昨年から、定期借家における終了通知を失念し、期間満了後も従前同様に賃貸借契約が継続しているかのようなケースについてのご相談が増えております。
ご承知のとおり、定期借家は、普通借家と異なり、更新がない契約で、期間が満了すれば確実に契約が終了するものです。もっとも、契約終了を知らせる通知(終了通知)がないと、契約が終了しないのと同じような状態が事実上継続します。
契約期間が1年以上ある定期借家の場合は、借地借家法38条4項に従い、期間満了の1年前から6か月前の間に、終了通知を行う必要があります。
契約終了の通知がない場合には、契約終了を賃貸人に対応できないことになります。従って、賃借人は、契約期間が満了した後においても、建物から退去しなくてよいことになります。
従って、終了通知は非常に大事な手続となります。
なお、終了通知については、口頭でもOKですが、後日争われる可能性があるため、内容証明郵便又通知する書面を賃借人に渡して受領印を貰うという方法をとることをお勧めいたします。

(イースト21・日の出)
問題は、契約期間満了後に終了通知をした場合です。統一的な見解は解説書などを見る限り現時点ではなさそうです。
第1説は、契約期間中の終了通知と同じように、通知から6か月で明渡請求ができるようになるという見解です。
第2説は、新たな賃貸借契約(普通借家)が始まるので、終了通知をしても意味が無い(明渡ができない)という見解です。
新日本法規Q&A定期借家権(平成12年)には、どちらの説をとるべきかはにわかに決し難い問題としつつ、現在のところは、第1説が有力とされております。但し、第1説の立場でも、貸主が期間満了後も、長期間、借家人に対して、建物の明渡しを求めず、賃料を受領している状態が継続している場合には、黙示の意思表示により、新たに、普通借家契約が成立しているとみなされることがありますので、ご注意下さいと書かれています。
(イースト21・プールガーデン)
大家から相談を受けた弁護士としては、契約期間満了後であっても、家主に対しては、まずは、終了通知の有無を確認し、万が一、終了通知をしていなければ、速やかに終了通知を内容証明郵便で行うようアドバイスをします。
すでに終了通知をしている場合には、そこから6か月経過すれば退去するよう、内容証明郵便にて、退去の通知を送ります。
それでも、退去をしない場合には、裁判所に調停の申立てか訴訟の提訴を検討するということになります。
先も述べたとおり、大家にとって有利な第1説を採用したとしても、長期間、借家人に対して、建物の明渡しを求めず、賃料を受領している状態が継続している場合には、新たに普通借家契約が成立したとされる裁判例がありますので、専門家に相談の上、迅速な対応が必要です。
また、第2説のように普通借家が成立するという見解もあり、現在のところ統一的な見解がないことからすれば、専門家である管理会社には、期間内での終了通知を失念しないよう、十分な注意が必要ではないかと思います。
第2説の普通借家が成立するという見解を裁判所が万が一採用した場合には、大家にとって、エライことになります😵
せっかく利用した定期借家です。法律で定められた手続についての怠りがないよう注意が必要です。
最近のコメント