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【相続】

2025年1月17日 (金)

【相続】 選任審判主文に掲げられた案文どおり遺産分割協議を成立させた特別代理人に、善管注意義務違反がないとされた事例 東京地裁令和5年9月22日判決

 このブログでも、昔、選任審判主文に掲げられた案文どおり遺産分割協議を成立させた特別代理人に賠償責任が求められた岡山地裁・広島高裁岡山支判の裁判例を紹介させていただいた記憶があります。

 今回は、特別代理人の責任を否定しました。

 裁判所は、まず、特定の遺産分割協議書案のとおり遺産分割協議をすることについての特別代理人を選任する旨の家庭裁判所の審判は、特定分割案のとおり遺産分割協議をすることが被後見人の利益を保護する観点から不相当ではないことを前提とすること、遺産分割は特別受益等を考慮して定められる具体的相続分を基準としてされるものであり、相続人である被後見人の死崇徳文がその法定相続分又は指定相続分に満たないような遺産分割協議であっても直ちに被後見人の利益を保護する観点から不相当であるとはいえないことからすると、

 特別代理人が特定分割案のとおり遺産分割協議をすることは、そのことが合理性を欠くと認めるべき特段の事情がない限り、特別代理人としての善管注意義務に違反するものではないと基準を示しました。

 そして、裁判所は、本件の特定分割案は、弁護士及び税理士が関与して作成され、Zの全ての遺産及びその分割方法が個別具体的に記載されていること、

 Xの法定相続分は25%であるのに対して特定分割案を前提とするXの取得割合は約19%であることを踏まえれば、

 特別代理人として選任され法律や会計に関し専門的な知識・知見を有しないYにおいて、Zの生前の事情などを考慮すれば遺産分割においてXの取得分が少なくなることも不当ではなく、特定分割案の内容は相当であると考えて特定分割案どおり遺産分割協議を成立させたことが合理性を欠くとうことはできないとして、Yには善管注意義務違反はないと判断しました。 

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(楢原山)
 岡山との事例の違いは、岡山は遺産の取得は約3%に取得に過ぎないこと、岡山の特別代理人は弁護士であったこと、岡山では遺産の漏れがあったこと、岡山では選任審判後に遺産分割協議が変更され再度の選任審判がされたことの違いがあるようです。

2024年12月26日 (木)

【相続】 配偶者短期居住権の新設 令和2年4月1日~

 民法改正により、配偶者は、被相続人の財産に属した建物に相続開始の時に無償で居住していた場合には、最低6か月の期間、その居住していた建物の所有権を相続又は遺贈により取得した者に対し、居住建物について無償で使用する権利を有するとの規定が設けられ、この利用権を、配偶者短期居住権と言います。令和2年4月1日から施行されています。

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                  (ニケル・蝦夷鹿ロース低温ローストとプラムのコンポート)

 配偶者短期居住権は、配偶者が、被相続人の財産に属した建物に相続開始の時に無償で居住していれば、当然に取得されます。

 存続期間については、例えば、居住建物について配偶者を含む共同相続人間で遺産の分割をすべき場合は、遺産の分割により居住建物の帰属が確定した日 又は、相続開始の時から6か月を経過する日の、いずれか遅い日までとされています。

 配偶者短期居住権は、遺産分割における遺産の評価、相続分に影響を及ぼすことはありません。

 20241221_194941                             (甘鯛のポアレ)

 先日、東陽町のニケルを訪ねました。クリスマスプランで、いつもの倍ほどの値段がします😅

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                           (国産牛フィレステーキ)

 いつもより美味しくいただけましたが、財布は軽くなってしまいました。

 

2024年12月25日 (水)

【相続】配偶者居住権の新設(令和2年4月1日~)

 先日、新日本法規の方が新書を持参されましたので、令和6年9月に出版された説例解説遺産分割の実務を購入しました。

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(ニケル・一口オードブル盛り合わせ) 

 平成30年の改正において、被相続人の配偶者は、被相続人の財産に属した建物に相続開始の時に居住していた場合に、遺産分割又は遺贈により、その居住していた建物の全部について無償で使用及び収益をする権利を取得する旨の規定が新設されました。この配偶者が取得する権利を、配偶者居住権と言っています。令和2年4月1日から施行されています。

 第1に、遺贈・遺産分割による配偶者居住権を成立させるためには、(ア)配偶者が相続開始時に遺産である建物に居住していること、(イ)当該建物が被相続人の単独所有あるいは配偶者との2人の共有であること、(ウ)遺産分割、遺贈又は死因贈与がされることが必要です。

 第2に、審判による配偶者居住権が成立させるためには、前記(ア)(イ)に加えて、A共同相続人間に配偶者が配偶者居住権を取得することについて合意が成立している場合、または、B合意がない場合には、配偶者が家庭裁判所に対して配偶者居住権の取得を希望する旨を申し出た場合において、居住建物の所有者の受ける不利益の程度を考慮してもなお配偶者の生活を維持するために必要があると認めるときに、限定されています。 

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(太刀魚エスカベッシュ アメーラトマト)
 問題は、配偶者居住権の財産評価ですが、評価の方法としては、2通りあるようです。
 1つめが、居住建物の賃料相当額から配偶者が負担すべき通常の必要費を控除した価額に存続期間に対応する年金現価率を乗じた額とする方法(還元方式)
 
 2つめが、居住建物及びその敷地の価額からは配偶者居住権の負担付きの各所有権の価額を引いた額とする方法
 還元方式は難解であるため、調停では、後者の評価方法が採用されているとのことです。
 説例の事案では、土地建物の価額が4000万円の場合、配偶者居住権の評価は約1300万円程になっております。
 押さえておく必要がありますね。

2024年12月 1日 (日)

【相続】限定承認の利用

 限定承認という制度は、プラスの財産の範囲内でマイナスの財産を引き継ぐという制度で、バラ色の制度のように思われますが、実際の利用件数は非常に少ないです。

 少し古いデータですが、2018年の実績で、相続放棄が21万件であるのに対して、限定承認は700件程度です。

 ネックになっているのは、限定承認制度が清算手続を予定しているためにかなり面倒(1年~2年程かかります)という点に加えて、故人から相続人への相続財産の時価による譲渡とみなされ含み益は譲渡所得として課税される(しかも、相続開始を知った日から4か月以内に申告をする必要があります)というデメリットがあります。

 田舎弁護士の経験でも、10件程度の申立てです。しかも、いずれも相当に面倒でした😅

 ただ、最近は、毎年のように1件程度のご相談や依頼が続いております

 限定承認を選ぶ動機としては、①プラスの財産、マイナスの財産がいくらなのかよくわからない場合、②先祖代々の実家のようにどうしても残したい不動産がある場合、③次の順位の相続人に迷惑をかけずに自分たちの代で処理したい場合などがありました。 

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(笠松山・野々瀬奥登山口)
限定承認については、以下の11のステップを踏む必要があります。
1.相続財産・負債の調査
2.限定承認の熟慮期間の延長(必要であれば)
3.相続人全員に連絡
4.申述書と相続財産目録の作成
(家裁へ)
5.限定承認の申述
6.限定承認申述受理の審判
7.相続財産清算人の選任
8.債権申出の公告・催告  (限定承認者5日以内、相続財産清算人10日以内)
9.鑑定人選任の申立
10.請求申出を行った相続債権者・受遺者への弁済
11.残余財産の処理等
 限定承認を利用するに際して、いくつか注意点があります。
 第1に、相続財産・負債の調査ですが、弁護士に依頼されたからといって、100%完璧な調査ができるかといえば難しいところがあります。
 第2に、清算手続に関する弁護士費用については、相続財産から支弁できず、限定承認者自身の負担となります。
 第3に、官報広告費用(数万円)が発生します。これは相続財産から支払うことが可能です。
 第4に、準確定申告が必要です。
 第5に、相続財産を責任の限度としての負担が継続します。

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(野田古墳)
 ただ、辞めてもらいたいのは、弁護士の中には、限定承認を勧めるものの、実際の清算手続は本人に委ねるパターンです。結局のところ、民法が予定手続は踏んでおらず、そのまま放置されてしまっていることが散見されます。

2024年10月30日 (水)

【相続】 不動産の共有持分権を放棄した場合、放棄された共有持分権はどこにいくの??

 親が有している共有名義の不動産なんて相続したくないので、なんとかならんやろかという相談を受けることがあります。

 参考になる条文が民法255条です。

 民法第255条 共有者の一人が、その持分を放棄したとき、又は死亡して相続人がないときは、その持分は、他の共有者に帰属する。

 親が生存しているのであれば、共有持分の放棄という手法が考えられます。しかしながら、不動産の共有持分の放棄を単独で行ったとしても、放棄の登記をしなければ、固定資産税の課税を免れる(地方税法343条2項)ことができません。

 固定資産税は、台帳課税主義となっているため、民法上の効果とは別の扱いとなります。

 即ち、登記実務上は、持分権の移転登記を行う必要がありますが、持分権の移転登記は、他の共有者との共同申請で行わなければなりませんが、まず、他の共有者は協力してくれません。そうなると、登記引取訴訟を提訴するということになります。

 めんどう~ですね😅

 では、親が死亡した場合で、相続放棄した場合はどうなるのでしょうか?

 民法第255条によれば、死亡して相続人がないときは、その持分は、他の共有者に帰属するとされています。

 あっ、これで、他の共有者の物になるんだ~と思いがちですが、直ちにはそうなりません。

 他の共有者に帰属させるためには、「死亡して相続人がないとき」、すなわち、「相続人不存在」であることが確定する必要があります。

 理屈上、遺言書で認知している可能性、死後認知の訴えを起こす可能性、相続人が胎児(戸籍記載前)の可能性、何らかの事情で戸籍に記載されていないなどの可能性があるからです。

 すなわち、相続財産清算人の申立を行い、所定の手続を経て、共有持分が残ったら、他の共有者に帰属することになります。😅

 やれやれですね😵 

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(重茂城跡)

 

 

 

 

2024年10月28日 (月)

【相続】 金融取引法研究会 遺言に基づく預金の払い戻し 

 銀行法務21・10月号の金融取引法研究会のレポートです。金融機関に勤務、あるいは勤務していた多くの弁護士による座談会です。

 Aの甲銀行にある預金のすべてをBに相続させる Cには一切の財産を相続させない という検認済みの自筆証書遺言書があった場合、Bから払戻請求を受けた場合の、銀行の対応が問われています

 個別テーマとしては、遺言に争いがあるかの確認をするかどうか、預金の払い戻しに応じるか否かの判断要素、遺言が有効か否かの判断要素、遺言の無効を主張している相続人へのアプローチの是非、弁済供託の可否について、多様な意見がでております。

 あ~でもない こ~でもない というようなお話が続いています。

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                           (ニッコウスタイル名古屋)

 結論ではなくて、「事例に対する考え方」がまとめられています。

 以下、引用します。

「① 本事例においては、甲銀行の担当者は、預金の払戻前に遺言に争いがあるかないかを聴取し、潜在的な紛争リスクの有無を確認している。もっとも、本事例と異なり、申出の時点で紛争性をうかがわせる事情がない場合、あえて紛争の有無を聴取しない対応もありうる。

 ② 甲銀行として、遺言の有効性を判断するためには、遺言における筆跡や遺言の内容のほか、甲銀行が保有している取引履歴等の情報を確認することが考えられる。

 ③ 預金の払い戻し前に、遺言の無効を主張している(とされる)Cに接触するか否かも論点となる。本事例では、あえて接触するメリットは小さいと思われる一方で、事後的な紛争リスクを逓減する観点で、Bの意向も確認しつつ、Cに接触することも選択肢の1つとなりうる。」

 肝にめいじておきますね😅

 

2024年10月25日 (金)

【相続】「法定相続人情報」 と 「法定相続情報一覧図」 って、同じものなの???

 先日、田舎弁護士が恥ずかしい思いをしました。

 「法定相続人情報」のことを、「法定相続情報一覧図」と同じものと誤解してしまい、それを前提にしたアドバイスをしてしまいました😅

 「法定相続人情報」とは、法務局における長期相続登記等未了土地解消作業の一環として行われる相続人調査により判明した相続関係を、一覧図として記載した書類です。土地の所有者の法定相続人を家系図のような図に表したものです。

 他方、「法定相続情報一覧図」とは、被相続人の相続関係を一覧にした家系図のようなもので、相続関係を1枚にまとめそれを法務局の登記官が証明したものです。法定相続情報一覧図が1枚あれば、戸籍謄本の代わりに相続関係を証明できるようになり、相続登記や預金の解約などの相続手続の負担が軽くなります。

 全く異なるものですが、名前が類似していたために、誤解してしまいました。

 ただし、長期間相続登記未了である旨の登記がされた土地について相続登記を申請する際に、「作成番号」を提供することで、通常は相続登記に必要な一定の戸籍や住民票を省略することができるというメリットがあります。

 「法定相続情報一覧図」は、被相続人の相続関係を一覧にしたものであり、それを作成するためには、全ての戸籍が必要になります。

 他方、「法定相続人情報」は、作成番号を提供すれば、戸籍類が法務局に存在することから、一定の戸籍・住民票は省略が可能ということになります。

 この「法定相続人情報」ですが、長期相続登記等未了土地解消作業の一連の作業の1つですが、所有者不明鳥の利用の円滑化等に関する特別措置法(平成30年法律第49号)第44条に基づいて実施されています。

 なお、この作業の後に、探索により判明した法定相続人に宛てて法務局から必要な登記手続を促す通知文書が送付されることになります。

 この辺りのお話については、法務局の「長期相続登記等未了土地解消作業により判明した法定相続人への通知」を参照して下さい。

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(フジ今治)
 紛らわしいので、田舎弁護士のスタッフにも説明しておきたいと思います😅 

2024年10月 5日 (土)

【相続】 遺言により相続分がないものと指定され、遺留分侵害額請求権を行使した相続人は、特別寄与料を負担するか?

 判例タイムズNo1523号に掲載された最高裁令和5年10月26日決定です。

 Aの相続人は、子であるB及びYの2名であり、Xは、Bの妻です。

 Aは、財産全部をBに相続させる旨の遺言をしていたところ、同遺言は、Bの相続分を全部と指定し、Yの相続分をないものと指定する趣旨を含んでいました。

 Yは、Bに対して、遺留分侵害額請求権を行使する旨の意思表示をしました。

 Xは、Yに対して、民法1050条に基づき、特別寄与料のうち、Yが負担すべき額として相当額の支払いを求めました。

 最高裁は、「民法1050条5項は、相続人が複数ある場合における各相続人の特別寄与料の負担割合について、相続人間の公平に配慮しつつ、特別寄与料をめぐる紛争の複雑化、長期化を防止する観点から、相続人の構成、遺言の有無及びその内容により定まる明確な基準である法定相続分などによるものとしたものと解される。

 このような同項の趣旨に照らせば、遺留分侵害額請求権の行使という同項が規定しない事情によって、上記負担割合が法定相続分などから修正されるものではないというべきである。

 そうすると、遺言により相続分がないものと指定された相続人は、遺留分侵害額請求権を行使したとしても、特別寄与料を負担しないと解するのが相当である」 

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(朝倉・野田地区)
 遺留分侵害額請求をされたので、その対抗策だったのでしょうかね😅

2024年8月30日 (金)

【相続】 いわゆる使途不明金問題

 ここ数年、遺産分割調停期日で、例えば、相手方のうち1名が、被相続人と同居していた申立人は、被相続人の生前、被相続人の預貯金を勝手に払い戻していると主張されるようなことが増えました。

 田舎弁護士も、多くはありませんが、過去、10件程度取り扱ったことがあります。

 ただ、よほどしっかりした客観的な証拠がなければ、使途不明金事案では、請求する方がなかなか厳しいなというイメージがあります。

 使途不明金事案は、本来は、遺産分割の問題ではありません。

 しかし、遺産分割調停期日の際に、調停委員会は、期日の回数にめどをつけるなどをして、当事者から確認して調整することが多いように感じます。

 その際に合意ができればいいのですが、できない場合には、別途、民事訴訟等の手続で解決を目指すということになります。

 その際にジレンマに陥ることがあります。

 遺産分割の調停・審判では、特別受益の主張をしている場合です。この場合、別途、民事訴訟を提訴した場合に、両者の関係が問題になります。

 これについては、Q&A遺産分割の手引きP162では、本来両立するものではなく、別訴が提起された場合には、特別受益の主張を撤回してもらい、特別受益を考慮せずに分割することになるという見解が紹介されています。

 この問題についての解説については、相続・遺言相談室の森法律事務所のHPがわかりやすく解説されています。

 この種の事案は、自分のものではなくて、親の財産なので、そこまで感情的に対立しなくてよいと思うのですが、現場では、非常に感情的な対立に発展してしまっていることが多いように感じます。

 先立つ親がきちんと遺言書なり紛争が大きくならないように手段を尽くしておくことが望まれます。 

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(松山・福見寺)

 

 

2024年8月11日 (日)

【相続】 不動産の所有権の登記名義人が死亡し、相続が発生しました。不動産登記法上どのような申請をしなければなりませんか?

 新日本法規から出版された「令和5年4月施行対応民法等改正実務ポイント」です。

 不動産登記法の改正により、相続や遺贈により不動産を取得した相続人は、自己のために相続の開始があったことを知り、かつ、その所有権を取得したことを知った日から3年以内に、相続登記の申請をすることが義務付けられました。

 令和6年4月1日から施行されています。改正法の施行日前に発生した相続に対しても適用され、施行日である令和6年4月1日から3年以内に相続登記を申請する義務が生じます。

 3年以内に遺産分割の内容を踏まえた相続登記の申請が困難な場合には、①相続人申告登記をするか、②現行法の下でもある法定相続分での相続登記を行い、遺産分割が成立した後、遺産分割成立日から3年以内に遺産分割の内容を踏まえた相続登記の申請を行うことになります。 

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(松山・日浦)
 司法書士の先生方は、特需がきているのではないだろうか😅
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