裁判

2009年2月19日 (木)

【裁判】 執行官が茶葉に対してした執行が杜撰で違法な執行行為であり、これにより差押債務者に損害を生じせしめたが、その額を立証することが極めて困難であるとし、相当な損害として30万円が認定された事例

 判例時報NO2045(2月11日)号に搭載されている裁判例(福岡高裁平成20年5月29日)の紹介です。

 事案は、執行官が、茶葉の競り売りに際し、その種類、産地、採取時期、品質、容量等について調査せず、しかも、その重量を「手秤」(茶葉をいくつかの袋を両手で持ち上げてみてその重量についての見当をつけること)により、一袋30キログラムで一キロあたり1000円と評価して売却してしまったことについて、差押債権者が国家賠償請求をしたケースです。

 第1審は、執行は違法だが、損害が発生したとは認められないとして、原告の請求を棄却しました。

 第2審は、茶葉の数量、評価を正確に認定できないから、損害を認定できないが、執行官の杜撰極まりない執行により、なにがしの損害を生じせしめた可能性は否定できないから、民訴法248条に基づいて、その損害は30万円と算定するのが相当であると判断しました。

 判時の解説者によれば、民訴法248条の適用にあたっては、損害が生じたことが認められる場合と立証することが困難であるときの区別があいまいであることから、実務での活用は、多くないようです。

 件の執行官に対しては、動産執行のもっとも基礎的・初歩的な作業を欠いていること、このような態度は執行官としてはおよそ考えらない、杜撰さはまさにここに極まれりなどと、散々に非難されています。

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2008年4月22日 (火)

【裁判】 光市母子殺害 死刑判決

 本日、広島高裁で、加害者の元少年に、死刑判決が言い渡されました。

 詳細な内容については承知していませんが、1審判決が認定した犯罪事実に誤りがないとして、被告の供述が差し戻し前の1、2審と現在とで変遷した理由についても、「起訴から現在の弁護人が選任されるまでの6年半以上もの間、それまでの弁護人に一度も現在と同様の供述をしていないのは、不自然」と指摘しているようです。

 もとより、元少年の行った行為については、言葉では表現できるものではありません。

 そのため、私も、個人的には、今回の死刑判決は、当然であり、今回の判決を聞いて、胸がすくう思いがしました。

 他方で、元少年の弁護人に対しては、社会から大きな批判を浴びました。

 一般的によく言われることですが、否認事件の刑事裁判で、被告人が極めて不自然な弁解を行うことは少なくなく、この弁解を前提に、法律構成を行っても、やはり無理な主張になることが多く、私自身も、弁護しながら自己嫌悪に陥ることもあります。

 しかし、弁護人は、個人としての良心を捨て、職業人としての良心にて、被告人のために、精一杯、弁護を行う義務がかせられています。

 今回の事件の弁護人の弁護活動も、元少年の主張に基づいている以上、おかしくありません。

 ただ、今回の元少年の弁護人に対しては、様々な嫌がらせを受けており、社会を公然と敵にするような弁護活動は、到底、気の弱い私にはできない弁護と感じました。

 いずれにしても、元少年には、きちんと気持ちを整理した上、刑にのぞんで欲しいと思います。

 また、本村さんも、ひとつのけじめをつかれたようです。長い間、大変お疲れさまでした。

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2008年3月 5日 (水)

【裁判】 私道の敷地所有者が設置した鉄柱、看板により、平穏な生活を送る人格的な法益を侵害するとして、私道に接する建物所有者の敷地所有者に対する鉄柱・看板の撤去請求が認容された事例(東京地裁平成19年2月13日)

 判例時報No1990(3月1日)号搭載の事案です。

 Yさん所有の私道の前に、敷地を有するXさんが、Yさん相手に、鉄柱や看板などを撤去するよう請求した事案です。

 鉄柱・看板などの状況は、以下のとおりです。

 ① 禁止文言が記載されている本件鉄柱等が、Xさんが所有又は利用している建物の前にのみ設置されていること weep

 ② わずか11メートル59センチの間に合計14個にのぼる鉄柱、看板、可動式コーンが間をおかず設置されており、そのそれぞれに禁止文言が記載されていた crying

 東京地裁(平成19年2月13日)は、結論として、平穏な生活を送る人格的な法益を侵害するとして、Xさんの請求を認めました。

 東京地裁は、また、Xさんの精神的苦痛は多大と評価しています。慰謝料請求をしていれば、認められたかもしれませんね。

 いずれにしても、土地の所有者だからといっても、程度が過ぎたことはできないということのようです。

 控訴されているようですので、高裁がどのように判断するのか、知りたいものです。

 なお、今回の判例時報は、最高裁平成19年10月19日(本ブログ2月4日紹介)の解説も載っていました。

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2007年11月25日 (日)

死亡した被相続人の祭祀承継者について、実母が排斥され、長男が指定された事例(福岡高決平成19年2月5日)

 判例時報平成19年11月21日(1980)号の搭載の裁判例です。

 平成14年10月19日に、Aさんが亡くなり、Aさんの母親であるXさんに、全遺産を包括遺贈するとの内容の遺言を作成していました。

 Aさんには、長男らYらがいましたが、平成10年に離婚してから、全く交流がありませんでした。

 そこで、Aさんの祭祀承継者として、家裁に、Xさんが相応しいとして申立をしたところ、反対に、長男であるYさんになってしまったことから、高裁に即時抗告した事案です。

 高裁は、甚だ微妙としながらも、長期に亘る祭祀承継の安定を重視して、長男にしたわけです。

 このような事案についてご相談された場合、祭祀承継者はXさんになると思うから、申立をされたらというアドバイスを行う弁護士も少なくないのではないかと思います。

 遺言は、公正証書のようですが、祭祀承継者の指定を盛り込まなかったのは何ででしょう?

 私は、3点セットと称して、①相続させる対象者及び遺産の範囲、②遺言執行者、③祭祀承継者については、特別な事情がない限り、②や③についても入れるようにしています。

 最近、遺言作成の相談が多くなっています。

 そのほとんどが、包括遺贈です。子どもを排斥するような場合などには、遺留分減殺請求が後日生じる可能性が少なくないのですが、なかなか遺留分に配慮した遺言を作成しようとされる方は少ないですね。

 パターン的には、前妻の子 対 後妻  か、妻 対 兄弟姉妹(親) というのが多いですね。

 後者の場合、子がない場合には、兄弟姉妹にも相続権があることから問題になるのですが、常識的には、なぜ、妻に全部いかないのか、不思議ですね。

 それはさておき、話が変わりますが、今回の判例時報にはもう1つ気になる判例が紹介されています。

 管財人報酬や、元従業員の退職金(配当)について、管財人に源泉徴収義務があるとする裁判例(大阪地裁平成18年10月25日)が紹介されていました。

 裁判例は、肯定説をとっていますが、これは、これまでの破産管財実務とは整合するものではありません。

 判示は極めて詳細に論じておられますが、破産管財人の報酬はともかく、元従業員に対する「配当」についてまで、源泉せよというのであれば、管財人の業務は煩雑となります。

 仮に労働債権について源泉せよというのであれば、その負担にみあう報酬をいただけなければやれないと思います。

 現在、控訴中ですが、控訴審の判断に注目したいです。

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2007年11月17日 (土)

認知症等で入院中の91歳の老人がした公正証書による遺言について、遺言者が遺言能力を有していたと認められず、無効であるとされた事例(大阪高判平成19年4月26日)

 判例時報No1979(11月11日)号搭載の裁判例です。

 公正証書遺言でも、遺言者が高齢であり、認知症の症状が進み、しかも、体調が悪化したことを理由に、遺言能力がないと判断された事例です。

 公正証書遺言といっても、無効になることもあるため、病院等で入院している高齢者の方の遺言は、要注意です。

 事務所や公証人役場に来られるような方の場合は、あまり心配いらないと思いますが、病院などで作成するときは、注意しないといけません。

 また、遺言を作成しても、内容が抽象的だったり、時には、押印や作成日付がないため、遺言としての効力が認められない場合も少なくありません。

 せっかくの遺言ですので、作成については、お近くの弁護士に相談するのが一番だと思います。

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2007年10月 6日 (土)

本来の賃借地の範囲に属しない隣接地について賃借権の時効取得の成立が認められた事例

 判例時報No1974号(10月1日号)搭載の裁判例(東京高裁平成18年11月28日)です。

 賃借権の時効取得は、民法の教科書では論点の1つですが、実際には、それが問題になったことは、私自身は経験したことがありません。

 事案は、宗教法人であるAから、その所有地を賃借しているXが、同じく隣接地をAから賃借しているYに対して、①賃借権の確認と②建物の一部収去・土地明渡しを求めたのに対して、Yが反訴を提訴して、逆に、③賃借権の確認を求めたものです。

 第1審は、Xの請求を全て棄却して、Yの反訴を全て認めました。

 第2審は、Xの請求を一部認めました。

 (1)本件係争地のAからの本来の賃借人は、Yであるとしました。

    これからいえば、第1審と同じようにYの勝ちとなるはずでした。

 しかし、高裁は、賃借権の消滅時効を認め、賃借人をXとしたのです。

 即ち、

 (2)①X及びXの先代は、昭和38年6月ころから、本件係争地に旧建物を所有することにより、これを賃借地の一部として平穏公然に占有していること、②本件係争地を他の賃借地と一体のものとして賃料を支払ってきたこと、③昭和38年6月から20年を経過したことにより、本件係争地の一部についてXのために取得時効が完成し、これによりXは賃借権を時効取得し、④その反射として、Yは賃借権を失ったと判断し、第1審を変更して、Xの賃借権を認めました。

 賃借権の時効取得については、非所有者から賃借した者が、時効期間を超えて賃借した場合には、所有者と賃貸人とする賃借権を時効取得するというものでしたが、違和感が大きいため、それを事例はほとんどないようです。

 本件事案は、非所有者に対する賃借権の時効取得が問題とされた事例ではないため、賃借権の時効取得を認めても違和感がありません。

  私自身、珍しい事案と思ったため、ご紹介いたします。

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2007年9月 5日 (水)

NOVAとの間の外国語会話レッスンの受講契約を中途解約した場合、受講者は、入校時の単価で計算した受講料の残額を返還請求できるとされた事例(控訴)

 判例時報1971(9月1日)号に搭載されていた事案です。

 花子さんは、平成16年5月31日、勤務先近くのNOVA甲校において、レギュラーコースのレッスンポイント600ポイントを、79万2300円で購入し、受講契約を締結しました(600ポイントの場合、1ポイントは、1390円と計算されます。)。

 平成18年3月、甲校が乙校に統合され、勤務先から遠くなったことから、契約を解除しました。

 NOVAは、清算金として、26万0745円を返還しました。1ポイント1952円で計算しています。

 そこで、花子さんが、入校時の単価で計算すべきだとして、同社に対して、訴訟提訴しました。

 名古屋地裁平成19年2月15日は、同社の清算規定は、特定商取引に関する法律49条2項1号イの提供された特定継続的役務の対価に該当するものとは認められず、本件清算規定は、同条2項、7項に反して無効である、ポイントは、購入時の単価で計算すべきだと判断しました。

 この判断は、最高裁平成19年4月3日の判断に同旨のものです。

 昔、私が通っていた司法試験予備校で、講座を中途解約した場合に、現金で戻ってこずに、同予備校の商品券で清算する所がありましたが、今では、とんでもないことになりますね。 (T_T)

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2007年7月14日 (土)

戸籍上自己の嫡出子として記載されている者との間の実親子関係について不存在確認請求をすることが権利の濫用に当たらないとした原審の判断に違法があるとされた事例(最高裁平成18・7・7)

 判例時報No1966(7月11日)号搭載の事案です。

 花子さんと太郎さんは、昭和18年に、他人の子どもである一郎さんを、夫婦の実子として届け出を行い、以降、一郎さんは、花子さん夫婦の子どもとして養育され、太郎さんが亡くなった後は、家業の飲食店を承継していました。

 ところが、平成6年ころ、花子さんと一郎さんとが対立するようになり、花子さんは、一郎さんに対して、実親子関係不存在確認を求める調停を申し立てを行い、平成16年には、親子関係不存在確認の裁判を提訴しました。

 1審、2審ともに、花子さんの請求は、権利濫用にはあたるとはいえないと判断しました。

 しかし、最高裁は、

 上告人と被上告人との間で長期間にわたり実親子と同様の生活の実体があったことを重視せず、

 また、上告人が受ける精神的苦痛、経済的不利益、

 被上告人が上告人との実親子関係を否定するため再度調停を申し立てるなどした動機、目的等

 を十分検討することなく、被上告人において上記実親子関係の存在しないことの確認を求めることが権利濫用にあたらないとした原審の判断には、判決に影響を及ぼすことの明らかな法令の違反があるとして、破棄し、原審に差し戻しをしました。

 最高裁は、本件のような虚偽の出生届け出は養子縁組として有効であるとの考え方を否定しており、このような問題が相談にもちこまれると対応に苦慮していました。

 最高裁は、このような場合には、権利濫用により不存在の請求が認められない場合があることを判示したものであり、これにより、今後の同種の事件について、妥当な解決を図ることができるようになりました。

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2007年6月16日 (土)

私道(いわゆる2項道路)の所有者から近隣土地所有者等に対する通行権不存在確認・通行禁止請求が棄却された事例(東京地裁平成19年2月22日)(控訴)

 判例時報NO1963(6月11日)号搭載の事案です。

 私道をある特定の人物の通行を禁止したいという相談は、よく受けます。感情的な問題を孕んでいる事案が多いように思います。

 本件事案は、2項道路の所有者が原告となり、近隣の者が通行できないよう求めたものです。

 東京地方裁判所(平成19年2月22日)は、原告の請求が権利濫用にあたるとして、棄却しました。

 即ち、自己の所有地がいわゆる2項道路として指定され、当該2項道路に接することにより自己所有建物が建築基準法上の接道義務を満たしている場合には、その土地の所有者は、私法上、他人の通行権を一般的に否定したり、一般的な通行禁止を命ずる裁判を求めたりすることは、特段の事情のない限り、権利の濫用であって許されないと判示しました。

 その理由としては、

 道路は、本来公共の需要を満たすために存在するものであり、自己が建築確認を受けることができたのも、自己のみならず、他人の通行も許容し、その結果年の安全さ快適さを確保することを社会一般に対して許容したからなのであって、そのような者は、自己所有の2項道路を他人が通行することも受忍すべき地位にある

 と説明いたしました。

 なかなかおもしろい理由づけですが、控訴されているようです。

 話が変わりますが、ココログには、どういう検索で、このブログにたどり着いたのかがわかる機能がついています。

 今日は、「しまなみ 過払利息」、「過払利息 しまなみ」という検索が多くなっています。過払い金請求でも考えている人がいるのかな? 私の事務所では、計算書では、年5%としていますが、示談交渉では、過払い利息は勘弁して欲しいと言ってくる消費者金融機関も多いですね。過払い利息がかなり貯まっている事案では、うちも、なかなか妥協できませんが・・・・

 債務整理は、地元の弁護士に相談した方がいいとは思います。

 どんな法律相談も、直接面談が原則です。電話による相談可能というのは、手軽ですが、いろいろ問題を含んでいます。

 他方で、依頼者も、この弁護士さんがきちんとした知識をもっているのかどうかわからない、料金もよくわからないなどとの不安を抱いている方も少なくありません。地方の弁護士さんは、あまり広告やHPなどで宣伝をしませんから、なおさらでしょう。

 しかし、それでも、通常、相談料は、30分5250円ですが、直接弁護士と面談して納得の上、依頼される方がいいのではないかと思います。

 ただ、債務整理希望の方は、相談料の捻出も大変な方が多いですが、この場合には、市役所や裁判所で行われる無料法律相談を利用する方法もあります。

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2007年4月25日 (水)

学生納付金返還請求

 昨日は、アクセス数、なんと、6000近くありました。通常、400前後ですから、15倍です。

 どうやら、ヤフーニュースで紹介されたからのようですが、マイナーな分野の記事ですが、インターネットの力は、すごいですね。

 本日は、判例時報4月21日号(NO1958)に搭載られていた事案です。

 たぬき君は、しまなみ大学との間で、納付済みの授業料の返還を制限する特約の付された在学契約を締結しました。

 たぬき君は、大学に入学辞退に関する問い合わせの電話をかけた際に、大学の職員から入学式に出席しなければ入学辞退として取り扱う旨告げられたため、3月31日までに契約を解除することなく、入学式に欠席することにより契約を解除しました。

 たぬき君は、大学に納付した授業料の返還を求めましたが、大学は拒否し、裁判となりました。

 第1審、第2審は、ともに、解除が4月1日以降にされていることから、たぬき君を負けさせました。

 最高裁(平成18年11月27日)は、当該事案に於いては、大学が特約が有効である旨主張して、授業料の返還を拒むことができないと判断しました。たぬき君勝ちとなりました。

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2007年3月26日 (月)

遺言内容の記載された書面には遺言者の署名押印を欠き、検認時に既に開封されていた封筒には、遺言者の署名押印がある場合の遺言が、「自筆証書遺言」として無効とされた事例(東京高裁平成18年10月25日)

 判例時報平成19年3月21日(N01955)で紹介されていた事案です。

 今治太郎さんには、妻花子さんと、長男一郎、二男次郎、長女和子、次女恵子さんがいました。

 今治太郎さんは、自筆証書遺言を作成しましたが、その形態及び内容は、以下のとおりでした。

 カレンダーの裏面に書かれた書面封筒から成り、

 書面には、遺言者の署名・押印のいずれもなく、冒頭に、「遺言書」の標題、末尾に日付が記載されているほか、要旨として、①花子との共有にかかる不動産を、一郎に、②マンションを、次郎に、③和子、恵子には取得させないとされ、一部加入訂正された部分があるが、その箇所には、その旨の付記及び署名押印はされていませんでした。

 封筒には、表に、遺言書と記載され、裏面には、太郎の氏名及び封じ目に封と判読できる一文字が記載され、太郎の押印がなされていました。但し、検認時には、既に、開封されていました。

 この遺言の内容について、花子さんは納得がいかず、裁判所に、遺言無効確認請求訴訟を提訴しました。

 第1審の東京地裁は、加筆された記載部分のみを無効とし、それ以外は、遺言を有効と判断しました(花子まけ)。

 これに対して、東京高裁は、本件遺言は、全て、無効と判断し、第1審と180度結論を異にしました(花子かち)。

 東京高裁は、

 遺言内容の記載された書面に署名押印のいずれもない場合でも、当該書面の入れられていた封筒に遺言者が署名押印し、かつ、当該書面と封筒が一体のものとして作成されたと認めることができるのであれば、有効なものとして認めうる余地がある。

 しかし、本件事案においては、遺言内容の記載された書面とその検認時に既に開封されていた封筒が一体のものとして作成されたと認めることができない以上、民法968条1項所定の方式を欠き、自筆証書遺言として無効であると判示しました。

 地裁と高裁とで逆の結論になったようです。一郎さんは、最高裁に上告受理申し立てを行っているようです。

 このことから、どんな遺言でも、後日の無用なトラブルを避けるためには、専門家である弁護士に作成を依頼した方がよいということがわかります。

 

 当事務所では、遺言の作成(公正証書遺言をお勧めいたします)のほか、公正証書遺言の場合の立会人も、業務として行っております。秘密は厳守いたします。お気軽に、ご相談下さい。<(_ _)>

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2007年3月13日 (火)

マンションの一室の賃貸借契約に、賃借人が賃料を滞納した場合、賃貸人は、賃借人の承諾を得ずに建物に立ち入り、適当な処置をとることができる旨の特約があった場合において、マンションの管理会社が賃料を滞納した賃借人の部屋に立ち入る等をしたことが不法行為に当たるとされた事例

 判例時報1954号(3月11日号)に搭載されていた東京地裁平成18年5月30日に言い渡された判決についてです。

 平成15年12月に、今治太郎さんは、きつね次郎さんから、マンションを1部屋借りました。

 その際の契約書には、「賃借人が賃料を滞納した場合、賃貸人は、賃借人の承諾を得ずに本件建物に立ち入り適当な処置を取ることができる」旨の条項が入っていました。

 きつね次郎さんから、建物の管理を委任されたたぬき三郎は、今治太郎さんの未払い賃料が2か月に及んでいることから、賃貸借契約を解除した上、今治太郎さんの不在中に、建物の扉に鍵をとりつけたばかりか、本件建物の扉に施錠具を取り付けて本件建物を使用できないようにしました。

 そこで、今治太郎さんは、たぬき三郎に対して、本件立ち入りなどは不法行為にあたるとして、訴訟を提訴しました。

 裁判所は、特約条項について、「本件特約は、たぬき三郎が今治太郎に対して賃料の支払いや本件建物の退去を強制するために、法的手続によらずして、今治太郎の平穏に生活する権利を侵害することを内容とするものというべきところ、このような手段による権利の実現は、法的手続によったのでは権利の実現が不可能又は著しく困難であると認められる緊急やむをえない特別の事情がある場合を除くほかは、原則として許されないというべきであって、本件特約は、そのような特別の事情があるとはいえない場合に適用されるときは、公序良俗に反して、無効」と判断しました(確定)。

 裁判所は、今治太郎さんの主張を認め、慰謝料5万円を認容したのです。

 認容された金額は小さいですが、このような自力救済を認めるような条項は、原則的には、無効であることが、地裁レベルですが、確認されたわけです。

 契約に盛り込んでいるから、そのとおりやっていいと思っている大家さんは、気をつけましょう。

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2007年1月24日 (水)

「相続をさせる」趣旨の遺言による相続と代襲相続(東京高裁平成18年6月29日)

 判例時報No1949(1月21日号)の搭載のケースです。

 事案は、太郎さんが、その子である次郎さんに対して、相続財産の一部について相続させる旨の遺言公正証書による遺言をしたところ、先に、次郎さんが死亡し、太郎さんも死亡したため、次郎さんの子である三郎さんが、相続分について代襲相続したとして、相続財産について、相続した共有持ち分の確認を求めた事案です。

 原審は、代襲相続人が承継することはないという理由により、三郎さんの請求を棄却しました。

 私の感覚からすれば、当然という気持ちです。

 しかし、控訴審の東京高裁は、原審とは異なり、三郎さんの請求を認めました。

 私的には、 ??? です。

 判例時報の解説者も、「本判決は、相続させる遺言による相続に代襲相続を認めたもので、登記先例や裁判例とは異なる判断をした高裁段階の判例として紹介する。」と説明しています。

 上告受理の申立をしているようですが、難しいのではないかと思います。

 最近、高裁で逆転するケースって、私の周りでも少し増えているのではないかと思っています。

 原審で勝訴して、控訴審で敗訴した場合、依頼者に対して、どのように説明したらいいものか、悩むとことですね。

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2006年10月17日 (火)

妻及び子が居住する夫婦共有名義の不動産について、別居中の夫が妻に対してした共有物分割請求権の行使が権利濫用にあたるとされた事例(大阪高裁H17・6・9)

 判例時報NO1938号(10月11日号)搭載の判例です。

 夫(税理士)と妻との共有財産の自宅(共有名義2分の1ずつ)について、夫が妻に対して、本件自宅を競売にふした上で、代金分割の方法による共有物分割を求めたケースです。

 主要な争点は、このような夫からの請求が、権利濫用に該当するかどうかです。

 第1審は、夫の請求を認め、大阪高裁は、夫の請求を棄却しました。つまり、第1審と第2審とで結論が180度異なりました。

 大阪高裁は、

 各共有者の分割の自由を貫徹させることが当該共有関係の目的、性質などに照らして著しく不合理であるときには、分割請求権の行使が権利の濫用にあたると判断しました。

 この上で、

 ①離婚に伴う財産分与手続きであれば本件不動産を妻が単独で取得する可能性が高いこと

 ②夫は、減少傾向にはあるが、相当額の収入を得ており、それにもかかわらず、妻や精神疾患を有する長女を置き去りにして別居し、婚姻費用をほとんど負担せず妻を苦境に陥れていること

 ③妻らは、本件不動産の競売により退去を余儀なくされ、長女の病状が悪化する可能性がある上、本件不動産が担保に供されてることからその分割金では生計を維持できず、また、妻が高齢で通院治療を継続しており、稼動して収入を得ることも困難であって、経済的にも一層苦境に陥ること、

 ④夫の余命を考慮して本件不動産を処分して負債整理をすることについては、金融機関から競売の申し立てを受けておらず、負債整理の必要があるとしても会計事務所を再起に売却することも考えられ、妻らを苦境に陥れてまで本件不動産を処分しなければならない理由はないことなど

 を指摘して、権利の濫用に該当すると判断しました。

   第1審と第2審とで大きく結論の異なった、少し珍しい事例でした。

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2006年9月13日 (水)

生命保険契約の被保険者が自殺した場合において、うつ病に罹患していたことにより、自由な意思決定によって自己の生命を絶ったものとはいえないとして、保険金請求が認容された事例(大分地裁H17・9・8)

 判例時報1935号(平成18年9月11日)P158に、以下のケースが紹介されていました。

 Aさんが保険会社Yと間で、Aを被保険者、Xを保険金受取人とする生命保険契約を締結しました。

 契約締結後1年も経過しないうちに、Aさんが自殺しました。

 Xさんが、Y会社に対して、死亡保険金を請求しました。

 これに対して、Y会社は、契約締結後2年以内の被保険者の自殺は、約款により、支払い免責事由になっていることを理由に、支払いを拒絶しました。

 ☆よくある話です。

 そこで、Xさんは、Y会社に対して、保険金請求訴訟を提訴しました。

 確かに、約款上、契約締結後2年以内の被保険者の自殺については、免責事由となっています。

 しかし、「自殺」全てが免責事由となるわけではなく、裁判例によれば、自殺とは、被保険者が自分の生命を絶つことを意識し、これを目的とする行為に限られ、さらに、自由な意思決定に基づき意識的に行われた行為であることが必要であると、限定的に考えられています。

 そこで、Aさんの自殺が、自由な意思決定をすることができない状態であったといえるかどうかが問題となります。

 大分地裁は、以下のとおりの基準を定立しました。

 精神障害の程度影響などを個々的に斟酌し、精神医学上の見解を前提としつつ、

① うつ病罹患前の被保険者の本来の性格人格

② 自殺行為に至るまでの被保険者の言動及び精神状態

③ 自殺行為の態様

④ 他の動機の可能性等の事情

を総合的に考慮して、

 うつ病が被保険者の自由な意思決定能力を喪失ないし著しく減弱させた結果自殺行為に及んだものと法的に認められるとの判断が必要であるとしました。

 そして、その証明は、保険金請求者、即ち、Xさんにあるものと判示しました。

 本件ケースでは、Xさんの証明ができているものとして、Xさんが勝訴しました。

 ☆自殺だからといって、画一的に、免責されるわけではないことに注意しなければなりませんね。

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2006年8月13日 (日)

阿曽山大噴火コラム「裁判Showに行こう」

 阿曽山大噴火(あそざん・だいふんか)という芸人さん(?)が、裁判を傍聴し、その時の裁判の様子がおもしろおかしく紹介しているのが、おもしろおかしいため、紹介します。

 タイトルは、阿曽山大噴火コラム「裁判Showに行こう」 です。

 結構、詳細に描写しているのがすごいなあと感じました。一読の価値あります。

 いろいろなタイプの弁護士、裁判官、検察官、そして、被告人がいることがわかります。 (●^o^●) 

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 暑中お見舞いの訂正  <(_ _)>   

 私の事務所の夏休みを、17日から22日と紹介していましたが、正しくは、17日から23日の誤りですので、訂正してお詫び申し上げます。

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2006年8月 5日 (土)

奥入瀬渓流落木事故国家賠償請求事件

 判例時報1931号(平成18年8月1日号)に、興味を引いた裁判例が紹介されていました。

 事案は、以下のとおりです。

 花子さんが、奥入瀬渓流があることで有名な十和田八幡平国立公園内を散策していました。

 その際に、地上約10㍍の高さから落下してきたブナの枯れ枝(長さ約7㍍、直径18センチから41センチ)の直撃を受け、大怪我を負ってしまいました。

 そこで、花子さんは、事故現場を所有する国、現場付近に遊歩道を設置する青森県に対して、選択的に、国賠法2条1項、民法717条2項による、損害賠償請求を提訴しました。

 まず、県の国賠法2条1項の責任について、東京地裁(平成18年4月7日)は、

①本件事故は、県の設置する遊歩道内で発生した事故ではないが、事故現場付近に休息所を設置していたことから、事故現場含めた周辺一帯を遊歩道と一体として観光客らの利用に供していたとして、県の「営造物の管理に係るもの」と認定しました。

 その上で、

②県において事故現場付近に枯れ枝の落下があり得る旨の警告をしていなかったことなどから、「営造物の管理に瑕疵」があることを認め、

 県の責任を認めました。

 次に、国の責任については、ブナを、民法717条の竹木に該当することを前提に、その指支持に瑕疵があったとして、同条による国の責任も認めました。

 控訴されているようですので、控訴審の判断が楽しみです。

 皆さん、落石、落木には注意しましょう。

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2006年7月 5日 (水)

これってどうなの?

 この弁護士さんと同じ立場になったら、大変だなと思うケースです。

 弁護士X先生が、A社からB損保会社に対して、火災保険金請求訴訟を提訴したところ、

 第1審は、火災発生についてA社の故意又は重過失を認めることができないとして、A社の請求の一部を認めました。ここで、弁護士X先生は、少し安堵したと思います。

 ところが、第2審は、発生した火災が偶発的な災害であることの主張立証責任は、本件契約の約款に基づいて保険金を請求するものが負う旨判示して、その証明がないとして、A社の請求を棄却しました。弁護士X先生にとって、「えー」という気持ちで一杯だったでしょう。

 それでも、法令の解釈に関する重要な事項を含むものがあるという理由により、最高裁に上告受理申立を検討すべきだと思いますし、弁護士X先生も、同申立を行いました。

 ところが、最高裁第2小法廷は、平成16年5月28日、上告不受理決定をしたのです。

 他方で、同種の争点を含む別事件で、最高裁第2小法廷は、平成16年12月13日、火災保険の偶然性の立証について損保会社に負担させる判決を出しました。

 同じ最高裁第2小法廷なのに??? 

 弁護士X先生は、A社から、「なぜ上告が受理しなかったのか、上告が受理されるとだまして事件を受任したのか」と、非難され、顧問契約も破棄され、大変な苦痛を受けているようです。

 そこで、弁護士X先生は、自身が原告となって、裁判所(国)に対して、損害賠償請求を提訴しました。

 岐阜地裁は、いかなる事件を上告することを許容するかは立法裁量として、上告受理義務を否定して、請求を棄却しました(判例時報NO1928・平成18年7月1日号)。つれないですね。

 なぜ、最高裁は、上告を受理してくれなかったのか、不思議です。同様の別事件が係属していたのなら、なおさらです。

 これからの弁護士は、依頼者に説明するときは、極めて慎重なアドバイスに終始しないと、失敗に終わった際に、大変なことになる可能性があります。

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2006年6月11日 (日)

松山地裁・ヤミ金から受け取った金員について控除した判断

 いや、本当にびっくりしました。

 ヤミ金業者への返還請求に対して、松山地裁は、被害者が受領した金員について、損益相殺として控除してしまったのです。

 ヤミ金業者は言いたい放題したい放題で、弁護士ですらその対応に苦慮することがあります。名前をきいても、「くまだとらべえだ。」と嘯き、「お前の携帯の番号を教えろ」などと訳のわからないことを言います。

 警察にも相談にいっても、当初は、「ほっとけば」ということで、事件としては受け付けてくれないことが多く、逆に、警察から警察の相談者を紹介してくることも一時期ありました。

 松山地裁とは異なり、札幌高裁は、ヤミ金業者(年利1200%)が被害者に交付した金員については、保護にあたいしないとして、損益相殺を認めず、最高裁も、上告理由にあたらないとして、上告を棄却しました(平成18年3月7日決定)。

 高松高裁に控訴されるでしょうから、同高裁が上述の札幌高裁のような判断を示すことを期待するばかりです。

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2006年6月 4日 (日)

登記に表示された所在地番及び床面積が実際と異なる建物が借地借家法10条1項にいう「登記されている建物」に当たるとされた事例

 Xさんは、甲土地(甲)を競売により取得し、甲地上の建物(乙)に居住しているYさんに対して、所有権に基づく妨害排除請求として、建物収去土地明渡等を求めました。

 これに対して、Yさんは、借地権を主張しましたが、借地権をXさんに対抗するためには、乙建物が、借地借家法10条1項にいう、「登記されている建物」にあたる必要があります。

 ところが、登記上は、乙建物は、所在が ◎市●町65番地と表示され、床面積も、26.44㎡と表示されていますが、実際は、所在は、◎市●町24番地1、床面積も、約64㎡として大きく異なっており、このような登記でも、借地権の対抗力を有するかどうかが問題となりました。

 なお、競売の際に、執行官は、本件建物に登記がされていることを認識できなかったらしく、そのため、物件明細書には、本件建物は無登記であるから、借地権は買い受け人に対抗できないと記載されていました。

 地番が大きく異なるので、執行官もわからなかったのでしょうね。地番が異なった経緯は、「本件建物の登記における所在地番の表示は、Yさんが本件建物を取得した昭和34年当時は正しく登記されていたが、その後登記官が職権で表示の変更登記をするに際して地番の表示を誤った可能性が高い」ようでです。

 従来の最高裁は、食い違いが軽微であれば、建物の同一性を認めてきました。

 とすれば、地番や床面積が大きく異なるところからすれば、軽微とまではいえないと考えることもできなくはなく、これは、不動産取引の安全に資することにもなります。

 しかし、地番が変更したのは、Yさんのせいではなく、借地人のあずかり知らないところで、対抗力を失うのは、あまりにも、Yさんがかわいそうすぎます。(T_T)

 床面積は異なりますが、種類・構造は現況と一致していることから、同一性を失わせるようなものではないと考えられます。

 従って、最高裁判例のように、借地権の対抗力を認めてもよいと思われます(最高裁H18・1・19 旬刊金融法務事情1772号、判例時報1925号)。

 なお、この事案は、松山地裁→高松高裁→最高裁→高松高裁という流れになっております。

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2006年5月15日 (月)

インターネット上の商品の売買について注文者がサイト開設者の発信した受注確認メールを受信した時点では売買契約は成立していないとされた事例

 判例時報NO1922号(平成18年5月11日号)に、非常におもしろい記事が載っていました。

 マスコミで騒がれた事件ですので、記憶されている方も多いものと思われます。

 ヤフーが開設するインターネット上のショッピングサイトから、Yさんが、「パソコン1台あたり2787円」で売り出している表示がされていたことから、Xさんは、パソコン3台を注文するメールを送信し、ヤフーからは、受注確認メールが届いたものの、後日、Yさんから、表示が誤っていたため注文には応じかねるとのメールを受けたため、売買契約が成立したことなどを理由に、パソコン3台代金相当額(34万5000円)の支払いを求める裁判を提訴しました。

 控訴審東京地裁(平成17年9月2日)は、

 インターネット上の商品及びその価格を表示する行為は、申込ではなく、申込の誘因に該当する。

 ヤフーからの受注確認メールは、注文者の申込の意思表示の正確性を担保するものにほかならず、Yの承諾にはならない

 と述べ、当事者間の売買契約は成立していないと判断しました。

 私自身、漠然と、受注確認メールは、相手方の承諾と理解していましたが、そうではないらしいです。

 但し、受注確認メールに、納期が記載されている場合等は、承諾にあたるのではないかと考える見解もあるようです。

 皆様もお気をつけ下さい。

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2006年2月15日 (水)

相続が開始して遺産分割未了の間に第2次の相続が開始した場合において、第2次被相続人から特別受益を受けた者があるときの持ち戻しの要否(最高裁H17・10・11)

 本件事件は、A・B夫婦には、子どもが、Xさん、Y1さん、Y2さんがいました。 お父さんであるAさんが平成7年に死亡し、平成10年には、お母さんであるBさんが死亡しました。

 Xは、AさんとBさんの遺産について、家庭裁判所に、遺産分割審判を申し立てました(A・B事件は併合)。

 Aさんは、不動産を生前に所有していましたが、Bさん自身は、固有の財産はありませんでした

 XさんとY2は、お父さんであるAさんから、Y2は、お母さんであるBさんから、それぞれ特別受益を受けているものと主張していました(Y1のみ、お父さんお母さんから特別受益を受けていないようです。)。

 大阪高裁は、Bにかかる遺産分割については、Bには審判により分割すべき遺産は存在しないから、Bにかかる遺産分割審判の申立は不適法であるとして、また、Aにかかる遺産分割については、Aからの特別受益のみを考慮して具体的相続分を算出し、これに従って、Aの遺産を分割すべきと判断しました。

 この決定に対しては、Y1が許可抗告の申立を行い、これが許可されました。

 最高裁は、Bは、Aの相続開始と同時に、Aの遺産について相続分に応じた共有持分権を取得しており、これはBの遺産を構成するものであるから、これをBの共同相続人に分属させるためには、遺産分割手続を経る必要があると判示し、また、Bから特別受益にあたる贈与を受けたものがあるときは、その持ち戻しをして、各共同相続人の具体的相続分を算定しなければならないと判示して、原決定を破棄しました。

 本決定は、再転相続の実質として遺産説をとることを明らかにした初めての最高裁決定であり、実務上重要な意義を有するものと思われます旬刊金融法務事情1762号2006年2月15日P38以下)。

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2006年2月 2日 (木)

利息制限法所定の制限を超えて支払われた利息・損害金についての不当利得返還請求権の利息の利率(年5%)東京高裁H17・7・21

 事案は、個人であるAさんが、消費者金融機関B社に対して、過払い金を請求し、その際に、利息制限法所定の制限を超えて支払われた利息・損害金についての不当利得返還請求権における民法704条の「利息」の利率は、民事法定利率年5%であるか、商事法定利率年6%であるかが争われました。

 簡裁及び地裁は、年5%としました。

 上告され、上告審である東京高裁も、5%としました。

 この点についての最高裁の判例はなく、下級審では、両説が対立していました。

 上記東京高裁は、以下のとおり理由を述べております。

 「商法514条の適用又は類推適用されるべき債権は商行為によって生じた債権又はこれに準ずるものでなければならない。

 しかるところ、利息制限法所定の制限を超えて支払われた利息・損害金についての不当利得返還請求は、法律の規定によって発生する債権である。

 しかも、商取引における資金需要の繁忙と投下資本による高収入の可能性があることから法定利率を年5%と引き上げた立法趣旨からみて、上記の不当利得返還請求権をもって商行為によって生じた債権に準ずるものと解することもできない。」

 また、上告人は、民法704条における「利益」に受益者における運用益が含まれると主張する根拠として、最高裁昭和38・12・24を引用しましたが、本判決は、上記判例は本件とは事案を異にするものであって適切でないとして、排斥しました。

 この判示からすれば、損失者が商人の場合には、商事法定利率年6%と解する余地のあることが示唆されているかのようです。

 いずれにしても、年5%をとることを明らかにしたものとして、実務上重要な意味を有する判例です(旬刊金融法務事情1761号・2006年2月5日号P42)。

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2006年1月29日 (日)

融資の時点で短期間に倒産に至る破綻状態にある債務者のために締結した連帯保証契約は動機に錯誤があり、債務者が破綻状態でないことを信じて連帯保証する旨の動機も表示されているとして、連帯保証契約が要素の錯誤により無効とされた事例(東京高裁H17・8・10)

 事案は以下のとおりです。 

 X信用金庫が、塗装会社Aに対して、2500万円融資をしていたところ、Aの代表者の妻の義兄であるYが、Aのために連帯保証してしまったという事案です。よく聞く話だと思います。

 1審は、X勝ちとしましたが、2審は、X負けとしました。

 このように異なった結果になったポイントは、まず、およそ融資の時点で破綻状態にある債務者のために保証人になろうとするものはいないということ、第2に、Xは、Aが破綻状態にあることについて調査を行えば容易に知り得たということです。

 連帯保証を締結する際における金融機関側の調査及び説明についての警鐘を与えるものと考えられます。

 以上について、深く知りたい方は、旬刊金融法務事情1760号(2006年1月25日号)P30以下、参照してください。

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2006年1月24日 (火)

破産会社が破産の申立をすることを知りながら、破産会社の幹部が自らの利益を図って支払い停止に陥った破産会社から資産を取得した行為につき、不法行為の成立が認められた事例

 破産会社は、平成13年12月28日に支払停止となり、平成14年1月28日に破産の申立をして、同月29日に破産宣告を受け、破産管財人が選任されました。

 平成14年1月11日、破産会社の口座から、大金が、破産会社の幹部が経営する会社(関連会社)に送金されました。このお金は、関連会社の再建のために使われました。

 そこで、破産会社の管財人は、不法行為に基づく損害賠償を提訴したところ、東京地裁平成16年9月29日は、破産管財人との関係で不法行為が成立するとして、管財人の請求を認めました(判例時報NO1911H18・1・21)。

 判例時報によれば、財産隠匿行為を破産管財人に対する不法行為として損害賠償を認めた判例は他にはないらしいです。この判例は、管財人にとって、大きな武器になるものと思います。

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2006年1月14日 (土)

第三者異議の訴えに法人格否認の法理の適用があるか?

 判例時報1910号(H18・1・11)に、興味がひかれる判例が記載されていたので紹介します。

 事案は、Yは、ゴルフ場を経営するAに対して、預託返還請求訴訟を提訴し、勝訴判決を得た後、ゴルフ場内の動産について、強制執行の申立てをして差し押さえたところ、XがAの関連会社であるBから運営業務を委託されており差し押さえた動産はXの物だと主張して、Yに対して、強制執行の不許を求める第三者異議の訴えを提訴した事案です。

 1審2審とも、Xの法人格を否認した上、Xの請求を棄却しましたが、Xは不服として上告受理申立てを行っております。

 上告受理申立て理由は、昭和53年最高裁判例に違反するという理由です。

 昭和53年判例は、確定判決の執行力が法人格否認の法理により拡張されるものではないことを明らかにしております(なお、昭和44年判例は、法人格否認の法理によって、甲に対する判決の既判力や執行力が乙に及ぶものではない旨判示しております)。

 この判例を前提として、かつ、第三者異議の訴えの性格を、判決の執行力が執行対象財産に及んでいないことを理由に執行の排除を求めるものと捉えると、法人格否認の法理を適用して判決の執行力がXの責任財産に及んでいるとして請求を棄却することは、昭和53年判例に違反することになります。

 しかし、これでは、第三者異議を利用した執行妨害を容認することになり、妥当でないでしょう。

 そもそも、第三者異議の訴えの性格を、外観に基づき適法に開始された強制執行をXが受忍すべき地位にないことを理由に執行の排除を求めるものと解することができれば、ここに法人格否認の法理を適用して、Xが実体法上第三者として執行の排除を求め得る地位にあるとは認められないとして請求を排除することは、昭和53年判例に違反しません。

  最高裁(平成17年7月15日)は、後者の見解に立ちました。当然だと思います。

 

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2005年12月22日 (木)

遺言書の解釈

 Aには子どもがいなかったため、他人の子であるYを実子として養育する意図で、Aの嫡出子として届け出をだして、AとYとは長期間にわたり親子と同様の生活を営んでいました。 Aは、死亡する前に、以下の内容の自筆遺言を作成した。4項からなるもので、第1項から第3項については、Aの遺産のうち特定の不動産を特定の親族を指定して贈与する旨の記載がされ、第4項には、「遺言者は法的に定められる相続人をもって相続を与える」と記載されていました。

 Yは戸籍上実子ですが、真実は、実子ではないため、相続人は、Yではなく、Aの兄弟であるXらになります。

 原審は、第4項の解釈について、Aの遺産をAの法定相続人に相続させる趣旨の遺言であると判示しました。

 本判決は、遺言を解釈するにあたっては、遺言書の文言を形式的に判断するだけではなく、遺言者の真意を探求すべきであり、遺言書が複数の条項から成る場合に、そのうちの特定の条項を解釈するにあたっても、単に遺言書の中から当該条項のみを他から切り離して抽出し、その文言を形式的に解釈するだけでは十分ではなく、遺言書の全記載との関連、遺言書作成当時の事情及び遺言書の置かれていた状況などを考慮して、遺言者の真意を探求し、当該条項の趣旨を確定すべきであるとした。

 その上で、記録によれば、①Aは、その妻との間に子がなかったため、Aの兄夫婦の子Yを実子として養育する意図でA夫婦の嫡出子として出生の届け出をしたこと、②AとYとは、本件遺言書が作成されたころを含めて、Aが死亡するまで、実の親子と同様の生活をしていたとみられること、③本件遺言書が作成された当時、Yは戸籍上、Aの唯一の相続人(子)であったことなどがうかがわれるところ、AはYがAの相続人であると認識して本件遺言書を作成したものであり、その第4項の「相続人」とは、Yを指し、「相続を与える」とは遺贈の趣旨であると解する余地が充分にある旨、判示しました(判例時報1908号H17・12・21)。

 結果において、正当でしょう。

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2005年11月24日 (木)

税務過誤(大阪高裁H17・1・20)(上告)

 兵庫県の税理士さんがお客さんから相続税の申告依頼を受け、申告を行ったところ、相続税の納税猶予の特例を受けるために必要な書類の添付を失念してしまったため、お客さんが総額1億4000万円もの追加納税を余儀なくされたため、税理士さんがお客さんとの間で1億円強を支払うことにより示談したため、税理士さんが税理士職業賠償責任保険契約に基づき、大手保険会社に請求したところ、保険会社は免責主張した案件です(判例時報1905号139頁)。

 保険会社は、本来納付すべき税額については填補しないという免責約款に基づいて免責主張していていますが、高裁は、必要な書類を添付すれば猶予される相続税の全額が免除されるから、上記約款には該当しないと判断しております。

 私の弁護士賠償保険に入っていますが、保険会社が弁護過誤について免責を主張した場合には、非常に困りますので、税理士さんの気持ちがよくわかります。保険料も決して安くありませんから。しかし、1億円も示談でぽんと支払える税理士さんって、すごいですね。

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2005年11月20日 (日)

不法行為が使用者の「事業の執行につき」行われたものでないことを知らなかったことにつき被害者に重過失があるとされた事例(東京地判H16・9・24)

 平成12年7月ころ、消費者金融XがY1(大手都市銀行Y2に勤務する行員)に対して貸付けを行う際、Y1の所有不動産に設定予約された抵当権の被担保債権の残高を知るため、抵当権者Y2銀行からY1に対する残高証明書を徴求したところ、真実よりも少なく記載した残高証明書が提出されたため、Xがそれを前提に貸し付けたところ、その後、Y1が破産したため、Xの貸付金が債権不能に陥ったとして、Y1に対しては、民法709条(不法行為)により、Y2に対しては、民法715条(使用者責任)に基づいて、損害賠償を求めたケースです(判例時報1904号平成17年11月11日号)。

 当時、Y1は、顧客の預金の残高証明書を発行する権限はあったが、借入金の残高証明書を発行する権限はなかったようです。

 裁判所は、行為の外形から考えて事業の執行性については肯定するも、①偽造された残高証明書の債務の種類に関する記載が不明確であること、②同証明書に記載された残高が不自然に少額であること、③Xは貸金業者であることを考えると、知らなかったことについて重過失があるものとされました。

 金融機関同士の争いとなっていますが、この事案でXに重過失ありとされたのは、Xにとってかなり酷な結果だと思います。控訴されていないので、この結論のまま確定してしましましたが、重過失を認定した原判決を破棄したケースもあるようです(最判H6・11・22)。

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2005年11月15日 (火)

損害保険代理店が保険契約者から収受した保険料のみを入金する目的で開設した普通預金口座の預金債権が損害保険代理店に帰属されたとされた事例

 最高裁判所は、平成15年2月21日、損害保険会社Xの損害保険代理店であるAが、保険契約者から収受した保険料のみを入金する目的で金融機関に「X代理店A」名義の普通預金口座を開設したが、

 XがAに金融機関との間での普通預金契約締結の代理権を授与しておらず

 同預金口座の通帳及び届出印をAが保管し、Aのみが同預金口座への入金及び同預金口座からの払い戻し事務を行っていたという判示の事実関係の下においては

 同預金口座の預金債権は、Xではなく、Aに帰属すると判示しました。

 従来、損害保険代理店の保険料専用預金口座に係る預金債権については、保険会社に帰属するという説と、代理店に帰属するという説とにわかれていましたが、最高裁判所は、保険会社ではなく、代理店に帰属すると判断しました。

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2005年11月 4日 (金)

契約者の長男が放火した事案で、火災保険の請求が認容された事案(広島高裁H17・1・18)

 損害保険会社Yとの間で自宅を保険の目的とする火災保険契約を締結していたXが、同居していた長男A(当時18歳)の放火により自宅を焼失したことから、Yに対して火災保険の支払いを求めたケースです。Aには、精神状態に問題があったようです。

 大きな争点は2つあり、①AをXと同視できるかどうか、②Aの放火はXの重過失により発生したものかどうかです。

 第一審の山口地裁は、①について否定し、②について肯定しました。

 高裁は、①及び②いずれも否定したものです。

 ②の重過失の立証責任ですが、損害保険では、発生した事故が偶然な事故であることについて、保険金請求者が主張立証責任を負うとされていますが(最判H13・4・20)、損害保険であっても火災保険では逆転しています(最判H16・12・13)。つまり、Xにて、火災の発生さえ主張立証すれば、Yにおいて免責事由として重過失を立証しなければならなくなるのですが、しかし、なかなか、保険会社にて、重過失を立証することは困難ということですね。とはいっても、家を失い、さらに、そのような子の面倒をみなければならないXさんも、非常にお気の毒としかいいようがありませんが・・・

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2005年10月13日 (木)

建物賃貸借契約の終了時に保証金の一部を賃借人に返還しない合意が無効であるとして、賃借人の賃貸業者に対する保証金返還請求が認容された事例(神戸地判H17・7・14)

 四国でも敷金の敷き引き契約はよくみかけるが、神戸地裁は、消費者契約法10条により無効と判示した(判例時報1901号87頁)。

 消費者契約法10条(消費者の利益を一方的に害する条項の無効)を適用しているが、同法10条を適用した先例としては、自然損耗等につき賃借人に原状回復義務を負担させる旨の特約を無効としたもの(大阪高判H16・12・17)、大学受験予備校の講習受講契約及び模擬試験受験契約における解除制限特約を、同条項により無効であるとして、既払の受講料及び受験料の返還請求を認容したもの(東京地判H15・11・10)がある。

 大家さんや学校にとっては難しい時代となりました。

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2005年9月29日 (木)

東京地裁H16・6・2

 賃貸人が、賃借人の賃料不払を理由に建物賃貸借契約を解除した後に、建物の鍵を交換したことについて、違法な自力救済として不法行為が成立するとした上、賃借人に損害が生じたとはいえないとして、賃借人の損害賠償請求が棄却された事例

 なかなか、大家さんも大変なようです。

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2005年8月31日 (水)

ジェイメディア事件

 消費者問題ニュース(2005.7、NO107)には、ジェイメディア事件についての記事が登載されていた。同事件は、広告代理店であるジェイメディアが、中小商店等との間で、駅の電光表示広告などの使用契約を締結し、使用料の支払いは月払いであるにも拘わらず、その契約の全期間の使用料全額について中小商店等に信販会社との間でクレジット契約を締結させたが、その後に、倒産したことから、中小商店等は、広告を利用できないにも拘わらず、信販会社からクレジット残金の支払いを受けたものです。

 本案件は、広告代金についてのクレジット契約という事業者間の商行為に関することから、約款や割賦販売法の規定によっては、抗弁を対抗できない事案です。

 横浜地裁平成17年3月25日は、立替払い契約について、要素の錯誤を認め、仙台地裁平成17年4月28日は、信販会社の請求を信義則違反として認めなかった事例である。

 信販会社からはいずれも控訴されているが、難事件を原審で勝訴した意義は大きい。

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2005年8月16日 (火)

振り込め詐欺に関する裁判(東京地判H17・3・30)

 先ほど、送付されてきた判例時報(No1895・平成17年8月11日号)によれば、振り込め詐欺について、興味深い判例が紹介されていた。

 いわゆる振り込め詐欺の被害者が振込先口座の預金者に対する不当利得返還請求権を被保全債権として、同預金者の銀行に対する預金返還請求権を代位行使することが認められました。

 本件事案では問題にはなっておりませんが、債権者代位権を行使した結果として、金銭については債権者への直接支払いが認められているため、複数の被害者のうち一部が独自に訴訟を提訴して勝訴が確定すると、その者が全額の満足を得て、他方被害者が全く救済されず、いわば早い者がちを許すことにもなりかねません。将来はこの点についての改善策が必要であると思われます。

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2005年8月11日 (木)

保険会社による医療情報の取得手続に違法性はないとされた事例(東京地判H17・7・29)

 交通事故の被害者甲に対する損害賠償手続のため、加害者の任意保険会社乙社が、甲の同意書(「私は、貴殿が乙またはその指定する者に対して、以下に記載する事項を行うことについて同意します。」と記載されている。)、委任状(「診断書等の文書の請求、受領を、下記に委任します。併せて係る診療情報を受任者へ開示することに同意いたします。」と記載されている)に基づいて、乙社から委任を受けた調査会社である丙社が、医療機関(丁)から甲の医療情報を取得しようしたことの適否が問題となったケースです。

 東京地裁平成17年7月29日は、「乙は、これと雇傭関係にある従業員のほか、同事務を委託することが社会通念上合理的であるものと認められる他の会社の従業員についても、これを受任者と指定しうる」とし、丙については、「丙は乙との間で、被害者の診療情報等の目的外利用を禁止し、秘密保持の措置を講ずる旨合意しており」、また、「丙は・・・相応の信用を有」し、乙が「自らの責任において本件事務の受任者として指定することは、社会通念に照らして許容される」と判示しております(交通春秋社・交通事故判例速報・NO470・P2)。

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2005年8月 3日 (水)

敷金返還(大阪高判H16・12・17)

 判例時報平成17年8月1日号に、興味深い裁判例がありましたので、ご紹介いたします。

 建物の賃貸借契約における自然損耗及び通常の使用による損耗について賃借人に原状回復義務を負担させる旨の特約は、消費者契約法10条に該当し、無効であるとされております(大阪高判H16・12・17)。

 

 

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2005年7月28日 (木)

受講料の返還(東京地判H17・2・16)

 平成17年7月21日付判例時報で、興味深い裁判例が掲載されていたので、紹介します。

 事案は、外国語会話教室に入学した者が、途中にて解約した場合、返還すべき受講料のポイント単価を契約当初の単価よりも高額なものとする約款により、返還すべき受講料は存在しないというものでした。

 東京地裁は、この約款は、特定商取引法49条に違反するから、受講料の返還を認めています。

 

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