判例時報No2600号に掲載された東京高裁令和5年8月2日判決です。
Xは、自己の親族間のトラブルに対するY(大田区)の職員の対応に疑問を抱いたことなどを契機として、遅くとも平成30年には、大田区情報公開条例に基づく公文書開示請求等を通じて、Yの職員の行為を調査し、ブログ記事を掲載するようになりました。
Xは、令和2年3月、Y議会議員の一人が掲載した、Yの健康政策部感染症対策課のA課長が区議会予算委員会で失礼な発言をしたと非難するブログ記事を見て、A課長に注目し、A課長の出勤簿等の公文書開示請求をしたほか、同課への訪問、電話連絡及びメール連絡をするようになりました。
その後、Xは、感染症対策課への訪問の際のA課長や職員の対応について、A課長の謝罪を執拗に求め、同課に関わる大量の公文書開示請求を行い、A課長が要求に応じて謝罪をすると公文書開示請求を取り下げるなどしました。また、他部署に対しても同様に公文書開示請求やその取り下げを行いました。
令和2年12月10日、Yの総務課長は、Xに対して、新型コロナウイルス感染症が再拡大する中で、公文書開示請求等に関連する問い合わせが長時間に及び、業務運営に滞留が生じていることなどを理由に、公文書開示請求に関する問い合わせ等は書面等に限定する旨の通知をしたところ、
Xは、同月15日に、感染症対策課が管理している文書目録に記載されている以外の文書について、
同月16日に、Xの問い合わせにより業務に滞留が生じたと健康政策部が判断した証拠が分かる文書について、
同月17日に、新型コロナウイルス感染症に関して感染症対策課が受発信した文書などについて、
対象の特定が困難で分量も多数に及ぶ公文書開示請求や個人情報保護条例に基づく自己情報開示請求を立て続けに行いました。
令和2年12月23日、Xは、対象文書を「感染症対策課職員の超過勤務命令簿(残存するもの全て)」として、感染症対策課が管理する公文書の開示請求をしました。
Xは、本件開示請求後も、感染症対策課に対して、本件開示請求等に関連してYが発した書面等に関して、対象文書が広範囲かつ大量になる可能性のある請求内容の公文書開示請求及び自己情報開示請求を繰り返し、街宣活動や謝罪要求を繰り返し、A課長を論難するブログ記事を掲載するなどをしました。
Y区長は、情報公開・個人情報保護審査会の意見を聴いた上で、令和3年6月11日、本件開示請求は本件条例の目的お寄り利用者の責務に適合しないとして、本件条例9条3項に該当することを理由に、本件開示請求に係る公文書を開示しない旨の本件非開示決定をしました。
Xは、本件非開示決定を不服として、Y区長に審査請求をし、その棄却採決が出る前に、本件非開示決定の取消し及び本件開示請求に係る公文書の開示決定の義務付けを求める本件訴えを提起しました。
第1審は、本件開示請求は、本件条例の目的及び利用者の責務に反していると認められるから、本件非開示決定は適法であるとしえt、区分所開示決定の義務付けを求める部分を却下し、その余の請求を棄却したところ、Xは控訴しました。
第2審は、開示請求は開示を求める文書の所轄部署に対し優位な地位を得たり自己満足を得るために行われたものであること及び開示のための作業量が所轄部署の業務に支障を及ぼす態様のものであることから、当該開示請求は、権利行使として相当なものとはいえず、条例の目的及び利用者の責務に反しているとして、適法と判断されました。
なお、Xは、最高裁に上告・上告受理申立てをされていますが、最高裁においても、第2審と同様の結論となっております。
(星ヶ森)
最近のコメント