【金融・企業法務】

2009年7月 8日 (水)

【金融・企業法務】 相続預金払戻しに関する窓口対応上の留意点

 銀行法務21・7月号(No704号)で紹介されている特集記事です。

 大手都市銀行の法務部スタッフによって執筆されたものです。

 いくつか私が把握していなかった知識も得られ、大変有益でした。

 たとえば、検認を受けた自筆証書遺言の場合には、当該遺言の有効性の確認のためには、「銀行実務上は、被相続人本人が作成したかどうかの確認のため、遺言書の筆跡を、生前の被相続人本人が記載し提出した書類(印鑑票、諸届出書類等)にある筆跡と対照して照合したり、銀行が把握している被相続人の生前の生活実態や縁故関係からみて、遺言の内容に不自然な点はないかどうかを注意して確認する」。

               ↓有効性を十分に確認できない場合

 銀行実務上は、その遺言に基づき預金払戻しを請求してきた者のほか、法定相続人や受遺者等の利害関係人から、その預金払戻しにつき了解を得ておくべき

 次の設例は、参考になります。

 たとえば、窓口で、Aが、預金名義人Bに相続が開始したとして、「友人AにC銀行D支店の口座番号▽◎○■の定期預金を遺贈する」旨の遺言書を提示して、当該預金について名義書換請求をしている。遺言書どおりの申し出である以上、銀行として、Aの請求に応じてよいか? 

                ↓

 銀行実務としては、相続人等の遺贈義務者と受遺者Aとともに、当該預金口座の名義書換に応じるので、A単独の請求には応じられないという回答になっています。

 上記は、特定遺贈ですが、包括遺贈の場合には、「包括受遺者は相続人と同一の権利義務を有するので、相続財産に預金が含まれている場合、包括受遺者は共同相続人とともに遺産分割を行うことになります」と説明されています。

 包括受遺者とは、財産に対する抽象的な割合でしか示されていない場合をいいますが、割合ではなく、それでは、「すべての遺産を遺贈する」という場合はどうでしょうか?

 また、遺留分を侵害する遺言がある場合の銀行の対応として、私は、減殺請求をされた場合には、請求権者の遺留分減殺の範囲をこえての弁済については消極的な見解を有していました。ところが、解説には、「銀行は、遺留分侵害の有無については、基本的に、気にする必要はありません」と書いています。これが減殺請求をされたことを銀行が知った後もこのような対応でいいのかは個人的には疑問を感じるのですが、そのあたりのことについては、解説でははっきりしたことはわかりませんでした。

 ところで、話がかわりますが、いつもながら、萬年先生の物語記事はおもしろいですね。会社を休眠会社にして5年間休眠を続け、そのことで法務局による職権抹消での清算手続という発想は浮かんだことがありませんでした。

 

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2009年7月 7日 (火)

【金融・企業法務】 座談会 預金者の取引経過開示請求権に係る最高裁判決が金融実務に及ぼす影響

 金融法務事情No1871号(2009.7.5)の座談会です。

 委任を根拠として預金者の取引経過開示請求権を肯定した最高裁判決(最高裁平成21年1月22日)についての座談会です。

 座談会で話し合われた論点は、以下のとおりです。

1 過去の判例紹介

2 理論上の問題点

   ①(準)委任説と付随義務説、信義則説の問題点の比較

   ②普通預金の委任的要素を考える

   ③自動継続定期預金と委任の終了原因

   ④銀行、会社法、個人情報保護法等

(2)開示請求権の法的性格

   ①開示請求権者の範囲

   ②開示請求権は預金契約ごとに成立するか

   ③開示請求権の消滅時効

   ④預金の差押え・譲渡・担保設定と開示請求権

   ⑤開示済みの抗弁

   ⑥開示義務違反と債務不履行

(3)共同相続と開示請求権

   ①共同相続と開示請求権の単独行使

   ②「預金契約上の地位」を承継しない相続人の開示請求権

(4)被相続人のプライバシー

(5)17年最高裁決定との関係

(6)本判決の射程

  ①債権法改正との関係

  ②預金契約に対する射程

  ③貸金取引・外国為替取引等に対する射程

  ④他業態に対する射程

  ⑤貸金庫の場合

  ⑥印鑑票、伝票等の開示請求・質問権の有無

3 実務上の諸問題

(1)権利(義務)となる場合の問題点

  ①開示請求権の及ぶ期間

  ②照会手数料の徴収の可否

  ③調査嘱託と手数料

  ④取引店を特定しない開示請求

(2)開示請求権の濫用

(3)開示請求権者の判断に誤りがあった場合の責任と救済

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2009年7月 5日 (日)

【金融・企業法務】 賃借人破産における破産法53条1項による解除の規律

 銀行法務21・2009年6月号(No703号)で連載されている賃借人破産における破産法53条1項による解除の規律(井上計雄弁護士)という論文が、非常に興味を引きました。

 設例についても、よく相談を受ける内容です。設例を引用すると以下のとおりです(P22)。

 賃借人Aは、賃貸人Yからショッピングセンター内の店舗を期間10年とする建物賃貸借契約に賃借し、呉服販売を行っていた。賃借後、5年が経過した段階でAに対して破産手続開始決定がなされ、Aの破産管財人Xは、直ちに破産法53条1項に基づき、この賃貸借契約を解除した。賃貸借契約に次の条項が定められていた場合、これらの効力はどうなるか?

 ①「賃借人が契約期間満了前に本契約を解約しようとするときは、6ヶ月前までに賃貸人に予告しなければならない。賃借人が6ヶ月分の賃料を支払ったときは、即時に解約できる。」(予告期間条項)

 ②「賃借人が契約期間満了前に本契約を解約したときは、敷金の50%相当額の違約金を支払う。」(違約金条項)

 ③「本契約が終了したときは、賃借人は本契約終了から明け渡しまで賃料の3倍に相当する損害金を支払う。」(倍額損害金条項)

 回答は、銀行法務21の6月号を購入していただくとして、実務上の問題点をきれいに整理したうえ説明されています。

 

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2009年7月 4日 (土)

【金融・企業法務】 民事再生手続開始決定の後にした、再生債務者に対する同人所有の建物についての根抵当権設定の請求及び右請求についての再生手続の監督員に対する同意を求める請求がいずれも棄却された事例(大阪地裁平成20年10月31日)

 判例時報No2039号(7月1日号)で紹介された裁判例です。

 原告である債権者の立場からいえば踏んだり蹴ったりの判決です。

 Xが、平成19年9月28日、Y1に対して、建物建築のために、2億円を融資しました。その際に、本件建物に完成後に極度額2億円の根抵当権を設定することに合意しました。

 10月29日、完成し、11月30日には、表示登記がされ、12月11日には、所有権保存登記がされました。

 平成20年1月29日、根抵当権設定に必要な書類を作成して、設定手続はY1が行うことを合意した。

 ところが、Y1がそれをしないまま、2月13日、民事再生手続の申立を行ってしまったのです。

 そこで、Xは、Y1と、Y1の監督委員Y2に対して、表題表示のとおりの裁判を提訴しました。

 大阪地方裁判所は、再生債務者は、登記をしなければ物権の取得を対抗できない民法177条の第三者にあたるとして、Xの各請求を認めませんでした。

 建物を建てる際の融資は、本当に慎重にしなければなりませんね。完成しても、担保権の設定登記を未了の段階で、倒産すると、本当に践んだり蹴ったりですね。

 ただ、X社は、Y1が進める民事再生については、協力しないでしょうね。Y1の債権が総負債のどの位の割合を占めるか気になるところですが・・・

 

 

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2009年7月 2日 (木)

【金融・企業法務】 投資信託換金受付時における銀行の窓口対応の留意点

 銀行法務21(2009年6月号)(No703号)で紹介された名古屋地裁平成20年12月19日の判決です。

 事案は、以下のとおりです。

 平成19年1月15日、XさんがXの姉Gとともに、Y銀行を訪ね、投資信託等の換金を求めました。

 3月29日、Xさんは、Xの妹ともに、Y銀行を訪ね、「Gに法律事務所に連れて行かれそこで住所と氏名を書かされた。銀行さん、助けてください。」と述べた。

 3月30日は、Xさんは、X代理人とGとともに、Y銀行を訪ね、X代理人は、委任状を示して、投資信託等の換金を求めました。その時、支店長は、Xに対して、委任状を示し、その委任状にサインをしたかどうかを尋ねたところ、Xは「わからない」と答え、また、Xに対して払い戻しの意思を確認したところ、Xは何も答えませんでした。そのため、支店長は、投資信託等の換金には応じられない旨回答しました。

 7月12日、Xから、Y銀行に対して提訴し、平成20年5月26日の換金手続きにより受領した金額と平成19年3月30日等の基準価額の価額変動部分の金額を請求された事案です。

 名古屋地裁は、

 Yは、受益者に対し、委託者から一部解約金の交付を受けることを条件として一部解約金の支払義務を負い、Xは、Yに対して、上記条件の付された一部解約金支払請求権を有するものと解されるとしつつも、

 本件投資信託の換金方法には、上記の委託者に対する解約実行請求のほかに販売会社による買取の方法があり、いずれの方法によるかで課税上の取扱いが異なり、手続も異なるため、換金しようとする受益者は、販売会社に対して、いずれの方法によるかを示して換金を請求しなければならないとして、

 Xが指摘する時期においては、換金方法につき、解約実行請求か買取りの方法にいずれによるかを指示していないから、Xが解約実行請求の意思表示をしたものとは認められないとして、結局、Xに一部解約金支払請求権は発生していないと判断しました。

 結論として、裁判所は、銀行の勝ちとしていますが、解説者の方によると、「本判決の事案においては、詳細は明らかでないものの、Xの財産をめぐり親族間でトラブルがあり、YはXの意思確認を慎重に行うべきとの判断から本件訴訟に至ったとの事情があるようであり、裁判所としては、このような事情を背景にXの解約の意思表示につき慎重な認定を行ったのではないかと推測されます。」と紹介しているところから、ケースによっては、解約実行請求の意思表示を認めるべきであるとの判断がなされる場合もありうると思われますので、注意が必要です。

 

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2009年6月30日 (火)

【金融・企業法務】 保証する意思で金銭消費貸借契約書の借主欄に署名押印した場合であっても、民法446条2項の所定の書面に該当する

 旬刊金融法務事情No1870(6月25日)号搭載の大阪高裁平成20年12月10日判決です。

 事案は、以下のとおりです。

 保証する意思で金銭消費貸借契約書の「借主」欄に署名押印した場合であっても、民法446条2項の書面に該当するのか?ということです。

 民法446条2項 保証契約は、書面でしなければ、その効力を生じない

 大阪高裁は、以下のように理由をつけて、民法446条2項の書面に該当するとの判断をしています。

  (民法446条2項の趣旨) 民法446条2項が保証契約について書面を要求する趣旨は、保証契約が無償で、情義に基づいて行われる場合が多いことや、保証契約の際には保証人に対して現実に履行を求めることになるかどうかが不確定であり、保証人において自己の責任を十分に認識していないことが多い 

                     ↓それ故に

 保証を慎重にならしめるために保証意思が外部にも明らかになっている場合に限って契約としての拘束力を認める

                     ↓そうすると

 Yは、ZのXに対する債務を保証する意思で、金銭消費貸借契約書の借主欄に署名押印したというのであるから、これによって、主債務者であるZと同じ債務を連帯して負担する意思が明確に示されていることに違いはなく、保証意思が外部的に明らかになっているといえる

                     ↓従って

 Yは、借主として作成された金銭消費貸借契約書は、民法446条2項所定の書面に該当する

 

 ただ、なんで、保証人を引き受けたはずなのに、借主欄になったのかな? 

 請求原因の認否には、「甲野から、携帯電話で、保証人ではなく債務者になってほしいとの依頼があり、それは困ると拒絶したものの、喫茶店において、同席していた乙川から、甲野がかえすと言っているから借主になってや」と言われたため、やむなくそのとおりに契約書を作成した」となっています。第1審の半分も薄いためよくわかりません。 

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2009年6月28日 (日)

【金融・企業法務】 譲渡禁止特約に反して債権を譲渡した債権者が譲渡の無効を主張することの可否

  旬刊金融法務事情No1870(6月25日)号で紹介された最高裁判決です。

 事案の概要は、以下のとおりです。

 Xが、A社に対する債権を、Y社に譲渡したのですが、当該債権には、譲渡禁止特約がついていました。A社は、債権者不確知を理由に供託しました。XとYとの間で、債権の帰属を巡って争われました。

 原審は、債権には譲渡禁止特約がついていることを理由に、債権譲渡は無効として、Xを勝たせました。

 最高裁は、反対に、Yを勝たせました。

 論点的には、譲渡禁止特約に反して債権を譲渡した債権者が、譲渡の無効を主張することができるのか?ということになります。

 私の受験時代の記憶によると、譲渡禁止特約って、物権的効力があるはず(念のために法曹同人の新択一受験講座で確認)。

                     ↓そうすると

 債権譲渡の効力は生せず、物権的効力だから、誰でもその無効が主張できるはず

                     ↓従って

 原審のような判断に、理屈上はなるように思われます。

                     ↓しかし

 譲渡禁止特約は、債務者の利益を保護するためにふされるもの

                     ↓とすれば

 「譲渡禁止の特約に反して債権を譲渡した債権者は、同特約の存在を理由に譲渡の無効を主張する独自の利益を有しない

                     ↓従って

 「債務者に譲渡の無効を主張する意思があることが明らかであるなど特段の事情がない限り、その無効を主張することは許されない」ということになります(最高裁判決)。

 ここからは、XかそれともYかを勝たせるか決められるのは、債務者であるA社ということになります。

 譲渡禁止特約がついた案件は、債権の譲渡の各当事者は、債務者Aにお願いすることになります。これはこれで、債務者の立場が強くなりすぎて、困ったことも生じるかもしれませんね。

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2009年6月26日 (金)

【金融・企業法務】 日経新聞株式譲渡ルール事件 上告審判決

 判例時報No2038号(平成21年6月21日号)で紹介された最高裁判決平成21年2月17日(第3小法廷)です。

 株式会社の従業員がいわゆる持株会から譲り受けた株式を個人的な理由で売却する必要が生じたときは持株会が額面額でこれを買い戻す旨の当該従業員と持株会との間の合意(株式譲渡ルール)が、有効かどうか争われた事案です。

 つまり、前述の株式譲渡ルールが、会社法107条や127条に反するかどうかが問題とされました。

 最高裁は、

 ①株式譲渡ルールは、日刊新聞の発行を目的とし、日刊新聞法1条に基づき定款で株式の譲受人を事業に関係ある者に限ると限定して、株式の保有資格を原則として現役の従業員等に限定する社員株主制度を採用している当該会社において同制度を維持することを前提に、これにより譲渡制限を受ける株式を円滑に現役の従業員等に承継させるためのものであること

 ②非公開会社である当該会社の株式にはもともと市場性がなく、上記株式譲渡ルールにおいては、従業員が持株会から株式を取得する際の価格も額面額とされていたこと

 ③当該従業員は、上記株式譲渡ルールの内容を認識した上、自由意思により持株会から額面額で株式を買い受けたものであること

 ④当該会社が、多額の利益を計上しながら特段の事情もないのに一切配当を行うことなくこれをすべて会社内部に留保していたという事情はないこと

 の事情の下では、本件合意は、会社法の規定に反するものではなく、公序良俗にも反せず、有効であると判断しました。

 これには、同じ様な最高裁判例があります。

 最高裁平成7年4月25日は、

 従業員持株制度に基づいて従業員に株式を取得させるに際し、会社と当該従業員との間で、退職の際には、株式を額面額で取締役会の指定する者に譲渡する旨の合意をしたという事案において、

 当該会社が非公開会社であること、従業員持株制度の趣旨・目的、原告らが同制度の趣旨内容を了解した上、株式を額面額で取得したことなどを考慮し、同合意は旧商法204条1項に反するものではなく、公序良俗にも反せず有効であると判断しています。

 なお、平成7年判決は、全従業員が約40名という小規模会社の例で、平成21年判決は、日本を代表する新聞社の例という事案です。

 従業員持株会については、私が司法試験を受けていたころから、Bレベルくらいの論点だったと記憶しています。その時は、無効説が有力だったような記憶がおぼろげに残っています。記憶間違いかもしれませんが・・・

 さすがに、公開会社の場合は、無効だと思いますが・・・

 

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2009年6月19日 (金)

【金融・企業法務】 顧問企業が1社増えました

 10年前に独立開業して以降、縁あって、時折、お客様をご紹介していただける方がおられるのですが、その方が経営の第一線を退くということで、後継者の方に相談のホットラインを敷いておきたいという思いから、当事務所に対して、法律顧問の委嘱をいただきました。

 新しい顧問先は、船舶関係の会社なので、船舶分野では、当事務所では、2社目となります(合計12社)。

 今後、10年で、合計20社を目指します。

 顧問料は、ご依頼の会社にとっては固定経費となるので、それに見合うサービスをどのような形で、ご提供させていただくことができるのか、考えねばなりません。

 また、顧問先企業様におかれましても、こんなサービスを提供して欲しいとのご要望がありましたら、ご遠慮なしに、どんどん当事務所にまでメールをいただければと思います。

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2009年6月17日 (水)

【金融・企業法務】 共同相続人が相続し、共有状態にある株式に関する権利行使者の定め、株主総会における議決権の行使が権利濫用にあたり、許されないとされた事例(大阪高裁平成20年11月28日判決)

 判時No2037号(6月11日号)で紹介された裁判例です。

 同族会社の紛争です。亡Aの保有株式の、8分の6を承継した甲さんと、8分の2を承継した乙さんとが、会社の支配をめぐって争いになった事案です。

 会社法106条は、株式が2以上の者の共有に属するときは、共有者は、当該株式についての権利を行使する者1人を定め、株式会社に対して、その者の氏名又は名称を通知しなければ、当該株式についての権利を行使することができないと定めています。

 権利行使者を定めるに当たっては、持分の価格に従い、過半数をもって決することができると解されています。

 そして、権利行使者を定めるに当たっては、①共有者間で協議が必要か、②要するとしてどの程度の協議を要するか、③協議が十分でない場合には、過半数を有する者による権利行使が権利の濫用に当たるのかが問題となります。

 本件事案は、協議を十分に行ったとしても、その決定に変更が生じる可能性は全くなく、また、協議についても一応は持ちかけられていたのですから、高裁の判決には大きな疑問を感じます。

 民法252条の解釈として、協議まで必要だったのかな?と思いますが、大阪地裁平成9年4月30日判決は必要説にたっているみたいです。

 権利行使者が自己の判断で共有状態にある全株式につき権利行使をすることができるとされているため、権利行使の弊害も予想されると解説されていました。

 田舎でも同族会社の紛争が多いので、結構、大切な知識かもしれませんね。

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2009年6月14日 (日)

【金融・企業法務】 いわゆるフルペイアウト方式によるファイナンス・リース契約中の、ユーザについて民事再生手続開始の申立があったことを契約の解除事由とする旨の特約の効力 最高裁平成20年12月16日判決

 旬刊金融法務事情1869(6月15日)号で紹介された最高裁平成20年12月16日判決についてです。

 事案は、以下のとおりです。

 リース業者Xが、リース契約のユーザであるYにつき、Yが民事再生手続開始の申立を行ったため、「このような申立てがあったときは、リース業者は催告しないで契約を解除することができる旨」の特約(再生解除特約)による本件リース契約の解除を主張して、Yに対して、解除日の翌日からリース物件の返還日までに係るリース料相当額の損害金の支払いを求めた事案です。

 本件リース契約は、リース業者がリース期間中にリース物件の取得費、金利及びその他の経費等を全額回収できるようにリース料の総額が算定されている、いわゆるフルペイアウト方式のファイナンス・リース契約となっています。

 第1審は、再生解除特約を有効として、解除日から返還までの約1億1000万円の損害金を認めました。共益債権に該当するため、真っ青です。

 第2審は、再生解除特約を無効として、リース期間満了以降返還までの約90万円の損害金を認めました。

 なんと、約1億1000万円  →  約90万円  に減額されたのです。

 最高裁は、第2審の判断を、正しいと認めました。

 以下、その要旨です。

 民事再生手続は、経済的窮境にある債務者について、その財産を一体として維持し、債務者と全債権者との間の民事上の権利関係を調整して、債務者の事業または経済生活の再生を図るものであり、担保の目的物も民事再生手続の対象となる責任財産に含まれる

 ファイナンスリース契約におけるリース物件は、リース業者がリース契約を解除してリース物件の返還を求め、その交換価値によって未払いリース料等の弁済を受けるという担保としての意義を有する

 リース契約に於いて再生解除特約による解除を認めることは、このような担保としての意義を有するにとどまるリース物件を、一債権者と債務者との間の事前の合意により、民事再生手続開始前に債務者の責任財産から逸出させ、民事再生手続の中で債務者の事業等におけるリース物件の必要性に応じた対応をする機会を失わせることを認めることに他ならない

 民事再生手続の趣旨、目的に反することは明らかであるとして、再生解除特約を無効としました。

 解除特約の射程範囲ですが、

 第2審の理由付けは、再生債務者の事業又は経済生活の再生を図ることが困難となるということに対して、

 最高裁の理由付けは、一債権者と債務者との間の事前の合意により、民事再生手続開始前に債務者の責任財産から逸出させ、民事再生手続の中で債務者の事業等におけるリース物件の必要性に応じた対応をする機会を失わせることを認めることに他ならない

ということをあげていることから、

 リース契約のユーザーについての法的倒産開始の申立てがあったことを理由とする解除特約の効力について広く妥当するものと考えているように思われると、解説されていました。

 ただ、破産手続にも適用があると考えるのは感覚的に難しいような気がしますが・・・ 

 解除特約の相談は結構ありますね・・・

  

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2009年6月10日 (水)

【金融・企業法務】 債権差押命令発令後に、債務者について破産手続開始決定がされた場合の執行手続取消しの可否(積極)

 旬刊金融法務事情No1868(6月5日)号で紹介されている裁判例です(東京高裁平成21年1月8日決定)。

 抗告人は、抗告人を原告、債務者を被告とする執行力ある判決正本に基づき、抗告人の債務者に対する賃料相当損害金等を請求債権として、債務者の第三債務者に対する敷金返還請求権について債権差押命令の申立てをし、執行裁判所により債権差押命令が発令されました。

 その後、債務者について破産手続開始決定がされ、破産管財人が、本件差押命令の取消しを求める旨の上申をしたため、執行裁判所は、債務者について破産手続開始決定がされたことを理由に、本件差押命令を取り消す旨の原決定をしたところ、抗告人がこれを不服として執行抗告をした事案です。

抗告人は、

 ①本件差押命令の請求債権は、破産法253条1項2号の非免責債権にあたるので、本件差押命令を取り消す理由はない

 ②債務者は、本件差押命令の債務名義の執行力を排除するためには請求異議の訴えを提起するべきである

 などとして、原決定は違法不当であると主張しました。

 ①については、

 破産手続開始決定により、本件差押命令は破産財団に対し効力を失い、破産管財人は、本件差押命令の差押債権を破産財団に属するものとして自由に処分し得るのであり、このことは請求債権が非免責債権であるかどうかによって左右されないこと

 ②については、

 破産手続開始決定により、債務名義に係る請求権の存否等が左右されるものではなく、原決定が債務名義の執行力を排除したものではないことは明らかであること

 として①及び②の主張を排斥しています。

 強制執行開始後に、債務者に対して破産手続開始決定がされた場合に、東京地裁民事21部では、債権執行事件については、破産管財人の上申があった場合には、差押命令を取り消すという運用であり、今回の決定はこの運用を是認したものです。

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2009年5月26日 (火)

【金融・企業法務】 数口債務と開始時現存額主義の適用

 ダイジェスト金融商事重要判例(平成20年)で紹介されている裁判例(大阪高裁平成20年5月30日)です。

 金融機関Yは、B社に対して、5口の貸付債権を有し、これを担保するため、個人Aに連帯保証させたうえ、B社所有の建物およびB社と物上保証人Cとが共有する土地にそれぞれ根抵当権を設定していた。

 開始決定当時のYのB社に対する債権額は、元本だけで約1億2500万円にのぼったが、Yの前記土地建物の任意売却代金によって、合計約1億2500万円の弁済を受領した。

 Yは、Aの破産手続において前記の弁済額を控除しない約1億2700万円をもって届け出を行い、かつ、全額について破産債権査定の決定を受けた。

 Aの破産管財人Xがこれを不服として提起した破産債権査定異議の訴えの控訴審が本件です。

 大阪高裁は、保証人破産の場合において主たる債務者からの弁済により複数口の債権のうちの一部の口の債権が完済されている場合には、債権の全額が消滅した場合に該当するという理由により、管財人を勝たせました(管財人の勝ち)。

 ところが、Yは、Bの破産手続きにおいても、本件と同額の破産債権を届け出をしており、こちらの大阪高裁(平成20年4月17日)では、本判決と正反対の判決が出ています(管財人の負け)。

 つまり、明らかに事実関係を共通する両事件において、全く正反対の結論が出てしまったわけです。

 感覚的には、5月判決の方が落ち着きはいいですが、債権の口というとになれば、人為的に操作が可能であり、これが基準だと濫用事例も出てくるのでは?と思います。

  

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2009年5月25日 (月)

【金融・企業法務】 民訴法248条による相当な損害額の認定

 ダイジェスト金融商事判例(平成20年度版)(銀行法務21)で紹介されている最高裁判決です(平成20年6月10日)。

 事案は、損害が発生したことは明らかであるが、損害額の立証がきわめて困難な場合に、現新が、損害額はこれを算定することができないとして請求を棄却したことに対して、最高裁は、民訴法248条により、口頭弁論の全趣旨及び証拠調べの結果に基づいて、相当な損害額が認定されなければならないと判断して、原審の判断を棄却して、差し戻しをしました。

 なお、平成20年度重判解説は、加藤新太郎先生によるものですが、加藤先生によると、民訴法248条の法的性質は、証明度軽減説と、裁量評価説との対立があるようです。

 加藤先生は、この判決は、裁量評価説を前提にしているものと考えておられるようです。

 損害立証の基礎となる事実については原則的証明度が必要であるが、民訴法248条は、損害額の評価については裁量的であることを許容したものと考える説のことです。

 加藤先生は、私が司法修習生のときに、研修所の事務局長をされていました。釧路支部に転勤されたことがあるようですが、その時の失言を、釧路失言とは述べて、あまり笑えない冗談をおっしゃっておられたことを記憶しております。

 時折、購買部の書棚で本を読んでおられたことをみかけたことがありました。懐かしいですね。

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2009年5月20日 (水)

【金融・企業法務】 建物および賃借権の優先譲り受け申し立て (最高裁平成19年12月4日決定)

 ダイジェスト金融商事重要判例(平成20年)(銀行法務21)で紹介されている最高裁決定(平成19年12月4日)です(平成20年重判解説民法5参照)。

 賃借人は、賃貸人の承諾なければ、賃借権を譲渡したり、転貸することはできません。

 ただし、借地借家法19条1項により、借地権者が賃借権の目的である土地の上の建物を第三者に譲渡しようとする場合において、その第三者が賃借権を取得し、または転借をしても、借地権設定者に不利となるおそれがないにもかかわらず、借地権設定者がその賃借権の譲渡または転貸を承諾しないときは、借地権者は裁判所に対し、借地権設定者の承諾に代わる許可を求める旨の申し立てることができます。また、同法3項は、借地権設定者は、みずから建物の譲渡および賃借権の譲渡、または転貸を受ける旨の申し立て(優先譲り受け申し立て)をすることができるとされています。

 最高裁決定の事案は、建物が借地と他の土地とにまたがって建築されている場合に、借地権設定者が、優先的譲り受けの申し立てをすることができるかという論点についてのものですが、最高裁は、借地借家法が裁判所に付与した権限を限定的にとらえて、優先譲り受け申立ては許されないと判断しました。

 原審や原々審によれば、建物を取得した者が借地権設定者に対して、借地権譲り受けに対する給付として、なんと、約3400万円の金員の支払いを命じています。まあ、都会での話ですね・・・

 ところで、最近、法律書のある本屋さんにいくと、債権法改正の書籍が多く出るようになっています。商法が会社法に代わってからわかりにくいようになったのですが、民法も同じようなことになることを大変恐れています。

 最近の新法の制定、法律の改正のスピードには、本当に、ついていくのがなかなか難しいですね。 

 

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2009年5月14日 (木)

【金融・企業法務】 顧客情報の流用

 ダイジェスト金融商事重要判例(平成20年版)(銀行法務21)で紹介されている裁判例です。

 医師向け有料職業紹介事業を営む原告X社が、従前、原告に勤務し、かつ、原告と同じく医師向けの優良職業紹介事業を営むY社に勤務する被告Aが、X社を退社するにあたり、原告が管理している医師情報を無断で持ち出し、Y社の事業の執行として、医師情報に基づき、294名の医師に対して、電子メールであいさつ状を出した行為が、不法行為に該当するかどうかが問題となった事案です。

 東京地裁平成19年1月26日は、

 労働者は、労働契約に基づく付随義務として、信義則上、使用者の労務に服したことにより知りえた営業上の秘密を他にもらしたり、使用者の得意先を自分で利用しないようにする義務を負うとして、

 原告が本件持ち出し情報の持ち出しと利用を許諾していない以上、違法性が推定されると判断しました。

 解説の先生も、本判決の考え方に立脚すると、退職者が在職中の得意先にアクセスすると、退職者が退職時に特段の守秘義務契約や誓約書の差し入れをしていなくても、本件のような問題が必然的に生じうることに留意されたいと説明されています。

 労働者にここまでの義務を負わしていいのかどうか、本件事案では何かこのような義務を負担させてもよい事情があったのかなどが知りたいですが、なぜか、解説記事が薄くて、このあたりの事情はよくわかりませんでした。

 

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2009年5月13日 (水)

【金融・企業法務】 ナナボシ粉飾決算損害賠償請求事件

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2009年5月12日 (火)

【金融・企業法務】 監査法人の善管注意義務

 ダイジェスト金融商事重要判例(平成20年版)(銀行法務21)で紹介されていた東京地裁平成20年2月27日判決です。

 監査法人であるYが、XとAとの間の架空取引を看過して適法意見を表明したことが、Xとの監査契約上の善管注意義務違反にあたると主張して、Yに対して、監査報酬相当額の損害賠償を求め提訴した事案です。

 ①Yの行った監査手続において、A社社印と回答者印が押印され、XのA社に対する売掛金の残高についてX側保管の監査証拠書類から認めるものと相違がない旨回答がなされた確認状がYに返送されていること

 ②売上取引テストにおいて、仕入先からA社までの商品の流れを検証し、また、証憑との突合せをなすことによって、XとA社との間の取引における注文書や発注内示書の売上金額、売上商品名、規格に矛盾がないかを検討し、さらに、Xの取引担当者に対してヒアリングを実施していること

 ③Yは、XがUターン取引を行っていないかを検証するため、棚卸資産の分断的手続きを実施して異常がなかったことを認めていること

 を理由に、Yの善管注意義務違反を否定しました。

 真面目にやっていれば心配ないということでしょうか?

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2009年5月11日 (月)

【金融・企業法務】 会計監査人の責任

 ダイジェスト金融商事重要判例(平成20年度)(銀行法務21)で紹介されている東京地裁平成19年11月28日の判決です。

 会社法429条1項2項(旧商法特例法10条)は、以下のとおり、会計監査人の第三者に対する責任規定をおいています。

 1項 役員等がその職務を行うについて悪意又は重大な過失があったときは、当該役員等は、これによって第三者に生じた損害を賠償する責任を負う。

 2項 次の各号に掲げる者が、当該各号に定める行為をしたときも、前項と同様とする。ただし、その者が当該行為をすることについて注意を怠らなかったことを証明したときは、この限りではない。

 4号 会計監査人 会計監査報告に記載し、又は記録すべき重要な事項についての虚偽の記載又は記録

 X銀行は、融資先のA会社に、その貸借対照表を含む決算資料を参考資料として、シンジケートローンを組み、融資を実行したものの、じきに、A社が民事再生手続開始を申し立てて、X銀行の融資の大半が回収できなくなったため、会計監査人である公認会計士が作成した監査報告書中の貸借対照表等が適正との意見は虚偽記載であるとして、旧商法特例法10条に基づき、貸出金相当額の損害賠償を求めるため、提訴した事案です。

 まず、会計監査報告に虚偽記載があったとしても、会計監査人が企業会計審議会が定めた監査実施基準に準拠した監査手続実施し、その過程において、会計監査人として通常要求される程度の注意義務を尽くした場合には、旧商法特例法10条但し書きの規定により、免責される。

 ↓

 企業会計審議会の定めた監査実施基準の内容は、抽象的

日本公認会計士協会の定めた監査実施基準に準拠して監査を実施した場合には、企業会計審議会の定めた監査実施基準に準拠した監査を実施したといえる

 →この場合には、免責される

 本件の場合も結論として、これらの要件をみたした監査であるから、免責されると判断しました。

 

 私を含めてですが、弁護士の少なくない人数の者は、会計学の知識は乏しいのですね。習いませんからね。昔、教養選択科目で、会計学があり、確か、Wセミナーの成川学院長が指導されていたような気がしますが、勉強しておけばよかったなあと思います。そういえば、大学の授業でも、会計学はあったなあ。後悔先に立たずです。

 とはいっても、田舎弁護士が扱う事件の大半は、幸いなことに、会計学の知識は不要ですが・・・ 一時期、せめて、松山の大栄教育にでも通学しようと検討しましたが、時間がなくて、できませんでした。残念です。

 

 

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2009年5月10日 (日)

【金融・企業法務】 カネボウ少数株主損害賠償請求事件控訴審判決

 ダイジェスト金融・企業法務重要判例(平成20年度版)(銀行法務21)で紹介されている裁判例です。

 産業再生機構は、カネボウから、C種類株式を取得していましたが、Yファンドに、C種類株式全部を、相対取引で、1株201円で売却しました。

 Yファンドは、カネボウの普通株式1株162円で買い付ける公開買い付けを行いました。

 カネボウの普通株式を有しているX株主が、YがC種類株式を取得する際には、公開買い付けを行う必要があったのにこれを行わなかったとして、その保有する株式について、201円での売却機会が与えられなかったとして、Yを提訴しました。

 解説の先生によれば、公開買い付け規制の例外規定の適用については、種類株式が発行されている場合には、その種類ごとに判断するというのが金融庁の見解であり、実務もこのような解釈に従って、相対取引によって種類株式の取得が行われてきたそうです。

 東京高裁平成20年7月9日判決は、「株券等についてとくに限定は加えられていないという文理に照らすと」という理由により、当該買付対象とされた種類株式に係る株券等の所有者だけではなく、買付対象外の株券等も含めたすべての株券等の所有者が、25名未満であり、かつ、そのすべての所有者から同意を得ていることが必要であると判断しました。

 解説の先生によれば、「最高裁が、本判決を維持するのか、また、維持する場合に本判決と同様の理由によるのかが注目される」と説明されておられます。

 私も、一度、公開買い付けに応じようかどうか迷ったことがありましたが、不透明なところが気に入らず、早々に、市場で売却してしまったことがあります。

 

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2009年5月 9日 (土)

【金融・企業法務】 ヤクルト株主代表訴訟控訴審判決

 ダイジェスト金融商事重要判例(平成20年度)(銀行法務21)で紹介されている裁判例(東京高裁平成20年5月21日)です。

 本件は、ヤクルト本社が、平成3年から平成10年まで、デリバティブ取引を行い、平成10年3月期に特別損失を計上して、最終的に約533億円の損失を被ったことに関し、当時の役員らに善管注意義務違反等があるとして、同社の株主が提起した株主代表訴訟です。

 解説の先生によれば、「本件は、大規模事業会社におけるリスク管理体制の構築義務や、担当取締役以外の取締役・代表取締役の善管注意義務の内容などについて判示した高裁判決である。」と紹介されています。

 まず、一般論として、

 ヤクルト本社のような事業会社がデリバティブ取引を行うにあたっては、各取締役は、取締役会等の会社の機関において適切なリスク管理の方針を立て、リスク管理体制を構築するようにする注意義務を負う

 ↓

 具体的にどのような方針を定め、どのように管理するかは、一義的に決まるものではなく、そこには幅広い裁量がある。

 ↓

実際にデリバティブ取引の実務を担当する取締役は、

 (1)取締役会等の会社の機関において定められたリスク管理の方針、管理体制に従い、そこで定められた制約に従って取引をする注意義務を負う

 (2)個々の取引の実行にあたっては、法令、定款、社内規則等を遵守した上、事前に情報を収集、分析、検討して、市場の動向等につき適切な判断をするよう努め、かつ、取引が会社の財務内容に悪影響を及ぼすおそれが生じたような場合には、取引を中止するなどの義務を負う

代表取締役については

 下部組織等(資金運用チーム・監査室・監査法人等)が適正に職務を遂行していることを前提に、そこから挙がってくる報告に明らかに不備、不足があり、これに依拠することに躊躇を覚えるというような特段の事情のない限り、その報告等を基に調査、確認すれば、その注意義務を尽くしたものというべきである。

その他の取締役については

 相応のリスク管理体制に基づいて職務執行に対する監視が行われている以上、特に担当取締役の職務執行が違法であることを疑わせる特段の事情が存在しない限り、担当取締役の職務執行が適法であると信頼することには正当性が認められるのであり、このような特段の事情のない限り、監視義務を内容とする善管注意義務違反に問われることはない

 しかし、533億円、巨額ですね。リスク管理体制の構築が大切ですね。 

 

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2009年5月 8日 (金)

【金融・企業法務】 中国銀行株主総会出席禁止仮処分事件

 ダイジェスト金融商事重要判例(平成20年度版)(銀行法務21)で紹介された裁判例です。

 Yは、X銀行との返済猶予交渉に右翼団体に交渉を依頼したり、直接交渉では、「頭取の頭を蜂の巣にする」等の脅迫めいた発言や、大理石製の灰皿やライターケースを机に叩きつけるといった行動をとりました。

 平成19年の定時株主総会では、Yは株主でないことを理由に入場を断られたが、その際に、「今度来るときは武器を持ってこないといけない」などの発言をして、同年自己名義で1000株株式を取得しました。

 Xは、平成20年開催予定の定時株主総会へのYの出席禁止を求める仮処分を行いました。

 岡山地裁(平成20年6月10日)は、Yが所持品検査を受け、武器類の不所持を証明しない限り、株主総会への出席は認めないとの判断を示しました。

 気になる条文が、会社法315条の議長の総会秩序維持権についてですが、この条文は、議長権限が本来的には株式会社に帰属すること否定することを否定する趣旨のものではないとして、条文上の問題点をクリアしています。

 解説の先生は、労働争議や取引トラブルの抗議行動を行うために、株付けをして株主総会に出席しようとする者が後を絶たない。本決定は、条件付きながらも、東証1部上場会社の申立を認めたものであり、実務上の意義は大きいと解説されています。

 地方でも、同族会社の株主総会などが紛糾することがありますので、その対処法として、参考になります。

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2009年5月 7日 (木)

【金融・企業法務】 モリテックス株主総会決議取消事件

 ダイジェスト金融商事重要判例(平成20年度版)(銀行法務21)で紹介されている裁判例です。

 Yは、上場会社であり、Xはその筆頭株主です。平成19年6月に役員選任議案の定時株主総会開催される予定であったことから、筆頭株主のXが、株主総会に先立ち取締役選任の件などを議案とする株主提案権を行使して、Yの株主に対して委任状勧誘を行いました。

 Xが取り付けた委任状は、Yによる招集通知の発送前に行われたことから、Y提案の役員選任議案の内容がわからず、委任状は、☆1「役員選任の会社提案がなされた場合には、Xに白紙委任する」程度の記載でした。

 その後、Yは、Xの提案と異なる選任議案を上程する株主総会招集通知等を株主に発送したが、☆2その際に、議決権を行使した株主は、賛否にかかわらず、くおカード1枚(500円)を贈呈する旨の記載がされていました。

 Yは、本件株主総会において、上記委任状を無効なものとして取り扱ったため、会社提案議案が可決され、株主提案議案は否決された。

 そこで、Xは、株主総会決議取消を求め提訴しました。

 委任状の有効性については、東京地裁(平成19年12月6日)は、以下のとおり判断しました。

 委任事項における白紙委任との記載にかかわらず、本件委任状によって、本件会社提案については賛成しない趣旨によめるとして、有効であると判断しました。

 次に、会社法120条1項は、株主の権利行使に関して行われる財産上の利益の供与を禁止していますが、例外的に、①当該利益が株主の権利行使に影響を及ぼすおそれのない正当な目的に基づき供与される場合であり、かつ、②個々の株主に供与される総額も会社の財産的基礎に影響を及ぼすものでないときに、例外的に、違法性を有しないと基準を立てます。

 本件事案においては、②の要件は充足するものの、①の要件は充足しないとして、結局会社法120条1項の禁止する利益供与に該当すると判断されています。

 これは感覚的にわかります。私も、「Yさん、500円くれるんか、じゃあ、いれてあげんとかわいそう」と思ってしまいますから。

 裁判所も、「本件会社提案に賛成する議決権行使の獲得をも目的としてものであって」と言い切っています。

 委任状合戦は、中小企業でもよくある相談の1つなので、気をつけないといけませんね。 

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2009年5月 4日 (月)

【金融・企業法務】 所有権留保の対象物件が放置されている場合の留保所有権者の責任 (最高裁平成21年3月10日)

 銀行法務21No702(2009年5月)号で紹介された最高裁判決です。

 判決要旨は、以下のとおです。

 第三者所有の土地上に動産(車)が存在する場合、当該動産の購入代金の立替金債務の担保として、当該動産の所有権を留保している者は、立替金債務の弁済期経過後は、当該動産の撤去義務を負う

 私の顧問先にも、自動車会社があるため、余りありがたくない判決です。

 原審は、Yが所有する留保所有権は実質的に担保権の性質を有するものにすぎないから、Yは所有者として本件車両を撤去して本件土地を明け渡す義務を負わないと判断しました。

 最高裁は、

 留保所有権者の有する権原が、期限の利益喪失による残債務全額の弁済期の到来の前後で異なるときは、

 留保所有権者は、残債務弁済期が到来するまでは、当該動産が第三者の土地上に存在して第三者の土地所有権の行使を妨害しているとしても、特段の事情がない限り、当該動産の撤去義務や不法行為責任を負うことはないが、

 残債務弁済期が経過した後は、留保所有権が担保権の性質を有するからといって、撤去義務や不法行為責任を免れることはない。

 なぜなら、留保所有権は、原則として、残債務弁済期が到来するまでは、当該動産の交換価値を把握するにとどまるが、☆残債務弁済期の経過後は、当該動産を占有し、処分できる権能を有するものと解されているからである。

 一見わかりやすいように見えます。

 確かに、弁済期の経過後は、留保所有者は、当該動産を占有し、処分できると契約条項には盛り込まれているのが多いでしょう。

 しかし、Yが、Aに対する法的手段によらずして、車を持ち帰って処分することができるのでしょうか? このような場合、Aの協力を得るのは難しいと思います。Yが、Aに対して、裁判所に動産引渡の手続を経ずに、車を持ち帰って処分していいのでしょうか?Yとしては、立替金の残債務が回収できないばかりか、不法占拠者として、損害金まで請求されてしまい、踏んだり蹴ったりです。

 今回の判例は、「立替払契約の解釈を前提とする判示」ということなので、今後は、立替払契約の条項を工夫する必要があります。

 今回の最高裁判決とは異なりますが、現在銀行法務21は、物語で学ぶ再建型任意整理というテーマで萬年先生執筆の記事が連載されています。ものすごくわかりやすくて参考になります。

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2009年5月 3日 (日)

【金融・企業法務】 委託を受けない保証人が主債務者の破産手続開始後に取得した事後求償権を自動債権とする相殺が認められた事例(大阪地裁平成20年10月31日)(控訴)

 旬刊金融法務事情No1866(5月・5日15日)号では、判決速報で、大阪地裁平成20年10月31日判決が紹介されていました。

 事案は、破産者Aは、Y銀行との間で、当座勘定契約を締結して、預金の預け入れをしていました。破産者Aは、平成18年8月31日に破産手続開始決定を受けました。一方、Yは、4月28日、Aの委託を受けずに、Aの債権者であるBに対して、Aが同日から平成19年4月27日までの間にBに対して負う買掛債務及び手形債務の元本について根保証しました。Yは、平成19年3月27日28日に、Bに対して、代位弁済をして、6月12日、Aの破産管財人に対して、これによって取得した事後求償権と、AがYに対して有する預金債権とをそれぞれ対当額で相殺するとの意思表示をしたところ、Aの破産管財人が、相殺できないとして、預金の返還を求めた事案です。

 相殺が破産法上禁止されるのかという論点では、争点は、4つでした。

 ①☆Yが取得した事後求償権は、破産手続開始決定後の代位弁済に基づいて生じたものであるから、非破産債権であり、これを自動債権とする相殺は許されないのではないか?

 本判決は、破産法2条5項にいう「破産手続開始前の原因に基づいて生じた」とは、破産手続開始前に債権の主たる発生原因が生じていたことをいうとした上で、保証人は、保証契約を締結すれば、主債務者から委託を受けているか否かにかかわらず、保証債務を履行する義務を負い、保証債務を履行すれば当然に主債務者に対する事後求償権を取得するのであるから、事後求償権の主たる発生原因は弁済ではなく保証契約の締結であり、YB間の保証契約はAの破産手続開始前に締結されているから、Yが取得した事後求償権は破産債権であると判示しました。

 ②破産法72条1項1号の準用又は類推適用により禁止されるか?

 ※破産法72条1項1号「破産手続開始後に他人の破産債権を取得したとき」

 本判決は、(1)保証債務の履行により取得する事後求償権と、これにより代位行使が可能となる原債権とは別個の権利であるから、破産法72条1項1号の適用を受けないこと、(2)同号にいう取得とは、将来の請求権の場合には、将来の請求権の現実化ではなく、現実化する前の将来の請求権を取得することをいい、Yが将来の請求権としての事後求償権を取得したのはAの破産手続開始前の保証契約の締結であるから、同号を準用又は類推適用することはできないと判示しました。

 ③破産法72条1項2号乃至4号により禁止されるか?

 本判決は、YBの保証契約は、YがAの支払不能等の事実を知る前に締結されたものであるから、破産法72条2項2号ないし4号により、相殺は禁止されないと判示しました。

 ④同法104条により禁止されるか?

  本判決は、Bは、破産者Aの破産手続において債権届出をしていないから、同法104条3項ただし書きを適用する余地はないと判断しました。

 ※破産法104条3項 第1項に規定する場合において、破産者に対して将来行うことがある求償権を有する者は、その全額について破産手続に参加することができる。ただし、債権者が破産手続開始の時において有する債権について破産手続に参加したときは、この限りでない。

 Yは、主債務者であるAから保証の委託を受けているわけではありませんが、破産手続開始決定より前に、保証契約を締結しているのであれば、事後求償権も、破産債権に該当すると言っていいのではないかと思います。

 解説者によれば、「本判決は、委託を受けない保証人の事後求償権の破産手続における取り扱いという、先例には乏しいが、今後新たな金融商品の開発、普及により、重要となると予想される問題について判断を示したもの」と評価されています。

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2009年5月 2日 (土)

【金融・企業法務】 ピコイ新株発行差止事件

 ダイジェスト金融商事重要判例(平成20年版)(銀行法務21)で紹介されていた東京高裁の決定です。

 事案は、現経営陣が経営支配権を維持するために、新株予約権無償割当を行ったことに対して、株主が、著しく不公正な発行にあたるとして、新株発行を仮に差し止める旨の仮処分命令を申し立てを行ったケースです。

 私自身、最近の「株式」についてはあまり勉強していないために、解説を読んで驚いたのですが、特定の者は行使できず、付された取得条項におって強制的に金銭を交付され、議決権割合が希釈化されてしまうタイプの新株予約権があるのですね。

 それ自体、株主平等原則違反になるような気がしましたが、このようなタイプのものでも、「発行する余地があることは認められている」(西岡佑介弁護士の解説による)のですね。びっくりです。

 東京高裁(平成20年5月12日決定)は、現経営陣の新株発行については、株主平等原則の例外として許容される場合には該当せず、結局、著しく不公正な方法による発行に該当し、仮処分を認めています。

 およそ田舎弁護士では取り扱わない分野ですが、頭の体操にはなります。また、今更、基本書を熟読する時間的な余裕はないため、「会社法」の勉強方法としては、結構合理的な方法かなと思っています。

 

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2009年4月29日 (水)

【金融・企業法務】 1人会社における取締役の責任免除(東京地裁平成20年5月9日)

 判例タイムズNo1290号(5月1日号)で紹介されている東京地裁平成20年5月9日判決(控訴)です。

 論点は、2つです。

 第1は、株式会社の1人株主である取締役が、任務懈怠違反行為により会社に損害を与えた場合に、取締役の会社に対する善管注意義務又は忠実義務違反による責任が生じるかという点です。

 問題の所在は、会社の全株式を1人の株主が保有する1人会社において、当該株主が代表取締役に就任している場合、当該株主兼代表取締役は、任務に違背して会社に損害を加えたとしても、そもそも会社に対する損害賠償義務が発生しないのではないかということです。

 東京地裁は、会社と取締役とは法人格を異にする以上、両者間に利害対立関係が存在しないとはいえず、善管注意義務又は忠実義務違反の問題が生じるから、当該取締役が任務違背により会社に損害を与えた場合には、それにより生じた責任を消滅させる事由のない限り、会社に対する責任を免れないと判断しています。

 そこで、第2の論点が、取締役の責任が生じるとしても、それは、総株主の同意により、当然に、免除されるのではないかというが問題になりました。

 東京地裁は、旧商法266条5項は、会社が取締役に対し、取締役の会社に対する責任を免除するとの意思表示をする場合、当該意思表示が効力が生じるためには総株主の同意が必要であると定めているものであり、

 取締役の会社に対する責任を消滅させるためには、総株主の同意及び免除の意思表示の双方を充足する必要があるところ、

 本件では明示的にも黙示的にも、取締役としての責任を免除する旨の意思表示がされた事実を認めることはできないから、取締役が会社の1人株主であったとしても、取締役の会社に対する責任を免れると解することはできないと判断しました。

 (1)総株主の同意のほか、(2)会社による免除の意思表示が必要と判断されたものとして、理解できそうです。

 株主の同意=免除の意思表示と考えるのか、それとも、民法519条と同じく、会社が免除の主体となるのかという問題です。

 1人会社の場合、免除の意思表示を客観的に明らかにする契機が生じにくいことは、事実上の問題にすぎないとしています。

 1人会社における名目的取締役の責任の事前免除合意の問題と共通の背景があります。

  

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2009年4月28日 (火)

【金融・企業法務】 預金取引経過開示請求についての最高裁判決

 旬刊金融法務事情No1865(4月25日)号「預金取引経過開示請求についての最高裁判決」について、関沢弁護士の解説記事が載っていました。

 被相続人名義の預金の取引経過について、共同相続人の1人から、開示請求がなされた場合平成21年1月22日の最高裁判決がでるまでは、開示請求は拒絶できると私も考えていました。

 それは、「わかしお銀行事件」において、東京高裁は平成14年12月4日に、預金口座の取引経過明細について銀行は開示する義務を負わないと判断し、平成17年5月20日の最高裁は、請求者の上告及び上告受理申立を決定で排斥されたからです。

 平成21年1月の最高裁判決は、

 ①預金契約には委任事務処理の要素があることを認め、民法645条、656条により、開示義務を負う

 ②預金債権の取得とは別に、預金契約上の地位が共同相続人全員に帰属(準共有)しているものとし、この契約の地位に基づく開示請求権の行使は保存行為であるから、共同相続人単独で行使し得る

 と判断しました。

 解説者の関沢弁護士は、開示義務を負うとしても、①預金の種類によって異なるのか、②預金者と預金名義者が一致しない場合はどうか、③開示すべき取引経過について時間的限界があるか、④開示の範囲や場所的な制限はできないのかについても、指針を示されており、金融機関から相談を受ける弁護士にとっても非常に役立つ内容になっています。

 先日、顧問銀行の支店長の方と今回の最高裁判決についてお話をうかがうことがあったのですが、今後、金融機関にとっては事務負担が大きくなるためか、判決の内容をよく研究されておられるようでした。

 ところで、貸金業者に対しても最高裁は開示義務を肯定していますが、その理由は、信義則に根拠を置いています。

 今回、銀行に対しては、預金契約自体に根拠を置いており、開示の「根拠」が異なります。

 根拠の違いにより、開示についても相違点が生じるのか、興味が深いです。

 

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2009年4月27日 (月)

【金融・企業法務】 クオンツ新株発行差止仮処分

 ダイジェスト金融商事重要判例(平成20年度版)で紹介されている裁判例です。

 支配権争いがあるときの基準日後の第三者割当増資の事案における主要目的ルールについては、

 東京地裁平成20年6月23日決定は、

 他にこれを合理化できる特段の事情がない限り、新株発行は、既存株主の持株比率を低下させ現経営者の支配権を維持することを主要な目的としてされたものであると推認できる

 として、事実上の推定を認めています。

  江頭先生の株式会社法(初版)P683には、「実際には不当目的達成動機が優越していたとはめったに認定しない」傾向であったのが、本決定により、不当目的達成動機が優越することを事実上推定されることになり、東京地裁での流れに大きな変化があったようです。

 「主要目的ルール」、懐かしい言葉です・・・

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2009年4月26日 (日)

【金融・企業法務】 オートバックスセブン新株予約権付社債発行差止仮処分事件

 銀行法務21・N0688(3月増刊号)ダイジェスト金融商事重要判例で紹介されている裁判例です。

 Y取締役会が第三者割当てによる本件新株予約権付社債の発行に決議し、この際、発行において、付された新株予約権と引き換えに金銭の払い込みは要しないものとされました。

 Yの株主は、本件新株予約権付社債の発行について、有利発行に該当するにもかかわらず、株主総会の特別決議がないことを理由に、会社法247条に基づき、仮に差し止めることを求めました。

 公開会社においては、募集新株予約権の有利発行に当たる場合を除いて、募集事項を取締役会の決議により定めることができますが(会社法240条1項)、有利発行に該当する場合は、株主総会の特別決議が必要であることから、争点は、有利発行に該当するかどうかということになります。

 東京地裁平成19年11月12日は、会社法238条3項1号にいう「特に有利な条件」による発行(有利発行)とは、①新株予約権の実質的な対価と②当該新株予約権の公正な価値とを比較し、当該新株予約権の実質的な対価が公正な価値を大きく下回るときと定義しています。

 ①「新株予約権の実質的な対価」とは、当該新株予約権付社債について定められた利率とその会社が普通社債を発行する場合に必要とされる利率との差に相当する経済的価値であると定義し、

 ②「新株予約権の公正な価値」とは、現在の株価、権利行使価額、行使期間、金利、株価変動等の要素をもとに、オプション評価理論に基づき算出された新株予約権の発行時点における価額であると定義しています。

 あてはめでは、本件新株予約権の実質的対価については、前記利率の差を現在価値に割り戻した373万円であるとし、本件新株予約権の公正な価格については、モンテカルロシュミレーションに基づいて算出された198万円であるとし、本件新株予約権の実質的な対価(約370万円)が、その公平な価値(約200万円)を大きく下回るものとはいえないとして、「有利発行」であることを否定しました。

 私が旧司法試験の受験生のころにも、「有利発行」の基準が論点の1つになっていましたが、そのころもそうですが、今でも、田舎弁護士にとっては、「なんじゃらほい???」の論点ですね。

 時代においていかれないよう、少しずつ勉強はしていく「つもり」ですが、実務に出るとなかなかまとまった時間はありませんね。

  無理に背伸びをすると、大きなミスを引き起こしそうなので、こつこつ真面目に勉強をしていくつもりです。 

 

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2009年4月25日 (土)

【金融・企業法務】 レックスHD株式取得価格決定申立事件

 銀行法務21・3月増刊号ダイジェストH20金融商事重要判例で紹介されていた裁判例です。

 レックスHD株式取得価格決定申立事件は、私もひょっとすれば、当事者になっていたかもしれない事件でした。

 というのは、レックスが株式の公開買付を発表した時に、私も同社の株主の1人でしたが、嫌気をさし、売却してしまいました。

 レックスは、平成18年8月21日に、業績予想の下方修正等のプレスリリースを行い、そのため、その株価は大幅に下落しました。

 平成18円11月10日、MBOの一環として、Yは、公開買付を発表し、23万円が提示されました。これは過去1か月の市場株価平均値20万2000円に13.9%のプレミアムを加えた価格ということでした。

 Yは、公開買付により、92%近い株式を所有しました。

 レックスは、全部取得条項付種類株式の制度を用いて、Y以外の株主を閉め出したので、株主らは、会社法172条1項に基づいて、取得価格の決定を申し立てました。

 原決定は、取得価格を、23万円と決定したため、株主らが即時抗告を申し立てました。

 東京高裁(東京高裁平成20年9月12日)は、原決定を変更して、取得価格を、33万6966円と決定しました。

 取得価格の判断基準として、「取得日における公正な価格」をもって決するべきところ、「株式の客観的価値に加えて、強制的取得により失われる今後の株価の上昇に対する期待を評価した価額をも考慮するのが相当である」と判断しました。

 その上で、本件株式の客観的な価値は、6か月の平均値である28万0805円であり、これに株価上昇に対する期待を考慮して、20%を加算して、33万6966円と判断しました。

 あれ以来、ほとんど「牛角」には行っていません。それなりに美味しいのですが、この件を思い出しますので・・・

 

 

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2009年4月24日 (金)

【金融・企業法務】 日経新聞株式譲渡ルール事件

 銀行法務21・3月増刊号ダイジェストH20金融商事重要判例で、紹介されている裁判例です。

 X1さんは、従業員持株会Y2から複数回日経株式を1株100円で購入しました。

 X1さんは、X2との間で、X1が所有している日経(Y1)株式を1株1000年で売却する合意(本件合意)をしました。

 Y1は、定款をもって、株式の譲渡については、取締役会の承認を要するとともに、日刊新聞法により、同社の株式譲受人は同社の事業に関係ある者に限ると定められています。

 本件合意に伴い、X1は、Y1に対して、譲渡承認請求を行いましたが、Y1は譲渡不承認の回答をしました。

 そこで、X1は、Y1に対して、譲渡の相手方を指定するよう請求をしました。

 Y2は、X1に対して、譲渡承認請求をもって、株式売却する意思が確定的であると判断して、後述の株式譲渡ルールに基づき、X1からY2が本件株式を譲り受けた旨を通知して、Y1から譲渡承認を得ました。

 そこで、X1は、Yらに対して、X2が株主であることの確認などを求めるため、提訴しました。

 東京地裁平成19年10月25日は、

 株式保有資格を失ったとき又は個人的理由により日経株式を売却する必要が生じたときは、Y2が1株100円で買い戻す等の本件株式譲渡ルールが存在していること

 X1がY2から日経株式を譲り受ける際、本件株式譲渡ルールに従って行われていることを知り、そのことをY2との間で了承していたこと

 を認定して、Xらの請求を棄却しました。

 従業員持株会を採用した際に、前述のような株式譲渡ルールの合意があったのかが問題となったわけですが、私が学生のころは、地裁が認定したような譲渡ルールがそもそも公序良俗に反するのではないかという議論もあったかのように記憶しています。

 平成7年4月の最高裁判決は株式譲渡ルールについては有効と判断しているようなので、本件では、このような合意が存するのかどうかが争われたわけです。

  よくわからないのは、1株100円で取得したものを、1株100円でしか売却できないとすれば、売却の経済的なメリットはなく、地裁が認定した株式譲渡ルールはどういう目的でもうけられたのかがよくわかりませんね。新聞社なので特別な事情があるのかもしれませんが・・・

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2009年4月22日 (水)

【金融・企業法務】 株主名義閲覧謄写請求の拒否事由

 銀行法務21(No699)3月増刊号平成20年金融商事重要判例で紹介されていた裁判例です。

 Yは、不動産の売買、賃貸及び仲介、マンション管理等を目的とする株式会社であり、Xは、Yの株主であり、マンション管理事業、建設、販売事業等を主な業務とする会社です。

 まあ、XとYとは同業者というわけです。

 Xは、Yの株式の公開買付を行うことを決定し、公表しました。そして、Yの株式総会において、買収防衛策に基づくXに対する対抗策の不発動等を内容とする株主提案を行いました、

 Xは、株主提案についての委任状勧誘を行うために、Yに対して、株主名簿の閲覧及び謄写をさせることを命じる仮処分命令の申立をしました。

 原審の東京地裁(平成20年5月15日)は、会社法125条3項3号に、「請求者が当該株式会社の業務と実質的に競争関係にある事業を営み、又はこれに従事するものであるとき」に該当するから、Xの申立を却下しました。

 形式的な理由ですが、わかりやすいです。

 これに対して、東京高裁(平成20年6月12日)は、(1)3号は、1号及び2号の特則である、(2)3号は、同業者の場合には、請求者が、株主の権利の確保又は行使に関する調査の目的で請求を行っていることを証明しない限り、会社は請求を拒めることができるという立証責任の転換を図った規定であると判断したわけです。

 会社法125条3項は、濫用的な場合を類型化して明確にしたのに過ぎず、株主名簿閲覧謄写請求権制度の目的を否定、或いは制限する趣旨のものではないという理由で、3号に形式上あたる場合でも、株主名簿閲覧謄写が認められる場合を、認めたわけです。

 まず田舎では相談を受けない事件ですが、法律解釈論の勉強にはなります。

 

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2009年4月20日 (月)

【金融・企業法務】 弁護士会照会と銀行の回答義務

 銀行法務21No701(4月)号に、「弁護士会照会と銀行の回答義務」ー最高裁平成20年11月25日決定が銀行実務に与える影響ーと題する論文が掲載されていました。

 事案は、ヤミ金業者の銀行口座に関して、ヤミ金の被害者が、弁護士会照会や裁判所の嘱託を利用して、金融機関に対して、ヤミ金業者の銀行口座の保有者情報(預金口座開設者の氏名、住所、電話番号)を求めた事例で、銀行が守秘義務を根拠に弁護士会照会等に対する報告を拒否したことが、報告義務違反にあたり、不法行為を構成するかという内容です。

 最高裁は、原告の上告を棄却して、上告審受理申立を却下したため、原審である大阪高裁平成19年1月30日判決が確定しました。

 大阪高裁は、

①弁護士会照会や裁判所の調査嘱託については、照会や嘱託を受けた場合には、法律上報告する公的な義務を負う。

②弁護士会照会等に対する回答は、守秘義務との観点から何らの制約も受けず、同意の有無にかかわりなく、当然に回答義務を負う。

③回答義務は、弁護士会や裁判所に対する公的な義務であり、それを利用する者が回答を求める権利を有するものとされているわけではない

④法律上保護される利益を侵害したとはいえないため、不法行為は否定

 という判断でした。

 あれ? 回答義務を負うのに、不法行為否定? 余りにも形式的な理由により、不法行為を否定されてしまいました。

 解説者の弁護士さんの説明によれば、顧客の氏名、連絡先については、回答をしてもしなくても、不法行為は成立しないが、顧客の信用情報については、回答した場合には、顧客との間で不法行為が成立し、回答しない場合には、弁護士会照会等利用者との間で不法行為が成立しないとまとめられています。

 う~ん このまとめだと、銀行は、回答を拒否した方がリスクが少ないことになりますね。

 本件事案においては、結局、顧客の氏名・連絡先は、開示されたのでしょうか? 

 

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2009年4月19日 (日)

【金融・企業法務】 証券会社の担当者による投資信託等の勧誘行為につき、適合性原則違反、説明義務違反の不法行為の成立が認められた事例(大阪高裁平成20年6月3日)

  銀行法務21・3(No700)号で紹介されている裁判例(大阪高裁平成20年6月3日)です。

 歯医者さんが3億2000万円の遺産を相続したので、被相続人が生前取引していた証券会社の担当者の勧誘で、高いリスクのある投資信託や日経平均ノックイン債を2億1630万円を購入したものの、結局、4300万円の損失を受けた事案です。

 歯医者さんは、証券会社を被告として、適合性原則違反、説明義務違反の勧誘行為があったとして、不法行為ないし債務不履行責任に基づいて、提訴しました。

 原審は、適合性原則違反については否定して、説明義務違反については認めたものの、歯医者さんの過失を7割としました。

 控訴審は、適合性原則違反も認め、過失を、7割から4割に変更しました。

 適合性の原則は、金融商品取引法40条1号に規定されています。

 即ち、金融商品取引業者等の業務の運営の状況が、金融商品取引行為について、顧客の知識、財産の状況及び金融商品取引契約を締結する目的に照らして不当と認められる勧誘を行って投資者の保護に欠けることなっており又は欠けることとなるおそれがあることないように、業務を行わなければならないと規定しています(最高裁平成17年7月14日判決参照)。

 そして、適合性の原則から著しく逸脱した証券取引の勧誘を行った場合には、不法行為上も違法と判断されることになります。

 顧客の適合性を判断するにあたっては

 当該取引商品の取引類型における一般的抽象的なリスクのみを考慮するのではなく、

 具体的な商品特性を踏まえて、これとの相関関係において、顧客の投資経験、商品等取引商品の取引の知識、投資意向、財産状態等の諸要素を総合的に考慮する必要があるとしました。

 後は具体的に当てはめて検討した結果、適合性原則違反を認めました。

 ※日経平均ノックイン債権  償還期間が、一定期間中の日経平均株価の終値によって額面額となったり、あるいは、日経平均株価終値の下落分に応じて決定されるという債券。日経平均株価の終値が期間中1度でも基準価格(設定価格の80%相当額)未満になり(ノックイン)、償還日の15営業日前に設定価格を下回っていた場合には、設定価格を基準として日経平均株価の下落に応じた損失を負う。期間1年で、途中売却不可

 業法がらみの案件については、なかなか田舎弁護士のところに相談はきませんが、外貨預金等の特定預金等の場合にも、銀行法13条の4により、金融商品取引法40条1号が準用されていますので、同じ枠組で判断されることになるのでしょうね。

 私も、投資信託を少ししていますが、酷い結果になっています。世界経済の状況が悪いので、仕方ありませんが、従前と同じ様な手数料はいただけません。業績連動性にして欲しいと思いますが・・・

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2009年4月18日 (土)

【金融・企業法務】 ①金融機関の預金者に対する預金口座の取引経過開示義務の有無、②共同相続人の1人が被相続人名義の預金口座の取引経過開示請求権を単独で行使することの可否 (最高裁平成21年1月22日)

 旬刊金融法務事情No1864(4月15日)号で紹介された最高裁判決です(平成21年1月22日)。

 最高裁の判断は以下のとおりです。

① 預金契約は、預金者が金融機関に金銭の保管を委託し、金融機関は預金者に同種、同額の金銭を返還する義務を負うことを内容とするものであるから、消費寄託の性質を有するものである。

 しかし、預金契約に基づいて金融機関の処理すべき事務には、預金の返還だけでなく、振込入金の受入れ、各種料金の自動支払、利息の入金、定期預金の自動継続処理等、委任事務ないし準委任事務(委任事務等)の性質を有するものも多く含まれている。

 委任契約や準委任契約においては、受任者は委任者の求めに応じて委任事務等の処理の状況を報告すべき義務を負うが、これは、委任者にとって、委任事務等の処理状況を正確に把握するとともに、受任者の事務処理の適切さについて判断するためには、受任者から適宜上記報告を受けることが必要不可欠であるためと解される。

 このことは預金契約において金融機関が処理すべき事務についても同様であり、預金口座の取引経過は、預金契約に基づく金融機関の事務処理を反映したものであるから、預金者にとって、その開示を受けることが、預金の増減とその原因等について正確に把握するとともに、金融機関の事務処理の適切さについて判断するために必要不可欠であるということができる。

 したがって、金融機関は、預金契約に基づき、預金者の求めに応じて預金口座の取引経過を開示すべき義務を負うと解するのが相当である。

②そして、預金者が死亡した場合、その共同相続人の1人は、預金債権の一部を相続により取得するにとどまるが、これとは別に、共同相続人全員に帰属する預金契約上の地位に基づき、被相続人名義の預金口座についてその取引経過の開示を求める権利を単独で行使することができるというべきであり、他の共同相続人全員の同意がないことは上記権利行使を妨げる理由となるものではない。

③上告人は、共同相続人の1人に被相続人名義の預金口座の取引経過を開示することが預金者のプライバシーを侵害し、金融機関の守秘義務に違反するとの主張をするが、開示の相手方が共同相続人にとどまる限り、そのような問題が生ずる余地はないというべきである。

④なお、開示請求の態様、開示を求める対象ないし範囲等によっては、預金口座の取引経過の開示請求が権利の濫用に当たり許されない場合があると考えられるが、被上告人の本訴請求について、権利の濫用に当たるような事情はうかがわれない。

 今回の最高裁判決は、金融実務に与える影響は大きいようで、旬刊金融法務事情・リーガルNAVIでも、大手信託銀行の担当者が、守秘義務の緩和に一抹の不安を感じないわけではないと述べておられます。

 遺産分割事件を扱う田舎弁護士にとっては、大歓迎すべき判決なのですが・・・

 

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2009年4月13日 (月)

【金融・企業法務】 インサイダー取引

 4月10日、金融法務例会(大阪銀行協会)に出席しました。

 今回は、金融庁証券取引等監視委員会の実務担当者の方が講師でした。

 金融商品取引法第166条によれば、

①上場会社等の会社関係者(含む、会社関係者でなくなった後1年以内のもの)が、

②当該上場会社等の業務等に関する重要な事実を、

③その職務等に関して知った上で

④その重要事実の公表前に、

⑤当該上場会社の株券等を売買すること

⑥会社関係者から重要事実の伝達を受けた第1次受領者についても同様とされています。

 会社関係者の範囲は、結構広く、例えば、(1)当該上場会社等と契約を締結している者又は締結の交渉をしている者や、(2)株主等や(1)に掲げる者であって法人であるものの役員なども含まれます。

 重要事実についても、当該上場会社等(子会社)の運営、業務又は財産に関する重要な事実であって投資者の投資判断に著しい影響を及ぼすものと規定されており、バスケットクローズが設けられています。

 例えば、A社とA社の筆頭株主であるB社とが業務提携を解消する場合、B社の役員が、C社の役員に業務提携解消の事実をもらし、C社の役員は、第1次情報受領者として、インサイダー取引に該当することになります。

 今回の例会では、①上場会社の場合、自社株売買についてのルールの整備、②融資先顧問企業から重要事実の伝達を受けた場合のルールの整備について、意見交換がなされました。

 インサイダー取引防止のための態勢整備として、重要事実の決定から公表までの情報管理が大切であり、具体的には、①重要事実にアクセスできる者の範囲を必要最小限度に限定、②重要事実にアクセスできる職員への注意喚起、③重要事実はできる限り速やかに公表ということが必要です。

 いや、ほとんどしらない分野であるため、大変、勉強になりました。

 課徴金事例集は、参考になります。

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2009年4月 9日 (木)

【金融・企業法務】 破産管財人の源泉徴収義務

 判例時報No2030(4月1日)号で紹介された大阪地裁平成20年3月14日の裁判例です。

 要旨は、以下のとおりです。

 ①破産管財人は、源泉徴収義務を負う

 ②退職金等を配当した場合に、管財人が源泉所得税の徴収納付をしなかったことが国税通則法67条1項但書にいう正当な理由がある

 ③管財人が管財人報酬を受け取った場合に、管財人が源泉所得税の徴収納付をしなかったことが正当な理由がない

   この論点については、同趣旨の大阪高裁の判例もあり、従来の管財人業務と取扱いが異なることから、現場でも混乱が続いております。

 ここまで争われたのは、やはり、管財人の報酬の金額が大きかったことが原因ではないかと思います。

 管財人の報酬だけでも、8000万円です。私の場合の、100倍以上です・・・・ 頑張りたいと思います。

 ただ、配当を源泉徴収しなければならないとすれば、手続きの負担が増え、大変です。このようなケースの場合には、報酬を割増してもらいたいものです。 

  

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2009年4月 7日 (火)

【金融・企業法務】 差押債権者による定期預金の期限前払戻請求が否定された事例(東京地裁平成20年6月27日)

 旬刊金融法務事情No1861(3月15日)号搭載の東京地裁平成20年6月27日付の判決です。

 判決要旨は、以下のとおりです。

 預金の差押債権者は、取立に必要な範囲で、預金者が銀行に対して有する一切の権利を行使することができるが、

 定期預金規定により預金者に期限前払戻請求権が認められない以上、差押債権者も銀行に対して期限前解約請求により、預金の払戻しを請求できない。

 この判決は、期限前払戻請求が認められないと判断しておりますが、結局、解決はどのようになったのでしょうか?

 満期まで差押えを継続したのでしょうかね?

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2009年3月 5日 (木)

【金融・企業法務】 振込依頼人と受取人との間に振込の原因となる法律関係が存在しない場合における受取人による当該振込みに係る預金の払戻請求と権利濫用(最高裁平成20年10月10日)

 判例時報No2026号(2月21日号)で紹介されている平成20年10月10日付け最高裁判例(第2小法廷)です。

 事案は、Xは、Y銀行に普通預金口座を開設し、Yの夫Wは、Z銀行に対して、1100万円の定期預金口座を開設していました。

 X・Wの家に、泥棒が入り、Xの普通預金とWの定期預金の通帳類を盗み、この泥棒から依頼を受けたTらが、Z銀行において、Wの定期預金を解約して、その解約金を、Y銀行のX名義の普通預金口座に振り込むよう依頼し、Xの普通預金口座に解約金が入金されました(本件振込)。

 Tらは、Y銀行において、X名義の普通預金口座から1100万円を払い戻しました(本件払戻)。

 Xは、Y銀行に対して、本件払戻にかかる預金1100万円の払戻を求めて提訴しました。

 第1審の東京地裁は、Y銀行が準占有者に対する弁済として保護されるのかという論点が中心で、Y銀行には過失があるとして、Xさんを勝たせました。

 第2審では、Y銀行は、抗弁を追加しました。

 すこしわかりにくいですが、以下のような抗弁です。

 (1)本件振込は、「誤振込」と同様に、受取人となったXにおいて、これを振込依頼人に返還しなければならない。

  ← 確かに、そうだな~

 (2)Xには、振込金相当額を最終的に自己のものとすべき実質的権利はない

  ← これもそうだな~ 元々は、Wのお金だからね。

 (3)XのY銀行に対する本件振込による預金の払戻は、権利濫用である。

  ← えっ それは結論としてはまずいのでは?

 第2審の東京高裁は、Y銀行の権利濫用の抗弁を認めました。

 その理由は、以下のとおりです。

 (1)本件振込に係る預金は、Xにおいて振込による利得を保持する法律上の原因を欠き、Xは、この利得により損失を受けた者へ、その利得を返還すべき

(2)Xとしては、本件振込に係る普通預金につき自己のために払戻を請求する固有の利益を有せず、これを振込者又は最終損失者へ返還すべきものとして保持し得るにとどまる

(3)Xの権利行使も、この返還義務の履行の範囲内に止まる

(4)この権利行使の方法は、特段の事情がない限り、自己への払戻請求ではなく、原状回復のための措置を執る方法によるべき

 という一般論を述べて、

(5)本件払戻により、Xの利得は消滅したから、Xには、不当利得返還義務の履行のために保持し得る利得も存在しない

(6)そうすると、Xの払戻請求は、固有の利益に基づくものでもないし、また、不当利得返還義務の履行手段としてのものでもない

(7)以上から、Xは、払戻を受けるべき正当な利益を欠き、権利濫用に該当する

 

 本件ケースにおいては、はっきりしたことはわかりませんが、Wの解約金が入金されたY名義の普通預金口座の権利者が誰かということも問題にされているようです。

 これについては、平成8年4月26日付最高裁で、

 振込依頼人から受取人の銀行の普通預金口座に振込があったときは、振込依頼人と受取人との間に振込の原因となる法律関係が存在するか否かにかかわりなく、受取人と銀行との間に振込金額相当の普通預金契約が成立し、受取人が銀行に対して右金額相当の普通預金債権を取得する

 と判断していることから、

 平成20年最高裁判決も、

 本件振込に係る金員は、本件振込により、本件普通預金の一部として上告人に帰属した

 と判断しています。

 とはいっても、最高裁の平成15年3月12日決定では、誤った振込があることを知った受取人が、その情を秘して預金の払戻を請求し、その払戻を受けた場合には、詐欺罪が成立すると判断していることから、

 誤振込の場合の払戻請求は、権利濫用になる場合も当然にあるはずです。

 今回の最高裁は、

(1)受取人が振込金額相当の普通預金債権を有することになる以上、その行使は、不当利得返還義務の履行手段としてのものに限定される理由はない

(2)振込依頼人と受取人との間に振込の原因となる法律関係が存在しない場合においては、「払戻しを受けることが当該振込にかかる金員を不正に取得するための行為であって、詐欺罪等の犯行の一環を成す場合など、これを認めることが著しく正義に反するような特段の事情があるときは、権利濫用にあたる」としても、受取人が振込依頼人に対して不当利得返還義務を負担しているというだけでは、権利濫用にはあたらない

 と判断しました。

 以上からすれば、払戻請求が権利濫用に該当しない場合には、金融機関に対して、払戻請求ができるということになります。

 なお、自判せずに、再度、準占有者による弁済について審理を尽くさせるために、差し戻しをしたのは、何故でしょう? 気になりますね。

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2009年2月15日 (日)

【金融・企業法務】 文書提出命令が銀行実務に与える影響

 銀行法務21の2月号でも、旬刊金融法務事情1858号(2月15日号)でも、最高裁第3小法廷平成20年11月25日の決定について、非常に大きな特集記事が組まれていました。

 金融機関が守秘義務を負うことを前提に特定の顧客から提供された非公開の当該顧客の財務情報(非公開財務情報)と、特定の顧客の財務情報等を基礎として金融機関自身が行った財務状況、事業状況についての分析、評価の過程およびその結果ならびにそれを踏まえた今後の業績見通し、融資方針等に関する情報(分析評価情報)について、職業の秘密に該当するのかどうか、最高裁の判断が示されました。

 非公開財務情報については、(1)顧客の情報なので、銀行は秘匿する独自の利益を有しない、(2)顧客は民事再生手続中でありそれ以前の顧客の情報であるから開示されても顧客の受ける不利益は小さいなどを理由に、職業秘密であることを否定しました。

 分析評価情報については、銀行の職業の秘密には該当するものの、比較考慮を行い、保護に値する秘密にはあたらないと判断しました。

 今回の最高裁の決定は、銀行実務家からは批判的に評価されているみたいです。

 決定分だけ読んでいると田舎弁護士には関係のないなあ~と思いがちですが、さにあらず、 もともとの事案は、銀行が経営破たんの可能性を認識していたにもかかわらず、全面的に支援すると説明したことにより、取引を継続した会社が、売掛金の回収不能による損害賠償を求める訴訟を提訴したケースであり、これならば、ひょっとして、将来、田舎弁護士にも相談があるかもしれないような事案ですね。

 頭の片隅に入れておきます。

 

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2009年2月14日 (土)

【金融・企業法務】 金融法務研究会 (大阪銀行協会)

 昨日、大阪で、きんざい主催の「金融法務研究会」が、大阪銀行協会で行われました。

 今回のテーマは、「民事裁判官の事実認定に関する基本的な考え方」と題して、大阪地裁の部総括判事が講演されました。

  そもそも金融法務例会は、金融機関の現場の担当者を中心に金融実務に携わる人に対して、金融法務の知識や経験を伝授することを目的にしているものと思われますが、最近は、「若い弁護士」の参加も増えているようです。

 それはさておき、処分権主義、弁論主義など、民事訴訟の基本的な概念の説明からはじまったので、これは眠たくなるかも?と思ったのですが、さにあらず、事実認定の説明では、書証の見方、人証の取り扱いなど、おもしろい話を次から次にきかせていただきました。

 また、処分証書と報告文書については、忘れかけていた知識の整理ともなり、大変助かりました。

 そして、原本の確認の重要性を説明されていました。偽造文書や虚偽文書、意外と多いようであり、その特徴なども説明していただきました。

 中には、精巧になったコピーを利用する方法もあるようで、コピーだから原本と同じという発想は捨て去ったほうが無難かと思います(この話は、地裁所長も同趣旨の話をされていたことがあるので、都会の裁判では、偽造文書が少なくないのかもしれません。)。

 私も、これはおかしいのではないかという文書に遭遇したことがありましたが、結局は、勝訴的和解をしたので、問題にしたことはありませんでしたが・・・  

 気をつけたいと思います。 

 

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2009年2月 2日 (月)

【金融・企業法務】 前訴において1個の債権の一部についてのみ判決を求める旨が明示されていたとして、前訴の確定判決の既判力が当該債権の他の部分を請求する後訴に及ばないとされた事例(最高裁平成20年7月10日)

 金融法務事情No1856(2009年1月25日)号搭載の裁判例です。

 事案は、判決の既判力の問題です。

 Yは、Xが所有する土地上の樹木が附合したとして償金請求権を取得したとして、樹木について、仮差押を行い、続いて、償金請求を求めて、Xを被告として提訴しました。これに対して、Xは、Yの仮差し押さえが不法行為に該当するとして、弁護士費用各250万円の支払いを求める反訴を提訴しました(前訴)。

 前訴については、Yの請求は棄却され、反対に、Xの反訴は、弁護士費用各50万円が認められ、確定しました。

 Xは、Yに対して、Yの違法な仮差し押さえにより買収金の支払いが遅れたとして、買収金(各々1500万円)に対する約2年半の遅延損害金(各々190万円)の賠償を求めました(後訴)。

 第1審は、後訴については、前事件の反訴請求は、「数量的一部請求」ではなく、特定一部請求であるから、訴訟物を異にするとして、Xらの請求をおおむね認めました。

 第2審は、前訴において、損害の一部であることを明示していたとは言いがたい、本件仮差押命令の申し立てが違法であることを理由とする不法行為に基づく損害賠償請求権の訴訟物になっていたとして、既判力が及ぶことなどを理由に、Xらの請求を全て棄却しました。

 最高裁は、一部請求であることが明示されていたとして、既判力は及ばないとして、差し戻しをしました。

 私は、判決の既判力の対象を考慮しながら、訴状などを作成します。交通事故のような案件が多いのですが、判決確定後に損害費目を追加しても、判決の既判力に抵触して、請求できなくなるからです。

 受験生のころ、一部請求であることが明示されているかどうかで、残部を後訴で請求できるかどうか区別されると学習しました。

 明示できれば一番ですが、具体的な事案に応じては、明示を緩和して判断されることもあり、本件訴訟もその例にあたります。

 解説者によれば、数量的一部請求については、明示が厳格に要求されるが、費目や期間によって範囲が特定される請求のような特定一部請求については、請求にかかる費目(または期間)のみを主張することで、明示としては足りる場合があると解しているようにも思われることのようです。

 ただ、この事案の場合、原審の確定した事実関係によれば、Yは、本件土地が県によって買収されることを知って、補償金目的に、Xから土地を借りて、樹木を植栽し、補償金を受けられないと知るや、一転として、巨額の償金請求を行った事案であり、そうだとすると、あまり筋がよろしくない事案のようです。

 

 また、今回の金融法務事情には、「法務知識の格差拡大と弁護士に対する期待」と題する文章が金融実務家の手により執筆されておられましたが、法務知識の格差拡大は、本部と営業店に限らず、都市buildingと地方の弁護士horseの場合にも当てはまります。どうしても日ごろかが対応が少ない分野については、意識的に心がけなければ、知識を蓄積していくことなど無理というものです。

 beer や golf ばっかりしていると、本当にいけません。

 頑張っていきたいです。happy01

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2009年1月25日 (日)

【金融・企業法務】 大手百貨店が確定判決を得て債権を回収した後、債務者の預金を差し押さえたことにつき不法行為が認められた事例(東京地裁平成20年5月28日)

 判例時報No2023号(平成21年1月21日号)で紹介されていた裁判例です。

 大手百貨店Yが、不動産会社Xに対し、売買代金を請求する訴えを提起し、70万円程度の支払いを命ずる判決を得て、同判決の確定後、平成18年11月6日、Xの普通預金口座から自動引き落としによる全額支払われたものの、Yは誤解して、同月8日、支払いを催告して、平成19年1月9日、差し押さえをしたところ、Xの抗議を受けて、と取り下げをしたというケースです。

 Xは、Yに対して、預金の差し押さえにより信用が毀損されたとして、1億円の損害賠償を請求しました。

 東京地裁は、

 支払いを受けているにもかかわらず、差し押さえをしたのであるから、違法不当な強制執行について過失があるとして、不法行為責任を認めました。crying

 しかし、財産的な損害は否定した上、信用毀損ないし信用失墜が生じたことは否定できないものの、支払い催告を受けた際に連絡をしなかったことを重く見て、結局、無形的損害として、50万円を認めただけでした。

 社会の債権管理に問題はあるものの、Y百貨店は、間違いに気づいたら直ちに差し押さえを取り下げ、差し押さえをした預金の取り扱い銀行に謝罪に赴くなどしたことから、結局、Yが支払わなければならない金額は最小限度にとどまったようです。

 Y百貨店の差し押さえ取り下げ後の対応は、失敗した場合の対処方法として大いに参考になるのではないかと思います。

 人間ですから完璧なことはできません。ミスばっかりするのは論外ですが、万が一、ミスをした場合の対処方法については、日ごろから考えておく必要があります。おごることなく、謙虚に生きていきたいものです。coldsweats01 

  但し、控訴されているみたいです。控訴審では、財産的損害の立証が大きな争点になるでしょうね。

 閑話休題

 ある修習生の方のブログによれば、相変わらず、司法修習生の就職難は、続いているようです。まだ、「のき弁」になれるだけまし、「ソクドク」や、「宅弁」が、当たり前の時代が来ているようです。10年前であれば、「ソクドク」なんて、ほとんど考えられなかったけれどねえ。私の場合も、4ヶ月程度で独立した時には、周囲の法曹関係者は、優しく見守ってくれたけれども、今のように、事件数が大きく減少している現在では、なかなか仕事を回せるような状態ではなくなってきているような印象を抱いています。地方にはまだまだ需要が眠っているといっている人がいますが、当事者のためにはそのまま眠らせた方がいいような場合も結構あるような気がします。私の事務所では、ここ数年、交通事故案件と債務整理案件の比重が大きくなっていますが、昨年からは、債務整理案件が急激に減少しています。債務整理案件に代わる分野の開拓が必要ですが、なかなか中途半端になるだけで、考えあぐねています。船井総研のセミナーでも受講したほうがいいかもしれませんね。  

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2009年1月16日 (金)

【金融・企業法務】 破産管財人等協議会 (1月16日)

  16日に、松山地裁の大会議室で、管財人等協議会が開催されました。

 この中で、裁判所側から、地方の弁護士は、都会の弁護士に比べて、管財業務に関する技術が今ひとつのような印象を受けるお話がありました。

 とはいっても、地方の場合、東京などの倒産業務に特化している事務所はなく、管財業務も、多様な仕事の1つという位置づけであるため、都会の弁護士と比べられると、それは仕方がないのではないかなと思いました。

 それでも、私の場合は、少しでも、管財業務に関する技術を磨くことができるよう、全倒ネットに加入して勉強したり、金融関係の雑誌を読んだりしていますが、正直、わからないことだらけです。

 同じ地方の弁護士でも、高松の某先生は、銀行取引21に会社更生の論文を発表したり、倒産法を含む金融の分野で活躍されておられますが、私にはとても無理かなとも思っています。

 いろいろわからないところについては、全倒ネットのメーリングリストで質問したり、倒産に特化している事務所の友人の弁護士に尋ねたりして、なんとか対応させていただいております。

 私に廻ってくる管財業務って、最近は、個人の、しかも、代理人がついていない案件が少なくないのですが、これだと費用対効果が見合わないような感じですね。管財業務で、利益を考えてはいけないのかもしれませんが・・・

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2009年1月13日 (火)

【金融・企業法務】 賃借人が賃貸借契約の期間途中に契約を解約した場合についての違約金条項が、賃借人の破産管財人が破産法53条1項によって契約を解除した場合にも適用されるとし、破産管財人による解除がされた場合の原状回復費用の請求権は財団債権になるとした事例(東京地裁平成20年8月18日)(控訴)

 金融法務事情No1855(平成21年1月5日)号の判例速報にて紹介されていた裁判例です。

 (1)賃借人である会社の破産管財人が、賃貸人に対して、2億円の保証金のうち未払賃料と遅延損害金を控除した残額等の支払いを求めたのに対して、賃貸人が中途解約の場合には保証金は違約金として全額返還しないとの特約を理由に、その支払いを拒絶し、さらに、(2)賃貸人は、賃借人が原状回復を行わず建物を明け渡したことから破産手続き開始決定以降の使用収益にかかる未払い賃料及び原状回復費用は財団債権としてその支払いを求めた事案です。

 東京地裁は、結論としては、(1)特約の効力を認め、(2)①未払い賃料については、破産債権としつつも、原状回復費用については、財団債権を認めました。

 かなり破産管財人にとって、つら~い判決です。

 わたすのような田舎弁護士には、このような大きな金額が動くような事件は廻ってきませんが、多少財団が形成できそうな事案で、建物の原状回復費用が発生するような場合には、原状回復費用が財団債権とされていることから、いつもがっかりしています。

 破産債権であれば余り気にしないのですが、財団債権とされると、私のような小さな事件の場合には、財団債権者に対して弁済して、はい異時廃止ということになるため、誰のために働いているのかわからなくなることがあります。

 もっとも、最近、なぜか、管財事件 廻ってきませんが・・・

  heart01heart01heart01heart01heart01heart01heart01heart01heart01

 本日から、新事務所オープンです。お花だけでも、20鉢以上届きました。大変ありがとうございます。中には、空気清浄機やリトグラフなど貴重なお品もいただき、大変ありがとうございました。今後ともよろしくお願い申し上げます。

 

 

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2008年12月 2日 (火)

【金融・企業法務】 金融機関からみた担保保存義務 銀行法務21・2008年12月

  銀行法務21・2008年12月号で紹介されていた論文です。

 金融機関から、融資先の保証人の解除、或いは、担保物の任意処分について、進めていいかどうか相談を受けることがあります。

 それは、民法504条が、「第500条の規定により代位をすることができる者がある場合において、債権者が故意又は過失によってその担保を喪失し、又は減少させたときは、その代位をすることができる者は、その喪失又は減少によって償還を受けることができなくなった限度において、その責任を免れる」と、担保保存義務を債権者にかして、違反した場合には、免責を認めている規定があるからです。

 論者によれば、免除特約の有無にかかわりなく、問題は、金融機関による担保操作が信義則上許される範囲内かどうかということであり、その判定要素として、例えば、免除特約のある場合には、主たる債務者の信用状況、債権者の関連事実の認識可能性、免除特約の有無についての債権者による免責対象者への説明、債権者による免責対象者への配慮の有無、任意処分代金の充当順序・充当結果の妥当性、保証の動機などを総合的に考慮されるものとされています。 

  簡単にアドバイスできるような案件ではありませんが、論者は、「担保保存義務に怯える必要はない」と結んでいます。clip

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2008年10月29日 (水)

【金融・企業法務】 破産管財人の源泉徴収義務 

  判例タイムズNo1276(11月1日)号で紹介された大阪地裁平成20年3月14日の判例です。

 事案は、破産管財人である原告が個人としての破産管財人に対して報酬を支払うとともに、破産者の元従業員らに対して退職金等を配当したが、これらについて源泉徴収による所得税及び納付をしなかったところ、住吉税務署長が、破産者に対して、源泉所得税の納税告知処分及び不納付加算税賦課決定処分をしたことから、原告が、不納付加算税賦課決定処分の取り消しを求めた取消訴訟です。

 論点は、①破産者又は管財人に源泉徴収義務はあるのか、あるとした場合、②源泉所得税の徴収納付をしなかったことにつき、国税通則法67条1項ただし書にいう「正当な理由」があるのかということです。

 大阪地裁は、①については、管財人に源泉徴収義務を認めたが、②については、退職金については正当な理由を認め、報酬については正当な理由を認めませんでした。

 現在、控訴中です。 

 国税通則法67条1項 源泉徴収による国税がその法定納期限までに完納されなかった場合には、税務署長は、当該納税者から、第36条1項2号(源泉徴収による国税の納税の告知)の規定による納税の告知に係る税額又はその法定納期限後に当該告知を受けることなく納付された税額に100分の10の割合を乗じて計算した金額に相当する不納付加算税を徴収する。ただし、当該告知又は納付に係る国税を法定納期限までに納付しなかったことについて正当な理由が認められる場合には、この限りではない

 破産管財人の報酬については、源泉徴収が必要だとしても、配当には、源泉徴収は不要であるとしなければ、多数の従業員をかかえる法人の事件は、手間が増え、また、手間が増えた分だけ管財人の報酬がふくらむことにもつながり、総債権者のためにもなりません。

 控訴審で、配当については、源泉徴収は不要であるとの判断がえられるを期待しています。 

 

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2008年10月25日 (土)

【金融・企業法務】 解約返戻金と金融機関による相殺

 季刊事業再生と債権管理No122・2008年10月5日号(秋号)に、新保険法と債権管理という特集の中に、保険会社による債権回収と保険法改正というテーマの論文がありました。

 保険会社が、破産者である債務者に対して貸付金を有している場合に、解約返戻金と相殺できるか?という論点について、久保先生(立命館大学教授)が、わかりやすい説明をされていました(記事を引用して説明します)。

 破産手続が開始された場合、選任された破産管財人は、双方未履行の双務契約の解除選択権を有します(破産法53条1項)。

 従って、保険契約が継続し保険料が支払われている場合には、保険契約を解除するか、継続するかの選択をしなければなりませんが、通常は、解除を選択する場合が大半です(確かにそうですね。)。

 保険会社の貸付金は、別除権で担保されている債権以外は破産債権となり、破産管財人が保険契約を解除すると解約返戻金請求権が具体化します。この場合、保険会社の貸付債権は、それを自働債権、解約返戻金支払債務を受動債権とした相殺が可能かどうかが問題となります。

 まず、解約返戻金支払債務は、保険契約者の解約権行使によってはじめて具体化する条件付債務ですが、破産法67条2項後段は、破産開始後において、破産債権者の債務が条件付であっても相殺を認めていますので、この点は障害になりません。

 次に、解約返戻金支払債務が、破産債権者が破産手続開始後に負った債務と評価されると相殺権を行使できず(破産法71条1項)、保険会社の債権は破産債権として処遇されることになり、相殺の期待が大きく減殺されます(確かに)。

 この点については、最高裁平成17年1月17日が、特段の事情がない限り、相殺が許容されると判断していますので、特段の事情がない限り問題がありません。

 以上から、相殺は問題がないことになります。

(条文)

 破産法53条1項 双務契約について破産者及びその相手方が破産手続開始の時において共にまだその履行を完了していないときは、破産管財人は、契約を解除し、又は破産者の債務を履行して相手方の債務の履行を請求することができる。

 破産法67条2項 破産債権者の有する債権が破産手続開始の時において期限付若しくは解除条件付であるとき、又は103条2項1号に掲げるものであるときでも、破産債権者が前項の規定により相殺することを妨げない。破産債権者の負担する債務が期限付若しくは条件付であるとき、又は将来の請求権に関するものであるときも、同様とする。

 破産法71条1項 破産者債権者は、次に掲げる場合には、相殺をすることができない。1項 破産手続開始後に破産財団に対して債務を負担したとき

 金融機関からのご質問の中に、当社が、住宅ローンを融資しており、他社が発売している火災保険に住宅ローンのために質権を設定しているが、建物が落札されたので、当社は、貸付金と、火災保険の解約返戻金とを、相殺できないのだろうか?というものがありました。

 う~ん。解約返戻金については、質権の被担保債権ではないのであれば、そもそも対立する当事者間での債権ではないので、難しいのではないかと考えています。

 そもそも、なんで解約返戻金を質権の担保にしていないのかな???

 閑話休題

 保険法も平成20年5月30日に成立し、6月6日(公布日)から2年以内に施行されます。私の事務所では、損害保険がらみの保険約款などの解釈のご相談も多く取り扱っていますが、む~ん、勉強すること増やすなpoutと言いたいです。

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【金融・企業法務】 定額郵便貯金につき、共同相続人の一人からの自己の相続分請求が認められなかった事例

 旬刊金融法務事情No1845(9月15日)号に、「定額郵便貯金についての共同相続人の一人から自己の相続分請求について」の論文が紹介されていました。

 銀行預金や通常の郵便貯金については、相続により、共同相続人に、分割して承継される(当然分割承継説)と考えられています。

 ところが、定額郵便貯金については、郵便貯金法7条1項が、一定の据置期間を定め、分割払戻しをしない条件で一定の金額を一時に預け入れするものと規定されていることから、共同相続人の一人から自己の相続分に基づく請求がされたとしても、その請求を認めない考え方が有力になっています。

 従って、預け入れから10年経過しない定額郵便貯金については、払戻が困難となり、東京地裁平成20年2月6日も、同様の考え方を採用しています。

 平成19年10月1日、郵政民営化法等に施行に伴い、定額郵便貯金は、機構に承継されました。

 しかし、郵便貯金法の附則5条3号により、同法施行の際に、現に存する旧郵便貯金法7条1項3号の定額郵便貯金は、「なおその効力を有する」とされていることから、預け入れから10年を経過しない定額郵便貯金については、共同相続人の一部からの相続分の払戻請求については、否定されそうです。

 解説者は、郵政民営化以降においても、同様の金融商品は販売されているようであるが、とすれば、分割請求を拒絶する法律は存在せず、特約のみとなるが、特約のみで、払戻請求が拒絶されることについては、消極的な見解です。

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2008年10月24日 (金)

【金融・企業法務】 夜間金庫を利用した場合の、預金契約の成立時期

 旬刊金融法務事情N01845(9月15日)号で、判決速報として、紹介されていた事案です。

 論点がはっきりしており、司法試験の論文でも使えそうな事案ですね。

 A会社が、取引銀行であるB銀行に、約400万円程のお金を、平成19年2月9日(金)から同月13日(火)午前8時35分(夜間金庫開扉時刻)までの間に(なお12日は祝日)、金銭を投入する形で預け入れました。

 B銀行は、13日午前9時19分、Aの当座預金口座への入金処理を行いました。

 ところがです。実は、A会社は、2月13日午前9時には、破産開始決定を受けていたのです。

 B銀行は、Aに対する貸付金と預金債務とを相殺しましたが、破産管財人は、預金は、破産手続開始決定後に成立したものだから、破産法71条1項1号の制限により相殺は無効であるとの主張をして、裁判所で争われることになりました。

 論点はただ一つ、夜間金庫の場合の、預金契約はいつ成立するのか?です。

 考え方は、2とおりあります。

 ① 銀行が受領した金銭の額を計算してこれを確認した説

 ② 金銭の交付があれば足りるとする説

 ②の説だと、破産手続開始決定前に預金債務が成立するので、B銀行の勝ち

 ①の説だと、破産手続開始決定後に預金債務が成立するので、管財人の勝ち

 大津地裁平成19年12月26日も、大阪高裁平成20年5月29日も、①の考え方を採用しており、銀行実務や学説も、①の説を支持している者が多いみたいです。

 400万円位のお金で、地銀も控訴までしてなぜここまで争ったのでしょうかね?訴訟費用も、きちんと回収する必要があると思いますね。

 管財人って、悩みがつきません。裁判所の管財人協議会や、全倒ネットのメーリングリストは、大変ありがたいですね。来月、広島で、全倒ネットの総会がありますが、出席できるよう、バスの予約きちんとしなくちゃと思います。

 夜間金庫で思い出すのは、少し前、偽の夜間金庫を作って捕まった犯人がいましたね。一見として、偽の夜間金庫とわかるような代物だったと思いますが、初めての人は間違えてお金を投入してしまうかもしれませんね。

 きんざいの金融法務例会で、夜間金庫について取り上げて貰えるとおもしろいなあと思います。

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2008年10月22日 (水)

【金融・企業法務】 顧問先企業様での研修会(伊予三島)

   縁あって、10年近く前から、高松に本社のある上場企業の子会社の法律顧問に就かせていただいておりますが、今日は、同社に招かれて、伊予三島のホテルで、債権事故対応についての研修の講師を務めさせていただきました。building

 最近、コンプライアンスなどの高まりから、顧問先企業様から、研修会の講師のご依頼を受けることが多くなっていますが、今回は、債権事故が生じた場合の対応策について、法律面から説明させていただきました。pencil

 午前10時10分から11時10分の予定でしたが、質疑応答をいただき、午前11時25分ころまで、かかってしまいました。

 午前11時10分からは第一線で活躍されている現場の担当者の方の講義が入っていたのですが、ご迷惑をおかけすることになりました。大変申し訳ありませんでした。ヾ(_ _*)ハンセイ・・・

 受講された方から、質疑が多数でましたが、さすが、第一線でご活躍されている方の質問で、私も、その回答に窮したこともたびたびでした。

 どうしても弁護士からの説明ということになりますと、「石橋もたたいても渡らない」ということになりがちですが、現場はそういうわけもいかず、現場でご担当された方が私の説明をきいても、余り参考にはならないことも多々あったかもしれません。coldsweats01

 今後の反省材料とさせていただければと思います。happy01

 四国中央市で研修会となったのは、支店が、四国各県庁所在地にあるため、みんながいきやすい場所ということで、選ばれたようです。さすが、「四国中央」市ですね。heart04

 伊予三島は、今日は、三島神社のお祭りで、大変にぎやかでした。少し写真をとってきたので、紹介いたします。

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 伊予三島駅です。四国で最初の高架式の駅のようです。

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 伊予三島駅前の商店街です。奥が伊予三島駅になります。手前はフジグランです。

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 三島大社前です。お祭りのため、屋台がでています。

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 門前の様子です。

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 同じく、門前の様子です。

 

 このところ、ものすごく出張が多く、書面書きの時間があまりとれません。昨日は、動産執行の立ち会いで、松山、今日は、研修の講師として、伊予三島、明日は、調停出席のため、新居浜です。

 また、(民事)証拠調べ(尋問)もめちゃくちゃ多くなっています。最近1ヶ月で、5件ほど尋問しているのではないでしょうか?

 国選事件も、常時3件しか受けないと決めているのですが、いつのまにか5件にふくらんでしまっています。私に廻る国選事件は、特に質が悪いのが多くなっているのか、事務所の打ち合わせで、ガムをかみながら話をする者や、親族が愛想尽かして援助しないことをきいて逆ギレする者もいます。被害弁償金を立て替えさせられたこともありました・・・(当然かえしてくれません・・・) crying

 自分勝手な人たちが多く、 悪いことをする人相手の弁護は、性に合っていないな~と、最近しみじみ感じます。

 それでも、自白事件でも呼ばれたら、何度でも面会にいきますけどね。被告事件も、接見回数で、報酬増額して欲しいですね。嘘の申告なんてしませんから。coldsweats01

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2008年10月15日 (水)

【金融・企業法務】 信用保証協会法の改正による新業務の追加 

 旬刊金融法務事情No1848(10月15日)のほうむブログというコラムに、「信用保証協会法改正による新業務の追加」というわかりやすい記事が掲載されていました。

 今月の「金融法務例会」のテーマにもなったので、それを踏まえて記事を読むとわかりやすかったです。

 まず、信用保証協会法の改正により、信用保証協会は、

 ①保証を行うにあたって、中小企業者の新株予約権を引き受けること

 ②求償権先に対する債権を金融機関等から譲り受けること

 ③事業再生ファンドに対して出資すること

 の3業務が追加されました。

 ①の新株予約権の引受は、信用保証協会が保証を行うにあたって、中小企業者が発行する新株予約権を引き受けることにより、信用保証料を割り引くなどの付加価値を提供するものと紹介されています。

 但し、利息制限法との関係や株式評価等の難しい問題も含んでいます。

 ②求償権先に対する債権の譲り受けは、求償権先である中小企業者の私的整理に反対する債権者の有する債権を信用保証協会が譲り受けることにより、円滑な債権者調整を行うことを目的としています。

 但し、信用保証協会が自ら債権回収を行うことはできず、弁護士又はサービサーに委託しなければならないようです。

 ③の事業再生ファンドに対する出資は、投資事業有限責任組合の形式をとる事業再生ファンドに対して、信用保証協会が有限責任組合員として出資することにより、地域の中小企業者の再生を支援することを目的にしています。

 加えて、主として不正利用防止のために不正利用者に関する情報を一元管理することを目的に、保証業務支援機関に関する規定も新設されています。

 また、同じタイミングで、中小企業信用保険法も改正され、一括決済方式により支払企業が負担する債務の保証も、新設されました。

 随分積極的な役割を持たせるものだなと感じました。

 信用保証協会に対するイメージが大きく変わりそうです。

 次から次、法改正や新法令、おびただしい裁判例など、私も、情報の海で溺れそうになっています。

 なんとか溺れないよう暇を見つけては学習していますが、最近は、尋問や遠方の出張が多く、時間がとれません。

 脳みそを入れ替えるわけにはいきませんし、なかなか難しいですね。

 相談の予約の電話がかかってきますが、新規の方の場合、残念ながら、10月29日以降でないと入らない状態です。2週間先です。大変ご迷惑をおかけしますが、弁護士一人事務所なので、仕方がありません。

 別に今治地方に弁護士の数が少ないからというわけではなく、単純に、事務所の広報活動の結果だとは思います。 

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 なお、No1848は、「さんまエキスプレス」と題する債権執行書記官室の紹介という記事も載っていました。

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2008年10月11日 (土)

【金融・企業法務】 第131回金融法務例会(内大阪銀行協会) 中小企業信用保険法および信用保証協会法改正の概要 

 昨日、きんざいが主催されている金融法務例会(大阪)に出席してきました。

 テーマは、中小企業信用保険法及び信用保証協会法改正の概要として、(社)全国信用保証協会連合会に在籍されている講師の先生2名の方に、解説していただきました。

 信用保証協会って、なんとなく、不良債権が最後にゆくつく所というイメージをもっていましたが、今回の研修を受けて、そのような印象は、根本的に間違ってることがわかりました。

 ちなみに、愛媛県信用保証協会のHPです。

 まず、中小企業信用保険法改正として、売掛債権早期現金化保証(仮称)のための新保険が創設されました。

 一括支払契約保証制度というのですが、一応、平成20年9月1日から施行されているようですが、講師の先生のお話によれば、調整が必要で現在受けられる状態ではないようです。

 ただ、静岡県信用保証協会のHPに概要が紹介されていましたので、そのHPを紹介します。

 一括決済方式には、ファクタリング方式、信託方式、併存的債務引受方式の3とおりあります。

 例えば、ファクタリング方式は、簡単に言えば、納入企業が、支払企業に対する売掛金を、個別に、期日前に、金融機関等に譲渡して、金融機関等から譲渡代価を支払って貰い(支払期日前なので、手形の割引みたいなイメージ)、支払企業は、金融機関等に期日が到来すれば、決済金を支払うのですが、信用保証協会は、支払企業が金融機関等に負っている決済金支払い債務を、保証するという仕組みです。

 ちょうど、納入企業も、手形の割引を受けるような形になるので、売掛債権の早期の資金化が可能となるわけです。

 次に、中小企業金融公庫法の改正に伴い、売掛債権の早期現金化を支援するために、売掛債権をプール化して、管理するための各業務を中小企業公庫に追加しました。

 先ほどの一括決済支援制度と似ており、金融機関等の代わりに、売掛債権をプールする特別目的会社SRCを作り、納入業者は、SRCに売掛債権を譲渡して、売掛債権の早期現金化を図ります。そして、支払起床のSRCに対する支払い債務を、中小企業金融公庫が貸付・保証等をすることになります。

 

 次は、予約保証制度の概要についても説明していただきました。

 簡単にいえば、いざというときに、中小企業が金融機関からお金を借りる際に、信用保証協会の保証付で、すぐに、融資が得られるようにしたわけですね。

 但し、貸付中止事由もあるので、気をつけないといけません。

 

 さらに、信用保証協会による再生支援業務強化の歩みについても、説明していただきました。

 信用保証協会も、再生支援の要請から、平成18年1月から、再生を支援するために、求償権を放棄することが可能となり、また、再生を支援するために求償権を消滅させる保証が、平成18年4月から解禁となりました。

 求償権放棄については、以下の4つの計画に基づく場合には、信用保証協会は、求償権を放棄することができるとされました(但し、政策公庫の事前承認必要)。

 ①中小企業再生支援協議会が策定を支援した再建計

 ②中小企業基盤整備機構が出資を行う再生ファンドが策定を支援した再建計画

 ③整理回収機構が策定を支援した再生計画

 ④私的整理に関するガイドラインに基づき成立した再建計画 

 また、先ほどの4計画に、(2)信用保証協会内に設置され、外部委員により構成された再生審査会が了承した再生計画に基づく場合には、信用保証協会は、中小企業者に対する債権の全部又は一部を消滅させることを目的とする保証を行うことができるとされました。

 さらに、信用保証協会は、その求償権先たる中小企業者の私的整理に反対する債権者(消極的な債権者)の有する債権の譲受けを行うことで、私的整理段階における円滑な債権者調整を可能とし、企業の再生プロセスの促進を図る債権譲受業務も、行うことが可能になりました。

 ただし、再生計画に反対もしくは消極的な債権者からの債権を譲り受けることから、協会の譲受価額は、ごね得にならないような適正な価格での譲り受けが求められているため、実際には、あまり例はないかもしれません。

 その他、いろいろご説明していただきましたが、睡魔に襲われ、一部記憶をなくしております。coldsweats01

 それはさておき、行き帰りの電車の中では、いつものように、行政法の通信講座(MD)を聴いていたのですが、残念ながら、まさに、子守歌と化していたのでした。think

 どうせなら、英会話に変えようかな・・・・slate

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2008年10月 7日 (火)

【金融・企業法務】 破産管財人の源泉徴収義務の有無 No3

  破産管財人の源泉徴収義務の有無については、日頃から、関心をもっていますが、金融法務事情No1845(9月15日)、破産管財人の源泉徴収義務に関する検討(大阪高判平成20年4月25日に対する疑問を中心に)というテーマで、山本和彦一橋大教授が、論考を寄せられていたので、わかる範囲で、読んでみました。

 大阪高裁は、大阪地裁に引き続いて、配当などについての破産管財人の源泉徴収義務を肯定したものですが、この裁判の結果は、従来の破産管財人の実務と大きく異なる結論のものであり、実務に大きな混乱を招いています。

 理論的な問題はともかく、源泉徴収義務を肯定した場合に、源泉徴収を行う破産管財人の事務の増加による管財人報酬額の増加分や税理士への事務の委任による報酬が財団債権とされる結果、租税債権者や賃金債権者の債権者の一部のために生じる費用について、総債権者がそれを負担しなければならないことの不合理性は、現場にあわないものです。

 上告されているようなので、最高裁で是非見直しをしていただければと思います。

 特に地方では、会社の破産といっても、少額の管財事件であり、税理士の先生に頼むような余裕はない事案だらけです。この判例を受けて税務当局の調査が厳しくなるようでしたら、破産管財事件も、経済的なメリットが少ない案件の場合には、余り引き受けられないなあと考えています。

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2008年10月 6日 (月)

【金融・企業法務】 金融機関が、融資の担保として差し入れられていた株式を売却処分して融資の弁済に充当したことについて、金融機関の善管注意義務違反が否定された事例(東京地裁平成20年4月21日)

 金融法務事情No1842(2008年8月5日)号の金融法務事情で紹介されていた裁判例(東京地裁平成20年4月21日)です(但し、控訴中)。

 事案は、概略、Xさんが、Y銀行に対する借り入れ債務の担保として、株式を預託していたのですが、Y銀行が、借り入れ債務の弁済期前に、株式を売却処分してしまったことから、Xさんが、Y銀行に対して損害賠償を求めた事案です。

 この事案、Xさんがかわいそうに思える内容なのです。coldsweats02

 というのは、債務の弁済期前に、売却が処分され、その後、売却された株の株価が上昇した事案のようです。crying

 XさんとY銀行との間には、担保株式の価値が一定限度下落した時点で、担保株式を処分して、貸金債務の弁済に充当することができる特約がありました。

 Xさんは、本件のような一時的な株価下落にすぎない状況下において本件担保差入証書3条(※特約のこと)に基づく権利行使することは、Xの責めに帰すべき事由がないことに比して、Xに甚大な被害をもたらすものであり、著しく信義に反し、あるいは公序良俗に違反する行為だと主張しました。

 裁判所も、Xが履行遅滞に陥っていなかったこと、処分された株の株価は1年後には2倍に上場していることから、Xが不満を抱くのも理解できないわけではないと、一応、Xさんに同情してみせます。

 しかし、特約の合理性、また、今回は株価は上昇したのですが場合によっては下落し続けることもあることから、特約は、信義則や公序良俗には違反しないと判断しました。bearing

 このケースでは、債務者が履行遅滞に陥っていないケースですが、履行に陥っているケースで、株式担保の時期・価格などにつき、善良な管理者の注意をもって任意売却処分をなす義務を肯定した大阪地裁昭和48年3月31日の裁判例があります。

 債権者側、或いは、債務者側から、時折、ご相談を受けることのある案件です。

 ただ、東京地裁の事案の場合、理屈はともかく、心情的には、Xさんの気持ちがわかるな~。

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2008年10月 5日 (日)

【金融・企業法務】 預金契約等の預金者の認定

 銀行法務21(2008・10)で紹介された事案です。

 権利能力なき社団であるX(甲野寺檀徒信徒会)と、Z(宗教法人甲野寺)とが、

 Y農業協同組合の普通貯金(名義甲野寺(代)乙山太郎)、定期貯金(同上)

 Y銀行における普通預金(名義甲野寺代表乙山太郎)

 Y信託銀行の信託(名義宗教法人甲野寺)

 の帰属者は誰かという点について争われた案件です。

 さいたま地裁平成19年11月16日は、

契約当事者の事実認定にあたっては、

定期預貯金契約・普通預貯金契約・信託契約の別を問わず

 契約行使者(口座開設者

 契約行為者の法的地位(預貯金・信託金の出捐者と契約行為者との関係)

 契約の相手方である金融機関に表示された名義および名義人に関する情報

 通帳や届出印の保管状況

 入金および払戻しをおこなった者など

 を総合的に考慮することが相当である。

 本件事案では、名義や押印のみからは、ZとXのいずれを契約当事者として表示したものかは明らかでない

 しかし、乙山は、Xの代表世話人として、Xの目的を遂行するために、その役職上、Xを契約当事者とする意思で、本件預金契約等をし、口座を開設したことは明らかであると判示しました。

 従来、預金者の認定については、無記名定期預金・記名定期預金については、客観説を採用して判断されていましたが、平成15年2月21日、平成15年6月12日、平成15年6月26日の最高裁判例以降、預金者の認定を巡る議論がわかりにくくなっています。

 また、判例紹介の解説者によれば、定期預貯金契約・普通預貯金契約・信託契約の別を問わずと割り切った判断については、異論もありうるところと解説されています。

 なお、本号は、実務指針 改訂版金融検査マニュアルをふまえた不動産担保評価(上)という題目で、地方銀行に所属されておられる不動産鑑定士の方のわかりやすい記事がのっていました。

 

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2008年9月13日 (土)

【第130回金融法務研究会例会】 高齢者取引と金融実務 in 大阪銀行協会

 昨日、きんざい主催の、金融法務研究会例会に参加してきました(大阪)。

 今回のテーマは、高齢者取引と金融実務と題して、第一線でご活躍されている地方銀行の法務責任者の方が、講師でした。

 高齢者取引については、私の顧問銀行の窓口担当者から、時折、ご相談を受けます。が、私が知り得るのは、相談を受けたケースだけ、つまり、ごく一部分だけであり、今回のように、第一線でご活躍されている方のお話は、現場を知る上で、大変貴重なものです。

 高齢者取引の問題点については、

 取引伝票の代筆依頼などの高齢者本人との取引に関連する問題と、

 委任状持参者からの払戻請求などの本人以外との取引に関連する問題

とに、わかれます。

 これらに対して、どのように対処すべきかについては、講師の先生が、フローチャートを作成していただいておられますが、このチャートが大変役に立つと思います。

 なお、後日問題を生じるのを可能な限り防止するため、

 成年後見制度の勧奨

 日常生活自立支援事業利用の勧奨

を勧めておられます。

 成年後見制度については、特に、法定後見については、弁護士にとっても、ルーチンワークの1つですが、最近では、任意後見を利用されているケースも、少ないものの、まれに相談を受けることがあり、大変参考になります。

 経済法令研究会からでている銀行法務21・9月号にも、高齢者との金融取引上の実務対応が特集記事として載っていました。

 講師の先生もおっしゃられておられましたが、法定後見以外は、圧倒的に件数は少ないようですが、私の事務所では、6月に、補助手続を行いました。昨年の統計だと、法定後見2万2000に対して、補助は、わずか900くらいしかないみたいです。貴重な経験でした。

 話を戻りますが、日常生活自立支援事業については、会場の金融機関参加者もほとんど聞いたことがないようですし、私も、頭の片隅に、あるだけでしたが、今回の研究会では、日常生活自立支援事業についても、わりと時間を割いて説明していただきました。

 ちなみに、今治市のHPです。

 個別の高齢者取引の問題点への対応についても、様々なアドバイスをいただきましたが、ここでは企業秘密ということで、開示いたしません。coldsweats01

 私の事務所でも、成年後見、遺言などの、高齢者に対するサポートを積極的に行っていますが、日常生活自立支援事業への参加、或いは、財産管理業務(個人法律顧問)などに対するサポートも、考えていかなければなりませんね。

 それはそうと、第3回目の新司法試験の合格発表がありました。合格率は30%を超えていたようで、合格者も2000人を超えているようです。

 しかし、それにしても、法科大学院の格差が相当大きくなっていますね。

 今日も、ロー出身の司法修習生の方が、事務所に遊びにこられますが、名門校出身者でも、かなり就職活動は大変になっているようです。

 私の母校でも、出身者を積極的に雇用してくれとの手紙をいただいています。

 反面、数が増えるということは、社会に対する影響力も増すわけであり、また、弁護士の業務も、かなり多角化していくのではないかと思いますね。

 

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2008年9月11日 (木)

【金融・企業法務】 銀行が機械払システム全体を無権限者による払戻しを排除できるように組み立て、運営するように注意義務を尽くしている場合には、無権限者が真正な盗難キャッシュカードを用いて届出の暗証番号を入力し、預金の払戻を受けたときであっても、銀行は、キャッシュカード規定の免責規定により免責されるとした事例(東京高裁平成20年3月27日)

 旬刊金融法務事情No1836(6月5日)号で紹介されている東京高裁の裁判例(平成20年3月27日)です。

 事案は、預金者が盗まれた自己のキャッシュカードをコンビニエンスストアのATMで使用され、普通預金1200万円弱が払い戻されたことについて、銀行の過失があり払戻が無効であるとして、払い戻された預金及び遅延損害金の支払いを求めたものです。

 いつものことながら、銀行は、①免責規定による免責、②債権の準占有者に対する弁済を主張して争いました。

 結論からいえば、地裁も高裁も、免責規定による免責を認め、銀行を勝たせました。

 原審(東京地裁)は、

(1)「銀行(その提携先も含む)の設置した現金自動支払機を利用して預金者以外の者が預金の払戻しを受けたとしても、銀行が預金者に交付していた真正なキャッシュカードが使用され、正しい暗証番号が入力されていた場合には、銀行による暗証番号の管理が不十分であったなど特段の事情がない限り、銀行は、現金自動支払機によりキャッシュカードと暗証番号を確認して預金の払戻をした場合には責任を負わない旨の免責約款により免責される(最高裁平成5年7月19日)」

 暗証番号の管理が不十分であったなど特段の事情を認めるに足りる具体的な事実ないし証拠はない

 (2)「本件免責規定のような機械払システムにおける免責規定は、銀行側が一方的に組み立てた弁済受領者の権限の機械的な判定システムに依拠して免責の効力を認めるものであるから、当該システム全体が安全性を有することが当然の前提となっており、当該システム全体が安全性に欠ける場合には、免責の効力は認め難いことになる。

 当該システム全体が安全性を有するものといえるためには、

 払戻しの時点においてキャッシュカードと暗証番号の確認が機械的に正しく行われたというだけでなく、

 銀行において、機械払システムの利用者の過誤を減らし、預金者に暗証番号等の重要性を認識させることを含め、同システムが全体として、可能な限度で無権限者による払戻しを排除し得るように組み立てられ、運営されるよう注意義務を尽くしていたことを要するというべきである。」

 そして、原審は、払戻時点における社会情勢やコンピューター技術水準を基準に、暗証番号、払戻限度額の設定、異常取引検知システムにかかる過失の有無を検討し、本件事案では、過失はなかったと結論づけています。

 なかなか預金者にとっては厳しい判決ですが、預金者敗訴で確定されています。 bearing

 

 司法研修所51期の記念大会では、同期の弁護士・裁判官・検察官から、「ブログ見ているよ。」、「しまなみ通信読んでいるよ。」との言葉をいただきました。また、現在、ブログを、3名の方が定期購読(発信)されていますが、その中に、同期の優秀な弁護士がいたとは驚きです。ありがとうございました。

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2008年9月 8日 (月)

【金融・企業法務】 盗難通帳による不正な預金払戻しと預金者の過失

 旬刊金融法務事情No1843(8月25日)号に紹介されている大学教授の論文です。

 旅館を営むXさんが、宿泊客であるAにより、預金通帳と届出印を盗まれ、これらのもとに預金払戻請求に応じたYに対し、600万円の払戻を求めた裁判例を紹介されています。

 原審(福岡地裁平成18年3月2日)は、Yによる免責約款および民法478条による免責の主張を排斥したうえ、過失相殺の主張に対しては、公平の観点から過失相殺の規定を類推適用して、①Xは本件預金通帳及び届出印を預金ダンスの中に小引き出しに一緒に入れて保管していたこと、②Xにおいて宿泊者に対し安易に海外旅行の予定の情報をもらしたことにより窃盗の対象に選ばれたことを理由に、2割の過失相殺されてしまいました。crying

 これに対し、控訴審(福岡高裁平成18年8月9日)は、①過失相殺の類推適用自体を否定し、②仮に、類推適用できるという見解にたったとしても、預金者に重過失などの相当程度の過失があった場合に限定して類推適用を認めるべきだとして本件ではそのような事情がないとして、全額の返還を認めました。happy01

 過失相殺類推適用説の背景には、不正な預金払戻し事件においては、銀行も被害者なのだから、過失ある預金者は応分にその損失を負担すべきだということがあるのでしょう。

 預金者と銀行などの金融機関との間には、圧倒的な情報量の差異は否定できず、安易に過失相殺の規定が類推適用されるのは、いかがなものかと考えます。

 なお、本号の金融法務ブログには、ある会社が少額の差押えを受け、差押えされた金融機関がその会社と密接な関係にあったことから、大変な騒ぎになったことが紹介されていました。

 私の事務所では、ここ2年ほどから、保全・執行の案件が少し多くなっています。変わり種としては、通行妨害禁止の仮処分や、動産執行ですね。不動産仮差押か、金銭執行か、建物収去(退去)関係がほとんどですけど。

 動産執行は、成果はあまりないにもかかわらず、結構、手間(時間と費用)がかかるのですね。 

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2008年9月 4日 (木)

【金融・企業法務】  預金の過誤払い 大阪高裁平成20年2月28日

 判例時報No2008(9月1日)号で紹介されている下級審裁判例(大阪高裁平成20年2月28日)です。

 不動産業を営む有限会社が、取引先から不動産売却代金の分割払代金の送金を受けるために銀行に普通預金を開設し、280万円程度を預金していたのですが、何者かによって全額引き出されてしまった案件です。

 預金者は、銀行に対して、預金契約に基づき払戻を請求したのですが、これに対して、銀行は、①払戻は普通預金等共通規定の条項によって免責されるとか、②払戻は債権の準占有者に対する弁済(民法478条)として有効だと反論しました。

 免責条項については、「民法478条の適用に関して銀行の責任を緩和するものではない」と解されていますので、結局、②の民法478条の要件を検討すればいいことになります。

 このような場合が発生した場合、銀行側は、民法478条の説明よりも、免責条項を説明して、被害者の請求をあきらめさせようとしますね。bleah

 過失の判断については、有名な最高裁昭和46年判決は、印鑑照合に係る注意義務の履行のみでは足りない特段の事情があるか否かを検討することになります。

 原審では、本件払戻については、払戻請求金額が多額であることや同払戻請求によって本件口座残高がほとんどなくなったことを考慮しても、特段の事情があったとは認められないと判断しました。

 これに対し、大阪高裁は、本人確認の書類の提示を求めるなどと記載したパンフレットの記載内容から、厳格な本人確認義務を導いた上で、同義務を履行しなかった銀行の過失を認めています。

 なお、上告されています。 

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2008年8月21日 (木)

【金融・企業法務】 銀行が預金者に再発行したカードが郵送途中に郵便局で詐取され、犯人により同カードを使用して預金が払い戻されたことにつき、預貯金者保護法により銀行により補償義務が認められた事例(大阪地判平成20年4月17日)

 判例時報No2006(8月11日)号で紹介されていた裁判例です。

 再発行されたカードを詐取され預金を引き出しされた預金者が、銀行に対して、預貯金者保護法5条1項に基づく填補として預金払戻額及び手数料の支払いを求めた事案です。

 預貯金者保護法はご承知のとおり平成18年2月10日から施行された法律ですが、解説者によれば、「本判決は同法の適用についての訴訟における裁判所の判断であり、先例は見当たらず、今後同法の適用についての紛争解決の参考となろう」と説明されています。

 同法5条1項は、以下のとおり規定しています。

 預貯金者は、自らの預貯金等契約に係る真正カード等が盗取されたと認める場合において、次の各号のいずれにも該当するときは、当該預貯金契約を締結している金融機関に対し、当該盗取に係る盗難カード等を用いて行われた機械式預貯金払戻しの額に相当する金額の補てんを求めることができる。

 本件事案の主要な争点は、

 ①4条1項が本件払戻しに適用されるかどうか

 ②原告の重大な過失により本件払戻が行われることになったかどうか

 ですが、

 ①については、本件払戻は原告に交付されることなく第三者が詐取した再発行カードにより行われたものであり、法4条1項の「偽造カード等」に該当する

 ②についても、原告には犯人が再発行カードを取得するについては重大な過失があったとは認められない

 と判断し、

 銀行の原告に対する填補義務を認めました。

 なお、債務不履行に基づく債務者の責任を追及するための弁護士費用については、最高裁昭和48年10月11日を引用して、認めていません。

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2008年7月27日 (日)

【金融・企業法務】 破産管財人の源泉徴収義務の有無(大阪高裁)

 旬刊金融法務事情No1840(2008年7月15日)号に掲載されていた大阪高等裁判所の判決(平成20年4月25日)についてです(上告・上告受理申立中)。

 論点は、(1)破産管財人が所得税法上の源泉徴収義務を負うか(①破産会社又は破産管財人が所得税法上源泉徴収義務者と定められた「支払をする者」に該当するか否か、②仮に破産会社が源泉徴収義務者に当たるとした場合、破産管財人が源泉徴収義務を負うか否か)、(2)負うとして当該源泉所得税にかかる租税債権は財団債権であるかです。

 (1)①の論点については、大阪高裁は、支払原資にかかる管理処分権を専有する破産管財人において現実の支払行為等をなし得る以上、法的には破産会社自体が支払行為等をなし得るのと同視できるとして、破産会社が「支払いをする者」に該当すると判断しました。

 (1)②の論点については、大阪高裁は、破産管財人において、自己に専属する管理処分権に基づいて支払原資を用いて弁済又は配当を実施したのであるから、法的には破産会社自体が自ら支払をしたのと同視できること、破産管財人は破産法7条の管理処分権に基づき配当を本来の管財業務として行ったのであるから、これに付随する職務上の義務として、源泉徴収義務を負うと判断しました。

 (2)の論点については、大阪高裁は、破産管財人による配当又は弁済は消極積極財産からなる破産財団の管理上なされるものであり、これに付随して当然成立し確定する本件租税債権にかかる納税義務も、「破産財団の管理上当然支出することを要する経費に属し、また、破産債権者にとって共益的な支出と認められる」として、財団債権に該当するものとしました。

 しかし、逐一、破産管財人が源泉徴収義務を負うとすれば、計算上の過誤防止のため、点検する必要が生じますから、迅速な配当は望めません。

 これに対しては、大阪高裁は、破産管財人に不可能又は可能であっても受忍を求めることが相当でないような過大な手続き上の負担が生じるとまで認めるに足りる証拠はないとして、一蹴しています。

 本件事案の源泉所得税は、なんと3593万7500円、不納付加算税は、359万3000円となっています。田舎弁護士にとっては恐ろしい金額であります。happy02

 金額が金額なので、税務当局も黙っていられなかったのでしょうか。 

 高裁なので当然合議ですが、左陪席は、少し前の今治支部長ですね。

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2008年7月26日 (土)

【金融・企業法務】 金融機関は弁護士に何を期待しているのか

 旬刊金融法務事情No1841(2008年7月25日)号の記事です。

 今回は、弁護士とのコーワークということで、九州の銀行の方が執筆されていました。

 記事によれば、地元の弁護士は、ホームドクターであり、風邪をひいたときにすぐに診察を受ける、例えば、預金為替業務、債権管理といった伝統的な銀行業務に関する紛争や訴訟、あるいは人事・労務の法律課題、株主総会の運営に関しては、当行の体質をよく理解している福岡の弁護士にお願いしている、福岡の弁護士は、法改正など時事法務に関して経営者として何をチェックするべきかという視座もアドバイスしてくれていると紹介しています。

 他方、東京の法律事務所は、総合病院のような存在で、各分野それぞれに特化した多数の専門医がいる、ガバナンスやファイナンス、あるいは事業再生事案などは例外なく東京の法律事務所にお願いしている、事業再生の実務に携わるようになり、東京の弁護士との協業は格段に増えていると紹介しています。

 そして、ホームドクターと総合病院の使い分けは今後も続くであろうとしています。

 確かに、地方では、ガバナンスなどの専門性の強い案件を扱える事務所はかなり限定されているのではないかと思います。やはり、質量とも充実している東京などの大手の法律事務所に依頼された方がいいでしょう。

 他方で、伝統的な銀行業に関する案件、人事労務、株主総会の運営は、一般的な弁護士業務に属するものであり、経験と研修を積んでいるのであれば、地方の弁護士でも十分に対応できます。

 地方の弁護士にとっての有力な武器は、依頼人との距離感(心理的なものも含む)が非常に近いということです。

 この距離感の差を活かして、時事法務についてきちんと研修を積んでいけば、地方の弁護士でも、十分に顧問契約を維持することができるのではないでしょうか。

 なお、今回の金融法務事情は、ほうむブログで、「住宅ローンの保証料」の問題点などについて、わかりやすい説明がされていました。

 また、「同一債権者に複数の債務を負担する債務者の破産手続開始決定後、上記すべての債権を被担保債権とする根抵当権を設定した物上保証人から、債権者がその債権の一部について全額弁済を受けることの、届出債権額への影響の有無(無しと判断)」について判断した大阪高裁平成20年4月17日の裁判例を紹介しています。

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2008年7月24日 (木)

【金融・企業法務】 賃料自動改定特約の最高裁判例 (平成20年2月29日)

 判例時No2003(平成20年7月11日)号の最高裁判例です。

 Aさんは、その所有する土地に、Bさんの指定する仕様に基づく建物を建築し、Bさんに建物を貸しました。

 賃貸の条件は以下のとおりです。

 平成4年12月1日から15年

 賃料は、

 平成4年12月1日から同7年11月30日までは、月360万円

 同7年12月1日から同9年11月30日までは、月額369万円

 同9年12月1日から同14年11月30日までは、月額約441万円

 同14年12月1日から19年11月30日までは、月額約451万円

 となっていました(償却賃料や建設協力金については略)。

 賃料改定の条項 有り

 賃貸借契約後、不動産の価格も下落を辿ったため、 

 Bさんは、Aさんに対して、

 平成9年6月 同年7月をもって、賃料減額する旨の意思表示を行いました(第1減額請求)。

 平成13年11月 同年12月をもって、賃料減額する旨の意思表示を行いました(第2減額請求)。

 大阪高裁は、

 事情の変更があるときに、当事者の一方の請求により約定賃料額の増減を認めることとする借地借家法32条の法意からすれば、ここにいう事情の変更とは、増減を求められた額の賃料の授受が開始された時から請求の時までに発生したものに限定されるべきだとして、

 平成9年6月の第1減額請求については、請求時の賃料額である月額369万円の約定の賃料の授受が開始された平成7年12月から第1減額請求の日ころまでの経済事情の変動と、特別事情(※共同事業の中核として拘束性が強いものと評価されること)をかんがえると、第1減額請求の時の369万円が不相当になったとはいえない

 第2減額請求についても、同じ枠組みで判断し

 いずれも、Bさんの減額請求を認めませんでした。Bさん、残念。

 これに対して、最高裁(第2小法廷)は、

 減額請求の当否及び相当純賃料の額は、本件各減額請求の直近合意賃料である本件賃貸賃貸借契約締結時の純賃料を基にして、同純賃料が合意された日から本件各減額請求の日までの間の経済事情の変動等を考慮して判断されなければならないと枠組みを示した上、

 自動増額特約によって増額された純賃料は、当事者が現実に合意したものではないから、直近合意賃料と認めることはできないと判断しました。

 大阪高裁の判断は、自動増額特約によって増額された純賃料を基に判断していることから、法令違反を認め、原審に差し戻されました。

 なかなか、理屈っぽい理由で、おもしろいですね。昔の択一試験(司法試験)にでも使えそうな感じです。

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2008年7月15日 (火)

【金融・企業法務】 地域金融機関は弁護士に何を求めているのか

 積読の旬刊金融法務事情No1834(5月5日15日)を、ぱらぱらと読みました。

 法務ブログに、地域金融機関の方のコメント(骨子)が載っていました。

  金融商品取引法の対応相談については、大都市の法律事務所や弁護士にお願いし適切な助言をいただいた。しかし、改めて振り返って考えてみると、自金融機関の顧問弁護士に相談しなかったのか?

  その理由は、①長年顧問弁護士とおつきあいをしており、刑法、民法については相応の助言をいただいているが、銀行法、金融商品取引法といった法律にはあまり詳しくないということを日頃のおつきあいでわかっていた、②顧問弁護士自身があまり詳しくないと言ったという。

 中小地域金融機関が抱える固有の問題等をふまえ、かつ、こうした法令に精通した法律家が各地で増えるとともに、身近で相談できることを中小地域金融機関経営者、金融実務家は待望している。

 地域の顧問弁護士にとっては、耳の痛い言葉です。と同時に大きな期待を垣間見ることができます。

 私も地域金融機関(銀行)の顧問を務めさせていただいていますが、担当者の方からは、ほとんど金商法や銀行法に関するご質問はありませんでしたが、余り詳しくないと思われているのかもしれない(実際そうなので・・・ (^_^;) )。

 座談会でも、地域の顧問弁護士に、相談しても従来の考え方からなかなかでていただけなくて、業法という観点からのアドバイスがいただけないという地域金融機関の担当者の発言もありました。

 ただ、どうしても相談依頼案件がないため、業法の勉強は残念ながら後回しになりがちなのですね。その意味で、月1回出席しているきんざい主催の金融法務例会(大阪)は大助かりです。(*^_^*) 

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2008年7月 4日 (金)

【金融・企業法務】 (1)会社の行為が商行為に該当することの主張立証責任 (2)会社の貸付が当該会社の代表者の情宜に基づいてされたものとみる余地があっても、当該貸付に係る債権が商行為によって生じた債権に当たるとされた事例 (最高裁平成20年2月22日)

  判例タイムズNo1267号(2008年7月1日号)搭載の最高裁判例です。

 原審の福岡高裁は、貸主の会社の代表者は、借主と小中学校の同窓であり、親交があり、「男らしくバンと貸してやるという気持ちで」借主の依頼に応じたものだとして、貸金債権の商事債権性を否定して、商事時効の成立を否定しています。

 これに対して、最高裁は、

(1)会社の行為が商行為に該当することの主張立証責任については、会社の行為は、商行為と推定され、これを争う者において当該行為が当該会社の事業のためにするものではないこと、すなわち、当該会社の事業と無関係であることの主張立証責任を負う

(2)会社の貸付が当該会社の代表者の情宜に基づいてされたものと見る余地があったとしても、それだけでは当該会社の事業と無関係であることの立証がされたということができず、他にこれをうかがわせるような事情が存在しない以上、当該貸付に係る債権は、商行為によって生じた債権に当たる

 と判断しております。

 (1)について、学説の多数は、会社の行為はすべて会社法5条の「その事業としてする行為及びその事業のためにする行為」にあたり、商行為性が常に肯定されることから、新商法503条2項の推定規定の適用の余地はないという考え方をとっています。

 しかし、この考え方に対しては、

 ①会社法5条は、「会社が・・・その事業としてする行為及びその事業のためにする行為は、商行為とする」と規定しており、単に「会社の行為は、商行為とする」などとは規定していないのであるから、多数説には、文理上問題がある

 ②実務上も、会社の行為については、商行為性を否定する余地を残しておく方が、結論の妥当性を確保する見地からも穏当である

 ということから、批判も強く、最高裁も、多数説の考え方は採用せず、

 冒頭の考え方(1)をとることを明らかにしました。

 時折、特に、地方の同族会社ではこの種の紛争が生じることがあり、今回の最高裁判例は大いに参考になるものと思われます。 

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2008年6月 9日 (月)

【金融・企業法務】 調査照会に対する金融機関の対応

 顧問先である金融機関から、顧客情報に対して、調査・照会があった場合に、どのように対応したらいいのかという相談を受けることが年に1回程度あります(通常は、作成されているマニュアルにそって処理されているので、ご相談があるケースは結構微妙な問題点を含んでいる事案です。)

 銀行法務21の2008年5月号では、公的機関等から調査照会があった場合と、他の金融機関や相続人等から照会があった場合について、大手都市銀行の法務部の担当者が、その対応を具体的に解説されています。

 弁護士会照会や裁判所からの調査嘱託に関する事案、他の相続人からの照会事案が、相談内容としては、ほとんどですね。

 弁護士会照会については、原則としては、取引先の同意が必要というアドバイスであり、弁護士としては、不満が残りますね。

 また、5月号は、「振込の組戻依頼と留意点」について、解説されています。どこの金融機関かは忘れましたが、昔、数万円程度、私が管理する口座に振り込まれたことがあり、間違いということで、組戻しに対する同意を求められたことがあります。その時は、私に、「書類を、担当窓口までに取りに来て欲しいとか言われた」ので、なんと横柄な態度と思い、私も少し腹を立てたことがありました。

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2008年5月31日 (土)

【金融・企業法務】 危機時期における預金拘束の適法性

 旬刊金融法務事情No1835(5月25日)号に、「危機時期における預金拘束の適法性」というテーマで、伊藤眞教授の論文が掲載されていました。

 貸付先が破綻しそうな時に、預金を引き出そうとしても、凍結され、引き出すことができない場合があります。

 伊藤先生は、普通預金のような要求払い預金については、銀行は、預金者から適時かつ適式に払戻しが求められれば、直ちにそれに応ずべき義務を負っているにもかからわず、預金債権の債務者である銀行が、その一方的な行為によって預金の払戻を拒絶し、預金債権を拘束することが、いかなる理由によって、許されるのかとして問題提起をされておられます。

 裁判例としては、①東京地裁平成3年2月18日、②東京地裁平成19年3月29日がありますが、結論として、預金拘束について適法と判断しています。

 但し、伊藤先生は、預金拘束は、違法であるとのご見解であり、先生が倒産法の権威者であることから、金融機関に対して、預金拘束が違法であると主張される弁護士さんが増えてくるかもしれません。

 なお、5月25日号から、金融機関は弁護士に何を期待しているのかという連載を新たに開始されるみたいです。興味深く拝読させていただきます。happy01 

 

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2008年5月11日 (日)

【金融・企業法務】 第127回金融法務研究会 銀行取引約定書の今日的課題

 先日、金融法務研究会に出席のため、大阪(大阪銀行協会)にいってきました。train

 テーマは、「銀行取引約定書の今日的課題」というテーマで、富山大学の片岡宏一郎先生を囲んでの研修でした。

 ご承知の方も多いかと思いますが、全国銀行協会(全銀協)が昭和37年に、銀行取引約定書のひな型を作成してから、このひな型が銀行と企業との間の全ての与信取引の基本約定書として約40年間に及んで継続使用されてきました。

 しかし、公正取引委員会や日弁連などから、問題点を指摘されたことから、平成12年4月に、ひな型は廃止され、以降は、個別銀行が単独に銀行取引約定書を作成することになりました。

 但し、全銀協は傘下銀行に対して、銀取に関する留意事項を通知しましたが、条項例については示されませんでした。

 今回の研修では、銀取の主要条項について、わかりやすくご解説していただきました。

 特に興味深く思ったのが、第4条の担保の中で、増担保請求についてのご解説でした。

 例えば、平成19年1月30日東京高裁は、金銭消費貸借契約書の増担保等の記載がされた条項に基づく増担保請求が認められなかった事例を取り上げられました。

 金融商事判例NO1226号には、判例の要旨として、

 金銭消費貸借契約書の「借主または連帯保証人の信用が悪化するなどした場合には、担保もしくは増担保を差入れ、または連帯保証人を立て或いは追加し、または債務の一部もしくは全部を弁済する」等が記載された条項は、

 増担保等の設定に限局しても、具体的な増担保等の対象となる物件、設定すべき担保の書類、内容等設定される増担保等を特定する事項が何ら定められていない状況の下では、

 債権者が増担保等の対象となる物件、担保の種類、内容を特定して一方的に増担保等の設定を請求する意思表示をするのみで、その請求が不相当でない限り、そのとおりの内容の増担保等が設定される形成権を債権者に与えたものと解することはできず、債権者の、その請求に係る不動産につき、債務者に対する増担保請求を認めることができない

 と判断しました。

 この高裁の判例を受けて、ある弁護士は、金融法務事情で、個別の融資案件について、必要がある場合には、契約書上、増担保請求ができる条件や増担保の種類、対象物件、内容などをより具体的に取り決め、その権利性を明確にしておくなどと、同誌NO1808号のオピニオンで述べられておられます。

 しかし、片岡先生は、銀行が優越的地位を濫用して要請する場合にあたるから、このような対応は消極的であるべきとされています。研修会にアドバイザーとしてご出席されておられる弁護士の久保井先生も同様のご意見でした。pencil

 今回の研修会では、主要銀行の銀取条項の対照表、鹿児島大学の村山教授の銀行取引約定書ひな型廃止後の銀行取引約定書改定動向など、一般では手に入れることのできない資料も手に入れることができました。銀取については、銀行から、仮差押などの債権保全や債権回収の依頼を受ける際に、添付を欠かすことのできない書類ですが、体系的な研修は受けたことがなかったため、大変勉強になりました。

 閑話休題。近時、インターネットなどの通信手段の発展により、都会と異ならない情報を入手することができるようになりましたが、やはり、自宅ではなかなか勉強といっても、身に入らない点も否定できません。積極的に研修に参加することは、いい刺激を受けることにつながります。good

 私の場合、日弁連関係の研修を除き、継続的な研修は、ほぼ、交通事故、金融法務、建築関係に限定されつつあります。

 一時期は、知財研修も積極的に受けていたのですが、田舎では、ご依頼やご相談が少ないため、最近では、かなり、消極的になっています。手広く行うほど、知識が習熟しているわけでもないため、後回しになっています。coldsweats01

 また、一時期、司法試験の受験科目に選択科目がなくなってしまったことから、倒産や労働などの司法試験予備校の講義テープを入手することが困難なことがありましたが、新司法試験になって、選択科目が広がったことから、テープの入手が容易になったのはありがたいと思いました(ちなみに、私は、国際公法選択でしたが、私の業務では使わないため、一般的なマチ弁になるのであれば、倒産や労働を選択した方が仕事には役立つでしょうね。)。税務や会計の知識は、マチ弁でも、ないと不便です。司法試験予備校って、租税法の講義はやってないみたいですね。あればありがたいのですが・・・租税法関係で、何かいい講座をご存知の方、ご教示下さい。happy01

  なお、余談ですが、こんなサイトに登録されていました。

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2008年5月 8日 (木)

【金融・企業法務】 商法(H17改正前)266条1項5号に基づく会社の取締役に対する損害賠償請求権の消滅時効期間 ・ 最高裁平成20年1月28日

 判例時報No1995(4月21日)号搭載の最高裁判例です。

 論点は、改正前の商法266条1項5号に基づく会社の取締役に対する損害賠償請求権が、商法522条にいう「商行為によって生じた債権」として、5年の消滅時効期間にかかるかどうかです。

 見解として、10年とする見解と、5年とする見解が対立していました(なお、遅延損害金の利率についても、年5%説と、年6%説が存在しているようです。)。

 最高裁は、10年とする見解を採用しました。

 理由は、以下のとおりです。

 本号に基づく取締役の会社に対する損害賠償責任は、取締役がその任務に懈怠して会社に損害を被らせることによって生ずる債務不履行責任であるが、

 法によってその内容が加重された特殊な責任であって、商行為たる委任契約上の債務が単にその態様を変じたにすぎないものということはできず

 また、商事取引における迅速決済の要請は妥当しないから、商法522条を適用ないし類推適用すべき根拠もない

 として、本号に基づく会社の取締役に対する損害賠償請求権の消滅時効は、商法522条所定の5年ではなく、民法167条1項により、10年と解するのが相当

 と判断しました。

 判時の解説には、「本判決は、旧商法266条1項5号に基づく会社の取締役に対する損害賠償債権の消滅時効期間についての最高裁として初めて判断を示したものであり、その趣旨は、会社法423条1項に基づく役員等の任務懈怠責任についても妥当するものと考えられ、実務上重要な意義を有する」(152ページ)と紹介されています。

 判例時報には、5年と考えるべきだとする上告受理申立理由が一部紹介されていました。結論として、最高裁のとるところにはなりませんでしたが、説得力のある上告受理申立理由はかようなものとしておおいに参考になりました。happy01

 クレサラ事件で著明な先生が作成されたようです。 

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2008年4月12日 (土)

【金融・企業法務】 第126回金融法務研究会例会

080411_111201  昨日は、第126回金融法務研究会例会出席のために、新幹線に乗って、大阪に行ってきました。bullettrain

  テーマは、保証免責条項に関する判例と新指針ということで、この分野に詳しい弁護士の先生に、解説していただきました。

 信用保証協会と銀行との関係は、外部からみると、身内のようにみえますが、実は、結構、信用保証協会と銀行との間で、保証免責条項を巡って争うケースは少なくないようです。

 信用保証協会が保証債務の履行を免責される事由としては、①旧債振替の制限違反(1号免責)、②保証契約違反(2号免責)、③故意・重過失による取立不能(3号免責)があります。

 また、それ以外にも、錯誤無効を理由にする場合もあります。

 多数の裁判例を紹介していただきました。

1、錯誤関連

 (一) 企業実体のない会社の金融機関からの借り入れについて、金融機関の依頼に基づき保証契約を締結した信用保証協会の意思表示に要素の錯誤があり、その錯誤に重大な過失があったとはいえないとされた事例(東京高裁平成19年12月13日)

 中小企業者としての実体がなければ信用保証の対象と成らないことから実体が有することは、重要な要素であると判断したわけです。

 協会に重大な過失があるかどうかについては、金融機関経由保証であることから否定しています。

 (二)債務者の信用状態については、動機の錯誤(※表示されないと錯誤無効できないたぐいのもの)にすぎないとされています(東京地裁昭和50年1月30日、担保提供について東京高裁昭和63年8月18日)。

 (三)資金使途違反は、保証契約の要素にはあたらないとされています(東京高裁昭和40年10月6日)。 

2、免責条項の適用

 (一)旧債振替制限違反

 (1) 最高裁平成9年10月31日は、①免責の効力は、協会の意思表示を待たずに当然に生じる、②免責は、保証債務を消滅させる、③免責の範囲は、原則違反部分のみ、④免責の主張は、求償保証人もなしうると、判断しています。 

  ちなみに、この事案は、愛媛が舞台になっています。

 (2) 大阪高裁平成13年1月25日は、協会保証付貸付金2億円のうち、約1億9710万円が旧債振替に宛てられた事案ですが、あまりにも程度が酷いため、全部免責とされました。

  ちなみに、この事案も、愛媛の金融機関が関連しています。

 (3) 東京高裁平成15年4月22日は、協会が3000万円の当座貸越について根保証したところ、当該貸越が、既存のプロパー当座貸越残2341万円に充当された行為につき、協会が免責を主張した事案です。

 裁判所は、「当座貸越取引の場合には、旧債務の返済が行われるものの、それによって貸越限度の残額が増加し、その範囲で必要に応じて貸越が行われ、自由に処分できる資金を得ることになるから、入金後においても当座貸越取引が存続し、新たな貸越が可能となっている場合には、貸越金の返済は旧債振替禁止条項に違反することにはならない」と判断しました。

 (4) 東京高裁平成15年9月25日は、協会保証付貸付金2000万円のうち、500万円が債務者会社の代表者個人の金融機関からの借入金の返済に充てられ、その後約500万円が債務者から記入期間に弁済され、残金1500万円について不履行となったため、金融機関から協会に対して保証履行を求めたところ、協会は旧債振替による全部免責を主張した事案です。

 金融機関  → 債務者会社 2000万円 貸付 (協会保証)

 金融機関  ← 代表者の個人債務 500万円弁済※

 金融機関  ← 債務者会社 500万円 弁済

 その結果

 金融機関  → 債務者会社 1500万円 不履行

 裁判所は、※の500万円については、一部免責として、1000万円については、協会の保証債務を認めました。

 (二) 保証契約違反

 (1) 東京高裁平成13年6月26日は、当座貸越の貸越残額約8120万円についての分割弁済契約を協会が保証する約束であったのに、金融機関が貸越金残高を超える約8400万円(280万円の超過)の分割弁済契約を締結したケースです。

 協会は、保証契約違反を理由に、全部免責を主張しました。

 裁判所は、当然のことですが、超過分280万円について免責を認めました。

(2) 仙台高裁平成15年12月24日は、結構、おもしろい例です。

  物上保証として、A所有の甲不動産、A(3分の2)・B(3分の1)共有の乙不動産を差し入れたケースで、Bさんの保証否認がとおってしまったケースです。この場合、協会は、既に代弁をしていたことから、代弁した金額の返還を求めた事例です。

 第1審は、乙不動産の信用保証時の担保価値が1277万円であることから、単純に、3分の1を乗じた金額である426万円の請求を認めました。

 第2審は、共有不動産は買い手が見つかりづらいことから、不動産競売の減価率0.3を考慮して、Aの持ち分についても、0.3の減価(255万円)が生じることを考慮して、681万円の請求を認めました。

 (3)名古屋地裁平成17年5月27日は、金融機関が担保価値が低いとする調査会社の報告(3900万円)を協会に示さなかったため、協会が1億4000万円と独自に評価して融資を実行したが、競売では550万円の評価、実際には、56万円で売却されるという酷い事例で、裁判所は、協会の保証につき、全部免責を認めました。

 なお、3号免責については、解説の先生によれば、裁判例はみあたらなかったということでした。

            

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2008年4月 4日 (金)

【金融・企業法務】 金融機関が民事訴訟において訴訟外の第三者として開示を求められた顧客情報について、当該顧客自身が当該民事訴訟の当事者として開示義務を負う場合に、同情報は、民訴法197条1項3号にいう職業上の秘密として保護されるか(最高裁平成19年12月11日)

 判例時報1993号(4月1日号)搭載の最高裁判例です。これまで本ブログでも度々紹介してきましたが、ついに、判例時報に登場です。

 事案は、遺留分減殺請求訴訟の原告である申立人らが、その被告であるBの取引金融機関たる相手方に対して、Bと相手方甲支店との平成5年からの取引履歴が記載された取引明細表の提出を求める事案です。

 名古屋地裁は、本件明細表は、職業の秘密を記載した文書ではないとして、取引明細表の提出を認めました()(原々決定)。

 これに対して、名古屋高裁は、金融機関が顧客の秘密を保持すべき義務は金融機関にとって基本的な義務の1つであるから、これに反したときには、顧客一般の信頼を損ない、取引を拒否されるなどの不利益を受け、将来の職業の維持遂行が困難となる可能性があることなどを理由に、取引明細表の提出を認めませんでした(×)(原決定)。

 最高裁は、原決定を破棄し、原々決定に対する抗告を棄却しました。

 最高裁は、

 顧客自身が当該民事訴訟の当事者として開示義務を負う場合には、当該顧客はその情報につき金融機関の守秘義務により保護されるべき正当な利益を有しない、

 同情報は、金融機関がこれにつき職業上の秘密として保護に値する独自の利益を有する場合を除き、職業上の秘密として保護されない

 本件事案においては、取引履歴を秘匿する独自の利益もなく、また、被告自身開示義務を負っていることから正当な利益もないことから、文書提出を認めました()。

 この最高裁判例は、金融機関関係の研究会などに出席した際に、必ずといっても取り上げられる重要な判例です。 

 

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2008年3月17日 (月)

【金融・企業法務】 継続的貸借取引により生じた過払金返還請求権の消滅時効

 旬刊金融法務事情1829号(3月15日)号の、リーガルナビにて紹介されていた裁判例です。

 事案は、以下のとおりです。

 Yは貸金業者であり、Xは、Yとの間で基本契約を締結し、昭和58年5月7日以降、継続反復的に金銭の借入と返済を行っていた。Xの最終借り入れ日は、平成11年7月30日であり、最終返済日は、平成18年4月7日です。

 平成18年7月26日、Xは、Yに対して、過払金返還請求訴訟を提訴しました。

 これに対して、Yは、訴え提起から遡って10より前に発生した過払金返還請求権については、消滅時効が完成していると反論しました。

 広島高裁松江支判は、本訴提訴の10年前である平成8年7月26日以前の弁済によって生じた不当利得返還請求権については、時効により消滅していると判断しました(平成19年9月5日)。

 消滅時効の起算点については、以前、判タで、名古屋地裁の裁判官が執筆した論文(業者より)が思い出されますが、今回の裁判例も、業者よりの判決になっています。

 上告及び上告不受理の申立がされましたが、最高裁では、いずれも取り上げられていません。

 継続的取引における過払金の消滅時効の起算点については、いつも悩むところであります。

 ① 過払金が発生する都度、消滅時効が起算するとされる説

 ② 取引終了日

 ③ 最終貸付日

 ④ 取引履歴開示日(或いは提訴日)

 主要なものとしては、この4説がありますが、リーガルナビの解説者は、①説に親近感を覚えておられるようです。

 この論点について、将来、最高裁がどのような判断を示すのか緊張感をもって見守りたいと思います。

 クレサラを扱う実務的な感覚としては、②説で運用されているのではないかと思いますが。

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2008年3月16日 (日)

【金融・企業法務】 消費者金融業者が消費者より利息制限法所定の上限利率を超えた利息による過払金を受領する行為を違法として、消費者の金融業者に対する損害賠償請求が認容された事例(神戸地裁平成19年11月13日)

 判例時報平成20年3月11日号(No1911)号に、ついに、搭載されました。

 不法行為による損害賠償請求を予備的として構成した事案ですが、神戸地裁(合議)は、この構成を認めました。

 本件取引開始時においては貸金業法はいまだ施行されておらず、かつ、同法附則6条1項によると、貸金業者がこの法律施行前に業として行った金銭を目的とする消費貸借上の利息の契約に基づき、この法律の施行後に、債務者が利息として金銭を支払ったときは、当該支払については、43条1項及び2項のみなし弁済の規程は適用されないから、本件取引にみなし弁済の規定は適用されないこと、

 Yは約定金利として、昭和56年の取引開始当初は年利47.45%、59年11月28日以降、元利金が完済された60年6月以降も、年利にして39,5%もの違法な利息の支払いを求めて受領し、最終弁済がなされた平成2年9月当初においても年利36%を超える高利であったこと

 利息制限法1条2項及び4条2項に関しての判例が同法所定の上限利率を超える利息及び損害金が支払われた場合に、その超過利息等は元本に充当され、元本完済後に支払われた弁済金については、不当利得として返還を求めることができるとの規範を採用し、それが法規範として通用していたことも貸金業者にとっては公知の事実を認められること

 これらの事実によると、YがXより過払金となる弁済金を受領する行為は、Xの無知に乗じ、適法に保持し得ない金員を収受するものというべきであるから、社会的相当性を欠く違法な行為であるとして、XのYに対する不法行為に基づく損害賠償請求は相当であると判示しました。

 不当利得構成(主位的請求)については、本件取引は平成2年9月6日に終了しているから、遅くとも平成12年9月5日の経過をもって全て時効消滅しているとされています。

 不法行為だと、除斥期間は20年なのでセーフというわけです。

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2008年3月13日 (木)

【金融・企業法務】 投資信託は可分債権?

 旬刊金融法務事情No1828(3月5日)号のリーガルナビに、相続預金等の支払事務の論点というテーマで、興味深い裁判例などが紹介されていました。

 それは、大阪地判平成18年7月21日(確定)が、投資信託(MMF、MRF)を可分債権と認め、複数の相続人のうち、1名が自己の法定相続分に従い、取扱い窓口である証券会社に対し、単独で、解約、払戻請求できる旨、判示しました。

 解説者の方(銀行家)によれば、預金については可分債権であり、複数の相続人の内の1人が、自己の法定相続分に従い銀行に対して支払請求が可能であることは確立された判例であり、実務もこれに従った取扱が定着(※)していると思われるが、投資信託を複数の相続人が相続した場合、そのうちの1人からの請求には応じない銀行が多数派と思われると説明されています。

 私個人の経験としては、預金の場合でも、実際には、今治地方での取扱は、まだまだ定着しているとまでは言い難いと思います。都会では定着しているのかもしれませんが・・・

 投資信託なんて、なおさらだろうなあ。

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2008年3月11日 (火)

【金融・企業法務】 3回にわたり締結された手形貸付取引約定に基づく継続的な貸付が1個の基本契約に基づく一連一体の取引であるとして過払金の充当計算がされた事例(福岡高判平成19年9月27日)

 判例タイムズNo1258(3月1日)号に掲載されている裁判例です。

 平成7年7月に貸金業者との間で手形貸付取引約定(基本契約1)を交わし、同9年5月にも同様の手形貸付取引約定(基本契約2)を交わし、同11年9月にも同様の約定(基本契約3)を交わして、継続的に融資を受けていた事案です。

 裁判所は、

 控訴人(※貸金業者)も破産会社も、基本契約2及び3の締結に格別の意味を見いだしていたとは認められず、単に、第1取引群の最後の取引との間に10か月余の期間が経過したことから基本契約2を締結し、同じく第2取引群の最後の取引との間に1年半もの期間が経過したことから基本契約3を締結したにすぎず、基本契約1或いは同2が存在するにもかかわらず、これとは別個の新たな基本契約を締結しなければならないと認識していたとは考えられない。

 新たに基本契約2及び3を締結しても、同1及び2を合意解除するでもなく、そのまま放置していたことは、基本契約の締結そのものに対する控訴人の認識の低さを物語るものであり、被控訴人が控訴人側から入手した取引履歴において全部の取引が一連の取引として記載されていることも、控訴人の認識が上記のようなものであったことを裏付けるものである。

 そうすると、本件取引は、全体として1つの基本契約に基づき繰り返された一連一体の取引であるとみるべきである

 と判示しました。

 基本契約が外見上、複数ある場合であっても、一連一体のものとして判断された事例で、大いに参考になるものです。

 今回の判例タイムズは、「陳述書の活用について」として、さいたま地裁の裁判官が執筆された研究論文がのっていました。

 その中で、証人尋問の予定のない者の陳述書などの扱いについて詳しく書かれていました。

 依頼人がおびただしい陳述書を持参して、これを全部裁判所に出して欲しいと頼んでくる時があります。

 この場合には、「陳述者は、証人尋問を受ける覚悟がありますか?覚悟があれば出せます。相手方から証人申請してくるかもしれません。文書は出してもいいが、証人はいやだという書面は、出しても信用してくれませんから、出しません。」と説明していますが、ぶつぶつ言われる方が少なくありません。

 また、弁護士の中には、証人尋問の予定のない陳述書を漫然と提出してくる方がいます。

 研究には、「そのような陳述書が一人歩きしないよう、相手方代理人としては、当該陳述書の提出に対し異議を述べて、その信用性には疑義があるので、裁判所においてそのことに留意すべきである旨を弁論調書に記載するよう求めたりするのがよいと思われる。」とご解説されています。

 なるほど pencil

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2008年3月 2日 (日)

【金融・企業法務】 破産財団は、破産法人の基準期間における課税売上高を引き継がない別の法主体であるか(福井地裁平成19年9月12日)

  旬刊金融法務No1827(2月25日)号搭載の判例です。

 福井地裁平成19年9月12日(控訴)の判断ですが、少しびっくりしました。

 判決要旨は以下のとおりです。

 破産財団は、人格のない社団等にあたり法人とみなされるので、破産宣告後に生じた新規の事業者として消費税の納付義務の主体となり、破産者の破産宣告前の課税売上高を引き継がない

 新規の事業者である破産財団には破産宣告後2年間は基準期間がないので、同基準期間中に破産管財人が破産財団に属する財産の換価を行った場合、破産財団は消費税の納付義務を負わない。

 えっ、管財人(破産財団)は、宣告後2年間は、消費税が免税されるの? flair

 従来、破産実務上は、消費税法45条4項に清算法人にも消費税が生じることを前提とした規定があることから、破産手続であるからといって、破産管財人が行う換価につき、事業性を否定することができず、事業に付随する行為も課税の対象となるとして、建物・機械類を売却すると消費税が生じるとの解釈がなされていました。

 つまり、消費税を申告納付することになります。

 しかしながら、今回の判例は、従来の破産実務の運用と判断が異なり、控訴審での判断が注目されます。

 実際、消費税の申告って、面倒なんですね。この福井地裁の判例が確定することを期待しています。smile

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2008年2月19日 (火)

【金融・企業法務】債権回収会社が低額で譲り受けた多数の債権について、債権額をもって訴求すること自体は特段の事情がない限り権利濫用に当たらないとした事例(東京地裁平成19年6月18日)

 判例タイムズ1257(2月15日)号搭載の裁判例です。

 債権譲り受け会社に対して、著しく低廉な価額で譲り受けた債権について、債権全額を請求するのは、暴利行為として公序良俗違反にあたり権利濫用であると抗弁した事案です。

 気持ちは痛いほどわかりますが・・・・coldsweats01

 東京地裁は、

 債権の譲渡人から債権を譲り受けた際の譲り受け価額が債権額に比して低額であったとしても、原告を含む債権回収会社がその譲受債権について債権額をもって訴求すること自体は、権利行使として何ら非難されるべきものではないのであって、特段の事情のない限り、権利濫用には当たるものではない

 と判断しました。

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2008年2月18日 (月)

【金融・企業法務】 金融法務この1年

 旬刊金融法務事情1822(平成19年12月25日)号で紹介されていた裁判例です。

 昨年の金融法務に関する判例で、押さえておかなければならないものが紹介されていました。

 本当は、年末年始で読んでいるはずだったのですが、意外と時間的に余裕があるときに勉強は進みませんね。忙しいときの方が、着実に進むみたいです。

 体重も12月から1月にかけての暴食で、元に戻ってしまいましたし・・・crying

 さて、金融法務事情で紹介されていた裁判例は、以下のとおりでした。皆さんいくつ押さえていますか?

 1 預金関係

 ① 第三債務者が仮差押命令の送達を受けた時点で先日付振り込み依頼をしていた場合の先日付振り込みの取り消しの要否(最判平成18年7月20日)

 ② 法律上原因なしに普通預金口座に振り込まれたことにより当該普通預金口座名義人に帰属した預金の払い戻しが権利濫用になるとされた事例(東京高判平成18年10月18日)

 ③ 自動継続定期預金の払戻請求権の消滅時効は、自動継続の取扱がされることのなくなった満期日が到来した時から進行するとされた事例(最判平成19年4月24日、最判平成19年6月7日)

 2 融資担保関係

 ①特別清算手続中の個別和解契約においてされた主債務者に対する債務免除は、主債務者の保証人に対する権利に影響を及ぼさないとされた事例(東京地判平成18年6月27日)

 ②物上保証人に対する不動産競売の開始決定正本が主債務者に送達された後に保証人が代位弁済を行い差押債権者の承継を執行裁判所に申し出たが、承継の申し出について通知をしなかった場合における保証人の主債務者に対する求償権の消滅時効の中断の有無(最判平成18年11月14日)

 ③地方公共団体が三セクの借り入れ債務について金融機関との間で締結した損失補償契約が、法人に対する政府の財政援助の制限に関する法律3条に違反し、無効であるとされた事例(横浜地判平成18年11月15日)

  ←この判例は知らなかったなあ pencil

 ④国税の法定納期限等以前に将来発生すべき債権を目的とする譲渡担保契約が締結され、第三者対抗要件が具備されていた場合における国税徴収法24条6項の適用(最判平成19年2月15日)

 3 執行関係

 ①動産譲渡担保が重複設定されている場合は後順位譲渡担保権者による私的実行ができないとされた事例、②構成部分が変動する集合動産を目的とする譲渡担保の設定者が目的動産につき通常の営業の範囲を超える売却処分をした場合には処分の相手方による承継取得ができないとされた事例(最判平成18年7月20日)

 ②証券投資信託の受益者の有する一部解約金支払請求権を差押えた債権者は、取立権の行使として解約実行請求をして同請求権を取り立てることができるとされた事例(最判平成18年12月14日)

 4 そのほか

 ①預金者を特定する情報を報告対象とする弁護士法23条の2や民事訴訟法186条に基づく調査嘱託に対して、銀行の報告義務を認める一方で、当該義務違反は不法行為を構成しないとした事例(大阪高判平成19年1月30日)

 ②法律上原因なく代替性のある物を利得した受益者が利得した物を第三者に売却した場合に負う不当利得返還義務の内容(最判平成19年3月8日)

 ←これも押さえていなかったと思います。事案は、上場株式をした者が、名義書換手続をする前に株式分割がされ、株主名簿上の株主に交付された新株を売却した株主名簿上の株主に対して、新株の売却代金相当額の不当利得返還を請求した事案のようです。

  大審院判例を変更したものです。pencil

 

 大半は、このブログでもすでにご紹介した裁判例のようですね。これで昨年の復習は、終 わ り sun

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2008年2月17日 (日)

【金融・企業法務】 顧客情報と文書提出命令

 旬刊金融法務事情1825(2月5日)号のリーガルナビで紹介されていた記事です(解説者は、吉田光碩阪大教授)。

 今月の金融法務例会でも少し取り上げていただいた判例です。

 事案は、以下のとおりです。

 Aの相続人であるXらが、同じく相続人であるBに対して、遺留分減殺請求権を行使したとして、Aの遺産に属する不動産について共有持分の確認及び共有持分の移転登記手続を請求し、預貯金については、金員の支払等を求めるとの本案訴訟を提起したが、

 その訴訟の中で、Aの生前にその預貯金口座から払い戻された金員が、BがY銀行H支店に開設した預金口座に入金された事実を立証するために必要だとして、Yに対して、H支店のBの口座の取引明細表の提出を求める文書提出命令の申立をしました。

 これに対して、Yは、本件明細表の記載内容が民訴法220条4号ハに規定する「職業の秘密」に該当するので提出義務を負わないとして争いました。

 民事訴訟法220条 次に掲げる場合には、文書の所持者は、その提出を拒むことができない。

  第197条第1項第2号に規定する事実又は同項第3号に規定する事項で、黙秘の義務が免除されていないものが記載されている文書

 民事訴訟法197条 第3号 技術又は職業の秘密に関する事項について尋問を受ける場合

 最高裁平成19年12月11日は、

 当該顧客自身が当該民事訴訟の当事者として開示義務を負う場合には、当該顧客は上記顧客情報につき金融機関の守秘義務により保護されるべき正当な利益を有さず、金融機関は、訴訟手続において上記顧客情報を開示しても守秘義務には違反しない

 本件明細表は、相手方とその顧客であるBとの取引履歴が記載されたものであり、相手方は、同取引履歴を秘匿する独自の利益を有する者とはいえず、これについてBとの関係において守秘義務を負っているにすぎないと判断して、

 文書提出命令を認めました

 本決定には、文書提出命令は、公正な裁判を実現すべく一般義務として定められたものであるから、金融機関が文書提出命令に応じることは、原則として、正当な理由に該当するということができ、金融機関がそれにおうじることをもって、当該顧客は、金融機関の守秘義務違反の責任を問うことができないという田原睦夫裁判官の補足説明があります。

 現在、この判例は最高裁のHPに搭載されているようですが、職業の秘密として保護されるべき情報が記載された文書にあたるかどうかの基準を立てた判例として実務上大きな影響がでてくるものと考えています。

 早速、私も、これからは、文書提出命令を積極的に申し立てしようと思っています。coldsweats01

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2008年2月16日 (土)

【金融・企業法務】いわゆる「振り込め詐欺」の被害者が、振込先口座の名義人に対する不当利得返還請求権を保全するために、同口座名義人の有する預金債権の払戻請求権を代位行使することを認めた事例(東京地裁平成19年10月5日)

 金融法務事情No1826(2月15日)号搭載の裁判例です。

 事案は、以下のとおりです。

 本件は、いわゆる振り込め詐欺の被害者であるXが原告となり、被振込先口座の開設銀行であるY銀行に対し、Xの振り込んだ240万円のうち、同口座の92万円余りの残高相当額について、同口座の名義人であるTに対するXの不当利得返還請求権を被保全債権とし、TのY銀行に対する預金払戻請求権を被代位権利とする債権者代位権により同口座にかかる預金の払戻請求を行った事案です。

 東京地裁は、

 振り込め詐欺の振込先口座の名義人は、所在不明であり、被害者の不当利得返還請求権を弁済するについて本件口座に係る預金払戻請求権のほかに十分な資力を有していないというべきであり、 同預金払戻請求権のみが預金名義人の財産として判明しているという状況において、同預金払戻請求権を代位行使しなければ、被害者は、その被保全権利について満足を受けられなくなるおそれがあり、被害者の代位につき、保全の必要があると認められ、口座名義人に対する不当利得返還請求権を保全するために、同口座名義人の有する預金債権の払戻請求権を代位行使することができる

 と判示しました。

 平成20年6月21日からは、犯罪利用預金口座等に係る資金による被害回復分配金の支払等に関する法律(振り込め詐欺被害者救済法)により、裁判によることなく、被害額に応じて案分的に公平な救済が受けられることになるようです。happy01

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2008年2月10日 (日)

【金融・企業法務】 最近の個人情報保護法に関する実務上の問題

 2月8日、きんざい主催の第125回金融法務研究会例会に出席いたしました。

 テーマは、最近の個人情報保護法に関する実務上の問題という内容で、専門の弁護士の先生に解説していただきました。

 第1に、立法・行政の動向として、国民生活審議会によるとりまとめ(平成19年6月29日国民生活審議会・個人情報保護に関するとりまとめ【意見】)の公表について、概要を説明していただきました。平成20年3月を目途に、「個人情報の保護に関する基本方針」(平成16年4月閣議決定)の改訂を行う予定になっており、重要なポイントは、次の3点ということのようです。

 第1点は、委託先に対する監督についての検討の方向感 すなわち、プライバシーポリシー等において、委託に関する事項(委託の有無、委託する事務の内容)を明記することを、要請する方向で検討しているようです。

 第2点は、市販名簿の管理についての検討の方向感 すなわち、「被告頒布されている名簿等」について、安全管理措置の程度を緩和することを許容する等を検討し、また、「広く頒布される名簿等」の意義・範囲についても、検討されるようです。

第3点は、取得元の開示の要否 すなわち、プライバシーポリシー等において、取得元・取得源の種類・取得経緯等の個人情報の取得方法を、可能な限り明記することを、要請する方向で検討されているようです。

 第2に、金融機関におけるQ&Aが、平成19年10月に公表されたことから、その概要についてご説明いただきました。

 Q&Aのうち、いくつか重要なものに絞ってご解説していただきました。

 例えば、「個人データ」の「漏えい、滅失、き損」とはどのようなものを指すのか(問Ⅴー5)

 個人情報の漏えい事案等が発生した場合の当局への報告は、どこまで厳密に行う必要があるのか(問Ⅴー10)

 「個人データ」の漏えい事案等が発生した場合の公表は、どこまで厳密に行う必要があるのか(問Ⅴー15)

 個人情報の漏えい事案等が発生した場合は、金融機関は本人に通知する必要があるのか(問Ⅴー16)

 防犯カメラに映った偽造キャッシュカードの実行犯の映像を本人の同意なく他の金融機関に提供することは、個人情報保護法上問題がないか(問Ⅵー1)

 ガイドライン第4条で、個人情報保護法第16条及び同法第23条に定める本人の同意を得る場合には、原則として、書面によらなければならないとされているが、「紙」を用いた同意以外に、例えばどのような形式が「書面」に該当するのか。また、電話により同意を得た事実を任意様式に記録し保存する方式でもガイドライン上「書面」による同意を得たと解することができるか(問Ⅵー3)(後段は当局見解が変更された点であり、重要であるとのことです)

 個人情報取扱事業者が弁護士法23条の2に基づいてなされる報告の請求を弁護士会から受けた場合、その保有する「個人データ」を弁護士会に対し提供することは、個人情報保護法上問題はないか(問Ⅵー7)

 第3に、平成19年3月に大幅改訂された経産省ガイドライン等に関するQ&Aの改訂です。136問あります。大事なところとしては、

 ユーザーからのクレームを録音しています。個人の氏名は通話内容や声などから特定できませんが、電話番号は判明している場合があります。この場合の録音記録は、個人情報に該当しますか(問12)

 防犯カメラやビデオカメラなどで記録された映像情報は、本人が判別できる映像であれば、「個人情報データベース等」に該当しますか(問20)

 宅配便の送り状を受付した日付順に並べてファイリングしていますが、この場合、「個人情報データーベース等」に該当しますか(問22)

 会社業務とは関係のない従業者が対象のサークル活動で利用している会員リストは、「事業の用に供している」ものとなりますか(問30)

 アンケートを行う際、「第三者提供をする場合がありますのでご了解願います」と記載するのみの場合、アンケートの提出をもって、第三者提供についての同意を得たといえますか(問38)

 顧客の入金情報を、売上高・利益額の把握、事業方針の策定に利用することがありますが、これらも利用目的に含まれますか(問46)

 法18条第3項の変更された利用目的の通知又は公表においては、「もともと○○であったものを今後××に変更します」とすればよいのですか。それとも単に変更後の利用目的のみを書いておけば足りますか(問48)

 A事業のために個人データを取得した後、B事業のために取得した個人データの内容から住所変更があった事実が判明しました。A事業についても住所変更を反映させることが可能ですか(問59)

 妻が夫の名前で契約の申し込みをしてきた場合、個人情報の利用目的はその契約書に明示してあればよいですか。また、その契約書を第三者に提供する場合、妻の同意を得ればよいですか(問135)

 第4に、融資問題研究会のアンケート調査結果の分析と検討についてです。

 特に同意書提出拒否の場合の対応などについて解説していただきました。

 最後は、最近の実務上の問題点ということで、いくつかの裁判例をご紹介していただきました。

 第1点は、弁護士法23条の2に基づく弁護士会照会や民事訴訟法186条に基づく裁判所からの調査嘱託への対応についてです。

 平成19年1月30日の大阪高裁を紹介し、解説していただきました。

 判決要旨は以下のとおりです。

 ①弁護士法23条の2に基づく照会や民事訴訟法186条に基づく調査嘱託を受けた者は、弁護士会又は裁判所に対して、報告を求められた事項につき報告すべき公的な義務を負う、

 ②銀行が預金顧客を特定する情報につき報告を求められた場合であっても、上記義務が個人のプライバシー保護や守秘義務の観点から制約を受けことはない

 ③銀行による上記義務の違反は、弁護士会や裁判所に対する公的な義務の違反であり、原則的には、訴訟遂行等のため当該情報必要とする者との関係で不法行為を構成しない

 第2は、個人情報保護法に基づく請求権の有無ですが、消極的に判断した東京地裁平成19年6月27日の裁判例をご紹介していただきました。

 第3は、守秘義務との関係で最高裁平成19年12月11日の決定をご解説していただきました。

 遺留分減殺請求に絡み、取引明細表の開示を求めた事案で、金融機関が民事訴訟において訴訟外の第三者として開示を求められた顧客情報については、当該顧客自身が当該民事訴訟の当事者として開示義務を負う場合に、同情報は、民訴法197条1項3号にいう「職業の秘密」として保護されないと判断しました。

 いや、勉強になりますな。pencil

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2008年2月 3日 (日)

【金融・企業法務】根抵当権で担保された数個の債権のうちその1個を代位弁済した保証人と原根抵当権者との優劣(福岡高判平成19年3月15日)

 銀行法務21・2008年2月号に特別論考として、「根抵当権で担保された数個の債権のうちその1個を代位弁済した保証人と原根抵当権者との優劣」について判断した福岡高判平成19年3月15日の裁判例が紹介されていました。

 昔の知識で、1個の抵当権によって1個の債権が担保されており、その債権の一部を保証人が代位弁済し、その後、抵当権が実行されて、売却代金が被担保債権のすべてを消滅するに足りない場合には、その配当は、債権者が代位弁済者に優先する(債権者優先主義)ということを覚えています。

 1個の普通抵当権によって数個の債権が担保されており、そのうちの1個の債権の全部を保証人が代位弁済した場合は、平成17年1月27日の最高裁判例によれば、債権者と代位弁済者とは平等であり、債権者と代位弁済者との間に特段の合意がない限り、売却代金は、債権者が有する残債権額と代位した債権額とで案分して配当されるべきとしています。

 これに対して、

 1個の根抵当権によって数個の債権が担保されており、そのうちの1個の債権の全部を保証人が代位弁済した場合は、債権者が代位弁済者に優先するという福岡高裁の判断(平成19年3月15日)がでました。

 福岡高裁の判断について、先ほどの平成17年1月27日の最高の判例などの関係をどのように考えるのかというのが論考のテーマの1つでした。

 興味のある人は読んでみてください。

 ところで、日弁連会長選挙の投票日は、大阪出張などと重なったため、一足先に、郵便投票してきました。今回の選挙は、両陣営ともに緊張感が漂っていますので、両者かなり接戦になるのではないかと思っています。 

 これどうするのでしょうか? 

 弁護士希望の修習生 3人に1人が就職難 日弁連調査

 法曹養成制度は、めちゃくちゃになってしまいました。鳩山大臣には、頑張っていただきたいものです。

 ついに、M先生も法曹人口の見直しを検討されたみたいですね。

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2008年1月26日 (土)

会計帳簿の閲覧等の請求

 会社法433条1項は、総株主の議決権の3%以上の議決権を有する株主は、株式会社の営業時間内は、いつでも、会計帳簿等の閲覧謄写請求を行うことができるとされています(但し、請求の理由を明らかにしなければなりません。)。

 他方で、例えば、請求者が当該株式会社の業務と実質的に競争関係にある事業を営み、又はこれに従事するものであるとき(2項3号)には、請求を拒絶できます。

 会計帳簿の閲覧等の請求事件、大きな会社だけだろうと思いがちですが、当地(田舎)でも、時折、ご相談に見えられたりされる方がおられます。

 旬刊金融法務事情1824(1月25日)号金融瓦版には、東京地裁平成19年9月20日、楽天インベストメント㈱対㈱東京放送の事件が紹介されていました。

 判決自体は、請求理由自体は具体性に欠けるところはないとしましたが、先ほどの3号の競争関係について、近い将来競争関係にたつ蓋然性が高い場合も含むとして、拒絶を認めました。

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2008年1月20日 (日)

ショック 折角、作成した記事を抹消してしまった (T_T) とりあえず、ご紹介しようとした最高裁判例(完済後再貸付事案)だけピックアップすることに (T_T)

 完済後再貸付の最高裁判例(1月18日)です。

 再作成する気力がないため、以下のブログを参考にしてください。

 但し、個別貸付かどうかの基準に、利息・遅延損害金の違いを挙げたことは、いただけません。

 N太の「どっちもどっち」

 ATSUの弁護士日記

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2008年1月11日 (金)

金融法務例会(場所・大阪銀行協会)

 きんざいが主催されている「金融法務例会」(大阪市)に出席いたしました。今回は、例会後に、懇親会が開催されるため、泊まりとなりました。

 例会では、「金融機関をめぐる時効管理の諸問題」として、①自動継続定期預金の消滅時効の起算点、②譲渡担保を設定した債務者債務者の受戻権の時効期間、③民法154条の競売手続取消と時効中断効、④民法724条に関する問題が、取り上げられました。

 まず、①自動継続定期預金の消滅時効の起算点については、あの有名な、最判平成19年4月24日(第3)最判平成19年6月7日(第1)の、各最高裁判例が取り上げられています。

 最高裁平成19年4月24日の事案は、継続の回数制限や最長預け入れ期間は定められていないケースで、「自動継続定期預金契約における預金払戻請求権の消滅時効は、預金者による解約の申入れがされたことなどにより、それ以降自動継続の取り扱いがされることがなくなった満期日が到来した時から進行するものと解するのが相当である」と判示いたしました。

 最高裁平成19年6月7日の事案は、継続の回数は10回を限度とする特約が定められているケースで、「自動継続定期預金契約における預金払戻請求権の消滅時効は、自動継続の取扱いがされることのなくなった満期日が到来した時から進行するものとするのが相当である」と判示いたしました。

 金融機関にとっては、債権管理上、面倒な判決ですね。

 次に、②譲渡担保を設定した債務者の受戻権の時効期間については、最高裁平成18年10月20日を取り上げていました。

 不動産を目的とする譲渡担保において、被担保債権の弁済期後に譲渡担保権者の債権者が目的不動産を差し押さえ、その旨の登記がされたときは、

 設定者は、差押登記後に債務の全額を弁済しても、第三者異議の訴えにより強制執行の不許を求めることはできないと解するのが相当である。

 上記と異なり、被担保債権の弁済期前に譲渡担保権者の債権者が目的不動産を差し押さえた場合は、少なくとも、設定者が弁済期までに債務の全額を弁済して目的不動産を受け戻したときは、設定者は、第三者異議の訴えにより強制執行の不許を求めることができると解するのが相当である。

 と判示していますが、その理由は、以下の通りで妥当だと思います。

 「弁済期前においては、譲渡担保権者は、債権担保の目的を達するのに必要な範囲内で目的不動産の所有権を有するにすぎず、目的不動産を処分する権能を有しないから、このような差押えによって設定者による受戻権の行使が制限されると解するべき理由はない」

 「設定者が債務の履行を遅滞したときは、譲渡担保権者は目的不動産を処分する権能を取得するから、被担保債権の弁済期後は、設定者としては、目的不動産が換価処分されることを受忍すべき立場にあるというべきところ、譲渡担保権者の債権者による目的不動産の強制競売による換価も、譲渡担保権者による換価処分と同様に受忍すべきものということができるのであって、目的不動産を差し押さえた譲渡担保権者の債権者との関係では、差し押え後の受戻権行使による目的不動産の所有権の回復を主張することができなくてもやむを得ないというべきだからである。」

 第3に、民法154条の競売手続取消と時効中断についても、わかりやすく、事案毎に、説明してくださいました。

 民法154条は、「差押え、仮差押え及び仮処分は、権利者の請求により又は法律の規定に従わないことにより取り消されたときは、時効中断の効力を生じない」と規定されています。

 仮差押えが第三者の競売申立後、競落されたことによりその登記が抹消された場合

 仮差押解放金の供託により仮差押執行が取り消されたとき

 剰余が見込まれないために取り消されるとき、

 競売申立者が追加予納金を納付しなかったことにより配当要求が取り消された場合、

 売却見込みがないことにより取り消されたとき

 3度の競売入札で落札されないことにより取消されたとき

 以上のような場合に、民法154条の関係をどのように考えればいいのかという問題です。

 第4は、民法724条に関する諸問題です。

 特に、不法行為の場合、20年の除斥期間があることから、ケースにより、そのまま形式適用したのでは、著しく正義公平の理念に反することもあります。

 例えば、最高裁平成10年6月12日は、「不法行為の被害者が不法行為の時から20年を経過する前6箇月内において、右不法行為を原因として心神喪失の常況にあるのに法定代理人を有しなかった場合において、その後当該被害者が禁治産宣告を受け、後見人に就職した者がその時から6箇月内に右損害賠償請求権を行使したなど特段の事情があるときは、民法158条の法意に照らし、同法724条後段の効果は生じないものと解するのが相当である」と判示し、被害者を除斥期間の形式的適用から救済しています。

 また、除斥期間の起算点についても、最高裁平成16年4月27日は、「民法724条後段所定の除斥期間の起算点は、不法行為の時と規定されており、加害行為が行われた時に損害が発生する不法行為の場合には、加害行為の時がその起算点になると考えられる。しかし、身体に蓄積する物質が原因で人の健康が害されることによる損害が、一定の潜伏期間が経過した後に症状が現れる疾病による損害のように、当該不法行為により発生する損害の性質上、加害行為が終了してから相当期間が経過した後に損害が発生する場合には、当該損害の全部又は一部が発生した時が除斥期間の起算点となると解するべきである。」と判示し、やはり、被害者を除斥期間の形式的適用から救済しています。

 債務不履行による損害賠償請求権の消滅時効については、最判平成6年2月22日のじん肺訴訟の「最終の行政上の決定を受けた時から進行する」という判例を紹介していただきました。

 そして、その流れの中で、産院における新生児取り違えを理由とする債務不履行に基づく損害賠償請求について、損害が顕在化して権利行使が現実に期待可能となったときから、消滅時効が進行するとして、時効の完成を認めなかった東京高裁平成18年10月22日の判例を説明していただきました。

 金融法務例会でのテーマは、マチ弁でも取り扱うような分野をも扱っており、また、懇親会では、元日弁連会長の先生をはじめ、金融法務の第一線で活躍されておられる各金融機関の担当者の方々から興味深いお話をうかがうこともでき、大変勉強になりました。

 

 その後、ジュンク堂大阪本店を訪ね、現在相談を受けている交通事故についての医学文献をいくつか買い求めました。

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2008年1月10日 (木)

保証人による分割弁済と消滅時効の中断(銀行法務21・2008年1月号)

 銀行法務21・2008年1月号に、以前のブログでも紹介しているとは思いますが、「営業店からの質疑応答」という記事に、「保証人による分割弁済と消滅時効の中断」に関する記事が載せられていました。

 事案は、Aさんは、昭和63年6月に、X銀行から600万円を借入、Yがその債務を連帯して保証しました。

 平成3年9月、Aさんは自己破産の申立を行い、同4年8月には、免責されました。

 平成9年1月に、X銀行は、Yさんに対して、保証債務履行請求訴訟を提訴して、X勝訴の判決が、同年6月には確定しました。

 X銀行は、Yさんから、分割弁済を受けていましたが、上記判決の確定から10年を経過した平成19年7月Aの借入債務について消滅時効が完成したと主張して、弁済を拒絶してきました。

 Yの主張は認められるでしょうか?

 分割弁済は、「債務承認」と評価されるものですが、連帯保証人が保証債務を承認し、保証債務の履行として、分割弁済に応じたとしても、主債務の消滅時効を中断しません。

 そうすると、Yさんは、主債務者に対する債権については、消滅時効を援用して、その結果、Yさんの保証債務も消滅するように思えます。

 学説上も、破産免責の対象となった主債権に対応する債務も、自然債務としてなお存続していることを前提とした上で、これについて消滅時効の進行を観念する余地があるとして、主債権につき時効中断を図る必要があるとする見解(時効進行説)もあります。

 しかし、最高裁平成11年11月9日は、このような考え方はとらず、平成4年8月ころに、主債務者Aさんの破産免責決定が確定したことにより、その連帯保証人であるYさんは、借入債権についての消滅時効を援用することはできなくなったので、その結果、Yさんは、借入債務の消滅時効を援用して保証債務の履行を拒否することはできない旨判示しました。

 この判例からすれば、保証人や連帯保証人との関係では、保証債権独自の消滅時効のみを考えれば足りるということになります。

 債権者に対して債務を負担していない物上保証人の場合は、どのように考えたらいいのでしょうか?

 記事の解説の先生によれば、物上保証人にとっては、主債権の時効を援用して物上保証の責任を免れる可能性が失われることになり、抵当権そのものについて20年の消滅時効が問題となるに過ぎないということになると思われますと記載されています。

 上記の最高裁判決は、「破産免責の効力を受ける債権の効力ないし法的性質および消滅時効制度ないし民法166条1項の趣旨に鑑みて、時効否定説を採用したものであり、金融機関の債権管理実務に重大な影響を及ぼすことになりました」と評価されています。

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2007年12月27日 (木)

株券電子化に伴う株式担保の実務対応

 旬刊金融法務事情1月5日・15日合併号(NO1823)が本日送られてきました。

 「株券電子化に伴う株式担保の実務対応」というタイトルの座談会に、この分野の一流の実務家が出席し、活発な議論が展開されていました。

 株券電子化に伴う株式担保については、金融法務研究会例会(大阪)で、とりあげられたこともあり、また、株式担保については、顧問先企業から相談があったこともあり、大変興味深く拝読させていただきました。

 ただ、マチ弁があまり取り扱う分野ではないため、年明けたら、読んだ内容も忘れているような気がします。 (^_^;)

 なお、今回の金融法務事情は、少し前にご紹介している平成19年7月13日、同月17日の、最高裁3判例についても、判決速報として、解説が載せられていました。

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2007年12月23日 (日)

抵当不動産の変動・トラブルに対する対応策

 抵当不動産の変動・トラブルについては、顧問先の金融機関の担当者から、ご相談を受けることがあります。

 とはいっても、きちんと貸金が弁済されている間は問題ないのですが、遅延などの事故が発生すると、一転して、大きな問題になることがあります。

 抵当不動産の変動・トラブルについては、JA金融法務(経済法令研究会)の12月号にわかりやすい解説が載っています。

 1、抵当建物が増築された場合

 2、無断で抵当建物が増築された場合

 3、無断で抵当建物の取り壊しがあった場合

 4、借地上の抵当建物と借地契約の解除

 5、抵当土地(更地)上に無断で建物が新築された場合

 6、抵当不動産が無断で譲渡され、所有権移転登記がされた場合

 7、抵当権設定後の抵当物件の賃貸借

 ロースクールの民法のテストに出題されそうな問題です。

 12月号は、高齢者との金融取引Q&Aとして、意思能力を喪失した高齢者の貯金と貸付金との相殺についての解説も、取り上げられていました。

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2007年12月21日 (金)

数量的な一部を明示して損害賠償を求める訴訟の係属中に請求が拡張された場合において、損害賠償請求権の残部につき民法153条の催告が係属していたものとされた事例(確定)

 銀行法務21・2007・12(NO682)の民法判例研究会にて紹介されていた事例です。

 交通事故の被害者遺族であるXさんらが、加害者であるYさんに対して、総額7791万円の主張中、3300万円の請求を求めて、提訴しました。

 この裁判では、自賠責会社であるZが補助参加しており、1審判決については、Zが控訴したため、Xさんらは、附帯控訴をして、請求金額を拡張しました。

 本件交通事故発生日は、平成13年3月24日

 Xさんらが提訴したのは、平成16年1月9日

 請求拡張をしたのは、平成18年5月26日

 となっているため、請求拡張時点では、消滅時効に必要な期間(3年)は、経過していることになります。

 そこで、争点は、Xさんらの残部請求について消滅時効が完成したといえるかどうかが問題となります。

 まず、原則として、一部請求の場合には、残部請求については、訴え提起による時効中断の効力は生じないとされています。

 そうすると、残部請求は認められないことになりそうです。

 ところが、高松高裁平成19年2月22日は、

 Xさんらの提訴により、残部請求の部分についても、これを行使する意思を継続的に表示していたものと評価するのが相当である

                  ↓

 残部につき、民法153条にいう催告が継続していたと解するのが相当である

 と判示しました。

 これによると、残部請求については消滅時効は完成しないことになり、残部請求が認められることになりました。

 理由は、特段損害項目を特定として請求額を限定したものではなく、本件事故によりXさんらが被った全損害につき、自賠法3条本文に基づく損害賠償請求権を有することを主張し、請求額を超える全損害の内容及び損害額の主張立証をし、単に請求した額の限度での支払いを求めていたことをあげています。

 但し、解説者によれば、民法153条の催告は誤解であり、請求拡張の書面が裁判所に提出されたことをもって裁判上の催告がなされ、その時点で時効は中断し、その効力は、当該訴訟の終了時6ヶ月間は係属するものであると判示すべきであったとされています。

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2007年12月20日 (木)

貸金業法施行前の超過利息の請求・受領と不法行為の成否(神戸地裁平成19年11月13日)

 12月12日の読売新聞にも紹介されていた神戸地裁平成19年11月13日判例です。

 新聞では、「過払い金の返還請求権は、過払い金発生後10年で消滅するため、時効が壁になって救済されない例が多かった。ところが、損害賠償は、被害を知って3年以内に請求すれば認められる可能性があり、関係者は『画期的な判決』と評価している。」、「同地裁は、『過払い金の返還請求は消滅時効が成立したが、過払い金を受け取ったのは違法』と同社に利息を含めた賠償を命じた。」と紹介していました。

 この紹介では、グレーゾーン金利の請求・受領「一般」に、不法行為が成立するかのような誤解を当たることになり、私も、それは、「ものすごい画期的な判決」が出たと思いました。

 ところが、神戸地裁の判例をよく読んでみると、グレーゾーン金利の請求・受領「一般」に不法行為を認めたものではなく、貸金業法施行前のグレーゾーン金利の請求・受領について、不法行為を認めたものであることが、判明しました(※横浜市泉区弥生台の弁護士)。

 神戸地裁は、

 貸金業法が施行されたのは昭和58年11月1日であり、本件取引開始時において、貸金業法はいまだ施行されておらず、かつ、同法附則6条1項は、貸金業者がこの法律の施行前に業として行った金銭を目的とする消費貸借上の利息の契約に基づき、この法律の施行後に、債務者が利息として金銭を支払ったときは、当該支払については、第43条第1項及び第2項の規定(みなし弁済の規定)は、適用されないとしているから、貸金業法が本件取引に適用される余地はない。

 従って、本件取引については、超過利息の支払が貸金業法により有効な利息の債務の弁済とみなされる余地は全くなかった。

 (略)

 以上によれば、被控訴人がした過払金となる弁済の受領行為は、債務者である控訴人の無知に乗じ、適法に保持し得ない金員を収受するものというべきであるから、社会的相当性を欠く違法な行為といわざるを得ず、民法709条所定の不法行為を構成する

 と判断しています。

 神戸地裁の判例は、貸金業法施行以前から取引のあったケースにおいて、不法行為を認定したものであり、それ以降に取引が開始された場合については、判断していないと考えるのが自然です。

 ただ、第一段階は、クリアできたわけですから、今後の問題は、さらに進んで、みなし弁済規定の有無にかかわらず、グレーゾーン金利の請求受領一般に、不法行為が成立するかです。

 グレーゾーン金利の請求収受については、損害として、慰謝料や弁護士費用を認めている裁判例はありますので、あと一歩ということではないかと思います。

 いずれにしても、貸金業法施行前のケースについての相談は、決して少ないというわけではなく、今回の神戸地裁の判断は、債務者側の代理人としての立場が多いマチ弁としては、心強い判断と積極的に評価しています。

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2007年12月19日 (水)

インターネットバンキングにおける銀行の責任・免責

 旬刊金融法務事情1819号(11月25日)号では、関西金融判例実務研究会報告として、「インターネットバンキングにおける銀行の責任免責」として、大阪地裁平成19年4月12日の判例を紹介されていました。

 事案は、Xさんは、㈱甲の代表者ですが、平成15年5月22日、Y銀行A支店で、普通預金口座を開設して800万円を預け入れ、同日、インターネットや携帯電話等により一定の銀行取引ができるダイレクト利用契約を締結しました。

ところが、平成17年7月19日から22日にかけて、何者かが8回にかけて、合計798万円を、別銀行の口座に振り込み(本件各振込)、11月4日時点で、約2万円なっていました。

 そこで、Xは、Yに対して、798万円の寄託金返還請求訴訟を提訴しました。

 争点は、(1)本件各振込が、Xの意思に基づくものであるか、(2)約款4条1項による免責の可否についてですが、特に、(2)が法律上重要です。

 大阪地裁は、

 銀行の設置した契約者番号、暗証番号等により本院確認を行うインターネットバンキングシステムを利用して、預金者以外の者が、当該預金から振込手続を行ったとしても、

 銀行が交付した契約者番号が使用され、正しい暗証番号等が入力されていた場合には

 銀行による契約者番号および暗証番号等の管理が不十分であったなどの特段の事情がない限り

 銀行は、入力された契約者番号および暗証番号等とシステムのデータベースに登録されている当該預金者の契約者番号、暗証番号等を確認して現金の振込を実行した以上、銀行に「責めがある場合」には当たらないというべきである。

 そこで、Yに責めがある場合と言えるかどうかを検討しました。

 顧客とYのセンターコンピューター間のデータ通信については現時点では最も解読が困難であると言われる128bitSSL暗号通信方式を採用し、

 さらに、Yによるダイレクトのシステムには複数の外部侵入防止措置もとられている。

 加えて、Yは、本件約款及びダイレクト利用の手引きにおいて、具体例を交えて暗証番号の管理について注意喚起をしている。

 以上のとおり、Yは、本人確認情報の管理及びセキュリティ対策に有効な方法をとっている上、本人確認情報の管理について十分な注意喚起を行っているのであるから、契約者番号および暗証番号等の管理について不十分であったなどの特段の事情が存することを認めることはできず、Yの責めがある場合には当たらないというべきであるとして、Xの請求を認めませんでした。

 インターネットバンキングに関する判例としては、東京地判平成18年2月13日も、有名であり、銀行が不正送金等を未然に防止するための相応のセキュリティシステムを構築していたものと認定し、控訴審の東京高判平成18年7月13日は、乱数表を利用していない点に安全保管義務違反を控訴人が主張したのに対して、安全保管義務違反はないと判断し、原審の判断を維持しました。

 結局、インターネットバンキング取引における不正送金については、利用者にてパスワード等の保管を気をつけるしか対応策がなさそうです。

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2007年12月18日 (火)

同一の貸主と借主の間で基本契約を締結せずに切り替え及び貸し増しとしてされた多数回の貸付に掛かる金銭消費貸借契約が、利息制限法所定の制限を超える利息の弁済により発生した過払金をその後に発生する新たな借入債務に充当する旨の合意を含むものと解された事例(最高裁平成19年7月19日)

 判例時報No1981号(12月1日)搭載の最高裁判例です。

 いや、平成19年は、過払い金についての最高裁判例が次から次にでますね。

 今回も、平成19年7月19日(第1小法廷)(最高裁平成18年(受)第1534号)に出た事案です。

 基本契約はない借換え事案において、最高裁は、過払い金を将来に発生する新たな借り入れ債務に充当することを認めました。

 解説者によれば、「本判決は、借入債務につき利息制限法所定の制限を超える利息の弁済により過払金が発生した場合における、過払金の後発借入債務への充当の可否という問題について、充当に関する合意に基づいてこれを肯定した事例として、実務上重要な意義を有すると考えられる」と指摘しています(同書16ページから引用)。

 悪名高い平成19年2月13日との最高裁判例との関係ですが、同判例の特段の事情の例を、今回の事案が示したとして評価されるかもしれません。

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2007年12月15日 (土)

過払金請求における悪意の受益者 

 判例タイムズ1252号(12月15日)号です。

 過払金返還請求訴訟において、貸金業者から、民法704条の悪意の受益者ではないという反論をされることが少なくありません。

 特に外資系の消費者金融機関は、悪意の受益者論と題する詳細な書面を裁判所に提出し、争ってきます。

 この反論が通ってしまうと、過払い利息が請求できなくなるため、大変です。

 貸金業者が借り主による弁済を受けていた時点では、みなし弁済規定の適用があると信じていたから、悪意とはいえないという反論をしてきます。

 悪意の受益者であるかどうかは、本来は、借り主側にて主張立証しなければならないことから、結構、面倒でした。

 しかし、最高裁平成19年7月13日判決が出てからは、悪意の受益者論が主要な争点になることは少なくなると思います。

 最高裁平成19年7月13日判決(第2小法廷)は、最高裁平成17(受)第1970号事件では、

 貸金業者が制限超過部分を利息の債務の弁済として受領したが、

 その受領につき貸金業法43条1項の適用が認められない場合には

 ①当該貸金業者は、同項の適用があるとの認識を有しており

 ②そのような認識を有するに至ったことについてやむを得ないといえる特段の事情があるときでない限り、

 法律上の原因がないことを知りながら過払金を取得した者、すなわち民法704条の「悪意の受益者」であると推定されるものというべきである

 と判断しています。

 これにより、悪意の受益者であると事実上推定されることから、貸金業者側は、①や②を主張立証しなければならなくなりました。

 特段の事情については、最高裁平成18年(受)第276号事件は、

 少なくとも平成11年判決以後において、貸金業者が、事前に債務者に上記償還表を交付していれば18条書面を交付しなくても貸金業法43条1項の適用があるとの認識を有するに至ったことについてやむをえないといえる特段の事情があるというためには、

 平成11年判決以後、上記認識に一致する解釈を示す裁判例が相当数あったとか

 上記認識に一致する解釈を示す学説が有力であった

 というような合理的な根拠があって上記認識に一致する見解があったというだけで上記特段の事情があると解することはできないと判示しました。

 判例タイムズ1252号は、それ以外に、遺留分減殺請求を巡る諸問題(下)も、掲載しており、参考になります。

 それ以外には、「法科大学院と新司法試験」という題名で、現役の裁判官(前職は神戸大学法科大学院教授)が、法科大学院や新司法試験の在り方などについて、改めて検討すべき時期にきているのではないかという内容の論文が掲載されていました。

 ただ、新人弁護士の就職難については大変危惧されておられるようです。

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2007年12月14日 (金)

土地を目的とする先順位の甲抵当権が消滅した後に後順位の乙抵当権が実行された場合において、土地と地上建物が甲抵当権の設定時には同一の所有者に属していなかったが、乙抵当権の設定時には同一の所有者に属していたときの法定地上権の成否(最高裁平成19年7月6日)

 本件事案は、要するに、民法388条所定の「土地及びその上に存する建物が同一の所有に属する」旨の要件(同一所有者要件)の充足性の有無が問題になった事案です。

 甲抵当権の設定時を基準にすれば、要件非充足→不成立

 乙抵当権の設定時を基準にすれば、要件充足  →成立

 但し、競売前に、甲抵当権は消滅していた事案です。

 平成2年の最高裁判例は、競売前に、甲抵当権が消滅していない場合において、要件非充足、即ち、法定地上権不成立と判断しています。

 少し以前のブログでも、少し触れたと思いますが、

 平成19年最判の原審は、

 甲抵当権が存続したままの状態で競売に至るとすれば、法定地上権は成立しないのであるから、乙抵当権者の乙抵当権設定時における認識としては、将来の法定地上権の不成立を予測し、これを前提に担保価値を把握するものと解され、そのような期待をその後の甲抵当権の消滅という偶然の事情によって損なわせることはできないという理由などから、法定地上権の成立を否定しました。

 とことが、平成19年の最高裁判例は、

 ①本件では甲抵当権は既に消滅しているのであるから、その利益を考慮する必要はなく、同一所有者要件の充足性を甲抵当権の設定時に遡って判断すべき理由はない、

 ②平成2年最判は、競売により消滅する抵当権が複数存在する場合に、その中の最先順位の抵当権の設定時を基準として同一所有者要件の充足性を判断すべきことをいうものであり、競売前に消滅した抵当権をこれと同列に考えることはできない

 ③乙抵当権者としては、甲抵当権が消滅することもあることを予測した上、その場合における順位上昇の利益と法定地上権成立の不利益を考慮して担保余力を把握すべきものであり、法定地上権の成立を認めても乙抵当権者に不測の損害を与えるものとはいえないこと

 ④民法388条の文言からは、競売により消滅する抵当権の設定時を基準に同一所有者要件を要求していると理解されること

 から、要件充足、つまり、法定地上権の成立を認めたわけです

 なるほど、平成2年最判とは異なり、甲の利益を考慮する必要はないわけです。

 判例時報(平成19年12月11日・第1982号)の評者によれば、「本判決は、平成2年最判の残された課題とされる法律問題に対して最高裁としての回答を示すとともに、従来の競売実務に理論的根拠を与える形でこれを追認したものといえる」とされています。

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2007年11月29日 (木)

過払金返還請求訴訟における一連計算の可否をめぐる問題点について 判例タイムズ1250号

 判タ1250号に、過払金の際の計算方法について、名古屋地裁の裁判官の記事が載せられいました。

 骨子として、

1 複数の借入金債務が同時併存している場合

  ① 基本契約が存在しない場合

    別口の債務に充当指定を肯定する見解

      理由 借り主(債務者)の合理的意思

    充当指定を否定する見解(原則)(解説者の見解)

      理由 債権者の立場も考慮すべき

  ② 基本契約が存在する場合

    充当指定を肯定する見解(解説者の見解)

    最高裁平成15年7月18日第2小法廷判決

2 過払金発生時に、他の債務が存在していない場合

 ① 基本契約が存在しない場合

    充当指定を否定する見解(解説者の見解)

     理由 弁済当時存在しない債務への弁済指定はありえない

    最高裁平成19年2月19日第3小法廷 

     特段の事情がある場合には、例外的に、充当可能

    最高裁平成19年7月19日第1小法廷

     前記最高裁の特段の事情の1場合を示した

 ② 基本契約が存在する場合

    充当指定を肯定する見解(解説者の見解)

    理由 基本契約の合意の中に黙示の合意を認める

    最高裁平成19年6月7日第1小法廷

     基本契約の解釈によって、充当の可能性を広く認めた。

 (まとめ)として、解説者は、「実務において散見される当事者の合理的意思(借主保護)というフレーズを協調するだけでは、当然に充当処理が肯定されるものではないと締めくくっています。

 ボツネタのコメントでは、今回の論文は、批判的な内容のコメントも載っていましたが、これまでの考え方を整理のために使うのであれば、役に立つ記事だと思います。

 ただ、債権者保護につながるような見解が少なくなかったのは、債務者から依頼を受ける立場としては、残念でした。

 なお、このあたりの最高裁判例を、ある司法修習生に質問したことがありますが、押さえられていませんでした(というより、知らなかったみたいです。(^^;) )。

 択一試験に出てきてもおかしくないような事例だと思うのですが、最近は、最高裁判例も、あまり勉強しなくなっているのでしょうか?

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2007年11月24日 (土)

過払金 の 最高裁判例、関連する下級裁判所判例 消費者法ニュース 73

 全国クレジット・サラ金問題対策協議会から、「消費者法ニュース」という定期刊行物が発行されています。

 今回は、消費者法ニュース73号です。

 消費者法ニュースは、サラ金や商工ローンだけではなく、銀行、医療、欠陥住宅、宗教など消費者が関わる事例を幅広く取り扱っています。

 消費者問題は田舎弁護士の私にとっても身近な相談分野であり、消費者法ニュースは、最新の動きを体系的に知ることの出来る便利なツールでもあります。

 下級審の裁判例としては、

 ①期限の利益喪失後も長期間、多数回にわたって多額の弁済を受け続けること等により期限の利益を宥恕し再度期限の利益を与えたとして、シティズの貸金請求本訴を棄却し、不当利得返還請求反訴を認容した原判決を維持した事例(東京高判平成19年3月8日・消費者法ニュース51頁)

 ②連帯保証人は、自分が連帯保証人になる以前の貸金業者と主債務者との取引履歴についても開示請求ができ、その開示請求が濫用にわたるなど特段の理由がない限り、開示拒否は違法として損害賠償を認めた事案(大阪高判平成19年6月8日・消費者法ニュース53頁)

 ③商業帳簿の保存期間は、商法によって10年と定められている。保存期間を経過しないで商業帳簿を破棄することは違法であり、民訴法224条2項の証明妨害に該当するので民訴法224条3項を適用して相手方の主張を真実と認めた事案(本庄簡易裁判所平成19年6月14日・消費者法ニュース55頁224頁)

 ④第一取引と第二取引の空白期間が約1年、第二取引と第三取引の空白期間が約5ヶ月ある取引について、各基本契約における契約番号並びにカード番号は異なるが、これらは一連取引であり、通算計算するのが相当とした事案(大阪簡易裁判所平成19年7月18日・消費者法ニュース58頁)

 ⑤第一の取引の最終日(昭和63年1月)から第二の取引開示日(平成9年7月)まで、9年6ヶ月の空白期間がある場合でも、一連取引と認めた事例(相模原簡易裁判所平成19年5月10日・消費者法ニュース60頁)

 ⑥特定調停において、申立人が分割で残債務を支払う調停に代わる決定が確定した後、特定調停の錯誤無効により過払金を容認した事例(浜松簡易裁判所平成19年7月11日・消費者法ニュース62頁)

 ※債務整理とは関係はありませんが、某大手生命保険会社を相手に、1人で闘っておられる方の手記が載っていました。事案は、貯金のつもりで、養老保険に加入していたのに、定期保険を養老保険につけるということで、元の養老保険が85%も減額された転換契約が締結されていることになっており、その際の説明は、20分程度で、不利益事項は一切知らされていなかったという事案でした。

 そういえば、私も、生命保険を切り替えを勧められた際に、月々の保険料が安くなるなど専ら利益の説明だけで、予定利率が大きく減額するという説明は、口頭では全く受けなかったことを思い出します。

 それ以来、生保会社に対しては、私も、極めて懐疑になり、不利益を含めて十分な説明を受けない限り、購入しないことにしています。商品説明に、プラスの説明だけに終始する営業担当者の方がいますが、私には通じませんよ。そういえば、昔、この手記にのっている生保会社、知人がその会社にいたのですが、一杯飲んだ翌日には、高額な保険料の支払いの設計書を持参して営業に来ていたことがあります。あまりものずうずうしさに、半分、あきれてしまいましたが・・・・

 保険会社でも、損害保険会社の場合には、代理店の方から、きちんとした説明をしてくれるので、説明の中身という点からは、同じ保険会社でも、その対応に、大きな差を感じました(あくまで、私の場合に限ってですが・・・ 私は損保の仕事が多いので、ある程度の知識があり、ここの約款の説明をして欲しいなどと言うため、代理店もきちんと説明しないと、ヤバイと思うのかもしれませんが)。

 職業上、いいことばっかり説明している営業担当者の方の話は、反射的に信用しないという思考になっていますので、悉く、追い返しています。

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2007年11月 8日 (木)

最近の過払金返還請求を巡る最高裁の一連の判決

 JA金融法務11月号に、宇津木先生のグレーゾーン金利などについてのご解説が載っていましたが、非常にわかりやすいので、少し紹介します。

 ご承知のように、貸金業者は、少し前までは、貸金業法43条のみなし弁済の主張を執拗に行ってきました(今でも、後述する最高裁判例が出ているにも拘わらず、無意味な主張をする貸金業者は存在しますが・・・・・・ (>_<)  )

 平成16年2月20日の最高裁判決は、貸金業法17条1項の書面、同法18条1項の書面について厳格に解し、不完全な金銭消費貸借契約書、また、弁済後20日あまり経過した受取証書には、同法の適用はないと判断しました。

 平成18年1月13日の最高裁判決は、期限の利益喪失条項特約が存在する場合には、任意性自体を否定しました。

 これらの最高裁判決がでたことに伴い、借り主側に、過払金が発生することが多くなりました。

 問題は、過払金の返還方法についての大法廷での統一的な見解がないことから、計算方法を巡って、実務がやや混乱しています。

 平成19年2月13日の最高裁判決(第3小法廷)は、基本契約が存在しない場合、第一の貸付に関わる過払金が発生した後になされた第二の貸付債務には、特段の事情がない限り、第一の過払金は、第二の貸付に関わる債務には充当されないと判示しました。

 この判例がでたとき、私は、(T_T) と感じました。

 平成19年6月7日の最高裁判決(第1小法廷)は、基本契約により継続的に貸付が繰り返されている場合にはある借入債務の過払金は、特段の事情がない限り、弁済当時存在する他の借入債務にも充当されると判示しました。

 この判例には、私は、(^o^) と感じました。

 次いで、平成19年7月19日の最高裁判決(第1小法廷)は、基本契約は存在しないが、切替・貸増を何回も行った金銭消費貸借契約は、ある借入債務から発生した過払金をその後発生する借入金に、充当する旨の合意を含むものと判示しました。

 平成19年2月13日の最高裁判決を狭めるもので、好意的に理解できます。(^_^)

 貸金業者に濫用されがちな平成19年2月13日の最高裁判決の射程範囲を狭めため、最高裁の統一見解が必要だろうと思っています。

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2007年11月 7日 (水)

活字になっていました。

 9月14日に、大阪銀行協会で行われた、きんざい主催の金融法務例会に参加したことについては、15日のブログにて、ご報告させていただいています。

 旬刊金融法務事情1818(11月5日、15日)号に、元最高裁裁判官の特別論稿として、なんと、講演録が活字になって紹介されていました。

 講演録を改めて読ませていただくと、耳ではわかったつもりになっていたところが、実は、あまり理解できていなかったことがわかりました。

 また、同号では、信用保証協会保証の保証免責条項についての特集もくまれていました。金融機関から相談がある前に、読んでおかなければならないのですが、目の前の処理に時間がとられ、多分無理でしょうね。

 今度、きんざいの、研究会で取り上げてくれないかな?

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2007年10月29日 (月)

取引開示義務をめぐる裁判例と問題点

 判例タイムズ1248号(11月1日号)に、「取引開示義務をめぐる裁判例と問題点」と題する現役の裁判官(吉野内裁判官)の記事がのっていました。

 貸金業者に対するものと、銀行に対するものとを区別して論述されており、とりわけ、貸金業者に対するものについても、大いに参考になりました。

 平成17年の最判は、「信義則上、保存している業務帳簿(保存期間を経過して保存しているものも含む。)に基づいて取引履歴を開示すべき義務を負う」と判示しています。

 貸金業者が廃棄主張をしてきた場合についての検討が参考になります。

 吉野内裁判官は、記録が存在することは開示請求権の前提であるから、債務者側が記録の存在につき立証責任を負うと考えています。

 とはいえ、仮に、債務者に証明責任があるとしても、貸金業者は帳簿の保存義務を負っていることから、少なくとも、保存義務を負う間は、帳簿も存在するのが原則であり、帳簿の存在が事実上推定されると考えておられます。

 さらに、保存期間が経過した後でも、直ちに帳簿が破棄されるのが一般的とまでは言い難いことから、貸金業者の方にて、廃棄を裏付ける事実を積極的に主張立証する必要があるとされています。

 問題は、帳簿の保存期間についてです。

 吉野内裁判官は、貸金業法上、最終の返済期日から少なくとも3年、帳簿閉鎖の時から10年間は、保存しなければならないことになると解説されています。

 吉野内裁判官は、少なくとも、債務者から取引履歴の開示請求を受けているにもかかわらず、保存期間を経過したからといって廃棄することは許されないというべきであり、廃棄が不法行為を構成することもあり得ると述べておられます。

 過払金請求案件が増えたからという理由で、取引履歴を破棄することがあれば、とんでもないことです。

 吉野内論文は、廃棄主張の場合の立証責任の問題も含めて大いに参考になる文献でした。

 他方、貸金業者と異なり、預金取引における取引開示義務については、裁判例は、開示について、消極的なのですね。

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2007年10月28日 (日)

信じるに足る外観を備えない債権譲渡通知は、債権譲渡の対抗要件となりえない(島原簡裁平成19・1・31)

 銀行法務21の10月号の「金融商事実務判例紹介」で、紹介されていた判例です。

 民法467条は指名債権の譲渡の第三者に対する対抗要件として、通知又は承諾が確定日付ある証書によって行うことを定めていますが、その通知又は承諾の有効要件については、定めていません。

 事案は、内容証明郵便を使ったものの、債権譲渡人の押印が、会社の印鑑ではなく、社長個人の印鑑だったという事案です。

 社長個人の印鑑がダメであれば、押印がない事案はもっとダメになるはずです。

 個人印どころか、全く押印がされていない譲渡通知書は、ごくたまに見ることがありますが、きちんと確認しなければ、怖いことになりそうです。(T_T)

 10月号は、結構気になる記事が盛りだくさんでした。

 金融商品取引法関連の記事、賃貸人の倒産における資金返還請求権の取り扱い関連の記事、信用保証協会の保証免責条項関連の記事などです。

 それと、「営業店からの質疑応答」のコーナー、いつも参考になります。この質疑応答って、私が顧問させていただいている銀行の担当者から、よく尋ねられる内容が多く載っているからです。

 そのため、いつも物知り顔で回答できます。(^_^;)

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2007年10月16日 (火)

民事再生法施行後の倒産・再生をめぐる重要判例ダイジェスト(事業再生と債権管理10月5日号)

 きんざいの「事業再生と債権管理」の秋号に、倒産関係の重要何例の要旨について要領よくまとめられている記事が載っていました。

 きんざいの書籍は、非常に多数取り寄せ購入させていただいていますが、事業再生と債権管理だけは、田舎弁護士には無縁な大きな事件に関する記事が多く、また、最近の購読誌が、銀行取引21、判例時報、判例タイムズ、交通事故速報、交通事故判例(ぎょうせい)、自保ジャーナル、JA法務、金融法務事情、消費者法ニュース等々、関心のある記事だけに目を通すのに精一杯である状態に陥っているため、定期購読をしている専門誌を少し減らそうと思い、事業再生は購読をやめようと考えていた矢先でしたが、本書の記事をみて、また迷う羽目に陥ってしましました。

 ただ、私の性格上、本は購入して読まないと、それだけで、ストレスの原因になりますし、弁護士事務所を法人化したことに伴い、経費節減も図っているところから、まあ、山の神に怒られない程度にしておかなければなりません。

 それはさておき、記事で参考になるなあと思った判例は、以下のとおりです。

 破産終結決定がされて法人格が消滅した会社を主債務者とする保証人が主債務の消滅時効を援用することの可否が問われた事例です。

 第1審は、債権者の届出債権は原債権であり、求償債権ではないから、求償債権ではないから、求償債権は破産終結から5年で時効消滅して、保証人の保証債務も消滅したと判断しました。

 ところが、第2審は、債権者の届出債権は、求償債権を含む趣旨のものであるとした上、届出債権に対応する求償元金については、時効期間が10年に延長され、届出債権に含まれなかった求償損害金については、時効期間が5年のままとして、本件訴訟提訴の5年前に発生した求償損害金は時効消滅したが、その後に発生したものは消滅していないと判断されました。

 最高裁は、そもそも、破産終結決定がされて法人格が消滅した会社を主債務者とする保証人は、主債務についての消滅時効が会社の法人格の消滅後に完成したことを主張してこれを援用することができないと判断しました(最高裁平成15年3月14日)。

 これって、気をつけておかないと、相談者に間違ったアドバイスしかねませんね。(^_^;)

 なお、個人の場合には、援用できないとする最高裁判例が、すでに、平成11年11月9日に出されているみたいです。

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2007年10月15日 (月)

信用保証協会を債権者とし、被担保債権の範囲を保証委託取引により生ずる債権として設定された根抵当権の被担保債権に、信用保証協会の根抵当債務者に対する保証債権は含まれない(破棄自判 最高裁平成19年7月5日)(銀行法務21・9月)

  銀行法務21・9月号の金融商事実務判例紹介で、★★★評価で紹介されていた最高裁判例です。

 事案は、以下のとおりです。

 Y保証協会は、債務者Aと債権者B銀行との間の貸金について、Aのために連帯保証をし、また、その頃、Cは、債務者Aのために、Aが信用保証委託契約に基づきYに対して負担する一切の債務を連帯保証しました。

 その後、Cは、D銀行からお金を借り入れる際に、Yとの間で、信用保証委託契約を締結し、Cが所有していた不動産(本件不動産)を、債務者をC、極度額を1560万円、債権の範囲を「保証委託取引による一切の債権」と定め、根抵当権設定契約を締結し、これに基づき、債権の範囲を「保証委託取引」とする根抵当権設定登記をなされました。

 その後、AはB銀行から借りたお金が返済できず、Y保証協会が代位弁済し、Aに対して求償権を取得しました。

 Cは、D銀行に対する借り入れはすべて弁済しました。

 Cは、Xさんに、本件不動産を売却し、Xは、Y保証協会に、本件根抵当権設定登記の抹消登記手続を求めました。

 1審では、Xさんが勝ち、2審では、Xさんが負け、最高裁では、再び、Xさんを勝たせました。

 最高裁は、保証委託取引という表示が、法定された信用保証協会の業務に関するすべての取引を意味するものと解することはできないとして、被担保債権の範囲を保証委託取引により生ずる債権として設定された根抵当権の被担保債権に、信用保証協会の根抵当債務者に対する保証債権は含まれないと判断しました。

 難しい問題ですが、保証委託取引という表示で、信用保証協会の取引一般が対象とならないとすれば、Y保証協会としてはどうすればよかったのでしょうか?

 法務省は、「信用保証協会取引」という表示では適当でないというコメントを発表して、「保証委託取引」とされるよう説明されていたようで、この説明を前提に登記した金融機関が保護されない結果となってしまいました。

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2007年10月14日 (日)

カードの利用による継続的な金銭の貸付を予定した基本契約が同契約に基づく借入金債務につき利息制限法所定の制限を超える利息の弁済により過払金が発生した場合には、当該弁済当時他の借入金債務が存在しなければこれをその後に発生する新たな借入金債務に充当する旨の合意を含むものと解された事例(最高裁平成19年6月7日)

 旬刊金融法務事情1816号(10月15日号)の判決速報で紹介された最高裁の裁判例です。 

 過払金の将来債務への充当については、過払いが生じた段階で、借入債務が発生しなければ充当の問題は生じないとする下級審の裁判例がありました。

 しかし、この最高裁判決は、基本契約に基づく債務の弁済は各貸付との間で個別の対応関係を持つものではなく、基本契約に基づく借入金の全体に対して行われ、このような全体としての借入金債務が充当の対象となるという本件の各基本契約の実質的な内容を素直に理解すれば、その基本契約は、弁済当時他の借入金債務が存在しないときでも、過払金をその後に発生する新たな借入金債務に充当する旨の合意を含むものと解釈できるとして、この合意に従った充当計算を肯定したものです(金融法務事情からの引用による)。

 まあ、当たり前のような気がしますが、相手方の金融機関は最高裁に上告して争ったようですね。

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2007年10月13日 (土)

貸金業者の利息制限法所定の制限を超える利息の支払請求について、架空請求であるとして不法行為を構成するとし、借主の貸金業者に対する慰謝料と弁護士費用の支払請求が認容された事例(札幌高裁平成19年4月26日)

 このブログでも、既に紹介させていただいている過払金請求に関連する裁判例が、ついに判例時報1976号(10月11日号)に登場いたしました。

 解説者によれば、「本判決は、過払金返還訴訟に必要な弁護士費用を民法704条後段の損害にあたるとして、その支払請求を認容した初めての裁判例である」と紹介しています。

 ただ、地裁レベルでは、すでに、大阪地裁で同様の判断が示されていたものと思います。

 次に、ここからがさらに重要ですが、利息制限法の制限を超える利息の請求は、架空請求として不法行為を構成し、架空請求を受けて苦しんだ原告の慰謝料15万円と弁護士費用5万円の支払請求を認容したのです。

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2007年10月 9日 (火)

土地・地上建物に設定した先順位と後順位共同抵当権に関わる法定地上権成立の有無

 JA金融2007年10月(No433)に紹介されていた判例(宇津木旭先生ご解説)です。

 JA金融法務で紹介されていたケースは、以下のとおりです。

 Aさんは、建物を、Aさんの妻であるBさんは、建物を所有し、Bさんの物上保証で、土地・建物に共同抵当権が設定登記されました(先順位共同抵当権)。

 Aさんの死亡により、建物は、Bさんと、子どもであるCさんが共同相続しました。

 その後、Dさんのために、土地・建物に共同抵当権が設定登記されました(後順位共同抵当権)。

 その後、先順位共同抵当権が消滅し、その旨の登記がなされました。

 そして、後順位共闘抵当権者が競売の申立を行い、競売による土地の買い受け人Eさんが、BCさんに対して、建物収去土地明け渡し請求を行いました。

 平成19年7月6日の最高裁判例は、

 先順位共同抵当権が消滅した後に、後順位共同抵当権が実行された場合において、

 土地・同地上建物が先順位共同抵当権の設定時には、同一所有者に帰属していなかったとしても、

 後順位共同抵当権設定時に同一の所有者に帰属していた時は、法定地上権が成立する

 と判断しました。

 設問では、BCさんは、法定地上権の成立をもって、Eさんの請求を断ることができます。

 ところで、最高裁は、他方で、平成2年1月22日に、

 土地について一番抵当権が設定されていた当時は、土地・地上建物の所有者が異なっていたが、

 その後、土地と建物を同一人が所有した後、2番抵当権が設定された場合、

 抵当権の実行により、土地が競落されたため、1番抵当権が消滅した場合の法定地上権の成否争われた事案で、

 地上建物のために法定地上権は成立しないと判断しています。

 平成19年の最高裁の第1審、第2審ともに、平成2年の場合と同様と解して、地上権の成立を認めていません。

 単純に考えると、原審等と同じに考えそうですが、そうはならないところに難しさがあります。

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2007年10月 8日 (月)

グレーゾーン金利の請求は架空請求

 以前、札幌高裁平成19年4月26日に言い渡した判決(グレーゾーン金利の請求は架空請求の不法行為)を紹介したことがありました。

 この判例に関する解説が、消費者法ニュース72(2007年7月)号に全文と一緒に記載されていました。

 最近は、大阪高裁も同趣旨の判断をして大変心強い限りです。

 過払い金請求について、消費者金融はあの手この手を使い、満額弁済しようとはしてくれません。

 依頼人が待ってくれるような場合には、訴訟提訴を行い解決するのですが、早期解決を希望される方の場合は、やむなく、譲歩を強いられることもあります。

 また、未払い利息が結構貯まっている場合には、これを切り捨てて和解することはもったいないため、計算書作成日までの利息を付けて請求していますが、示談の段階で利息を満額弁済しようとする業者は私の経験ではほとんどありません(裁判になっても、和解ではなんだかんだ言って値切ってこられますが・・・)。

 訴訟提訴に至った場合、どうしても、慰謝料請求や弁護士費用を付加しなければ、示談レベルで依頼人の希望にほぼそう和解をしてくれる業者とのバランスも欠くことにもなります。

 ただ、訴訟提訴で本格的に争うとなった場合、時間がかかるのですね。1年くらいかかることもあります。

 依頼人からは、「どうなっているのか」、「早く解決して欲しい。」と言われることも少なくなく、このような場合には、途中で、依頼人の希望にそう形で和解をして終わることがほとんどです。

 従って、判決までいく場合はほとんどなく、訴外で示談をして、裁判自体は取り下げるケースがほとんどです。

 なお、クレディアが民事再生手続を申請したことから、経営不安が噂される相手方に対しては、原則として、訴訟提訴を行い、訴外の示談ではなく、訴訟上の和解にて解決しようと思っています。

 しかし、少額でも、示談交渉の段階、応訴の段階にて、取引履歴を開示しないなど不誠実な対応をされる相手方に対しては、判決を得て、強制執行にて、過払い金などの回収を行うつもりです。当然、訴訟費用確定の裁判も申し立てします。

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2007年10月 7日 (日)

被相続人が相続財産を共同相続人の一人に全部相続させる旨の遺言をした場合について、遺留分侵害額の算定にあたって遺留分減殺請求権者が負担すべき相続債務が存在しないものとして算定すべきであるとされた事例(福岡高裁平成19年6月21日)

 旬刊金融法務事情No1815(10月5日)号の、判例速報搭載の裁判例です。

 相続人は、兄弟2人の事案で、Xが全部相続する内容の遺言があり、これに対して、Yが遺留分減殺請求を行った事案です。

 遺産として、積極財産は、4億3231万7003円の不動産、他方、消極財産は、4億2483万2503円の負債があるという事案です。

 第1審や第2審は、単純でして、積極財産から消極財産を控除すると、プラス748万4500円が残ります。

 この遺留分割合である4分の1を乗じると、187万1125円となります。

 従って、裁判所は、不動産につき、持分4億3231万7003円の187万1125円の所有権移転登記手続を認めました。

 わかりやすいです。

 これに対して、Xさんは以下のように考えました。

 確かに、積極財産から消極財産を控除した金額に遺留分割合を乗じると、187万円程度の金額になる。

 しかし、遺言で相続分が指定されたとしても、債権者は法定相続分の割合に従って、相続債務が承継されたものとして、Xに対して請求されることもあるだろう(判例は、「解する余地がある」という微妙な表現をしています。)。

 そうだとすれば、相続債務の半分である2億1241万6252円を加算されるべきである。

 従って、私は、4億3231万7003分の2億1428万7377円の共有持分を有するはずだと。

 ところが、裁判所は、この考え方に対しては、以下のとおり答えています。

 債権者は、各共同相続人に対して、法定相続分の割合に従って請求することもできる(この場合、指定相続分の割合を超えて履行した相続人は、本来負担すべきであった相続人に対し求償することになる)し、本来の承継された指定相続分の割合に従って相続債務を請求することもできることになるが、

 いずれにせよ、相続人間のおいては、指定相続分の割合に応じて相続債務が承継されたものとしてその法律関係が律せられることに変わりがない

 本件については、上告されています。

 Xさんの悔しい気持ちも理解できなくはないですが、裁判所の判断の方がより合理的であるように思われるため、原審と同じ判断が維持されるのではないかと推測しています。

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2007年9月27日 (木)

インターネットバンキングを利用した不正振込

 銀行法務21・8月号で、インターネットバンキングを利用した不正振り込みについての、裁判例が紹介されていました。

 インターネットバンキングは、手軽で、また、送金手数料も安いことから、日常生活で欠くことのできない送金手段となっています。

 私の事務所での、任意整理事件の債権者に対する支払いは原則としてインターネットバンキングを利用しており、インターネットバンキングを利用した支払いは、振り込み手数料を入れて、1回500円で代行しています。

 少し前までは、1件振り込み手数料を入れて1000円でしたが、以前は、銀行のATMから送金していたため、費用も高く、手間もかかったので、その金額にしていましたが、インターネットバンキングを利用すれば、手軽で送金費用も安くなることから、送金費用を入れて、1件500円による代行とさせていただいております。(^_^;)

 話が少し脱線しましたが、大阪地裁平成19年4月12日の裁判例、東京高判平成18年7月13日の裁判例は、ともに、銀行の免責を認めました。

 判示の記載を読む限り、よっぽどのことがない限り、銀行が有責となるのは難しいと思います。

 預金保護法の適用も直ちには難しいみたいですし、手軽な反面、インターネットバンキングの安全管理には注意していきたいものです。

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2007年9月26日 (水)

えっ 破産管財人に源泉徴収義務あるの?

 破産管財人に就任する弁護士にとっては、面倒な判例がでました(大阪地裁平成18年10月25日・金融法務事情No1813 9月15日号)。

 事案は、住吉税務署長が、①破産管財人である原告が破産管財人個人に対して支払った破産管財人の報酬、②原告が破産者の元従業員らに対して配当した退職金等について、破産者に対して源泉徴収にかかる所得税の納税告知処分及び不納付課税賦課決定処分をしたのに対して、破産管財人が本件各処分にかかる納税義務が存在しないことの確認を求めた事案です。

 破産手続における破産債権の配当及び財団債権の弁済につき源泉所得税の徴収、納付する義務を破産管財人が負うかどうかについては、これがないとするのが、最近の破産実務の取り扱いとされています。

  ところが、大阪地裁は、管財人に源泉徴収義務を認めました。

 まず、(1)破産者または破産管財人が所得税法6条等において源泉徴収義務を負うものとされている「支払いをする者」に該当するかどうかについては、

 支払をする者とは、当該支払にかかる経済的出捐の効果の帰属主体をいうとした上で、破産者は、破産宣告後も破産財団にかかる実体的権利義務の帰属主体であり、破産管財人に法主体性は認められないから、破産債権者に対する配当及び財団債権に対する弁済にかかる経済的出捐の効果の帰属は、破産者であるとして、破産債権に対する配当及び財団債権に対する弁済について、支払いをする者は、破産者という見解を示しました。

 次に、(2)源泉所得税の徴収、納付が破産管財人の権限に包含されるかどうかについては、

 破産管財人は、破産財団の管理及び処分をする権利を専有し、破産手続によって破産債権を確定してこれに対する配当をし、財団債権について破産手続によらず随時に弁済をするものとされているのであって、配当または弁済をする際に、源泉所得税が生じるか否かを判断し、源泉所得税が生じる場合にその税額を算出することができる上、破産債権に対する配当または財団債権に対する弁済にかかる源泉徴収税は、当然配当または弁済時に法律上当然に成立し、その成立と同時に納付すべき税額が確定するものであるから、その徴収及び納付は、破産財団の管理及び処分に係る事務として、破産管財人の権限に包含されているという見解を示しました。

 (3)源泉所得税にかかる租税債権が財団債権に該当するか否かについては、

 源泉所得税相当額は、破産債権者において共益的な支出として共同負担するのが相当な破産財団管理上の経費として、財団債権を認めました。

 不納付加算税についても、本税である租税債権が財団債権である以上、その付帯税も財団債権であるとの見解を示しました。

 原告である破産管財人の代理人には、租税法の高名な弁護士さんが就任されているようですので、控訴審がどのような判断を示すのか、どきどきしながら、見守っていきたいと思います。

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2007年7月23日 (月)

過払金の他債務への充当(金融法務事情NO1809)

 旬刊金融法務事情No1809(7月25日)号に、兵庫県弁護士会所属の陰山先生の、「過払金の他債務への充当」という田舎弁護士である私にとっても、重要な争点に対する最高裁判決の具体的な解説が搭載されており、非常に参考になりました。

 ご承知のとおり、最高裁平成19年2月13日は、基本契約が締結されていない場合には、原則として、既発生の過払金がその後の貸付にかかる債務に当然に充当されることはない旨判示しました。

 逆に読めば、基本契約が締結されている事案については、当然に充当されることを前提にしているものと思われていました。

 ところが、最高裁平成19年6月7日は、「同一の貸主と借主との間で基本契約に基づき継続的に貸付が繰り返される金銭消費貸借取引において、弁済によって過払金が発生しても、その当時他の借入金債務が存在しなかった場合には、上記過払金は、その後に発生した新たな借入金債務に当然に充当されるものということはできない。」と判示しました。

 基本契約が締結されている場合、2月13日判決と、6月7日判決とは矛盾するようになります。

 但し、6月7日判決も、過払金の当然充当はないといいながらも、例外的に、「少なくとも、当事者間に上記過払金を新たな借入金債務に充当する旨の合意が存在するときは、その合意に従った充当がされる」として、具体的な事案においては、リボルビング式の取引であることを指摘して、充当を認めました。

 以上を整理すると、

 2月13日判決 基本契約がない場合、原則、充当否定、例外あり 基本契約がある場合、原則? 充当肯定

 6月7日 判決 基本契約がある場合、原則、充当否定、例外あり

 6月7日判決の枠組みで考えるのであれば、例外的に、充当を肯定される場合がどのようなケースなのかが重要となります。

 例えば、陰山先生は、「基本契約において、元利金の支払いが1回でも遅れると、当該債務のみならず、基本契約に基づくすべての債務についての期限の利益を失う」という条項が入っているものは、充当が肯定されると考えられておられます。

 完済後再貸付の場合、つまり、消費者金融機関からリボルビング式での借入を繰り返していた者が、いったん約定計算に基づく債務を完済して、その後にまた同じ業者から借入をした場合の充当も、よく実務上問題になります。

 これまで、いろいろ疑問に思っていたことがわかりやすく解説されており、非常に勉強になりました。

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2007年7月15日 (日)

第119回金融法務研究会例会(大阪)

 (社)金融財政事情研究会主催の研究会に出席してきました。

 テーマは、大阪地裁における破産事件の最近の運用についてですが、現役の六民の裁判官が担当されました。

 実際の講義は、3つに分かれており、①破産手続における過払金返還請求権に関する新たな運用について、②債権者申立事件の申立てから破産手続開始決定に至るまでの運用について、③管財手続の運用と債権者の手続関与についてでした。

 まず、第1の、破産手続における過払金返還請求に関する新たな運用についてですが、運用基準については、今年春に発表され、私も、全倒ネット経由で、入手し、債務整理担当職員に説明していましたので、多少知っていました。

 過払金とは、消費者金融機関に対する債権のことですが、額面額が30万円以上の場合に、代理人に、過払い金の回収を指示するようです。

 但し、過払金が100万円を超えた場合には、同廃ではなく管財事件として処理し20万円を超えて99万円までは、自由財産の拡張事案として処理されるようです。拡張不相当ということになれば、代理人にて、案分弁済します。

 お話をうかがうかぎり、比較的厳格に運用基準を適用されているようです。

 運用基準にある程度精通していなければ、依頼人に不利益を与えかねず、過払い金が生じている場合には、地域の違う弁護士が別の地域の破産事件を取り扱うのはリスクがあるなあと思いました。

 第2に、債権者申立事件における運用ですが、債権者申立事件は、大阪地裁でも、その占める割合は、わずか0,4%しかないようです。

 それほど珍しい事件ですが、田舎弁護士の地域でも、時折、あります。地域性も絡み、非常に処理が難しい事案ですので、可能な限り、裁判所のバックアップが必要だと個人的には思っています。

 第3に、管財手続における債権者の手続関与は、直接的な関与はほとんどできないため、破産管財人を通じて行うしかありません。時折、特に、債権者が個人の場合、管財人を、債務者代理人と誤解されているような方もおられますが、むしろ、債権者の味方ですので、敵意を管財人に対して向けられないようお願いしたいものです。

 自由財産の拡張についてですが、99万円を超える拡張申し立ては、なかなか認められるのは困難なようです。

 例えば、平成18年の福岡高裁の決定事案では、退職金600万円のうち、約100万円は自由財産、残りの500万円のうち、400万円を、退職債権として同じに扱うべきだと主張し、拡張申立をした案件で、高裁は、拡張を認めませんでした。

 これも怖いですね。退職しなければ、退職金600万円は、8分の1或いは、4分の1に評価されるだけですが、退職されたために、500万円の部分が財団と評価されることになりました。これも、アドバイスを間違えると、弁護過誤ですね。怖いですね。(T_T)

 金融法務研究会は、主として、金融機関の実務担当者対象ですが、田舎弁護士の私にとっても、有益な研究会になっています。

 新幹線が、岡山から松山まで出ていればいうことないのですが・・・

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2007年7月 7日 (土)

「季刊事業再生と債権管理」と、JA金融法務

  弁護士が購読する法律専門誌は、いろいろあります。

  私が購読している法律専門誌は、判例時報、判例タイムズ、銀行取引、JA金融法務、金融法務事情、事業再生と債権管理、交通事故判例集(ぎょうせい)、自動車保険ジャーナル、交通事故判例速報(交通春秋社)、消費者法ニュースなどです。

 それ以外にも、EOCという判例等の検索会社から情報提供のための契約を締結しています。

 渉外事務所では、知財関連の雑誌なども購入しているのでしょうね。

 その中で、「事業再生と債権管理」は、大手法律事務所が扱うような案件が多く、小さな小さな私の事務所では、身近に感じられるものではありません。

 他方、「JA金融法務」は、まさに、田舎のマチ弁用の専門誌ではないかと思うくらい、身近に感じられる内容になっています。専門誌には珍しく、挿絵もあります。

 また、銀行取引や金融法務事情は、金融機関と関係のある弁護士は欠かせない専門誌です。

 交通事故を割に多く扱う事務所は、交通事故関連の判例集も必要になります。交通春秋社の書籍は、あまり知られていませんが、結構おもしろいですよ。

 他にも何かいい専門誌をご存じの方がおられたら、教えてください。

 なお、最近、司法修習生の就職事情の悪化が法曹界で話題になっていますが、現時点であれば、今治支部には、多少の余裕はあります(各支部も増加傾向にあるので、支部の経済力からは、すぐに、一杯になると思いますが)。

 就職難が叫ばれていますが、それは、積極的に支部に就職する希望ある司法修習生が少なくないため、就職場所にこだわり、就職できない人もいるのではないでしょうか?

 修習生の方に話す機会があったときに、やはり、東京か大阪、或いは、それが無理な場合には、県庁所在地に就職したい人が圧倒的でしたね。

 また、やりたい分野は、企業法務。

 「田舎じゃ、企業法務は、ただなんじゃあ」と言いたいのですが。

 また、合格後にでた最高裁判例はあまり勉強されてないように思います(私もそうでした)。

 そして、就職に大きな不安感をもっている方がほとんどでしたね。

 ただ、毎年3000人近くも弁護士が生まれようですと、弁護士だけの仕事だけでは食べていけませんね。弁護士の副業って、イメージしにくいですが、不動産業、保険代理店、コンサルタント?、う~ん 武士の商法になりそうですね。

 私は、弁護士業だけで一生を終わりたいと考えていますが、そうなると、田舎でも、広く事件を取り扱うことのできる総合的な事務所でなければ生き残れないかもしれません。

 自然淘汰されないよう、頑張っていきます。

 田舎に興味のある修習生の方、一緒に、今治に骨を埋めませんか? 

 ただ、給料はあまりでませんが・・・ (^_^;)

 営業活動もしてもらうかもしれません (T_T)

 少し脱線しました。

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2007年7月 4日 (水)

自動継続定期預金の消滅時効の起算点

 銀行法務21 2007・7号(経済法令研究会)で、紹介されていた記事です。

 期間を定めて預け入れる定期預金のうち、預金契約が満期日に前回と同一の期間の預金契約として自動的に継続されること、預金者が預金契約の継続を停止するときには満期日までにその旨を申し出るべきこと(継続停止の申し出)、預金者から継続停止の申し出があったときには、次の満期日に預金が払い戻されることを内容とする特約がついているものを、自動継続特約付き定期預金と言っています。

 自動継続特約付き定期預金については、消滅時効の起算点について、大きく2つの考え方がありました。

 ①当初満期日を起算点とすべきとする見解と、②預金者が解約申し入れをした後に最初に到来する満期日とすべきだとする見解です。

 最高裁平成19年4月24日は、結論として、後者の見解を採用したと説明されています。

 この判例については、銀行実務から大きな批判が起きています。

 まず、銀行としては、原則として、預金の消滅時効の主張は行わない、元帳ベースで確認できる以上、時効期間を経過していることを理由に、時効消滅を主張することは絶対にないと、断定されています。

 預金債権が消滅しているにも拘わらず、何らかの理由により、預金証書や通帳が回収されず、この未回収の書面で、預金の払い戻し請求があった場合、ずいぶん時間が経過している場合には、元帳で確認することもできないため、後者の見解だと、払戻に応ぜざる得ないということを問題にされているようです。

 これを回避するためには、元帳や解約書類、相殺通知書などを長期間物理的に検索可能な状態におかなければならないが、そのコストが大きいようです。

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2007年6月25日 (月)

借金苦に一家心中した者が死の直前に近親者宛に差し出した手紙によって生命保険契約における保険金受取人の変更がなされたと認められた事例(福岡高裁平成18年12月21日)

 判例時報No1964(6月21日)号搭載の裁判例です。

 事案は、借金苦を理由に一家心中を図った者の死の直前に近親者宛に差し出した手