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交通事故(書籍一般)

2021年9月13日 (月)

【むち打ち損傷】 停車中に追突された男子原告主張の12級13号もしくは14級9号頸部痛等は、ヘルニアとは認められず仮に圧迫が認められても、痛みを生じる可能性は低いと後遺障害の残存を否認した仙台地裁令和3年1月28日判決

 自保ジャーナルNo2093号で紹介された仙台地裁令和3年1月28日判決です。 

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 男子原告は、乗用車を運転して交差点で前車に続いて停車中、被告乗用車に衝突され、頸肩及び腰部挫傷の傷害を負い、自賠責非該当も、12級13号もしくは14級9号頸部痛等を残したと主張する事案につき、
 原告は、本件画像によれば、本件事故によって左C6/7椎間板ヘルニアが生じたため、当該ヘルニアにより神経が圧迫され、頑固な頸部痛、背部痛、腰痛、左頸から肩、左腕のしびれ、左手の痛みが生じたなどと主張するが、
 本件画像において左C6/7の左7頸神経根の一部分が黒くなっており、原告は当該部分を根拠にヘルニアを主張するものの、専門委員の意見および弁論の全趣旨によれば、左右の同一椎間孔内のほぼ同じ箇所に同様の黒い部分が認められることからすれば、上記部分は部分容積効果によって黒くみえるにすぎず、ヘルニアを裏付けるものとは認められない。
 仮に、画像上圧迫が認められたとしても、当該圧迫は軽度のものであり、ヘルニアということはできず、一般的には痛みが生ずる可能性は低いものと認められる。
 さらに、専門委員の意見及び弁論の全趣旨によれば、仮に左C6/7の左第7頸神経根にヘルニアを生じさせるような圧迫が認められたとしても、当該神経根の支配する上腕三頭筋、手根屈筋及び指伸筋の筋力低下、上腕三頭筋反射低下、中指の知覚異常のみが出現し得る症状であり、当該神経根の支配しない他の筋を含めた一律の筋力の低下を生じさせることはなく、原告が主張する症状は、画像所見と整合するものとはいえないとし、
 
 原告は、本件事故翌日にC整形外科クリニックに通院してから平成29年9月27日にB整形外科において症状固定の診断がされるまで、約9ヶ月以上もの間にそもそも左上肢及び左手の痛みを訴えていなかったのであるから、当該痛みは、治療経過自体にも整合するものといえず、原告の供述の信用性は低いとして、原告の主張にかかる後遺障害は、医学的な根拠を欠くものであり、これを認めることはできない
 9ヶ月以上、左手上肢及び左手の痛みを訴えている記録がないのですから、アウトです。
 ところで、MRIの部分容積効果ってなんでしょうかね。。。 ネットで検索しても技術的な感じで今ひとつよくわかりませんでした💦
 
 

2021年9月12日 (日)

【休業損害・逸失利益】12級7号右股関節機能障害を残す減収のない31歳女子公務員の逸失利益を、今後の職務内容や異動の範囲が制限される可能性等から事故前年年収を基礎収入に34年間10%の労働能力喪失で認定した事例 大阪地裁令和3年2月25日判決

 自保ジャーナルNo2093号で紹介された大阪地裁令和3年2月25日判決です。 

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 事故後減収のない原告の後遺障害逸失利益算定について、
 仮に原告に減収がなかったとしても、それは、業務内容等についての職場の配慮や原告本人の努力によるものであるというべきであるし、原告の職種(保健師)に照らし、今後の職務や異動の範囲が制限される可能性もあること等にも鑑みると、一定の逸失利益を認めるとし、
 原告は、本件事故による後遺障害のため、症状固定時から67歳に達するまでの34年間、10%の労働能力を喪失したと事故前年収を基礎収入に34年間10%の労働能力喪失率で認定しました。
 12級なので、労働能力喪失率は本来は14%ですが、それを10%にした上で、67歳まで、事故前年収で認定した事案です💦

2021年9月 5日 (日)

【腱板断裂】 歩道を歩行中に後続自転車に右腕を接触された46歳男子主張の右肩腱板断裂は、加齢性変性の可能性が高いと本件事故との因果関係を否認し、治療期間3ケ月と認定した事例 東京地裁令和3年1月22日判決

 自保ジャーナルNo2092号で紹介された東京地裁令和3年1月22日判決です。 



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(今治城)
 右肩腱板断裂と本件事故との因果関係につき、
 本件事故は、速度を落として走行する自転車の後部のかごが、歩行中の原告が振り上げた右の肘とぶっかったというもので、その時、被告車両が左に進路を変え、原告の右手を左に押し込んだ事実は認められないから、一時的に急激な外力が原告の右肩部に加えられたとは認められないとし、
 原告は、本件事故当時46歳の男性であり、腱板の変性が進みやすい1型糖尿病の既往症があったことからすると、原告の右肩腱板断裂は加齢性変性を原因とする可能性が高い。
 さらに、原告を本件事故の1年後から診察した医師が、それまでの治療経過を確認した上で、その時点での症状と本件事故との因果関係が不明であると判断したことも考慮すると、本件事故により原告の右肩腱板断裂が生じたと認めることはできないと判断しました。
 腱板断裂は、中高年の体を動かしている方に多い傾向にあります。腱板断裂をもって、他覚的所見云々ということを言われることがありますが、加齢性変性の可能性もあるために、主治医から事前に意見をいただいていた方が無難でしょう。

2021年9月 4日 (土)

【高次脳機能障害】32歳男子原告の高次脳機能障害を自賠責同様9級認知し減収が生じていないのは原告の努力によるものとして、事故前年年収を基礎収入に33年間35%の労働能力喪失で逸失利益を認めた 神戸地裁令和3年1月15日判決

 自保ジャーナルNo2092号で紹介された神戸地裁令和3年1月15日判決です。 

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(今治城)
 後遺障害第9級の形式的な労働能力喪失率は、35%ですので、原告側としてはそれを死守したといえます。なんと、約3018万円を請求し、判決は、約2956万円と、5%の遅延損害金を含めればパーフェクトな勝ちといえるでしょう。すばらしい💦
 判決要旨を紹介します
 減収の生じていない32歳男子バス運転手の原告の後遺障害逸失利益算定につき、
 原告は、勤務開始前に栄養ドリンクを服用して集中力を保つこと、
 休日に外出を控えて十分な休養をとり疲れをためないようにすること、
 勤務中にも停車時に軽くストレッチをすること、
 勤務の前日に運航経路の予習を行うこと等を励行しており、これによって、バスの運転手としての勤務に支障が生じないよう、努めていることから、減収が生じていないのは、原告の上記努力によるものというべきである。
 また、F医師が、原告について、将来的に、高次脳機能障害により、信号、道路状況等の安全確認を十分に果たせない、同時に複数の事項に注意を払うことができない、目的地を忘れるなどの事態が生ずる可能性がある旨の意見を述べており、雇用の継続、転職等に際して不利益な取り扱いを受けるおそれも否定できないことに照らすと、減収がないことをもって、後遺障害逸失利益を否定することはできないとして、事故前年年収を基礎収入に67歳までの33年間35%の労働能力喪失で認定しました。
 繰り返します。すばらしい💦

2021年9月 3日 (金)

【高次脳機能障害】17歳男子作業員の自賠責5級2号高次脳機能障害をトラブルを起こすことなく勤務を続けられていること等から、9級10号認定しセンサス男子同学歴全年齢平均を基礎に、50年間2020%の労働能力喪失で逸失利益を認めた事例

 自保ジャーナルNo2092号の原審福岡地裁令和2年7月3日判決、福岡高裁令和3年1月20日判決です。

 原審は、約2770万円の支払を認めましたが、高裁は、0円となっております。

 自賠責は、後遺障害5級認定。裁判所は、原審・控訴審いずれも、9級認定ですが、原審は労働能力喪失率35%、控訴審はなんと20%という事案です。ちなみに、5級の労働能力喪失率は、79%で原告もこれを前提に請求しております。

 裁判して、トホホとなった事案です。 

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 高次脳機能障害の程度につき、Xの人格変化(易怒性の悪化)が、父との関係では暴力の程度や頻度が相当程度高まっており、その他の家族に対しても易怒性の発現が続いていて、職場の上司であるGに対しても易怒性の発現があったことが認められる一方、現在の職場であるK会社では、精神安定剤の服用の効果があることや、その作業内容がG会社における作業よりも比較的単純であることもあって、トラブルを起こすことなく勤務を続けられていること、その他の者に対しても易怒性の発現は認められず、友人関係など、家族関係以外の私的生活には特段の問題が生じていないと認められることから、
 Xの高次脳機能障害は、後遺障害別等級表のうち、精神に障害が残った場合の最も低い等級である第9級10号「神経系統の機能又は精神に障害を残し、服することができる労務が相当な程度に制限されるもの」に該当する」と9級10号高次脳機能障害を認定し、本件事故によるXの損害としての後遺障害逸失利益及び後遺障害慰謝料の判断においては、上記後遺障害等級から機械的に結論を導くのではなく、Xの後遺障害の具体的内容及びこれによる影響の具体的な内容から判断する必要がある。
                              ↓
 Xは、本件事故による後遺障害により、人間関係の構築や維持が円滑に行えない蓋然性があると認められ、この点で一定の労働能力喪失があったと認められるものの、Xが現在父に示しているような暴力性を伴う易怒性を勤務先において発現させる蓋然性があるとは認められず、他にXに残存した後遺障害が就労自体を困難にする蓋然性があると認めるに足りる証拠もないことから、Xの後遺障害は後遺障害別等級表9級10号に該当すると認められるものの、労働能力喪失率が35%に達しているとは認められず、後遺障害によるXの労働能力喪失率を20%と認めるのが相当であると判断しました。
 高次脳機能障害は、症状固定後に改善されているケースもあり、自賠責の認定よりも等級が下がることがありますので、特に若い方の場合には注意が必要です。訴訟選択の結果、敗れるケースが散見されます。提訴前においては、解決手段の提示(示談交渉、紛セン、提訴など)、それぞれのメリット・デメリットを十分に説明しておく必要はあります。当職の場合、口頭では当然ですが、高次脳機能障害の場合には、ご本人(成年後見含む)の他、ご親族にも複数回説明を行い、書面による確認をとっております。弁護士事務所の中には、等級が高い事案の場合には、提訴しか考えないところもありますが、田舎弁護士の場合、損保弁護士をしていたころに、原告側が敗れ去った事案に何度も接したことがあるので、反面教師にしております💦 特に、示談提示よりも、訴訟の結果、金額が減少した事案は、きちんと説明しておかないと、大きなクレームに発展します。

2021年9月 2日 (木)

【物損】 修理代が42万円なのに、評価損が25万円が認められた、札幌地裁令和2年8月24日判決

 交通事故民事裁判例集第53巻第4号で紹介された札幌地裁令和2年8月24日判例です。 

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(笠松山とガメラ岩)
 被害車両はクラスター社のジープラングラーサハラという希少な車両であるところ、損傷がリヤフレームクロスメンバーという車体の骨格部分に及んでいること、
 修理費用として42万5559円を要したこと、
 一般財団法人日本自動車査定協会の事故損傷による減価額を24万1000円とする査定や、
 下取り価格の査定において車両の後部に修復歴があることを理由に40万3000円が差し引かれていることを考慮して、
 25万円の評価損を認めました。
 また、被害車両に評価損が発生した場合に、一般財団法人日本自動車査定協会の事故減価額証明書は評価損の発生及びその価額を認定するにあたって一定の参考となる資料であるとして、同証明書を取得するために要した査定料1万2390円を事故と相当因果関係のある損害と認めました。
 これは、希少車両のケースではありますが、被害者側弁護士にとっては、使えそうな裁判例です。💦

2021年9月 1日 (水)

【素因減額】 椎間板膨隆・神経の圧迫・変性という素因+8ヶ月前の交通事故という既往を理由に、20%減額 大阪地裁令和2年8月19日判決

 交通事故民事裁判例集第53巻第4号で紹介された大阪地裁令和2年8月19日判決です。 

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(笠松山登山道)
 
 事故により外傷性頸部捻挫、腰部打撲傷、頭部打撲傷の傷害を受けた被害者(男・35歳・職業不明)には、C5/6の椎間板膨隆・神経の圧迫、L1/2椎間板変性・膨隆という頚部及び腰部の神経症状に易発化・重篤化・難知化に寄与する素因のほか、本件事故の8か月前に遭った交通事故による傷害に起因し、2か月前に固定したばかりの、①頚部痛等、②腰痛、③左肋部痛等、④精神的不安定の後遺障害の既往症(①~③はそれぞれ14級9号該当、④は非該当)があり、被害者が本件事故後に訴えた症状はいずれも既往が増悪したもので、本件事故による他覚的所見がない場合に、素因及び既往が寄与した割合を20%と認めました。
 けっこうな素因及び既往ですが、割合的には20%の認定にとどまっています。但し、過失相殺も30%存することから、結果的には、請求棄却です💦
 

2021年8月31日 (火)

交通事故の物損案件のご相談について

 交通事故の物損案件のご相談の件が、今治簡易裁判所に提訴が予定される案件につきましては、ご相談は対応可能ですが、現在、訴訟事件としてのご依頼はお断りさせていただいております。

 

 今治簡易裁判所の開廷日は、毎週水曜日のみとなっており、毎週水曜日は、田舎弁護士が役員をしている団体の会議が入っていることから、今治簡易裁判所での事案を取り扱うことができません。

 

 そのため、交通事故の物損事案のご相談につきましては、今治簡易裁判所に提訴が予定される案件については、裁判の依頼を受けることはできませんので、それを前提でのご相談であれば、ご相談に応じますが、それを含んでということであれば、他の法律事務所にご相談していただけますようお願いいたします。

 

 もちろん、過失相殺に争いがなく、示談交渉、又は、紛セン手続により解決が見込まれる事案であれば、問題がありません💦

【施術費】 1回1万2000円   ⇒  6000円   神戸地裁令和2年7月16日判決

 交通事故民事裁判例集第53巻第4号で紹介された神戸地裁令和2年7月16日判決です。 

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(笠松山のタカサゴユリ)
 鍼灸院のはり、きゅう、マッサージでの1回1万2000円の施術費については、労災給付の基準等に照らして、1回6000円の限度で事故と相当因果関係を認めました。
 
 病院での治療費が約66万円、鍼灸院での施術費が約65万円と、ほぼ同じ金額になつています。施術費の料金は、相場の2倍の金額になっています。
 裁判所は、労災保険における鍼灸治療に関する料金算定基準は、1日1回限り3970円、傷害部位が2以上にわたり施術を行った場合には、1.2倍するというこのです。
 施術自体は、原告に有効ではあったものの、一般的な施術料に比して高額であるところ、その施術料に見合う特別な施術が行われているとは認められないことなどから、労災給付の基準に照らして、1万2000円の半額である6000円の限度で認めました。
 
 

2021年8月30日 (月)

【書籍】 交通事故医療法入門

 勁草書房から、令和3年7月に、交通事故医療法入門が出ました。 

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(姫路城)
 本書は、弁護士、司法書士、損保関係者、裁判官など、交通事故紛争処理を担う実務家のうち、比較的経験の浅い専門家を対象に、紛争処理の知識・技術と交通事故医療に関する知識・情報を提供する入門書を目指しているとのことです。
 
 全然、入門書には見えずに、田舎弁護士にはわかりやすかったです💦

2021年8月29日 (日)

【書籍】 実務家が陥りやすい交通事故事件の落とし穴

 新日本法規から、令和2年7月に出版された「実務家が陥りやすい交通事故事件の落とし穴」です。

 編集は、坂東総合法律事務所です。時折、地方の損保弁護士が対応できないような案件に加害者側の代理人として出てくることを見かける交通事故事案に詳しい有名な法律事務所です。 

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(赤穂城)
 3章で構成されています。①損害賠償責任、②損害査定、③交通事故と保険です。
 この「落とし穴」シリーズは、しっかりと読んでおく必要のある書籍です。
  ただ、アマゾンでの評価は高くないみたいですね。。。
 なお、写真は、数年前に、子どもを連れて遊びにいった赤穂城です。今から思うと、コロナはなく、普通に移動が楽しめた時代でした💦

2021年8月28日 (土)

【書籍】 柔道整復師をめぐる会計・税務のポイント

 新日本法規から、令和3年2月に出版されている「柔道整復師をめぐる会計・税務のポイント」です。 

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(姫路城)
 4章で構成されています。①はじめに、②所得税の確定申告、③その他の税務、④税務調査です。
 基本的には、他の事業者にも共通する部分が多いように思いますが、自賠責保険診療にかかる売上の計上時期、保険請求金額に間違いがあった場合、過去の過大施術報酬を返還する場合の損失計上の時期などは、柔道整復師に関連するものかなと思いました。
 柔道整復師のことを勉強しようとして購読しましたので、少し失敗です💦

2021年8月27日 (金)

【書籍】 Q&A ハンドブック交通事故診療 第6版

 創耕舎から、令和2年9月に出版されました「Q&A ハンドブック交通事故診療 第6版」です。 

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(東京都現代美術館)
 日本臨床整形外科学会が編者となっております。5章と資料編からなります。①自動車の保険、②治療費と診療単価、③医療機関の窓口における対応とトラブル、④後遺障害と後遺障害診断書の作成、⑤損害賠償の算定方法と交通事故の相談機関です。
 本書ですが、必ずしも患者さんの立場にそったものではなく、あくまで、整形外科医の立場で書かれているものです。
 例えば、怪我の治療に健康保険を使う場合のデメリットとして、医療機関は自賠責様式の診断書を記載する必要はないため、後遺障害が残存したときなどに、損害賠償の請求ができなくなることを挙げていることです。
 これは、患者さんの立場からいうと、困ります💦
 ただ、この書籍は、日本臨床整形外科学会が編集しているものですので、影響力は大きいと思いますので、健康保険を利用する場合には、自賠責保険への請求にも協力していただけそうなのかを確認する必要があろうかと思います。
 そして、この書籍は、交通事故を取り扱う弁護士にとつて不可欠です。

2021年8月26日 (木)

【書籍】 交通事故における素因減額問題 第2版

 保険毎日新聞社から、令和2年8月に出版された「交通事故における素因減額問題 第2版」です。 

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(自研センター・実験)
 まず、素因減額の意味です。交通事故など事故の被害者が事故前に素因(心因的要因、疾患など)を有しており、その素因が事故による損害の発生あるいは損害の拡大に影響した場合(これを素因競合という)に、因果関係や損害をどのように考えるべきか。これが民事損害賠償責任における素因減額(素因による減額)に関する問題とされています。
 
 3編で構成されています。①理論編、②実務編、③裁判例編です。
 素因減額は、損保弁護士のころには、しばしば多用していました。ただ、それ相応の裏付けのある主張でなければ、素因減額が認められることはなかったように思います。今は、被害者側の弁護士になっていますが、やはり相手方の損保弁護士からは、素因減額の主張はしばしばなされます。
 もっとも、被害者に何らの落ち度もないのに、被害者に過失があるかのように機能しますので、被害者の方には受け入れがたいところが少なくありません。
 本書は、数多くの裁判例を分析されており、参考になります💦

 

2021年8月25日 (水)

【書籍】 新示談交渉の技術

 企業開発センター交通問題研究室から、令和3年3月に出版された「新示談交渉の技術」です。

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(自研センター・資料)
 3編で構成されています。①示談交渉の基礎知識、②示談交渉の技術、③資料です。
 例えば、休業補償のところでは、「被害者側の発言」としては、「休業補償を払わないというのは、人権問題だ。飢え死にしろと言うのか」、「回答例」として、「交通事故による損害賠償補償としては、支払い義務がないと申し上げているのです。おっしゃっておられることとは、性質が違います。そういったことは、市役所や弁護士会で、ご相談下さい。当方の主張が間違っていると思われるのであれば、仮処分などの正当な方法で、あなたの主張を通すことができるはずです。」と記載されています。
 田舎弁護士も、昔、損保弁護士をしていたころは、治療や休業補償打ち切り通告で、これに近いようなことは何度も言われたことがあります。
 この書籍ですが、田舎弁護士が弁護士登録をしたころにもすでに第1版が出版されており、大いに参考になりました。当時は、大手損保3社の顧問ないし提携弁護士を引き受けて、電話をとるのが気が重たいという記憶が残っております。
 その時にお世話になった書籍がこの本です。

2021年8月24日 (火)

【書籍】新賠償責任保険の解説 第2版

 保険毎日新聞社から、令和2年4月に、新賠償責任保険の解説 第2版が出版されました。 

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(自研センター・実験)
 
 4章で構成されています。①賠償責任保険の歴史と概要、②賠償責任保険普通保険約款の解説、③事業者向け各種特別約款の解説、④個人賠償責任保険の解説です。
 「本書は、社会的にも重要な意義を有する賠償責任保険について、前書(新賠償責任保険の解説2014年)を改訂のうえ、賠償責任保険約款の解説を行うものである。新たに、個人賠償責任保険の約款解説を加えるとともに、一般賠責に関する裁判例を収集のうえ判例解説として掲載した」
 
 各種賠償責任保険の解説ですが、田舎弁護士も、保険絡みの案件の相談は時々受けますので、参考になります💦
 

2021年8月23日 (月)

【書籍】 自賠責保険のすべて 13訂版

 保険毎日新聞社から、令和2年6月から出版された「自賠責保険のすべて 13訂版」です。

 Kimg1458_20210817201101                            (自研センター・実験)

 8章で構成されています。①自動車損害賠償保障制度、②自賠責保険の契約から終了まで、③事故発生から保険金支払まで、④保険料率、⑤自賠責共済、⑥共同プール事務、⑦保障事業、⑧自賠責保険審議会および金融審議会自賠責保険制度部会です。

 田舎弁護士も、自賠責保険については、自賠責保険金の請求手続を多数行っていることから、関心事の高い話が多く含まれていました。自賠責保険金に関する書籍で、損害保険料率算出機構又はそれに近い立場の方が執筆されている書籍は少ないことから、参考になります💦

2021年8月22日 (日)

【書籍】 2021年交通事故損害賠償必携

 新日本法規から令和2年12月に出版された2021年交通事故損害賠償必携です。 

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(自研センター・実験)
 10章で構成されています。①事故の発生、②法律相談、③弁護士への依頼、④民事法律扶助、⑤事故原因調査、⑥損害の査定、⑦労災保険及び健康保険等への請求、⑧示談書、⑨自賠責保険(共済)への請求、⑩自動車保険(任意保険・共済)と保険金(共済金)請求です。
 昭和50年7月に初版が出版されるという歴史のある書籍のようです。昭和50年7月の編集代表が、倉田卓次氏と宮原守男氏です。今は、宮原先生だけです。
 ただ、毎年のように改訂版がでますが、ほとんど使ったことがないんですね💦

2021年8月21日 (土)

【書籍】 高額判決を導く弁護士の立証法 遷延性意識障害・脊髄損傷・死亡事故 判例の分析と検証

 かもがわ出版から、令和3年3月に出版された、高額判決を導く弁護士の立証法 遷延性意識障害・脊髄損傷・死亡事故 判例の分析と検証です。 

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(自研センターでの実験)
 宮尾シリーズです。はしがきには、「遷延性意識障害は、年間3000件余りが発生する高次脳機能障害の中でも、最重度に位置するもので、後遺障害等級は、別表Ⅰの1級1号が認定されていますが、被害者本人が意識喪失状態であり、在宅介護の内容と質が大きく異なることから、別扱いとして37の判例を徹底分析しています。
 次に、脊髄損傷の発生件数は毎年、5000件前後、交通事故で2400件、労災事故で1500件と報告されており、交通事故と労災とで全体の73%を構成しています。脊髄損傷においても、重要なものは、高次脳機能障害と同様に、住宅の改造費、将来の介護料、介護機器の費用・介護雑費、逸失利益、過失割合が争点となっております。
 主として、横断型の重度脊髄損傷17件、医療過誤を原因とするもの1件、非骨傷型脊髄損傷1件の19件の判例分析」
 「最後に、2018年の交通事故及び労災事故の死者数は、事故後48時間以内に死亡したもので、5504人(労災事故は909人)と報告されています」、「死亡事故では、27件の判例を分析し、過失割合、逸失利益、被害者本人と遺族の慰謝料などの立証について、深く掘り下げ、また定期金払いについても、積極的な提案を行いました。」
 もちろん、宮尾さんは、弁護士ではありませんので、この書籍は、法律的な論点を解説しているものではありません。
 ただ、どうやって、依頼人が望むような金額を獲得できるのか、どのような立証をしていけばよいのかについては、丁寧に説明されています。
 書籍の金額も高額ですが、それに見合った価値はあると、個人的には思います💦

2021年8月20日 (金)

【書籍】 高額判決を導く弁護士の立証法 高次脳機能障害 判例の分析と検証

 かもがわ出版から、令和3年3月に出版された「高額判決を導く弁護士の立証法 高次脳機能障害 判例の分析と検証」です。著者は、交通事故110番の宮尾一郎さんです。 

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(今治・奥木地林道)
 
 4部構成です。①重度後遺障害の対応について、②高次脳機能障害とは?、③判例 弁護士の立証について、④高次脳機能障害が想定される頭部外傷傷病名です。
 
 宮尾さんの書籍の醍醐味は、具体例が豊富で、わかりやすいということです。
 また、目の肥えた宮尾さんですので、弁護士を見る目も厳しいです。
 
 弁護士選びのTabooとして、①加入の損保から弁護士の紹介を受けること、②友人、知人の紹介する弁護士に安易に頼ること、③サラ金のグレーゾーン金利の回収で、事務所を大きくした法律事務所は、× となっております。。。
 最近、登録してそれほど年数が経過していない弁護士のホームページにも、経験十分で、交通事故を得意とするような表現を用いているものが散見されます。
 田舎弁護士の場合でも、高次脳機能・脊髄損傷は、損保弁護士だったころには、年間の手持ち案件として、両手以下程度の案件、損保弁護士を辞めたあとは、片手以下程度の案件くらいです。
 むち打ち訴訟事案と異なり、数が格段に少なくなります。それもそのはずで、「交通事故における高次脳の等級認定数は、およそ年間3000件に過ぎない」(P13)と、数は少ないです。
 とはいえ、高次脳機能・脊髄損傷案件を専門とする法律事務所は、所在が都会で、地理的に相談、依頼しにくいというデメリットがあります。
 そのような中で、高次脳機能・脊髄損傷案件を日々研究している弁護士であれば、案件によれば、都会の専門とする法律事務所に劣らない成果を出すこともできます。
 宮尾さんが、はじめに、「若手の弁護士が本書で学習され、訴訟において、高額判決を実現されることを希望しています」と書かれているのは、上記の趣旨ではないかなと勝手に考えております。
 宮尾シリーズは、交通事故を取り扱う弁護士は必読だと思います💦

2021年8月19日 (木)

【書籍】 Q&A 高次脳機能障害の交通事故損害賠償の実務

 ぎょうせいから、令和2年8月に出版された、Q&A 高次脳機能障害の交通事故損害賠償実務です。編著者ですが、弁護士だけではなくて、脳神経外科医師もおられます。 

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(自研センター)
 4章で構成されています。①医学知識、②自賠責保険・労災保険、③判例分析ー等級評価、④判例分析ー損害論、関係判例一覧と、資料編です。
 高次脳機能障害においても、自賠責保険と労災保険の判断の相違について悩まされることがありますが、この点についても、私見としながらも、P59以下で、以下のとおり解説されています。
 「自賠責保険では、労災保険と異なり被害者が就労者に限られないことを踏まえ、日常生活への支援なども考慮して、独自の認定基準を設けている。また、その認定結果は、自賠責保険よりも労災保険のほうが被害者側に有利な認定となる傾向がある。
 
 その背景には、労災保険は被災者の保護を目的として国が支払いを行う制度であることから、被害者救済の要請が強いのに対し、自賠責保険は加害者個人の賠償責任を前提として保険会社が支払いを行うものであるため、より慎重に責任の範囲が審査される必要があるという制度趣旨の相違があると考えられる。」
 

2021年8月18日 (水)

【物損】 物損事故事件における立証から解決まで 第一法規

 第一法規から、令和元年10月に出版された「物損事故事件における立証から解決まで」です。 

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(自研センター)
 3章から構成されています。①法的争点の概説、②事実認定の手法、③自動車の構造と修理技法です。
 3章は損保ジャパンのアジャスターさんたちの協力がなければ難しいですね。(1)自動車に関する基礎知識、(2)自動車の部品と材料:外板等、(3)自動車の部品と材料:内板骨格、(4)自動車の部品と材料:メカニカル、(5)修理方法、(6)修理方法の判断、(7)見積書の読み方、(8)自動車の修理技法です。
 田舎弁護士が、昔、損保弁護士だったころは、物的損害の案件をよく取り扱っていました。修理費が問題になると、金額の割には、弁護士の作業量が大幅に増えるんです💦
 今では、物損事案のみの案件は、LAC基準を利用できる場合を除いて、原則として、ご依頼をお断りさせていただいております。

2021年8月17日 (火)

【高次脳機能障害】 47歳男子の自賠責3級認定高次脳機能障害は7級4号に該当しないことはもとより5級2号にとどまることもないと85%の労働能力喪失で後遺障害逸失利益を認定し、1週7000円で将来介護費を認めた事例 大阪地裁令和3年1月20日判決

 自保ジャーナルNo2091号で紹介された大阪地裁令和3年1月20日判決です。

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                           (北三方ヶ森・山頂)

 自賠責3級3号高次脳機能障害、同14級嗅覚障害の併合3級後遺障害の事案ですが、12級嗅覚障害が残存したとして併合2級後遺障害を残したと主張する事案です。

 後遺障害の程度については、原告Xの易怒性は顕著で、感情のコントロールができないことも少なくなく、第三者とのトラブルも現実に発生するに至っており、しかも、不合理ともいえる理由で怒りの感情をあらわにしていることがあることからすると、原告Xについては、周囲から必要な援助を受けるために欠かせない円滑な意思疎通能力に支障が生ずる状況にあり、原告Xには円滑な対人関係を構築する能力が著しく阻害されているということができるとし、

 高次脳機能障害についての主治医であるD医師も、感情コントロールの低下や性格変化等があり、一般就労は困難との意見をかねてから明らかにし、また、原告Xの最大の問題点は、感情のコントロールの不良、易怒性、幼稚性、イライラなどであり、このためグループでの作業や就労は極めて困難であるとの意見を述べているところ、数々のエピソードからして、これらは説得力があるとして、原告Xは、単純な繰り返し作業などに限定すれば、就労することは可能であるとはいえるが、原告Xの就労が維持されるためには、原告Xの病状や特性を踏まえた職場の理解と援助が欠かせない上、原告Xの感情のコントロールの不良や易怒性等からして、職場における理解と援助を十分に得られない可能性が高いことも併せ考えれば、高次脳機能障害の程度としては、7級4号に該当しないことはもとより、5級2号にとどまることもないと認定しました。

 その上で、将来介護料について、原告Xの後遺障害の内容及び程度等を考慮すれば、症状固定日よりも後も、症状固定日までと同様に看視的介護が必要であると認められ、看視的介護の内容に照らせば、介護費の額は1週当たり7000円をもつて相当と認めるとして、平均余命の32年間につき1週7000円で認定しました。

 なお、妻と子の固有の慰謝料は否定されています💦。

  

 

2021年7月30日 (金)

【書籍】後遺障害の認定と異議申立 第2集 ―むち打ち損傷事案を中心として― 著者 加藤久道 先生 (保険評論家) 医学監修 松本守雄先生(慶大医学部整形外科学教授)            発行所 保険毎日新聞社  

 後遺障害の認定と異議申立 第2集―むち打ち損傷事案を中心として― 著者 加藤久道 先生 (保険評論家) 医学監修 松本守雄先生(慶大医学部整形外科学教授) 発行所 保険毎日新聞社 は、むち打ち損傷事案についての後遺障害の獲得を考えている弁護士にとっては、必携の書といえるものです。 

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(自研センター・実験)

 昨年9月に保険毎日新聞社から発行されました加藤久道先生の、「後遺障害の認定と異議申立第2集」をご紹介させていただきます。

 著者の加藤先生は、日動火災海上保険株式会社(現東京海上日動火災保険株式会社)、日本損害保険協会医研センター部長代理、損害保険相談・紛争解決サポートセンターに勤務され、現在は、保険評論家として精力的に執筆活動されている先生です。

 昨年12月にも、花伝社から、「交通事故は本当に減っているのか」という書籍を著し、実際の交通事故は交通事故統計の2倍以上発生しているという衝撃的な事実を公表されました。


 この「後遺障害の認定と異議申立第2集」は、私が後遺障害申請手続を行う際にも、参考にさせていただいております。

 本書は、第1章 基礎知識、第2章 判例紹介、第3章 異議申立で、構成されています。

 第1章 基礎知識は、後遺障害認定実務の概要や実際、紛争解決手段、神経症状12級・14級の認定基準等、後遺障害を獲得するための基礎知識が盛りだくさんに紹介されています。

 第2章 判例紹介は、いわゆる青本及び赤い本に掲載されている、神経障害の9事例、身体的と特徴と素因減額の1事例、合計10事例が紹介されています。

 第3章 異議申立は、紛争処理機構の紛争処理事例集の中から神経障害に関する10事例を解説したものです。自賠責保険・共済の異議申立事例と認否の判断は、自賠責保険の判断基準を知る上でも大切なことです。

 「後遺障害の認定と異議申立第2集」は、むち打ち損傷事案を取り扱う弁護士にとっては、是非とも一読をお勧めしたい書籍です。

 

 

2021年7月25日 (日)

【むち打ち損傷】 レガシィ 後遺障害の医療鑑定 整形外科専門医が明かす本音と医師活用法

 整形外科専門医である白井康裕医師の「後遺障害の医療鑑定 整形外科専門医が明かす本音と医師活用法」を聴講しました。 

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(自研センター・実験)
 このセミナーでは、A適正な後遺障害等級を獲得するための医学意見書作成の実際と医師の視点を説明した上、B放射線科医と整形外科医の違いを明らかにして、C後遺障害等級獲得のための医師との連携を必要と述べておられます。
 放射線科医と整形外科医の強みと弱みがあるところ、整形外科医は、読んでいる画像の数は放射線科医に比べ少ないこと、専門領域以外の画像読影は難しいのに対して、放射線科医は、読んでいる画像の数が多い、専門に限らず幅広く画像が読影可能と指摘されています。
 損害保険料率算出機構による認定の問題点として、医学的評価が必要な項目が多いにも関わらず、医師があまり関与していない、また、医師自体が交通事故の後遺障害の認定のされ方について医師が熟知していないこと、また、整形外科外来では1人5分の治療なので神経学的所見をしっかり診察する時間がない、そのため、診断書記載が雑。
 60分の講義でした。

2021年7月24日 (土)

【自賠責等級よりも下がった裁判例】自賠責14級9号頸部痛、握力低下 12級13号浮遊性めまい 併合12級  が、なんと非該当になってしまいました。

 自保ジャーナルNo2090号で紹介された大阪地裁令和3年1月21日判決です。 

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(北三方ヶ森)
 自転車搭乗中に被告乗用車が開けた左前ドアに追突された40歳代女子原告の自賠責14級9号頸部痛及び同12級13号めまいの併合12級後遺障害と本件事故との因果関係を否認し、原告自転車の過失を否定したという事案です。
 裁判所の認定によれば、本件事故は、被告車の助手席のドアが、自転車のハンドルを握っていた原告の右手に右側やや後方からぶつかったというものであり、自転車のハンドルを握っている右手に右側やや後方から自転車のドアがぶっかったことにより、一定の衝撃があったとしても、その外力が頸部にまで及び、頚椎捻挫を起こすのかには疑問を挟む余地があり、少なくとも、このような機序で原告に頚椎捻挫を起こすのかには疑問を差し挟む余地があるというべきであるとして、因果関係を否定しています。
 事故の態様が、頚椎捻挫やそれを原因とする痛みやめまいを生じさせるものではないということです。
 自賠責で認定された後遺障害が全て否認されるなんで、裁判は怖いですね。。。

2021年7月23日 (金)

【むち打ち損傷】 男子原告主張の後頸部痛及び左上肢しびれ等の神経症状は、既往の頚椎椎間板ヘルニアが本件事故によって有症状化したと事故との因果関係を認め、12級後遺傷害お認定し、3割の素因減額を適用した事例 大阪地裁令和3年1月15日判決

 自保ジャーナルNo2089号で紹介された大阪地裁令和3年1月15日判決です。 

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(自研センター・実験)
 T字路交差点を自転車で直進中、同一方向から右折してきた被告自動二輪車に衝突され、頚椎捻挫、右上腕打撲、右大腿打撲、右大腿打撲、頚髄損傷等の傷害を負い、自賠責14級9号右肩痛認定も、
 後頸部痛、左上肢のしびれ等から12級後遺傷害を残したとする男子原告の事案につき、
 頚椎(C5~C7)は、腕から手にかけての神経を支配する神経根がある部位であって、一般に、無症状の頚椎病変が交通事故等の外力が加わることで有症状化することは医学的にあり得る事象であるとし、原告については、本件事故を契機として頚椎椎間板ヘルニアが増悪したと認められるところ、本件事故後に生じた左上肢のしびれなどの神経症状は、増悪した頚椎椎間板ヘルニアによる脊髄圧迫に起因するものとして合理的に説明できることから、
 原告の神経症状は、既往症である頚椎病変を背景として、これに本件事故による外力が加わったことで生じたものと認められ、本件事故との間に相当因果関係のある後遺障害であるということができるとして、この後遺障害は、その症状を医学的観点から他覚的に説明できる神経症状であるから、後遺障害等級としては、12級に相当すると12級神経症状を認定しました。
 
 

 

2021年7月22日 (木)

【高次脳機能障害】 自賠責1級1号四肢麻痺及び高次脳機能障害を残し、施設に入所している54歳女子の将来介護費を食事代を控除した入所によって発生する費用の年額で平均余命の34年間につき認定した事例 名古屋地裁令和2年11月20日判決

 自保ジャーナルNo2089号で紹介された名古屋地裁令和2年11月20日判決です。

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 青信号交差点の自転車横断帯上を自転車で横断中、対向の右折被告乗用車に衝突され、脳挫傷等の傷害を負い、四肢麻痺及び高次脳機能障害から自賠責1級1号の後遺傷害を残す54歳兼業主婦の原告の事案につき、

 原告は、全ての身の回りの動作に全面的な介助が必要な状態であり、今後も施設での介護が必要であること、原告は、症状固定後も施設に入所していること、入所によって原告に発生する費用は、敷金8万円に加えて、家賃月額5万5000円、管理費月額3万7800円、寝具代月額2592円、朝食代日額324円、昼食代日額540円、夕食代540円、アメニティ代日額642円、美容・理容代が四半期毎に1000円であることが認められるが、

 前記費用のうち食事代日額合計1404円については、日常生活によって発生する費用であるから、本件事故と相当因果関係のある費用としては認められないとして、食事代を控除した上記年額で平均余命の34年間につき将来介護費を認定しました。

 

2021年6月26日 (土)

【むち打ち損傷】 五年前の先行事故で自賠責併合14級頸部痛等がある事案

 自保ジャーナルNo2088号で紹介された京都地裁令和2年12月9日判決です。

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① 約5年前の先行事故で自賠責14級9号頸部痛等の併合14級認定の後遺障害を残す40歳男子原告が、自動二輪車を運転して赤信号で停止中、被告準中型貨物車に追突され、頚椎捻挫、腰椎捻挫等の傷害を負い、加重障害には当たらないと自賠責非該当も、

 頚椎椎間関節症による頸部痛等から14級9号後遺障害を残したとする事案につき、

 自賠責保険の等級認定における「加重障害」に当たるか否かの判断は、先行事件による後遺障害と後行事件による後遺障害を形式的に比較し、いずれも「同一の部位」の障害で同一の等級に止まるものであれば、非該当として処理されており、そこでは障害の具体的な内容や程度は考慮されていない」が、

 「損害賠償の査定においては、自賠法施行令の『加重障害』に当たらない場合であっても、先行事件後の後遺障害による損害と後行事件後の後遺障害による損害とが実質的に重なるものではなく、損害賠償を二重に利得する関係になければ、後者による損害賠償を認めることは何ら不当ではなく、むしろ損害の公平な分担を図る趣旨に照らせば相当であるといえる」と認定しました。

② 本件事故での後遺障害の残存につき、原告は、本件事故によって生じた頚椎椎間関節症の後遺障害として、頸部の鈍痛、時に電撃痛、頸肩から背部の痛みが残存しているものと認めるのが相当であり、症状の内容・程度からすれば、局部に神経症状を残すものとして、後遺障害等級14級9号に該当すると14級9号後遺障害を認め、

 本件事故が発生したのは、先行事故による症状固定の約4年4ケ月後であるところ、損害賠償実務では14級9号の神経症状による逸失利益は3~5年程度に限って認められることが多い実情にあるから、先行事故による損害賠償の対象期間との重複はほとんどないといえること、原告の具体的な症状をみても、遅くとも本件事故の約1年前には頚部の症状は消失し、肩こりがみられる程度になっていたというのであるから、先行事故による頚部の後遺障害の影響は、本件事故当時はほぼ消失していたと認められることからすれば、本件事故後の後遺障害には、先行事故の影響はほとんどないものとして評価するのが相当であるとして、原告には、本件事故により14級9号の後遺障害が残存したものとして損害賠償を算定するのが相当であると認定しました。

 ただこれででも、損害の全体を通じて、1割の素因減額はされているんですね。。。

2021年6月25日 (金)

【弁護士費用特約】 LAC基準による、異議申立てについての弁護士費用

 LACマニュアルには、交通事故事件の「異議申立」についての弁護士費用については、次のとおり解説されています。

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(水ヶ峠・龍岡木地口)
 「交通事故事件で、後遺障害等級について自賠責等級14級が認定されたが譜面だという方の事件を受任する予定です。事案としては12級相当だと考えられるので、異議申立てを行う予定です。着手金・報酬金はどのように定めたらよいですか?
 →多くの場合、異議申立手続だけではなく、損害賠償請求事件全体として受任されると思われますが、この場合の着手金の経済的利益は、すでに認定されている等級(ご質問のケースでは14級)による損害額と、客観的資料に基づき適切であると考えられる等級(ご質問のケースでは12級)による損害額との差額と考えられます。なお、この場合は、異議申立手続は、通常行うべき手続に含まれますので、重ねて異議申立てについての請求をすることはできません。
  う~ん。12級が700万円、14級が300万円であれば、400万円が経済的利益ということになりますが、「客観的資料に基づき」ということなので、この立証とまた初期段階で損害額の資料をいただいての検討になることからかなり大変な作業になりそうです。
→ また、異議申立だけで受任するという場合には、事案簡明な自賠責保険請求については、手数料方式を採用することとされていますが、異議申立事案は、複雑な主張立証が必要になることから、通常の着手金・報酬金方式で受任できます。
  ただし、経済的利益は自賠責部分に限られるために、損害額全体ではなく、ご質問のケースでは14級を前提にした自賠責部分と、12級を前提にした自賠責部分との差額。
  ということは、12級の自賠責保険金である224万円から75万円を控除した149万円が経済的利益になります。
  149万円の着手金は11万9200円ですので、75万円分の手数料3万円を加算した、14万9200円(外税)が、このケースでの異議申立ての着手金になりそうです。

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 次の質問です。
 後遺障害等級の異議申立てだけを受任して、前の等級と相当だと考えられる等級の差額を経済的利益として着手金を計算して受領しました。その後、交通事故全体の損害賠償請求も受任したのですが、この場合の着手金はどうなりますか?
 →異議申立ての受任の後、損害賠償請求全体について受任した場合には、前段での説明に基づき計算された着手金から、異議申立てを受任した際の着手金を控除した金額が追加着手金となります。
  なるほど。追加着手金という方法での請求になるのですね。
  先ほどのケースで、弁護士の腕が凄腕で、異議申立てがとおり、12級前提での損害額の計算が700万円になりました。
  700万円の場合の着手金は、44万円(外税)ですので、異議申立の着手金14万9200円(外税)を控除した29万0800円(外税)が追加着手金になるわけです。
  しかしながら、異議申立てがとおらず、14級のままで、その損害額が300万円の場合には、その場合の着手金は、24万円(外税)ですので、異議申立の着手金14万9200円(外税)を控除した9万0800円(外税)が追加着手金となります。
  どんなに面倒な案件でも、異議申立てがとおらない場合には、その作業は最終的な着手金は異議申立てをしていないのと同じ結果になります。
  そうすると、弁護士の労力が反映するタイムチャージ方式(最大60万円)を選択した方がよいということになりますが、12級事案の場合には、異議申立てがとおるような事案であれば、着手金報酬金の方がよいということになります。
  しかしながら、異議申立てがとおるかどうからないかを100%の確率をもって予想することはできないので、依頼を受ける弁護士としては、どの方式にすべきなのかを悩むところです💦

2021年6月24日 (木)

【弁護士費用特約】 反訴や別訴が提訴された場合の、弁護士費用については、弁護士費用特約の対象にはなりません。ご注意下さい。

 弁護士費用特約についての解説書であるLACマニュアルには、次の質問が記載されています。

 「交通事故で被害者として訴訟を提訴したところ、反訴を提起されました。この場合、反訴の着手金・報酬金も、保険から支払われますか

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(今治・蒼社川源流)
 
 「交通事故に関する弁護士費用保険は、被害回復のために弁護士費用が支払われる保険ですので、加害者として請求を受けた場合の弁護士費用は、弁護士費用保険から支払われないのが原則です。
 ただし、弁護士費用保険は、自動車保険の特約としてセットされている場合が大半ですので、反訴部分の弁護士費用は、自動車の場合、主契約からの支払が可能です。協定保険会社等とのトラブルを防ぐため、反訴請求をされた場合には、受任前に協定保険会社等にお問い合わせ下さい。
 また、主契約を利用する場合にはノンフリート等級が下がる場合もありますので、保険契約者にもその旨を確認するようにして下さい。」
 要は、反訴や別訴は、対人・対物保険にて、対応して下さいということです。当然ですが、等級が下がる関係で、保険料が増える可能性があります。
 田舎弁護士の事務所においても、反訴や別訴が提起された場合には、弁護士費用特約では対応できないことを明確に伝えるようにしております。
 弁護士費用の自己負担をしていただくか、対人・対物保険の利用にて別途弁護士費用をいただくようにしております。
 人損が絡んでいる事案の場合には、対人・対物保険の利用について抵抗がない場合がほとんどですが、軽微物損事案の事案では、元々の金額が小さいこともあり、対物保険利用について消極的な方も少なくありません。弁特社との協議によりタイムチャージを利用できる場合にはまだしも、そうではない弁特社の場合には、本来、対物保険の利用で対応すべき部分については、自己負担か、対物保険の利用を検討していただくことになります。
 

2021年6月23日 (水)

【腱板断裂】 約5か月の通院中断事案

 交通事故民事裁判例集第53巻第3号で紹介された横浜地裁令和2年5月28日判決です。 

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(笠松山)
 原告(男・45裁・動物病院経営)の事故による右肩腱板損傷の受傷の有無につき、前面が原型をとどめないほどの原告車両の損傷の程度、医師の診断経過に加えて、約5か月間の通院中断については合理的根拠があり、その後原告が訴えに沿う通院を続けていることなどから、当該受傷を認めました。
 
 なんと、約5か月間の通院中断です。。。
 本件事故後、腱板損傷の症状である肩の自発痛や疼痛による動きの悪さを甲川石に終始訴えていること、被告の任意保険会社が一括対応を停止した中で甲川医師から200パーセントの自己負担になるといわれたという事情が影響していることから、因果関係を認めています。
 甲川医師ですが、任意保険会社が一括対応を停止した後は、自由診療で200パーセントの自己負担となり、通院1回あたり3万円程度の費用がかかるという説明をしたようです。
 健康保険での治療を認めなかったんですね。ごく稀ですが、このような対応をされる医師がおられます。このような医師の言動により、結局、患者さんの被害が拡大してしまうわけです。残念です。

【むち打ち損傷】 事故から「約2か月後」に治療が開始された頚部痛

 事故から約2か月後に治療が開始された頚部痛なんて、事故との因果関係はないとアドバイスしてしまいそうです。この点が争われたのが、交通事故民事裁判例集第53巻第3号の神戸地裁令和2年6月4日判決です。 

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(笠松山)
 事故から約2か月後に治療が開始された頚部痛について、被害者(女・82歳・主婦)は、事故により身体が揺さぶられていること、事故の翌月には倦怠感があること、翌々月の診断において「頚部痛が増しており」と訴えており、以前から頚部痛があったことがうかがわれること、事故後に頚部を損傷するような出来事があったとは認められないことに照らし、頚部痛が事故によるものであるとしても不自然でないとして、事故との因果関係を認めました。
 

2021年6月22日 (火)

【ご相談】 むち打ち・TFCC損傷 賠償金増額の最新テクニック 第1巻~第3巻 の、次は何を出そうかな。

 田舎弁護士が、「損保弁護士」を引退(笑)して、もっぱら、被害者側弁護士として、交通事故事案を取り扱うようになってから、数年が経過しました。その時の成果等を2年程前に、「むち打ち・TFCC損傷 賠償金増額の最新テクニック」としてレガシィで公刊して、それなりに売れたようです。

 また、公刊された裁判例の中に被害者側弁護士として田舎弁護士の名前を見た方がご相談にこられたケースもあります。このように、交通事故の被害者事案(人的損害)は、田舎弁護士の得意とすることです。また、交通事故の後遺障害申請手続の依頼が増えた結果、異議がとおりそうな事案、そうでもない事案の「感覚」を身に着けることができるようになりました。 

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(自研センター・実験)
 近く、むち打ち症例を中心とした後遺障害獲得、しかも、異議申し立てにより獲得した事案の研究を発表するために、準備にとりかかっているところです。
 もちろん、他の業務等のために、日々その作業のために費やせる時間は少ないのですが、優秀なスタッフのサポートを得て、毎日、少しずつ、準備をしております。
 後遺障害が絡む案件は、医学的な知見も必要であり、その勉強は新鮮で楽しいものです。
 むち打ち症例が中心となりますが、こうすれば異議申し立てがとおった実例を研究しておりますので、その成果を、交通事故の被害にあって苦しんでいる被害者の方を救済されている弁護士の先生方のお役に立てればと思います。
 なお、物損事案が中心となる案件につきましては、田舎弁護士の得意とするところではありませんので、他の弁護士にご相談していただければと思います。

2021年6月20日 (日)

【書籍】 判例タイムズNo1483号 「交通事故訴訟のこれから」 大島眞一大阪高裁部総括判事

 判例タイムズNo1483号に、「交通事故訴訟のこれから」と題する大阪高裁部総括判事の講演録が掲載されていました。 

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(自研センター)
1 大阪高裁における交通事故事件
① 大阪高裁の交通事故事件
  ⇒全事件の10~15%程度
② 最近の交通事故訴訟の特徴
(1)ドライブレコーダーの普及
(2)細かな物損の事件の増加
  ⇒「物損で難しいのは、実況見分調書が作成されておらず、事故の状況がよくわからないことがあることです」
(3)軽い事故で重い結果が発生した場合
2 責任論
  ⇒「高齢者が起こした交通事故が増えています」
3 損害論
① 定期金賠償
 (1)最高裁令和2年7月9日判決
 (2)消極損害と積極損害
 (3)原告(被害者)が一時金賠償を求め、被告(保険会社側)が定期金賠償を求めた場合
 (4)余命認定
   ⇒「同じ資料が松山地判西条支判平29.3.30交民50巻2号410頁の判決文中にも使われていることからしますと、新しい資料はないのかもしれません」 この裁判例は、田舎弁護士が加害者側で関与しました。
 (5)一時金で多額の金銭を渡すことの懸念
 (6)定期金賠償が増えない理由
 (7)理論的問題点
 (8)まとめ
② 逸失利益 男女格差
 (1)これまでの経緯
 (2)今後の動向
 (3)逸失利益~就労可能期間の周期と大卒平均賃金
  ⅰ 就労可能期間の終期
    ⇒「67歳というのは、昭和40年頃に算定基準を策定したときに、第12回生命表(昭和40年)の男子の平均余命67.74歳によったものです。」「終期を70歳に延長することも考えられると思います。」
  ⅱ 大卒平均賃金
    ⇒「年少者について、全年齢賃金センサスを使っていますが、大卒の賃金センサスを使い22歳からするのが相当ではないかという点です」
 (4)基礎収入 障害を持った者
    ⇒「疾患を持った年少者については、長い将来のことであり、逸失利益の算定に当たって、考慮すべき事情があることを示しているといえます」
 (5)基礎収入 低い額の税務申告をしている事業所得者
    ⇒「確定申告額よりも多くの収入があったことを高度の蓋然性をもつて確かであるといえるか、という点に尽きると思います。」
 (6)労働能力喪失率
    ⇒「当該通牒は労働能力喪失率算定にあたっては有力な資料ではありますが、障害の部位・程度、被害者の年齢・職業、事故前後の就労状況、減収の程度、被害者の努力や勤務先の配慮等を総合的に判断して決める必要があり、当事者もそうした立証活動が求められると思います。」
 (7)一家の支柱
    ⇒「共働き世帯の母親について、一定程度の収入があれば、「一家の支柱」というのか、それとも「母親・配偶者」に当たるというのかよくわかりません。あるいは、最近は専業主夫も出てきており、女性の基準を使っています。こうした現在にあった「共働き夫婦」や「女性のみ勤務」といったことも念頭においた基準を設けるべきであると思いますし、「母親」という用語は避けた方が良いと思います」
 (8)葬儀費用
    ⇒「もともと領収書を取得することが困難なものが含まれる葬儀費用については、特に立証を要することなく、150万円程度の葬儀費用を認定し、社会的耳目を集めた事件などでそれを上回る費用を要したのであれば、その領収書を提出し、それが相当であると認められる場合には、その額を認めるのが相当であると思います」
 (9) 医師への謝礼
    ⇒「大阪基準のように、否定するのが相当」
(10) 弁護士費用
    ⇒「弁護士費用は、当然に認容額の1割となるものではなく、事案に応じて定められるべきもの」
(11) 遅延損害金
    ⇒「設例でも、1日の違い(令和2年4月1日以降)で大きな差が生じますが、立法がいつから適用されるかというものですから、やむを得ません」
4 自動運転の将来
 ざっと読みましたが、勉強になりますね💦    

2021年6月18日 (金)

【むち打ち損傷】 乗用車同乗中に追突された男子の自賠責非該当の後遺障害を9年前同様に14級9号認定し、同一部位及び症状等から1割の素因減額を適用した 大阪地裁令和2年11月16日判決

 自保ジャーナルNo2087号で紹介された大阪地裁令和2年11月16日判決です。 

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(今治・大島)
 9年前の前件事故で自賠責14級9号頚部痛等を有する男子原告は、妻が運転する乗用車に同乗して停止中、被告乗用車に追突され、頚椎捻挫等の傷害を負い、自賠責非該当も、頸部・頭痛、左上肢放散痛等から14級9号後遺障害を残したと主張する事案につき、
 原告には、本件事故によつて、頸部痛、頭痛、左上肢放散痛、左小指しびれ感、めまい、左手指脱力感の症状が生じ、これらの症状は、後遺障害等級表14級9号の後遺障害に相当すると認められる」とし、
 被告は、「①原告による疼痛の主訴の程度や通院期間中の就労の制約がなかったことから、原告に後遺障害等級表14級9号に相当する後遺障害が残存しているとすべき事情はない、②本件事故による受傷部位・症状と前件事故による受傷部位・症状は同じなので、同後遺障害は本件事故に起因するものではない」と主張するが、
 「①については、原告は、本件事故により、頭部及び頚部の打撲・捻挫の傷害を負い、その後一貫して、頸部痛等の神経症状を訴えており、神経学的検査、レントゲン検査、握力検査及び前腕部の計測においても、これらの神経症状に整合する結果が認められる。また、原告は、本件事故後、自営する弁当製造小売業において、弁当製造の作業等に支障が生じた旨述べており、就労の制約がなかったとは認められない」他、
 「②については、前件事故から本件事故までに約9年が経過しており、原告は、本件事故前の5年間(診療録の保存期間)において、前件事故による治療のために、C整形外科や他の医療機関に通院していたとは認められない。また、本件事故の救急搬送時及び後遺障害診断書において、既存障害ないし既往症はないと診断されている」ことから、「被告の主張する上記①、②の各事情をもって、本件事故により後遺障害等級表14級9号に相当する後遺障害が生じたとの認定を覆すには足りないとして、原告に14級9号後遺障害を認定しました。
 自賠責非該当、しかも、9年前に後遺障害認定を受けている事案ですから、この被害者側の弁護士さんはたいしたものです💦

2021年6月 3日 (木)

【むち打ち損傷】 46歳女子主張の14級9号頸部及び左上肢痛は、医師から接骨院との併診をしないように告げられていたにもかかわらず、極めて頻回に通院した影響などから本件事故による後遺障害の発生を否認した事例 金沢地判令和2年3月19日判決

 自保ジャーナルNo2086号で紹介された金沢地判令和2年3月19日判決です。 

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(笠松山・ガメラ岩)
 交差点を乗用車で進行中、左方路から左折進入してきた被告乗用車に衝突され、頚椎捻挫、頸肩腕症候群等の傷害を負い、自賠責非該当も、頸部及び左上肢の痛みから14級9号後遺障害を残したとする46歳女子原告の事案につき、
 原告は、医師に接骨院等との併診をしないように告げられていたにもかかわらず、事故直後から症状固定と診断される頃に至るまで極めて頻回にわたり接骨院に通院を繰り返していたものである。こうした接骨院における施術の影響や、原告が有していた更年期障害のリスクに鑑みれば、仮に症状固定と診断された時点で原告に一定の神経症状が残存していたと認められるとしても、それが本件事故との相当因果関係を有するものと認定することは困難である他、
 C5/6椎間板の軽度膨隆が認められる点については、原告に既往症がないとしても、これが本件事故前から無症状ないし有意な症状のないままで存在していたものではなく、本件事故によって生じたものであることを示す十分な証拠はない等から、本件事故により原告にその主張に係る後遺障害が生じたと認めることはできないとして、後遺障害の発生を否認しました。
 医師により、接骨院での併診を停められていたにもかかわらず、多数回接骨院の施術を受けたという事案です。
 田舎弁護士の感覚でも、後遺障害獲得を志向するのであれば、接骨院ではなく、整形外科に通うべきです。後遺障害診断書を作成できるのは、お医者のみだからです。
 他方で、接骨院の方が、ソフトな対応で、待ち時間も少なくて、神経症状の改善も得られやすいという方もいるのは事実です。
 確かに、医師の中には患者の立場になって考えられない方も少ないですが、仄聞します。
 結局は、患者さんが何を重視したいかで決めるしかないと思います。
 また、接骨院の施術は、裁判になれば、不必要、或いは、過剰施術だとして、必要性や因果関係を争われることもあります。
 従って、田舎弁護士としては、後遺障害獲得を視野に入れているのであれば、整形外科にて、治療やリハビリを受けることを、個人的には、お勧めいたします。

2021年6月 2日 (水)

【むち打ち損傷】 追突された68歳男子主張の12級13号頚部痛は医学的に説明できないと後遺障害の残存を否認した事例 名古屋地裁令和2年11月11日判決

 自保ジャーナルNo2086号で紹介された名古屋地裁令和2年11月11日判決です。あるある事案です。

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(楢原山)
 乗車中で信号待ち停車中、被告乗用車に追突され、頚椎捻挫、頸椎症、背部挫傷の傷害を負い、自賠責非該当も、12級13号頚部痛を残したとする68歳男子原告の事案につき、
 
 原告の「MRI画像によると、第5,6頚椎椎間板に軽度後方突出ありとされている」が、「原告の主治医も、医療照会に対し、上記椎間板膨隆が本件事故により生じたものであることを否定し、原告の頚部痛とは神経学的には一致しないと回答している」等から、
 「そもそも本件事故の衝撃は大きくはないものであったこと、椎間板の膨隆は本件事故によるものではないこと、スパーリングテストの結果は少なくとも初診時から4月末までは陰性であったこと、右上肢の筋力検査結果は上記のとおり安定していないことなどからすると、
 原告の愁訴を裏付ける証拠は乏しく、原告の後遺障害の存在が医学的に説明ができると認めるに足りる証拠はない」他、「医療照会によれば、本件事故によるものではないと認められる椎間板膨隆は、頚部の可動域制限の原因になりうるとされていることからすると、頚部の可動域制限も原告の後遺障害を支える事情とはいえないとして、後遺障害の残存を否認しました。
 やはり、主治医の意見によって左右されています。また、損傷の程度も、リアバンパーカバーの凹損等で、修理内容も10万円程度の軽微なものです。
 まあ、仕方がないのかな。

2021年6月 1日 (火)

【高次脳機能障害】 自賠責9級10号認定も、7級4号主張の65歳女子の高次脳機能障害を4能力のうち、いずれか1つ以上の能力が多少失われている程度と、12級13号認定した事案 大阪地裁堺支部令和2年11月13日判決 (控訴中)

 自保ジャーナルNo2086号で紹介された大阪地裁堺支部令和2年11月13日判決です。 

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(立岩ダッシュ村)
 自賠責9級で示談等で解決しておればよかったのですが、裁判では7級だと主張して、判決ではなんと12級まで下がってしまったというトホホ事案です。
 
 1500万円程度を請求したにもかかわらず、そのため、判決はなんと2万円程度という結果になってしまいました。被害者からの裁判は、示談よりもたくさんお金をいただきたいということで提訴するのですが、今回は、おそらく示談交渉の時よりも大幅に下がってしまつているのではないかと想像します。
 高次脳機能障害及び歩行障害から自賠責9級10号後遺障害認定も、7級4号高次脳機能障害が残存したと主張する65歳女子原告の事案につき、
 本件認定において、原告の高次脳機能障害については、第9級10号に該当するとされ、通常の労務に服することはできるが、高次脳機能障害のため、社会通念上、その就労可能な職種の範囲が相当程度に制限されるものがこれに当たり、具体的には、4能力のうち、いずれか1つ以上の能力の相当弛度が失われているものをいうと解されるが、
 医学的意見①及び医学的意見②の内容、日常生活状況報告書の内容、本件検査結果の内容等の照らせば、従前と比較して4能力の低下はみられるとはいえるが、4能力のいずれかが相当程度失われていると認めることはできないことから、
 原告に、第9級の高次脳機能障害が残存していると認めることもできないとして、
 高次脳機能障害の等級としては、第12級13号があるところ、通常の労務に服することはできるが、高次脳機能障害のため、多少の障害を残すものがこれに当たり、具体的には、4能力のうちいずれか1つ以上の能力が多少失われているものをいうと解され、原告の高次脳機能障害は、かかる程度のものとして、第12級13号に該当するものとして、12級13号高次脳機能障害を認定しました。
 自賠責9級が、なんと、12級に等級ダウンです。
 トホホ事案は、希ですが、ありえますので、注意が必要です。

2021年5月31日 (月)

【解決実績】 加害者側提案金額約50万円を、紛センの利用により、120万円で解決した事例

 平成30年5月、出合い頭衝突事故(当方依頼人過失20%)で、当方依頼人(女性・40歳代)が、頚椎捻挫・腰椎捻挫の傷害を負い、約7ヶ月を通院し、後頚部痛を残存したという事案です。

 当方相談時においては、事前認定手続を利用して、後遺障害申請を行っているものの、結果的には、後遺障害非該当という事案でした。

 当方の作業としては、被害者請求手続を利用して後遺障害についての異議申立てを行いました。

 その結果、後頚部痛については、局部の神経症状を残すものとして、後遺障害等級第14級9号が認定されました(なお、被害者請求の結果、自賠責保険から約170万円の支払いを受けています。)。

 その後は、加害者との交渉ですが、被害者にも20%の過失があることから、被害者と相談のうえ、被害者側の損保会社に対して人身傷害補償保険金の請求を先行させ、差額を加害者に請求しました。

 しかしながら、金額に大きな開きがあったことから、紛センに申立てをして、最終的には、依頼者も不満のない120万円で解決することができました。

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(笠松山)
 LACの利用だったので、弁護士費用特約は、タイムチャージを利用しました。LAC以外の損保会社はタイムチャージを利用できないことが多いので、注意が必要です。

 

 

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