判例時報No2465・2466号合併号で紹介された仙台地裁令和2年7月1日付判決です。事案は、以下のとおりです。
Xらの子であるAは、平成25年4月、地方公共団体であるYの設置する教育委員会から公立学校教員として任命され、Yの設置する高等学校において英語担当教員として勤務した。
そして、Aは、平成27年4月から1年生のクラスの副担任を命ぜられ、同クラスの担任である先輩教員のBとともにホームルームを主宰するなどの業務などに従事していた。
しかし、Aは、Bから度重なる注意を受け、同年6月にうつ状態であると診断され、7月28日に自殺した。
本件は、Xらが、Aの業務が過重化していたこと及びBによるパワハラにより、Aは精神的に追い詰められて自殺したものであり、本件高校の校長及び教頭は、労働環境を整備するという安全配慮義務に違反したと主張して、B及び校長らの行為について、国家賠償法1条1項に基づき、損害賠償請求を求めた事案です。
(今治城から)
本判決は、パワハラ該当性の判断基準につき、職場で働く者が、職場内における優越的な関係に基づき、同じ職場で働く他の者に対し身体的又は精神的苦痛を与える行為は、業務上必要かつ相当な範囲を超える場合に、パワハラとして不法行為法上違法となるとしており、本判決が説示するところは、労働施策総合推進法30条の2及びパワハラ指針と同趣旨をさしている。
そして、本判決は、BのAに対する執拗な注意が継続する中にあって、少なくともAがうつ状態であると診断された後には、当該注意の内容が基本的には生徒指導の姿勢に関するものであったとしても、未だ勤務経験2年余りにすぎないAにとっては教師として生きていく自信を喪失させるものであり、Aが一旦自殺未遂をした後においても継続的に行われたなどという事情の下においては、パワハラが成立すると判断しました。
なお、Aですが、過去2回自殺を試みたこともあることから、亡Aが不安を感じやすい性格が寄与していたということで、素因減額として60%を認めております。
判決文からはわかりにくいのですが、BのAに対する注意は、言葉自体は暴言的なものではありませんが、内容的に教育の根本たる亡Aの生徒への関与姿勢そのものを否定しており、その意味では、きついようにも思います。
高裁に控訴されているようです
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