公証人役場で離婚の際に養育費の取り決めをされるケースは、弁護士をしていれば、日常的な業務でよく遭遇します。
養育費を取り決める際に、公正証書を作成する最大の目的は、義務者である相手方が養育費を支払わなくなった場合に、給料等を差し押さえて(直接強制)、養育費を回収するということにあります。
ご相談者から依頼を受けて、給料の差押えや、預貯金の差押えというのは、一般的な業務の1つといえます。
しかしながら、公正証書や裁判所で作成された調停調書等の債務名義をもっていても、相手方が支払わず、しかも、差し押さえたとしても、空振りに終わるということも、決して少なくありません。
しかも、仮に調停や審判書で養育費を取り決めしたとしても、将来分については、消滅時効は、10年ではなくて、5年ですので注意が必要です(★これ、多分、田舎弁護士レベルの弁護士10人いれば5人は、10年と回答すると思います。弁護過誤になりそうです。)。
債務名義をもっているにもかかかわらず、相手方の財産状況がわからず、相手方の財産を差し押さえることができないという場合には、どのように対応したらいいのかが問題となります。
第1は、財産開示の申立てです。
公正証書の場合でも、令和2年4月1日から、財産開示制度が利用できるようになりました。
ただ、この制度を利用するためには、一度強制執行に失敗しているか、知れている債務者の財産に強制執行をしても完全な弁済を得られないことを要件としております。
そして、財産開示命令が出ても、相手方が隠さずに申告しているかどうかは債権者側にはわからないこと等から、田舎弁護士の場合は、財産開示申立ては、10回以上行いましたが、この制度によって、債権回収ができたということは過去ありません。
財産開示制度以外の、情報取得手続としては、3つあります。
1つめが、預貯金・振替社債等の情報開示の申立てです。
これは、債務者の普通裁判籍の所在地を管轄する地方裁判所、この普通裁判籍がわからないときは各金融機関の本店の所在地を管轄する地方裁判所ということになります。
ただし、この制度を利用すると、債務者に対して情報の提供がされた旨の通知がされるために、それ以前に差し押さえる必要があります。
2つめが、不動産に係る情報開示の申立て、3つめが、給与に係る情報開示の申立て、ですが、いずれも、先行して財産開示手続が実施されていることが要件となっております。
以上の制度を前提にすると、きちんとした会社等に勤めている相手方であれば、強制執行により養育費を回収できる可能性はありますが、田舎弁護士も度々経験しますが、点々として勤務先がわからないような方の場合には、養育費の回収は至難の業としかいいようがありません。
(弓削)
養育費を受け取れない家庭への公的支援については、「養育費・紺品費用事後対応」(令和3年7月)では、①国による養育費立替払い制度は、検討はされているようですが、実現まではいっていないようです。②自治体独自のものとしては、大阪市、港区では、民間会社が養育費保証サービスについて保証料の助成を行っているようです。③明石市では、あの有名市長の下では、1か月分に限り最大5万円を市が立て替えて支払うこと、明石市にて相手方に支払い催促がされるという制度があったようです。
なお、現在、家族法制の見直しの1つとして法定養育費が国会で審議されているところですが、これがとおれば、先取特権の効果として、担保権実行としての債権差押えが可能ということになります。もっとも、金額は、審判で定められる金額よりは低額になろうと思います。
最近では、国や自治体でも頑張っているとは思いますが、それでも、養育費は踏み倒す不届き者がいます。
支払えるのに支払わない、支払う能力があるにに支払わない不届き者は、最終的には、財産開示制度と同様に刑事罰をもって対処すべきだと田舎弁護士は思います。
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