長期化したことについては、原告の心因的な要因が寄与しているとして、5割の素因減額が適用されました。

20230814_112815                            (南嶺・えぼし山)

2023年8月26日 (土)

【むち打ち損傷】 これは高齢の主婦にとってなかなか厳しい

 自保ジャーナルNo2140号で掲載された大阪高裁令和4年9月8日判決です。

 73歳女子家事従事者のXの後遺障害逸失利益算定につき、

 Xは、夫で二人で暮らしており、Xが家事全般を担っていたことが認められるとし、

 他方、Xの夫は75歳で退職し、本件事故当時は無職で、特に日常生活に支障を生じるような心身の問題等はなかったことを踏まえれば、Xの夫が自分の身の回りのことやXが担っていた家事の一部を分担することは可能であったことから、

 Xの基礎収入については、平成30年賃金センサス女子70歳以上学歴計の平均賃金296万2.200円の70%に相当する207万3,540円を認めるとして、センサス女子70歳以上学歴計平均の7割を基礎収入に5年間5%の労働能力喪失で認定しました。

 通常であれば、約296万円程度の基礎収入になるのが、約207万円程度にとどまっています😖

 判決文をみてもよくわかりませんが、無職の夫がいれば、その夫は、身の回りや家事労働を手伝ってくれるということのようですが、そうなのかな?と思います。

 むしろ、退職しても、全く変わらない人の方がまだまだ多いのではないのかな😟

 

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2023年8月25日 (金)

【高次脳機能障害】 66歳専業主婦の高次脳機能障害は家事を含む日常生活及び社会生活に支障が生じている等から、自賠責同様9級9号と認定した事案 大阪高裁令和4年9月14日判決

 自保ジャーナルNo2140号で掲載された大阪高裁令和4年9月14日判決です。

 Xの自賠責9級10号の高次脳機能障害が争われた事案です。

 裁判所は、

 Xについては、D病院の通院期間を通じて、物忘れが多いとの訴えがあるほか、リバーミード行動記憶検査においては24点満点中15点であり、計画的な行動に困難があることが推認されること、

 Eクリニックの診療録には、Xが通院時に一人できた、自転車に乗ってスーパーまで行けた等と話しをしていた旨の記載があるが、Xの夫においては、本人が話しをしたような事実はなかったと供述するところである。

 また、Xの夫は、Xの現状について、電話の受け答えがちぐはぐで、時間が経つと忘れている、メモを正確にとることができない、ガスコンロや包丁の扱い、水道の止め忘れ等が多く、料理をすることが難しいとの趣旨の供述もする等から、

 Xについては、本件事故後、脳外傷による高次脳機能障害が残存し、これにより家事を含む日常生活及び社会生活に支障が生じているものと認められ、その程度については、神経系統の機能又は精神に障害を残し、服することができる労務が相当な程度に制限されるものとして、9級10号に該当するとして、自賠責同様9級10号高次脳機能障害を認定しました。

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 診療録の記載がなんでこんな記載になったんでしょうかね😖

2023年8月11日 (金)

【むち打ち損傷】 40歳男子主張の7級4号腰椎椎間板ヘルニアの発症は事故から1か月余りの期間に左下肢の症状が存在せず、腱反射、筋力及び知覚障害も正常であり、ラセーグテストの結果は陰性であった等から本件事故による発症を否認した事例 福岡地裁小倉支部令和4年9月9日判決

 自保ジャーナルNo2139号で掲載された福岡地裁小倉支部令和4年9月9日判決です。

 信号機のないT字路交差点を乗用車で直進中の症状固定時40歳男子原告が、対向の右折被告乗用車に衝突され、頸椎捻挫、腰部挫傷、外傷性腰椎椎間板ヘルニア等の傷害を負い、自賠責14級9号腰部神経症状認定も、

 腰部椎間板ヘルニアが発症し7級4号後遺障害を残したとする事案につき、

 本件事故後において、原告につきL5/Sの腰椎椎間板ヘルニアが存在し、これが原告の左下肢の痛み、痺れの症状に影響していることは認められる」が、

 「本件事故日から1ヶ月余りの期間、左下肢症状が存在せず、腱反射、筋力及び知覚障害のいずれも正常であり、ラセーグテストの結果は陰性であったのであり、かかり事実は本件事故から1ヶ月余りの期間において腰椎椎間板ヘルニアが発症していたことの推認を強く妨害するものといえる」ことから、

 「一件記録を子細に検討しても、本件事故により現行に外傷性の腰椎椎間板ヘルニアが発症したことを合理的に推認できるだけの事情は認められない」として、

 本件事故による腰椎椎間板ヘルニア発症を否認しました。

 20230806_140919                            (木漏れ日の橋)

 事故日と左下肢の神経症状の発症が1か月余りと間隔が開いていること、腱反射・筋力知覚障害も正常であったこと、ラセーグテストも陰性であったことが、認められなかった理由となっております

 この理由を考えると、自賠責14級9号もよく認定されたものだと思います。裁判所は、「被告において争わない、腰部挫傷後の臀部痛(14級9号)の限度において認められる」と判断しているため、積極的に14級9号の後遺障害を認めたものであるものではなさそうです😅

2023年7月28日 (金)

【むち打ち損傷】 男子家事労働者主張の12級13号右足関節運動麻痺等は、MRI画像や神経伝導検査に異常所見は認められないと自賠責同様併合14級認定し、センサス女子全年齢平均の4割を基礎収入に、5年間5%の労働能力喪失で逸失利益を認めた事例

 自保ジャーナルNo2138号で紹介された京都地裁令和4年8月25日付判決です。 

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                             (徳島・脇町)

 頸椎捻挫、腰椎捻挫、右膝打撲等の傷害を負い、自賠責14級9号頸部痛、右上肢痛、同14級9号腰痛、右足痛、同14級9号右膝痛から、併合14級後遺障害認定も、12級13号右足関節運動麻痺等を残したとして、提訴された事案です。

 裁判所は、①B医師の意見書において、膝関節のMRI画像の「膝関節後方のT2high lesionは座骨神経、もしくは総腓骨神経の圧排となりうる」とされていること、②令和元年9月30日の神経伝導速度検査の所見として、刺激に対する神経の活動電位が右側で低下していることと考えられる」が、

 「①については、B医師においても、神経根障害が生じているかどうかを判断するためには、直視的に(手術を行って)観察するほかないと述べており、あくまで、神経を圧排している可能性を指摘するにとどまる上、C病院の医師及びD病院の医師はいずれも膝関節のMRI画像を確認した上で、異常所見は認められないと判断していることからすると、同MRI画像は、必ずしも本件事故による原告の神経症状を他覚的に証明するものとはいえない」とし、

 「②の神経伝導速度検査については、令和元年5月9日に実施された同検査では異常所見がなかったことからすれば、仮に同年9月30日の神経伝導速度検査の結果によって何らかの神経異常が疑われるとしても、その原因が本件事故によるものとはいい難いから、同じく本件事故による原告の神経症状を他覚的に証明するものとはいえないとして、

 結局、12級13号の後遺障害については否定しました。

 12級へのハードルはなかなか高そうです。

 なお、この方は、主夫の主張をされていましたが、原告妻の補助的役割に留まるとして、基礎収入は主婦の40%程度にとどめられています。

 

【むち打ち損傷】 男子家事労働者主張の12級13号右足関節運動麻痺等は、MRI画像や神経伝導検査に異常所見は認められないと自賠責同様併合14級認定し、センサス女子全年齢平均の4割を基礎収入に、5年間5%の労働能力喪失で逸失利益を認めた事例

 自保ジャーナルNo2138号で紹介された京都地裁令和4年8月25日付判決です。 

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                             (徳島・脇町)

 頸椎捻挫、腰椎捻挫、右膝打撲等の傷害を負い、自賠責14級9号頸部痛、右上肢痛、同14級9号腰痛、右足痛、同14級9号右膝痛から、併合14級後遺障害認定も、12級13号右足関節運動麻痺等を残したとして、提訴された事案です。

 裁判所は、①B医師の意見書において、膝関節のMRI画像の「膝関節後方のT2high lesionは座骨神経、もしくは総腓骨神経の圧排となりうる」とされていること、②令和元年9月30日の神経伝導速度検査の所見として、刺激に対する神経の活動電位が右側で低下していることと考えられる」が、

 「①については、B医師においても、神経根障害が生じているかどうかを判断するためには、直視的に(手術を行って)観察するほかないと述べており、あくまで、神経を圧排している可能性を指摘するにとどまる上、C病院の医師及びD病院の医師はいずれも膝関節のMRI画像を確認した上で、異常所見は認められないと判断していることからすると、同MRI画像は、必ずしも本件事故による原告の神経症状を他覚的に証明するものとはいえない」とし、

 「②の神経伝導速度検査については、令和元年5月9日に実施された同検査では異常所見がなかったことからすれば、仮に同年9月30日の神経伝導速度検査の結果によって何らかの神経異常が疑われるとしても、その原因が本件事故によるものとはいい難いから、同じく本件事故による原告の神経症状を他覚的に証明するものとはいえないとして、

 結局、12級13号の後遺障害については否定しました。

 12級へのハードルはなかなか高そうです。

 なお、この方は、主夫の主張をされていましたが、原告妻の補助的役割に留まるとして、基礎収入は主婦の40%程度にとどめられています。

 

2023年7月21日 (金)

【自賠責等級よりも下がった裁判例】 自賠責併合14級 ⇒ 裁判非該当 

 自保ジャーナルNo2137号で掲載された大阪地裁令和4年7月22日判決です。

 信号交差点の自転車横断帯を自転車で横断中の71歳女子原告が、右折してきた被告会社従業員Y運転の対向タクシーに衝突され、頚椎捻挫、右外傷性膝内障、外傷性頸部症候群等の傷害を負い、自賠責14級9号頸部痛、右上肢痛等、同14級9号腰痛、両下腿~足関節痛等から併合14級認定の後遺障害を残した事案につき、

 原告は、本件事故後、B脳神経外科病院において頸部挫傷・腰部挫傷などと診断されているとはいえ、主な自覚症状は右膝や右下腿の痛みなどの下肢症状であり、Cクリニック作成の診断書に記載された症状も両下腿痛続いているというもので原告が頸部痛み、頭痛、右上肢痛み、腰痛などを継続的に訴えていたと認めるに足りる証拠はないし、

 そもそも、原告のCクリニックにおける通院治療には約1ケ月の治療中断期間が多数回あったと認められ、本件事故に起因する症状が症状固定日まで継続的に存在していたとも認められないとし、

 Cクリニック作成の診療報酬明細書には、腰痛症、右変形性膝関節症、変形性腰椎症、腰痛すべり症、外傷性頸部症候群などの初診時にはなかった傷病名が順次追加されていて、外傷性頸部症候群の傷病名が追加されたのが平成31年4月分からであることによれば、本件事故から約1年が経過した同月ころに原告から頸部痛等の頸部症状の主訴があったことがうかがわれるというべきであり、そのような頸部症状が本件事故に起因するものとは認められない等から、

 原告に本件事故に起因する外傷性頸部症候群に伴う頸部症状等、腰痛捻挫後の腰痛等の症状が生じ、将来においても改善する見込みがない後遺障害として残存したと認めることはできないとして、本件事故による後遺障害の残存を否認しました。

 その結果として、約460万円程を請求されていましたが、裁判の結果は、ケガについては填補済みと判断されています。

 トホホな結果になりました。

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2023年7月10日 (月)

【書籍】 交通事故医療法入門第2版

 令和5年6月に出版された交通事故医療法入門第2版を購入しました。交通事故を取り扱う弁護士であれば必携の書ですね😅

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                             (さめうら荘)

 脊髄脊椎疾患、むち打ち損傷、低髄液圧症候群、胸郭出口症候群、目に見えにくい後遺障害、高次脳機能障害、非器質性精神障害、RSD・CPRS、損害算定が問題となる傷病、変形障害、下肢障害、上肢障害、関節機能障害、醜状障害、味覚・嗅覚障害、歯牙障害、膵臓喪失など、実務上問題となる傷病について、簡潔で的確な説明があります。

 2年ほどで第2版ということですが、それだけ、裁判例等実務の動きが速いということなのでしょう。

2023年6月23日 (金)

【むち打ち損傷】 交通事故による受傷が否認された事例 大阪地裁令和4年7月29日判決

 自保ジャーナルNo2136号で紹介された大阪地裁令和4年7月29日判決です。

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                              (松山城)

 乗用車で渋滞走行中に車線変更乗用車に衝突された44歳男子主張の頸椎捻挫及び腰椎捻挫について、

 ①時速10㎞程度の軽微な衝突事故であること(フロントバンパーの損傷は擦過傷程度で部品交換不要、事故の相手方は衝突があったこと自体を認識していなかった、頸部や腰部の過伸展・過屈曲するような挙動が考えれないこと)

 ②症状の経過が一般的な経過と整合しないこと

 から、事故との因果関係自体が、否定されています。

 むち打ち訴訟事案で、神経症状が増悪するような場合、異なる部位に神経症状が発生するような場合などが見受けられますが、このような場合には、因果関係が問題とされることが大半のように感じます。

 

2023年6月15日 (木)

【むち打ち損傷】 41歳女子主張の14級9号頸部痛等は頸椎の変性所見はいずれも加齢に伴い生じ得る変性であり、本件事故により生じたあるいは悪化したとは考えがたい等から、本件事故による後遺障害の残存を否認しました 神戸地裁令和4年7月28日判決

 自保ジャーナルNo2135号で掲載された神戸地裁令和4年7月28日判決です。

 裁判所は、①衝突時に原告の身体に加わった衝撃は、決して大きなものと評価できるようなものではなく、本件事故の態様から、原告に後遺障害が残存し得るような受傷をすることは考えにくい(原告の修理代は約6万円、被告の修理代は約10万円)、②原告にはストレートネック、頸椎椎間板膨隆、骨棘形成といった症状の裏付けとなる変性所見がみられると指摘するが、いずれも加齢に伴い生じうる変性であり、事故の態様に照らしても、本件事故により生じた或いは悪化したとは考えがたく、これらの変性所見が原告の頸部痛等の症状の裏付けとなっていることはできないとして、本件事故による後遺障害の残存を否認しました。 

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(剣山山頂)
 軽微な事故で、多様な愁訴がある方はたまに相談にこられます。怪我による後遺障害ですので、ある程度力の大きい事故でなければ、神経症状の残存を説明することは難しいと思います。心因的なものを感じることもありますが、心療内科の方には通院されていないので、こちらの方でも後遺障害を得られることはありません。

2023年6月14日 (水)

【TFCC損傷】 22歳男子整備士主張の右手関節TFCC損傷は事故後約1年半年後の診断等からも本件事故による傷害とは認められないと否認した事案 さいたま地裁川越支部令和4年7月20日判決

 自保ジャーナルNo2135号で紹介されたさいたま地裁川越支部令和4年7月20日判決です。

 TFCC損傷については、平成29年6月19日(事故は平成28年7月24日)に両手ないし両手関節の痛みを訴えてD整形外科の診察を受けているとkろおその原因は不詳と申告していること、Bセンターにおいては平成30年1月18日に手首に痛みを訴えてTFCC損傷の疑いが強い旨診断され紹介を受けたC大病院で治療を受けたことから、原告が本件事故による治療を開始した当初から手首の痛み等を訴えていたとは認めがたく、原告の主張する傷害のうち、TFCC損傷は本件事故による傷害とは認められないと判断しました。 

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(剣山)
 田舎弁護士の事務所においても、途中で、これまでと異なる部位についての痛みやしびれを訴えるケースは少なくありません。しかし、このようなケースで、当該神経症状と事故との因果関係が認められたケースは、田舎弁護士が知る限り、ありません。
 実際は、最初から、神経症状があったと述べる方もいますが、医師に最初に伝えていない以上、医師が因果関係を認めてくれることはほとんどないと思います。
 気になるところは、全て医師に最初から伝えておくことに限ります。

2023年6月13日 (火)

【TFCC損傷】39歳男子の労災12級6号認定の右手関節TFCC損傷を画像所見等の他覚的所見は認められないと14級9号右手関節痛認定し、5年間5%の労働能力喪失で後遺障害逸失利益を認めた 名古屋地裁令和4年9月14日判決

 自保ジャーナルNo2135号で掲載された名古屋地裁令和4年9月14日判決です。

 右手関節TFCC損傷により、労災は12級6号右手関節機能障害が認定されるも、自賠責では非該当というケースで、労災同様の認定を求めて提訴された事案です。

 労災12級、自賠責非該当或いは14級という認定は、田舎弁護士もよく経験するところです。

 裁判所は、右手関節TFCC損傷の受傷につき、手外科を専門とする整形外科医が右手関節のMRI画像を確認した上で、TFCC尺側に高信号領域を認め、外傷性変化があるとして、TFCC損傷と診断していること、右手関節の手術の際にTFCCの断裂が確認されていることから、右手関節のTFCC損傷が認められること、また、原告が本件事故直後の診療から一貫して右手関節痛を訴え、比較的早期の段階から右手関節のクリック音を訴えていたこと、本件事故の際に、原告が乗車していた原告車両の右フロントドア付近に、被告車両前部が衝突し、ハンドルが時計回りに着られており、ハンドルを握っていた右手関節に衝撃が伝わったと考えられることから、右手関節TFCC損傷の受傷は認定しました。

                       ⇓

 しかし、12級6号右手関節機能障害については、労災の時の数値と、主治医が計測した時の数値が異なり、主治医が計測した時の数値は患側の右が健側の左の4文の3以下に制限されていないことから、関節機能障害は否定しました

                      ⇓

 さらに、右手関節に関する神経症状について、これを裏付ける神経学的所見や画像所見はないことから、原告の後遺障害が医学的に証明されているとはいえないことから、局部に神経症状を残すものとして、14級9号の後遺障害に留まる旨判断しました。

 ⇒これって、関節機能障害は否定はわかるんですが、右手関節TFCC損傷を認定した理由からすれば医学的証明ありとして、12級13号は認定されてもおかしくはないんじゃないかなと思います。

  控訴されていますので、控訴審判決の判断が待たれますね。

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(剣山のツツジ)

 

2023年6月12日 (月)

【CRPS】33歳女子主張の5級CRPSの発症は、労災・自賠責基準の骨の癒合が認められないだけでなく、関節拘縮も認められず、皮膚の変化についても疑問が残る等から発症を否認し、14級9号右上肢痛等を認定した事案

 自保ジャーナルNo2134号で掲載された金沢地裁令和2年11月12日判決です。

 原告自動車を運転して右折待機中、被告自動車に追突され、頸椎捻挫、腰椎捻挫、右肘捻挫等の傷害を負い、CRPSⅠ型を発症して、5級右後頸部痛及び右上肢痛等を残したとする33歳女子原告の事案でのCRPSの診断基準と後遺障害該当性につき、

 明確な神経損傷を伴うカウザルギーと同程度の後遺障害に当たると判断するには、一定の不可逆性が客観的に確認ができることが求められるというべきであり、その意味では、労災・自賠責基準において、①関節拘縮、②骨の萎縮、③皮膚の変化(皮膚温の変化、皮膚の萎縮)というCRPSの慢性期の症状が明確に認められていることを求めることには、相応の合理性があるといえる」が、

 他方で、「骨の萎縮は必ずしもCRPSの主徴として挙げられていないこと、かかる要件設定の背景には迅速かつ定型的な処理の要請もあると考えられることに加え、CRPSの症状の多様性も考慮すれば、上記①ないし③の要件を絶対視することも相当でない」ことから、

 「カウザルギーと同程度の後遺障害という意味において、CRPSに当たる後遺障害が残存したかどうかを判断する上では、これまでの診療経過及び診断の状況を踏まえつつ、上記①ないし③の慢性期の症状が認められるかどうか、その余の症状の内容及び程度、それらの症状の可逆性や客観性を総合的に検討し、上記のような後遺障害が残存したといえるかを検討するのが相当である」と認定しました。

                             ⇓

 CRPSの発症につき、労災・自賠責基準においての「①ないし③の症状のうち、原告が判断指標として問題視する②の骨の癒合が認められないだけではなく、①の関節拘縮も認められず、③の皮膚の変化についても、皮膚温の変化が不可逆的、慢性的な症状であるかは疑問が残る上、F医師やG医師がCRPSの診断根拠とした症状も、一連の診療経過を通じてみると、後遺障害としてCRPSが後遺障害として残存したと認めることはできない」として、CRPSの発症を否認しました。

                             ⇓

 後遺障害認定につき、「原告の症状が本件事故後に一旦寛解しつるあるところまで軽減したことや右上肢の症状が遅れて生じ、徐々に増悪したことはあるものの、受傷後、期間が経過してから発症し、又は症状が悪化し、受傷部位とは異なる部位にも症状を呈するというCRPSの病態に照らすと、上記原告の症状の経過も、なお医学的に説明することができる」上、「原告の症状が、本件事故以外の原因により生じたことをうかがあわせる事情も見当たらないことに照らせば、原告が継続的に訴えている右後頸部及び右上肢の疼痛等については、カウザルギー類似の後遺障害とは認められないまでも、神経症状を残すものとして後遺障害を認めるのが相当であるが、不可逆性や客観性の高い他覚的所見により裏付けられて胃いないこと、脊髄刺激療法の電気刺激により相当に緩和しうるものであることにも鑑み、その後遺障害の程度は、局部に神経症状を残すものとして、14級9号に相当する程度のものとして認める」と判断しました。 

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(高知・伊野町・出合橋付近の🐵)

                       

                

 

2023年5月14日 (日)

【物損】 ノン・オペレーション・チャージ

 レンタカーを借りる際に、レンタカーにて交通事故が発生して修理が必要になった場合に、修理期間中の休業補償として、5万円とか、10万円とかを負担させられるということがあります。ノン・オペレーション・チャージ(NOC)と呼ばれています。

 田舎弁護士の経験でも、司法修習生のころに、修習生の一人が物損事故を発生させて、NOC5万円を修習生の頭数で負担したことがあります😅

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                            (出合橋付近の🐵)

 自保ジャーナルNo2133の高松高裁令和4年6月16日付け判決は、まさに、NOCが損害として加害者に対して請求できるかが争われた事案です。

 第1審の松山地裁、そして、控訴審の高松高裁も、被害者からのNOCの請求を認めています。

 認められた金額は、NOCの10万円及び弁護士費用1万円です。

 高裁は、NOCの実質は、B会社の営業車であるレンタカーがその貸与中の事故により修理を要することになった場合に発生する、当該レンタカーの修理期間における休車損の一部であると解され、本件NOC制度は、顧客が、事故の相手方当事者に代わって、B会社に対して当該休車損の一部を負担すべきものとする制度であることから、Xに発生したNOC支払債務相当額の損害は、いわゆる反射損害に当たるものと解されるが、そのような損害であっても、Xは、上記損害が本件事故と相当因果関係が認められる限り、Yに対して、損害賠償請求することができるとした上で、NOCは大手6ブランドにおいても採用されており特異な制度ではないこと、B会社は本件示談により同示談に係る賠償金以外の請求権を放棄しておりYが休車損相当の損害を二重払いする危険はないことから、本件事故により通常生ずべき損害として、相当因果関係を認めています。

 ただ、これって、加害者側損保が支払ってあげてもいいような気がしますね😄

 

2023年5月 8日 (月)

【素因減額】 本件事故以前に2回の事故で各14級9号の頸部痛の認定を受ける69歳男子主張の自賠責非該当の頸部痛等を14級9号認定し、2割の素因減額を適用した事案

 自保ジャーナルNo2132号で紹介された神戸地裁令和4年5月19日判決です。

 平成30年4月に交通事故にあった方ですが、16年半前と8年前の事故で頸部受傷で自賠責14級9号の後遺障害認定を受けていたという事案です。

 14級9号でしたら、逸失利益の労働能力喪失期間はせいぜい5年程度なので、16年判と8年前の事故でしたら、影響がないものとして、後遺障害認定を受けてもよいかと思いますが、自賠責上は既存障害とされており、自賠責非該当になったようです。

 裁判の結果は、医学的な説明が可能な神経症状ということで、14級9号が認定されています。

 但し、長期の治療となったこと、高頻度の通院をしていること、前回事故の症状固定時にも一定の変性が頸椎椎間板にみられたことから、2割の素因減額がされています。

 20230423_142559 16年判前と8年前の事故ですが、う~ん 2割減額ですか。。。😖

2023年4月28日 (金)

【自賠責等級よりも下がった裁判例】 自賠責12級 ⇒ 裁判14級

 自保ジャーナルNo2132号で紹介された東京地裁令和4年6月28日判決です。

 後遺障害については、自賠責12級7号右足関節機能障害、同14級9号右膝痛の併合12級の後遺障害が認められた事案でしたが、裁判の結果、12級に相当する足関節の機能障害は否認され、右足骨折部及び右下肢でグロービング損傷の痛みが各14級が認定され、結局、併合14級まで、等級がダウンしてしまいました。

 カルテに、「5キロメートルを27分で走りきった」ということが書かれてしまったことが敗因のようです😖

 12級と14級では、補償が倍くらい違うような印象を抱いておりますので、裁判して、返り討ちにあったようなケースです。

 自賠責等級で12級が認定されていれば、まあ、たいていの場合には、それを下回ることはないと考えるのが普通なので、討ってでてしまったのでしょう。

 カルテには、「5~6キロメートル程度は走れる。」、「フルマラソンリレーに出る」、「リレーは5キロメートルを27分で走りきった」と書かれていたようです。

 これを読んだ被害者側代理人は、おそらく、真っ青になったのではないかと思います。

 もしかして、14級すらも認められないような程度の記載です😖 

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                            (宇和島・木屋旅館)

2023年4月24日 (月)

【書籍】 最近、購入した交通事故の書籍あれこれ😅

 最近は、書籍は積ん読状態が多いです😖 

 ただ、コロナ禍が下火になり、徐々に遠方に電車で出かけることが増える兆しがあり、車内などを活用して、目を通す時間ができるようになりつつあります。

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                              (千疋の桜)

 昨年10月に出版された、自動車保険実務の重要判例(第2版)です。損害保険料率算出機構の丸山さんが書かれたもので、実務的な内容となっております。

 初版及び第2版のはしがきでは、日本大学教授でした伊藤文夫先生が紹介されていました。田舎弁護士も10数年前に日本賠償科学会に入会して思い切って同会の懇親会に出席させていただいた際に、伊藤先生から、見られぬ顔ということで言葉をかけていただいたことがあり、それ以降、賠償科学会の懇親会等では楽しくそして貴重なお話をいただきました。伊藤先生とは、日本交通法学会が大阪で開催されたことがあったかと思うのですが、その時にお会いしてお話をさせていただいたのが最後です。2021年3月にご逝去されたというお話をうかがい、驚きました。先生のご冥福をお祈り申し上げます。

 次は、昨年11月に出版された、新日本法規の、判例にみる自転車事故の責任と過失割合です。

 自転車事故は、田舎弁護士が取り扱う範囲では、やはり小学生から高校生の方が当事者であることが大半です。怪我の程度も大きいことも少なくなく、また、過失割合を巡っても激しく対立することが多いように思います。

 最後は、今年の2月に出版された、新日本法規の、自動二輪車交通事故訴訟の実務です。

 バイク事故は、若い方から高齢者までいろいろですね。自転車の場合と同じく、怪我の程度も大きく、過失割合を巡って激しく対立することが少なくないように田舎弁護士は感じます。

 弁護士も、多方面において、いろいろと勉強をしないといけないので、大変です😅

 

 

 

 

2023年4月23日 (日)

【書籍】 新版 注解交通損害賠償算定基準 

 ぎょうせいから、昨年12月に、新版注解交通事故損害賠償算定基準が出版されていましたので、購入しました。

 いわゆる赤い本、青本の解説版というものです。

 とりわけ、赤い本は、簡単な方向と、裁判例を羅列しているものであるため、解説版がなければ、その意味を理解するのがしづらいというところがあります。

 本書は、赤い本や青本を理解するための必携の書というべきものです

 編著は、交通事故事案の我が国の泰斗である高野真人先生です。 

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(来島海峡大橋)
 交通事故のご相談を受けましたら、基本忘るべからずということで、赤い本とともに、参考にしております。

 

2023年4月21日 (金)

【物損】 事故車両の買い換えを選択した場合に、買い換え車両が届くまでの代車代の代車期間はどこまで認められるの?

 第一法規から、2021年に出版された裁判官が説く民事裁判実務の重要論点 交通事故損害賠償編を購入しました。編集は、加藤新太郎先生(元裁判官)と谷口園恵裁判官です。

 事故車両の買い換えを選択した場合に、買い換え車両が届くまでの代車代の代車期間はどこまで認められるのかという論点があります。

 本書P188は、買い換えに必要な期間ということになり、裁判実務上、買い換えの場合は、買い換えの必要が判明してから概ね1ヶ月程度であると説明されています。

 平成15年版の赤い本講演録においては、代車使用に認められる相当期間について論じており、長期間に及ぶ場合には、その期間を制限している裁判例が目に付きました。

 この論点は、相手方損保の対応に問題があり買い換えのための時間がかかった場合や、特殊車両の場合に問題になります。特殊車両の休車損害については、令和5年版の赤い本講演録に収録されています。

 ところが、今ですが、半導体不足のために、新車の納車が遅れています。車種によっては、1年ということもあるようです。なかなか1ヶ月程度では、新車が届かないような情勢です。

 交通事故事案で、全損で買い換えを選択した場合、代車の代車期間については、本当に1ヶ月でいいのか、議論があってしかるべきだと思いますが、新しい問題であることから裁判例も田舎弁護士が調べる限りでは見つかりません。

 ただ、おそらくは、私見として、特殊車両の場合と同じような議論になるのではないかと考えられ、1ヶ月よりは長めで認めてくれるかとは思いますが、例えば、半年後に車が届いたとしても、半年分というのは難しいかもしれません。

  代車代は、仮定的代車は裁判例では認められていないので、被害者の方が実際に代車を利用されることが前提になります😖

 20230416_135510_20230419215201  損保会社にも結構クレームがきているのではないかと想像するのですが、どのような対応をされているのでしょうかね。

2023年4月20日 (木)

【書籍】 2023年 民事交通事故訴訟 損害賠償額算定基準 下巻(講演録編)

 民事交通事故訴訟損害賠償額算定基準は、いわゆる赤い本と呼ばれており、弁護士必携の書でもあります。

 2023年度の講演は、4テーマありますが、1番目が、①いわゆる人傷一括払における代位に関する協定の効力です。最高裁令和4年3月25日判決は不当利得容認説に立ちましたが、実務上ではまだまだ整理しきれていないような感じです。

 2番目が、②高次脳機能障害の等級認定です。時折ご相談にこられる案件ですので、よく勉強しておく必要があります。

 3番目が、③受傷の有無が争点となる事案です。ドアミラー同士の接触事故や非接触事故がよく採り上げられています。

 4番目が、特殊車両の休車損害なおです。特殊車両は、修理に非常に時間がかかることが多くて、休車期間が問題となります。

 これらについては、日本の交通事故訴訟事案をひっぱっている東京地裁民事27部の裁判官の講演録になりますので、交通事故を取り扱う弁護士であれば一通りめを通しておく必要があります。

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2023年4月19日 (水)

【ご相談】 自賠責保険の傷害補償限度額120万円を超えた補償をしない、加害者側損保!?

 自賠責保険金の傷害補償限度額は、120万円と定まっています。

 120万円を超えた部分をお支払いしない任意保険会社は、たまにみかけます。

 大抵は、「弊社の基準」では、100万円、「自賠責の基準」では、120万円 以上から、既払い金が60万円なので、後、60万円をお支払いしましょうというもので、しばしば経験します。

 「これじゃ、任意保険会社って意味がないじゃないか~」と思われる方もおられます。

 確かに、そのとおりです。

 ただ、ケースによっては、自賠責の基準で解決した方がよい場合もあります。

 例えば、先ほどのケースで、「裁判所基準」だと、200万円になるとします。しかしながら、相談者の過失が60%でしたら、裁判所基準でも、加害者に対して請求できるのは、200万円×40%の80万円となります。既払い金が60万円でしたら、追加払いは、わずか20万円となります。

 自賠責保険ですと、相談者の過失が60%でも、重過失減額がなく、過失がないものとして計算してもらえます。

 一般的には、このようなアドバイスをさせていただくことが多いです。

 ところで、買い取りラボの2021年1月21日の記事で興味深い記事が掲載されていましたので、ご紹介いたします。

 「自賠責保険の被害者がケガをした時の補償において、治療や通院、義肢などにかかる費用は、ほとんど実費もしくは額が決まっていることにより、かかった分だけ支払ってもらえるでしょう。

 自賠責保険の支払限度額120万円を治療費が超えたとしても、その分の実費は任意保険が負担することになるからです。

 ただし、慰謝料に関しては同じケガであっても、人によって身体的精神的な苦痛の感じ方はそれぞれ違いがあります。少しの痛みでもかなりの苦痛に感じる人もいれば、ほとんど気にならないという人もいるからです。

 また、ケガにより身体の自由が制限された場合、日常生活でも不自由さを感じるでしょう。この不自由さの感じ方も個人の感覚や生活環境によって違いが生じると考えられているからです。

 慰謝料に関しては、自賠責保険の120万円を超えた部分は、任意の保険会社に請求したとしても、場合によっては支払ってもらえない可能性があると言われています。

 例えば、通院期間が長い割には実際に通院した日数が少ない場合などが挙げられます。症状がないのに通院期間を引き延ばしている、慰謝料をより多くもらおうとしていると疑われてしまうからです。

 ただし、このような場合でも、相談者に過失がなく(あっても軽微)、また、慰謝料の金額が裁判所基準以下であれば、弁護士が被害者の代理人として対応すれば、120万円を超過した部分についても支払いを受けることは可能です。

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 相手損保の計算書に疑問を感じましたら、近くの弁護士にご相談しましょう😅

 

2023年4月15日 (土)

【将来介護費】 母親67歳以降は職業介護により日額1万5000円で平均余命まで認定した事案

 自保ジャーナルNo2131号で掲載された大阪地裁令和4年7月26日判決です。片側一車線道路を原告母運転の乗用車の後部座席に同乗中の10歳女子原告が、対抗車線から進入してきた被告乗用車に正面衝突され、頸髄損傷、第2腰椎破裂骨折、腰椎脱臼骨折等の傷害を負い、自賠責1級1号両下肢麻痺及び神経因性膀胱直腸障害等を残す事案でした。

 加害者は、カーブを曲がる際に、アクセルとブレーキを間違えて時速80㎞に加速して反対車線に飛び出したという一方的な案件です。

 10歳の症状が両下肢完全麻痺の状態になり、また、排尿や排便が自分でできないという状態が一生涯続きます。

 ところが、加害者側は、なんと、車椅子の住環境が整えられていたら、介護・介助の必要性はほとんどなく、将来介護の必要性はない等と主張しているのです。

 裁判所は、「被告の上記主張は、歩行ができないのであれば車椅子と車椅子用の住環境さえ与えてれば十分であるというものとも受け取れるもので、原告花子の日常生活上の種々の支障やこれに伴う精神的苦痛、その我が子を見守ることになった原告一郎や原告春子の無念さや苦しみ、介護に伴う実際の負担などに対して思いをいたさず、原告らの心情に著しく配慮を欠いているというべきである。」として、加害者側の訴訟対応を厳しく非難しております。

 将来介護については、原告母が67歳に達するまでの26年間につき日額8000円で認め、以降は将来介護により原告の平均余命までの49年間につき日額1万5000円で認定しました。

 裁判所はほぼ原告の主張の金額を認め、2億円を超える賠償義務を加害者に負わせています。 

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 損保担当者やその提携弁護士の一部には、残念ながら、この裁判例の弁護士のように、交通事故で重篤な怪我をおった被害者側の心情に著しい配慮を欠く対応をされる方がいます。
 物損のみにとどまる場合はともかく、受傷して入通院が必要な案件については、不安を感じている被害者の心情に配慮した対応を強く求めたいと思います。

 

2023年4月 9日 (日)

【書籍】 賠償科学 No48

 日本賠償科学会から、賠償科学No48が送付されてきました。

 第70回、第71回、第72回研究会・シンポジウムが収録されています。

 第70回研究会・シンポジウムは、産業保健をめぐる賠償科学の諸問題~産業保健のトピックとストレスチェックの義務化をめぐって です。

 第71回研究会・シンポジウムは、高齢者の医療・介護と損害賠償責任 です

 第72回研究会・シンポジウムは、世界から学ぶ 自覚症状をいかに客観的に評価するか 痛み・後遺障害を客観視する です。

 田舎弁護士も、日本賠償科学会の会員ですが、ここ数年はコロナ禍のために参加しておりません。

 ただ、現在、会社や団体の役員としての業務が多忙になっており、しばらくは、上京もできそうにはありません

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2023年3月14日 (火)

【TFCC損傷】 36歳女子X主張の12級右TFCC損傷はXが一貫して訴え続けている右手関節の疼痛が、外傷性TFCC損傷の臨床症状に整合する等から自賠責同様14級9号認定し、加齢変性により1割の素因減額を適用した 横浜地裁令和4年4月13日判決

 自保ジャーナルNo2129号で紹介された横浜地裁令和4年4月13日判決です。

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                              (いろは丸)

 青信号交差点を乗用車で直進中の36歳女子原告Xが、左方路から赤信号で進入してきた被告乗用車に出合い頭衝突され、頸椎捻挫、右肘挫傷、右TFCC損傷を負い、自賠責14級9号の右手関節痛認定も、

 14級9号頸部痛等の他、右TFCC損傷から12級13号右手関節痛の併合12級後遺障害を残したとする事案です。

 加害者側代理人には、主に損保側で活躍されている交通賠償を専門とする有名な弁護士が就任されています。

 う~ん。ここまで難しいような事案だったんかいね。。。

 脱線しました。裁判所は、概ね以下のとおり述べています。

 Xは、B整形外科において、平成28年12月27日頃(本件事故の約1週間後)には右手関節の痛みを訴え、それ以降、右手関節の痛みが改善せず、1番気になる旨述べていた。また、精査のために受診したC病院及びD大学病院においても、右手関節の疼痛を一貫して訴え続けていたものであり、これは外傷性TFCC損傷の臨床症状に概ね整合する他、

 徒手検査の結果、遠位橈尺関節の圧痛や著名な不安定性が認められ、尺骨手根ストレステストは陽性であり、これもTFCC損傷の臨床症状と概ね整合する等から、

 XのTFCC損傷は、本件事故に起因して発症したものと認めるのが相当である。

 そして、Xの右手関節には、これを原因とする疼痛が続いているから、後遺障害が残存したものと認められるが、その程度は、Xの症状・治療の経過、残存する症状の内容・程度、これを裏付ける他覚的所見に乏しいこと、一部の業務に制限があるものの、従前の仕事(保育士)を現在まで継続していること等の事情に照らして、後遺障害等級14級9号の限度と認めるのが相当であると判断しました。

 自賠責保険での認定と同じなんですね。

 初回の被害者請求では後遺障害非該当⇒異議申立てをしても非該当⇒自賠責保険・共済紛争処理機構でも非該当⇒再異議で、14級9号という、かなり手間をかけた後遺障害申請がされています。

 もっとも、紛争処理機構の後に、再異議を申し立ててて、後遺障害を獲得しておりますが、紛争処理機構の結論が出た後に、再異議ってできたのはなぜでしょう。しかも、再異議は、提訴後にされています。。。謎です。

2023年3月 2日 (木)

【むち打ち損傷】 信号待ち停車中に被告貨物車に追突された約3年8ヶ月前に同様患部を受傷し自賠責併合14級後遺障害認定を受ける56歳男子主張の14級9号頸部痛等を認め、前回事故の影響から3割の素因減額を適用した事例

 自保ジャーナルNo2128号で掲載された千葉地裁令和4年4月13日判決です。

 約3年8ヶ月前の追突事故で自賠責併合14級後遺障害認定を受ける56歳男子原告が、乗用車を運転して信号待ち停止中、被告貨物車に追突され、腰椎捻挫、頸椎捻挫等の傷害を負い、自賠責非該当も、手足のしびれ、頸部・背部・腰部疼痛・頭痛から14級9号後遺障害を残したとする事案につき、

 原告は、前回事故より本件事故と同様の患部を受傷し、同様の症状を発症して後遺障害が認定され、自賠責保険の後遺障害認定手続においては、これを理由に後遺障害の認定がされていないが、

 本件事故は、前回事故から約3年8ヶ月を経過しており、本件事故前の通院頻度はかなり少なかったこと、

 一般に、後遺障害等級14級9号の神経症状についての労働能力喪失期間が3年から5年程度とされていることなどを総合すると、

 本件事故前には、前回事故による後遺障害はかなり軽減していたことが認められ、本件事故により症状が再発又は悪化したものと認めるのが相当であるとして、14級9号後遺障害を認定しました。

 素因減額については、原告は、前回事故において、頸部及び腰部について後遺障害の認定を受けていることに照らすと、前回事故による疾患が、本件事故による治療期間を通常より長期化させ、後遺障害の発症又はその悪化に影響を及ぼしたものと認められ、当事者の衡平の観点から素因減額をするのが相当であるとして、3割の素因減額を適用しました。 

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(弓削港)
 被害者側代理人の方が頑張りましたね 🤗

2023年3月 1日 (水)

【逸失利益】 50歳無職女子無職の逸失利益を否定した裁判例

 自保ジャーナルNo2128号で掲載された名古屋地裁令和4年4月25日判決です。 

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(弓削神社)
 自賠責10級11号左股関節機能障害を残す50歳女子無職は、本件事故までの16年間は就労しておらず、単身生活であり家事労働を行っていたとは評価しがたい等から、就労の蓋然性は認められないとして、後遺障害逸失利益の発生が否認されてしまいました。
 本件事故前に原告が就労していたのは、高校卒業後の昭和62年4月頃から元夫と婚姻した平成3年1月までの4年間と、同夫との離婚後の平成10年頃から平成15年頃までの約5年間である事などから原告は高校卒業後本件事故までの約30年間のうち、就労していたのはその3分の1にも満たない期間であること、平成15年頃以降本件事故までの約16年間は就労しておらず生活保護を受給していたとして、原告が将来的に就労し収入を得る蓋然性は乏しいと判断されています。
 まあ、仕方がないと思います💧

2023年2月27日 (月)

【物損】 リースと評価損 ( ;∀;)

 交通事故民事裁判例集第55巻1号で掲載された名古屋地裁令和4年2月25日判決です。 

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(弓削)
 原告は、損傷修復歴によりリース期間満了時の車両残価が減額評価され、その額が評価損と主張したという事案です。
 なるほど。
 しかし、裁判所は、認めていただけませんでした。
 仮に原告主張に係る事実があったとしても、本件口頭弁論終結時に損傷車両のリース期間が残存しており、リース期間満了時の評価額を本件口頭弁論終結時に正確に算定することは困難であるから、リース期間満了時の残存価格との差額を負担することによる損害は、本件口頭弁論終結時にいまだ現実化していないとして、原告の主張を認めませんでした。
 リース車両のこの種の損害は、裁判所に認めていただくのは相当に難しいところがありそうです💦

2023年2月26日 (日)

【腱板断裂】 自賠責非該当  → 裁判 12級13号

 交通事故民事裁判例集第55巻1号で掲載された名古屋地裁令和4年1月31日判決です。

 自賠責非該当から、なんと、12級13号が認定されたという事案です。すばらしい(●^o^●) 

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(弓削)
 追突事故の被害者(男・症状固定時37歳・携帯ショップ勤務及び語学学校講師)の後遺障害の程度につき、
 事故態様から事故の強い衝撃で右肩の痛みを訴えていること
 事故から間近い時期のMRI検査により右肩腱板の異常信号が確認され、事故の約1年半後のMRI検査により肩峰下滑液包の炎症が確認されたことから、
 右肩痛の症状は、事故により生じた右肩腱板断裂に起因する医学的に証明し得る神経症状として、自賠責保険の事前認定において後遺障害非該当とされた右肩疼痛について、12級13号を認めました。
 田舎弁護士も、過去、同じような経験をしたことがあります。的確な時期に的確な部位に撮影されたMRI画像は重要だと思います。

2023年2月25日 (土)

【解決実績】 新しい「感謝の声」をいただきました。

新しい「感謝の声」をいただきました。ありがとうございました。

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(岩子島)

依頼交通事故 2023年2月に解決


当初は地元の弁護士さんを保険会社の方にお願いして紹介して頂いていましたが、あまり相手にされていないという雰囲気で全く親身に相談にのってもらえず悔しいやら、情けないやらの上に体は痛むは家事は思うようにできないし、痛む体を引きずりながら出勤し、帰宅するともう動けない日々が続いていました。そのようなときに、しまなみ法律事務所を保険会社の方に紹介していただき訪問しました。
実際、藁にもすがりたい状態でした。寄井先生には随分と親切に相談にのって頂き本当にありがたく感謝する思いでいっぱいです。
何回か訪問し打合せをさせていただきました。落ち込んで「もういいや」と思う気持ちも一度や二度ではありませんでしたが、親身に相談にのって下さり随分と精神的にも支えていただきました。事故発生時に人身事故にしておけばよかった、物損事故になんでしてしまったんだろう、と悔やむ気持ちが何度も起こりましたが先生に励まされたり支えられたりして解決まで本当に親身に導いていただきました。
解決までの進捗状態もつぶさに連絡いただきました。本当に不安にさいなまされることなくサポートしてくださりありがとうございました。

 

相談した出来事
かなり大きな交通事故で私の買ったばかりの新車の車両が一瞬で廃車になってしまい私も事故の際受けた後遺症で体が痛んだり思うように動かせない状態が長く続きました。医者も不誠実で痛みを訴えているにもかかわらず「これ以上はよくならないから」と治療を打ち切られました。あまりにも痛みがひどく自費で鍼灸院に通ったり、別の病院にて鎮痛治療を受けたりしていましたが痛みが引くこともなく、日常の生活にも痛みがひどい日には料理もできない、掃除もできない状態が長びきました。相手方からも、お詫びの言葉一つなく事故調書を見たいと思って警察を訪問したりもしましたが調書を見せてくれることもなく割り切れませんでした。


解決方法
交渉・示談
後遺障害等級認定

2023年2月24日 (金)

【自賠責等級よりも下がった事例】 自賠責5級2号 → 裁判 7級 しかも、素因減額60%

 交通事故民事裁判例集第55巻1号で紹介された神戸地裁令和4年1月27日判決です。

 頸部痛、両上肢しびれ、巧緻障害、振戦等の症状につき、5級2号該当との事前認定を受けた原告(女・症状固定時46歳・主婦(有職))に関し、

① 受傷内容につき、事故直後には明らかな髄内輝度変化が生じていなかったにもかかわらず、6ヶ月後に輝度変化が認められることから、原告の症状が事故の外傷によって生じた頚髄損傷やヘルニアによるものではなく、その間に変形疾患である頚髄症が悪化したものとして、事故による受傷は頸椎・腰椎捻挫に過ぎないとし、

② 後遺障害の残存及び程度につき、原告が主張する症状は、主として既往症である頚椎症性脊髄症やヘルニアに起因するものの、元々劣化が見られていた状態に外力が加わって既往症が悪化したことも否定できないとして、事故との相当因果関係を認めたうえで、事故後も事故前年の約42%の収入を確保していることから、軽易な労務程度であれば就労可能な状態であるとして後遺障害の程度を7球と認め、

③ 素因減額につき、事故の外力が既往症に与えた影響は否定しがたいものの、原告が訴える症状の多くが既往症によるものであり、事故直後に髄内輝度変化が見られず、重篤な症状が生じていなかったことから、60%の減額を認めました。

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(弓削)
 被害者にとっては残念ですが、しかたがないような内容です。 

2023年2月23日 (木)

【物損】 リース損害金は、× 😡

 交通事故民事裁判例集第55巻1号で掲載された東京地裁令和4年1月25日判決です。

 リース会社からリース契約に基づき原告にリースされていた原告車が事故により著しく損傷したため、原告が、リース契約の中途解約によりリース損害金(中途解約清算金)の負担を余儀なくされ、同金額相当の損害(約312万円)を被ったとして、被告に対し本件リース損害金から本件車両保険金を控除した金額の賠償を求めたという事案です。

 気持ちわかりますね。

 しかしながら、裁判所は、認めてくれませんでした💧

 リース契約が中途解約されたことによるリース損害金は、リース車両のユーザーとリース会社との契約に基づいて発生した債務であり、その内容は、車両修理費等の「車両の価値」のみならず、手数料等の交通事故と直接関係のないいわば「金融の価値」にあたるものを含むものであるから、リース車両のユーザーがこのような債務の支払義務をおったことと、交通事故との間には相当因果関係が認められず、また、リース損害金の算定にあたっては事故後の原告車の査定額が大きく影響しているところ、この査定額は被告の関与しないところで算定されていることからも、リース損害金そのものについて事故との相当因果関係を認めるのは不相当であると判断しました。

 但し、評価損として、修理代(約231万円)の30%を認めてくれています。。。

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2023年2月21日 (火)

【むち打ち損傷】 停車中に追突された自賠責非該当の男子原告の右頸部付近には、それなりの衝撃が加わり、症状の一貫性が認められる等から右頸部痛み及び右指痺れ等14級9号後遺障害の残存を認定した

 自保ジャーナルNo2127号で紹介された令和4年3月10日付け神戸地裁判決です。 

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(弓削)
 貨物車を運転して信号待ち停止中、被告乗用車に追突され、外傷性頸椎損傷、右肩挫傷、背部痛等の傷害を負い、自賠責非該当も、右頸部痛、右指痺れ及び背部痛の14級9号後遺障害を残したとする男子原告の事案につき、
 本件事故は追突事案であるものの、原告車の損傷状況、原告車が追突時には揺れて前に押し出されていること、原告車の前車の運転者が後ろの車両の異変に気がついていることから、追突時の音も大きなものであったと推認されることからすれば、
 原告の右頸部付近には、それなりの追突の衝撃が加わったと認め、
 原告については、症状の一貫性が認められ、これに、認定説示に係る本件事故の受傷態様や治療状況、症状経過等も総合して考慮すれば、原告が後遺障害であると主張する右頸部から右肩にかけての痛みや右指の痺れ等の症状は、将来においても回復困難と見込まれる神経症状と捉えるのが相当であるとして、14級9号を認定しました。
 
 自賠責非該当  ⇒  14級9号 が認定された事案でした。

2023年1月30日 (月)

【その他】 労災等級9号  → 裁判14級

 自保ジャーナル2126号で紹介された静岡地裁富士支部令和4年3月10日判決です。

 労災では、10級左肩関節機能障害及び同12級肋間神経痛の併合9級認定の後遺障害を残す男子原告の事案について、裁判所は、労災併合9級認定の後遺障害は否認し、14級左肩痛の残存を認定したものです。

 4000万円超える請求ですが、判決は100万円弱です💧 

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(玉川・龍岡木地)
 裁判所は、本件事故後のXP検査の結果、左肩鎖関節等に骨傷等の異常所見は認められない
 また、MRI検査の左肩鎖関節に血腫を表す高信号域の画像所見は外傷性のものであることは認められるが、Rockwood分類Ⅰ型の損傷にとどまり、左肩鎖靱帯の断裂ないし部分断裂の他覚的所見を裏付けるものとはいえないほか、胸部の痛みについて、Cクリニック医師が本件事故によるものと診断しておらず、後遺障害診断書にも XP:CT上、大きな問題なし、ヒビが入った程度はあったかもしれないが、外傷による肋骨の奇形なし と記載されており、その他原告の症状が本件事故による肋骨の奇形の変形・増大、外部的突出に起因することを裏付ける的確な証拠はないとして、本件事故による左肩鎖靱帯の断裂ないし部分断裂による左肩関節機能障害及び肋間神経痛の後遺障害の残存を認めることができないと、労災併合9級認定の後遺障害の残存を否認しました。
 自賠責保険に対しては、後遺障害認定を行っておりません。
 労災認定の後遺障害を獲得した場合において、自賠責保険にも後遺障害申請をしておくことが多いのではないかと思いますが、時折、交通事故事案においても労災認定の後遺障害を前提に請求されている事案を目にします。
 自賠責保険への請求を検討された結果断念したものか、それとも検討なしにそのまま提訴されたものなのかをうかがうことはできませんが、自賠責と労災の認定に食い違いが生じることはあるので、田舎弁護士の場合には、先行して労災に出して、その認定資料をつけて、自賠責保険に出しています💧

2023年1月29日 (日)

【その他】治療期間14年間を認めた裁判

 自保ジャーナル2126号で掲載された大阪地裁令和4年3月25日判決です。 

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(木漏れ日の橋)
 平成14年1月1日、B貨物車に同乗して走行中の34歳女子原告が、対向の被告乗用車がセンターオーバーしてきて衝突され、右大腿骨骨折、右下腿骨骨折、右外傷後関節症、前額・両頬・下顎部挫傷等の傷害を負い、約26年9か月通院し、自賠責13級9号右下肢短縮、同12級14号外貌醜状の認定を受けるも、
 7級12号外貌醜状から併合6級後遺障害を残したとする事案につき、
 平成26年春に実施することが計画された右下腿骨抜釘術がほぼ1年間遅れたのは、症状と無関係の事情によるものと認められること、
 形成外科の治療終了後に症状固定の診断との所見が示されていたところ、本件事故の約15年後、形成外科の治療が終了したのに、その約2年後の症状固定診断となってのは、原告が、治療と無関係の事情で、診断を遅らせたことによるものであると認められることから、
 治療相当期間は、本件事故から14年間と認められると治療相当期間を、14年と認定しました。
 約7500万円の請求ですが、請求棄却です。なお、相手損保は、8000万円を超える対人保険金を支払っております💧
 ものすごく難しそうな案件ですね。

2023年1月15日 (日)

【人身傷害補償特約】被害者を被保険者とする人身傷害条項のある自動車保険契約を締結していた保険会社が、被害者との間でいわゆる人傷一括払合意をし、前記条項の適用対象となる事故によって生じた損害について被害者に対して金員を支払った後に自動車損害賠償責任保険から損害賠償額の支払いを受けた場合において、被害者の加害者に対する損害賠償請求権の額から前記損害賠償額の支払金相当額を全額控除することはできないとされた事例 最高裁令和4年3月24日判決

 昨年のこのブログでも採り上げた最高裁判決が、判例時報2357号に掲載されていましたので、具体的な事案を紹介します。

 本件交通事故により上告人に生じた損害は、弁護士費用を除くと、341万1398円となります。

 上告人の過失は3割なので、弁護士費用を除く損害金の額は、238万7979円となります。過失に相当する損害の額は、102万3419円となります。

 上告人は、対人社から、23万8237円の支払いを受けています。

 上告人は、自賠社から、75万円の支払いを受けています。

 上告人は、人傷社から、合計111万0181円の支払いを得ています。この金額は、人傷社約款に基づく上告人の損害209万8418円から、23万円8237円と75万円を控除したと同額になります。

 人傷社は、自賠社から83万5110円を回収しています。

 これを前提にするならば、238万7979円から対人社からの23万8237円を控除した後の残金は、214万9742円となります。

 人傷社は、自賠社から83万5110円を回収していますが、原審は83万5110円の回収については214万9742円から控除されるべきという見解であるため、残金は131万4632円となります。そして、原審はなぜか自賠社から上告人が回収した75万円についても全額元本に充当しているため、弁護士費用以外の損害額は、最終的に、56万4632円となります。

 この高裁判決の問題点は、2つあります。本日のテーマである人傷社からの支払いにつき、自賠責保険に相当する部分(83万5110円)については、加害者に対する賠償請求権から全額を控除しなければならないのかという論点と、自賠責保険(75万円)の充当の方法という論点です。

 後者の論点は、最高裁平成16年12月20日判決によりまずは遅延損害金から充当するという見解が確立されていますので、高裁の判断とは思えないほどお粗末な判断となっております。

 前者の論点は、自賠責保険に相当する部分(83万5110円)を、加害者に対する賠償請求権から全額控除しなければならないのかという論点で、被害者側は、83万5110円は控除されるべきではない(不当利得容認説)とし、加害者側は、控除されるべきと主張して、見解が対立していました。

 但し、大半の下級審裁判例は、不当利得容認説に立っていました。

 今回の判例でこの論点での実務の対立は決着をみたと田舎弁護士は考えていましたが、この最高裁判決以降も、人傷社から自賠社から回収している場合には、示談交渉に応じない損保が一部存在しますので、注意が必要です。😡

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2023年1月13日 (金)

【むち打ち損傷】 自賠責非該当 → 裁判 14級9号  福岡地裁田川支部令和4年3月11日判決

 自保ジャーナルNo2125で掲載された福岡地裁田川支部令和4年3月11日判決です。

 外傷性頸部症候群、腰部捻挫といういわゆるむち打ち損傷事案ですが、自賠責は非該当だったようです。

 裁判では、後遺障害等級14級9号が見事認められています。

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 後遺障害認定の理由は、以下のとおりです。

 原告は、C病院退院後もD医院に頻回の通院をしており、入通院期間を通じて頸部の痛みを継続的に訴えている

 D医院において神経学的所見も得られている

 本件事故後の頸椎MRI検査の結果、原告のC6/7において椎間板の左の椎間孔の狭小化が軽度に認められており、これは本件事故とは関係のない加齢性の変化であるものの、かかる変性の存在によって、原告は神経の圧迫や傷害を受けやすい状態にあったものと認められる

 原告において固定した症状は頸部及び左肩部の痛みであるところ、頸部から左肩部にかけてはC6/7の支配領域であることが認められる他、

 原告車はリアライセンスプレート、リアバンパ及びバックドアパネルがへこむなどの損傷を受け、その修理費用は56万5600円であることが認められ、これらの事実からすると、原告は本件事故により相当程度の衝撃を受けたものと推認されること等から、

 原告は、本件事故前から椎間孔の狭小化によってC6/7の神経の圧迫や傷害を受けやすい状態にあり、そこに本件事故による相当程度の衝撃が加わったことで、当該神経の支配領域である頸部から左肩部にかけての痛みが生じ、それが残存したものと説明できるというべきであり、D医師も同趣旨の説明をしているものと解されるとして、原告の頸部及び左肩部の痛みは、局部に神経症状を残すものとして、後遺障害等級14級9号に該当すると認める

 田舎弁護士の、レガシィの後遺障害獲得のための秘訣そのとおりの裁判例です😅

 

2023年1月 4日 (水)

【共同不法行為】 第1事故・第2事故が先行する場合の、第3事故の訴因減額

 交通事故民事裁判例例集第54巻第6号で紹介された京都地裁令和3年12月10日判決です。

 先行事故による受傷についての素因減額が問題となりました。 

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(ゆるぎ岩)
 先行する2つの事故の約9か月後に生じた第3事故(渋滞気味のため停止した前方車両に続いて停止したA運転の普通乗用自動車に航続のC運転の普通乗用車が追突)による受傷(頸椎捻挫、腰椎捻挫)につき、
 車両の損傷状況等から事故による衝撃の程度は比較的軽度であったことや、
 治療経過から事故発生の約8か月後の時点で治療終了を認め、第3事故後の症状(頸部痛、上肢のしびれ)について、Aの既往症(糖尿病の影響である末梢神経障害及び先行する2つの事故による頸椎捻挫)による症状の程度、治療期間の長期化等への相当程度の影響を認め、損害の公平な観点から、35%の素因減額を認めました。
 不思議なことですが、このようなケースって、たまにみかけます。後遺障害の部位が異なっていればいいのですが、同一または類似する場合には、対応に苦慮する場合があります😅

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