【相続】 被害者を殺害した加害者が被害者の相続人において被害者の死亡の事実を知りえない状況を殊更に作出したため、相続人がその事実を知ることができなかった場合における上記殺害に係る不法行為に基づく損害賠償請求権と民放724条後段の除斥期間
判例時報No2046号(9月11日号)で紹介された最高裁平成21年4月28日判決です。
事案は以下のとおりです。
本件は、YがAをひそかに殺害してその死体を隠したため、Aは長期間にわたって行方不明とされていたが、約26年後にYが自首して死体が発見されたという事案において、Aの相続人XのYに対する不法行為に基づく損害賠償請求権が、民法724条後段の規定により消滅したか否かが問題になった事案です。
第1審は、民法724条後段の20年は除斥期間であるところ、殺害行為にかかる不法行為の除斥期間の起算点は、殺害行為の昭和53年8月14日であり、同日から20年の経過によって、殺害行為に基づく損害賠償請求権は消滅したと判断しました。
ただし、第1審の裁判官も、やっぱりこの結果はおかしいと考えたのでしょう。
死体遺棄に関する不法行為は、その消滅時効及び除斥期間の起算点は、死体発見日であるとして、慰謝料等として330万円を認めました。
第2審は、そもそも、民法724条後段の効果は生じないと判断しました。不法行為により被害者が死亡し、不法行為の時から20年を経過する前に相続人が確定しなかった場合において、その後相続人が確定し、当該相続人がその時から6か月以内に相続財産に係る被害者本人の取得すべき損害賠償請求権を行使したなど特段の事情があるときは、民法160条の法意に照らし、右相続財産に係る損害賠償請求権について、民法724条後段の効果は生じないものと解するのが相当と判断して、殺害行為に係る不法行為に基づく損害賠償請求を認容しました。
最高裁平成21年4月28日判決も第2審の判断を認めました。
民法160条の趣旨は、相続人が確定しないことにより権利者が時効中断の機会を逸し、時効完成の不利益を受けることを防ぐことにある。
↓
相続人が確定する前に時効期間が経過した場合にも、相続人が確定した時から6か月を経過するまでの間は、時効は完成しない。
↓そして
相続人が被相続人の死亡の事実を知らない場合は、同法915条1項所定のいわゆる熟慮期間が経過しないから、相続人は確定しない。
↓
相続人が確定した時から6か月以内に相続人が右殺害に係る不法行為に基づく損害賠償請求権を行使したなど特段の事情があるときは、民法160条の法意に照らして、民法724条後段の効果は生じないものと解するのが相当である
ただし、解説者によれば、この判決の射程範囲は狭いようです。
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