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交通事故  低髄液圧症候群

2009年3月15日 (日)

【交通事故】 低髄液圧症候群についての裁判例(消極) (神戸地裁平成20年11月6日)

 自保ジャーナルNo1774号(3月12日号)で紹介されている裁判例です。

 まず、低髄液圧症候群については、いまだその病態や診断基準が確立されていない疾患であることから、その認定は慎重に行わざるをえず、現時点では、国際頭痛分類の診断基準日本神経外傷学会の診断基準がほとんど同じであることから、これらの診断基準に基づいて認定を行うのが相当であるとして、低髄液圧症候群の診断基準を示しています。

 その上で、あてはめをしています。

 まず、起立性頭痛は、低髄液圧症候群の特徴的な症状であるが、原告の訴えている主な自覚症状は、頸部痛であり、起立性頭痛ではないこと

 次に、造影MRI検査による硬膜の増強についても、N医師が原告の脳MRI検査画像につき、硬膜下腔の拡大よりはくも膜腔の拡大所見があり、かかる所見は頭蓋内の髄液の増加を示すものであることから、低髄液圧症候群と矛盾するとの意見を述べていることなどから、造影MRI検査による硬膜の増強があるとは認められないこと

 さらに、原告の髄液圧は80㎜水柱と、診断基準の60㎜水柱を上回っていること

 RI脳槽・脊髄腔シンチグラフィ検査において早期(3時間内)の膀胱集積所見がみられてはいるが、脊髄からの髄液の正常の吸収を無視している事などの理由から低髄液圧症候群の診断基準とすることに批判的な見解もあることから、原告に早期膀胱集積所見がみられたことのみをもって、髄液の漏出があったと認めることはできない

 以上の理由から、原告の症状及び画像所見等は、国際頭痛分類の診断基準も日本神経外傷学会の診断基準もみたさないとして、原告が低髄液圧症候群の後遺障害を負ったと認めることはできないと判断しました。

 このところ、低髄液圧症候群については、消極的な裁判例が続いています。

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2009年3月 9日 (月)

【交通事故】 低髄液圧症候群についての裁判例(消極)

 交通事故民事裁判例集第41巻第1号で紹介されている東京地裁平成20年2月28日付け判決です。

 東京地裁は、

 ①起立性頭痛がなかったこと

 ②耳鳴りがなかったこと

 ③原告の場合、RIシンチグラフィーによっては、RIの腰部の髄液漏れは断定できるようなものではなかったこと(※判決文では具体的な内容はよくわかりません)

 ④頭部MRIにおける大脳下垂及び小脳扁桃の下垂という所見も、低髄液圧症候群の典型例における頭部MRI所見とはいえない程度の所見であること

 から、低髄液圧症候群については否定しました。

 国際頭痛学会における国際頭痛分類の診断基準を当てはめていますが、念のために、脳関髄液減少症研究会の診断基準のあてはめも検討しています。

 なお、後遺障害についても、「原告には後遺障害等級に該当する後遺障害が残存したとは認められない」とされて、消極的です。

 なかなか厳しい判決です。

 

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2008年11月28日 (金)

【交通事故】 最近の低髄液圧症候群の裁判例

 自保ジャーナルNo1760号(平成20年11月27日号)で紹介されている裁判例です。

 45歳女子12級脳脊髄液減少症請求は、低髄液圧症候群とは別個の病態であり、既往症の継続・再発として、因果関係ある損害を6か月分、5割の素因減額をした事案です。 

 民事裁判編・消極判例・地裁判例⑮で紹介しています。

民事判例編 

積極的判例

 (地裁判例)

 ① 横浜地裁・平成20年1月10日 自保ジャーナル第1727号(→控訴審東京高裁平成20年7月31日)

 (概要)

 ①の裁判例は、乗用車を運転して交差点を直進中、対抗右折乗用車に追突され、頭部打撲等から低髄液圧症候群を発症したとする事案です。裁判所は、被害者に、激しい起立性頭痛等があり、副作用の強いホルモン剤等服用しても改善しませんでしたところ、ブラッドパッチ療法で仕事ができるまで改善されたことなどから、原告は本件交通事故後に低髄液圧症候群に罹患したと認定、17ヶ月後に治癒したと認められた事例です。 

 消極的判例

 (地裁判例)

 ① 岡山地裁・平成17年1月20日 交民38巻1号107頁

 ② 神戸地裁・平成17年5月17日 交民38巻3号681頁

 ③ 横浜地裁・平成17年12月8日 交通事故判例速報478号

 ④ 横浜地裁・平成18年9月24日 自保ジャーナル1692号

 ⑤ 前橋地裁桐生支部・平成18年12月25日 自保ジャーナル1676号

 ⑥ 福岡地裁・平成19年5月17日 自保ジャーナル1692号

 ⑦ 横浜地裁相模原支部・平成19年6月26日 自保ジャーナル1698号

 ⑧ 福岡地裁田川支部・平成19年10月18日  自保ジャーナル1713号

 ⑨ 東京地裁・平成19年11月27日  自保ジャーナル1717号,交通民集第40巻第6号1527頁 ※控訴審東京高裁平成20年4月24日

 ⑩ 大阪地裁・平成19年3月14日   自保ジャーナル1717号

 ⑪ 東京地裁・平成20年2月28日(合議) 自保ジャーナル1727号 判例時報No2014号(控訴中)

 ⑫ 横浜地裁・平成20年1月30日 自保ジャーナル1727号

 ⑬ 神戸地裁・平成19年4月26日 自保ジャーナル1727号

 ⑭ 静岡地裁浜松支部・平成19年12月3日(裁判官・酒井正史・矢作泰幸・神原文美) 判タNo1273号

 ⑮ 広島地裁・平成20年10月30日(橋本良成・佐々木亘・西田晶吾) 自保ジャーナル1760号

 (概要)

 ⑨の裁判例は、日本神経外傷学会が組織した頭部外傷に伴う低髄液圧症候群作業部会の中間報告の示した診断基準が最新かつ国際頭痛分類の診断基準をふまえた客観性を有する見解であると指摘し、同基準の概要は、

 前提基準として、起立性頭痛又は体位による症状の変化があること、

 その基準に該当した場合に、

(1)造影MRIでびまん性の硬膜肥厚増強、

(2)腰痛穿刺にて低髄液圧の証明 

(3)髄液漏出を示す画像所見

のいずれかを満たすことで、低髄液圧症候群と診断し、

 更に、外傷性と診断するための条件として、

 外傷後30日以内に発症し、外傷以外の原因が否定的であること

を満たすことが必要と判断しました。

 そして、当該事案においては、これらの要件を欠き、外傷性低髄液圧症候群について、否定しました。

 ⑩の裁判例は、判旨自体はさらりとその理由を述べているに過ぎませんが、それ故に汎用性のある判例ともいえます。

 原告の脳脊髄液減少症の後遺障害に対する主張に対しては、

 まず、脳脊髄液減少症は未だ病態や診断基準が確立されていない疾病であるため、その認定にあたっては慎重に行う必要があるとして、

 (1)脳脊髄液減少症の特徴的な症状である起立性頭痛や特徴的な所見である硬膜下腔の拡大、小脳扁桃の下垂などを認めるに足りる証拠はないこと

 (2)RI脳槽脊髄腔シンチグラフィでの早期の尿中集積所見や、MRミエログラフィによる胸椎部での高信号の所見については、診断基準に採用することに批判的な立場もあることに鑑みれば

 現状においては、原告が脳脊髄液減少症に罹患したと認めることはできない」と判断しました。

  ⑪の裁判例は、乗用車を運転、停車中に乗用車に追突されて、頸椎捻挫等から低髄液圧症候群を発症したと主張される29歳男子につき、頭痛訴えが事故1年4か月までに1回であり、国際頭痛学会の低髄液圧症候群からも耳鳴りの訴えが1年4か月後であり、典型的症状の起立性頭痛がなく、原告が低髄液圧症候群を発症したと認めるに足りる証拠はないとして否認されました。

 原告は、医師が、(1)原告が本件事故後により難治性の後頸部痛及び頭痛が持続し、平成15年10月23日の初診時にも、上記症状を訴え、夕方になると症状が悪化すると訴えたこと、(2)頭部造影MRIにより円蓋部での大脳の下垂及び小脳扁桃の下垂が認められたこと、(3)同年11月25日でのRI脳槽シンチグラフィーにより髄液の腰部での早期漏出が認められたことを根拠に、低髄液圧症候群であると確定診断されたことを理由に、低髄液圧症候群を主張していました。

 ⑫の裁判例は、自転車を押して歩行横断中、停車しようとした乗用車に軽く衝突されて転倒、腰部打撲等から約1年の症状固定後低髄液圧症候群を発症、12級神経障害を残したとして主張された案件です。裁判所は、発症は、2年後であり、特徴的な症状である継続的な頭痛がほとんどない他、更年期障害、心因的症状の重複で、低髄液圧症候群は本件事故との因果関係はないと否認しました。

 ⑬の裁判例では、裁判所は、7歳男子の低髄液圧症候群等は頭を打っておらず、3日後運動会参加、バットで頭部打撲等から原因不明とし事故との因果関係を否認しました。

 ⑭の裁判例では、鑑定人が、低髄液圧症候群の発症を認めていたにも拘わらず、裁判所は、(1)低髄液圧症候群につき、病態が明らかでなく、診断の際には、頭痛等の多彩な症状と、画像診断(頭部MRIによる髄液減少所見及びRI脳槽シンチグラフィー、腰痛MRミエログラフィーによる髄液漏出所見)とが重要であるとされているものの、いまだ診断方法は確立されていないという医学的知見を前提に、(2)本件において、頭部MRIにおる髄液減少所見及び腰痛MRミエログラフィーによる髄液漏出所見は認められないこと、(3)Xの症状は、低髄液圧症候群の症状に一致するものの、外傷性頸部症候群の症状とも類似しており、外傷性頸部症候群である可能性を払拭できないこと、(4)A医師とは別の医師が、Xの症状はXの低血圧に由来すると診断していることなどから、A医師の診断及び鑑定結果は採用できないとして、低髄液圧症候群の発症を認めませんでした。※1鑑定が肯定されていても、判決は否定しています。※2治療費についても、症状固定後の治療費として原則として因果関係を否定としながらも、病院が低髄液圧症候群と診断したことなどを理由に、ブラッドパッチなどの治療費を認めています。これって、加害者側保険会社は、病院に請求できるのでしょうかね。 但し、他方で、寄与度減額として3割を減じています。

 ⑮の裁判例では、(1)脳脊髄液減少症には起立性頭痛がないのがほとんどで、低髄液圧症候群と脳脊髄液減少症とは別個の病態であると認定、(2)45歳女子会社員原告が12級脳脊髄液減少症と診断された事案につき、脳脊髄液減少症のメカニズム・病態は現時点では全く不明であり、脳脊髄液減少症の病態が存在すること自体疑わしい上、慢性気管支炎、膠原病等多彩な症状で受診、本件追突事故前年まで、疾病のため、就業時間を短縮していたことに加え、診断したC医師の経験と感覚ということ以外に客観的裏付を見い出すことができない等、原告の症状は既往症が継続し又は再発したと認定、(3)通常の頚椎捻挫は3か月ないし6か月で完治するとし、原告の本件事故と因果関係ある治療期間につき、6か月で認定、既往症で5割減額を適用しています。

 本件交通事故は、平成13年4月29日、提訴は、平成16年、判決言渡期日は、平成20年10月という経緯をみると、なんとも大変な事件だなという印象を受けます。「頚椎捻挫」がらみは、紛争が法的に解決するまで相当長期間かかるケースも少なくなく、どちらの当事者の代理人になっても、非常に疲れることが多いです。

 (高裁判例)

 積極的判例 

 ① 東京高裁・平成20年7月31日 自保ジャーナルNo1756号

 (概要)

 事案は、横浜地裁平成20年1月10日のとおりです。加害者側が、原審及び控訴理由書にて、「髄液減少症」が発症したことを認めてしまい、後日、自白を撤回しようとしたものの、撤回の要件を欠くとして、自白した状態で認定されてしまったなんとも理解しがたいような内容です。

 解説者も、杉田雅彦弁護士も、「本判決はX・Y双方において医学的各争点について十分に争われた事案ではないので、先例的な価値は余りない」と説明されています。 

 消極的判例

 ① 福岡高裁・平成19年2月13日 判例時報1972号、自保ジャーナル1676号、交通事故判例速報489号

 ② 東京高裁平成20年4月24日 自保ジャーナルNo1756

  (概要)

 ①の裁判例は、 (1)追突事故により低髄液圧症候群、外傷性脊椎髄液漏の傷害を受けたとの被害者の主張について、ⅰ右傷害の最も典型的な症状である起立性頭痛が見られないこと、ⅱブラッドパッチ療法では症状が余り改善しなかったこと、ⅲRI脳槽造影では脊椎髄液漏の所見が見出せなかったことなどを理由に、被害者に脊椎髄液漏があるとするにはなお合理的な疑問があるとして、その主張を認めなかったものの、

 (2)被害者主張の治療費のうち、低髄液圧症候群の関係の治療費は事故と因果関係が認められない筋合いではあるが、低髄液圧症候群との診断をし、その治療をしたのは医療機関側の判断と責任によるものであるから、被害者が現にその関係の治療を支払っている以上、それを安易に減額することは相当ではないとして、被害者の主張する治療費のほぼ全額を損害と認めたものの、他方で、(3)右被害者の頸椎捻挫の症状が長期化した背景には、本人の心因的要素があると考えざるを得ないとして、損害の公平負担な観点から民法722条を類推して、その損害のうち治療費と文書料を除いた額の50%を減ずるべきとしました。 

 ②の裁判例は、「事案の概要」によれば、「当審においては、本件事故により低髄液圧症候群が発症したとの点に関する原判決の判断(消極)については敢えて争わず」と記載されていることから、控訴審で、低髄液圧症候群の発症については、十分な議論は尽くされていないようです。

刑事判例編

 消極的判例

 ① 平成20年4月21日 福岡地裁 自保ジャーナル1742号、交通事故判例速報No507

 ② 平成20年5月19日 静岡地裁 自保ジャーナル1742号、交通事故判例速報No507   

(概要)

 ①の裁判例は、検察官が「加療約5年以上の頭痛、頸部痛、視力低下及び集中力・記憶力低下などの障害を伴う外傷性脳脊髄液減少症の傷害」として起訴した事案ですが、裁判所は、検察官指摘の他覚的所見については、医師の意見がわかれていること等に鑑み、他覚的所見を全て否定し、客観性に疑問が残るとして、被害者が低髄液圧症候群であることを否定しました。

 ②の裁判例は、検察官が「加療約2185日を要する脳脊髄液減少症等の傷害」として起訴した事案ですが、裁判所は、国際頭痛分類の低髄液症候群の診断基準にも、新たに提唱された脳脊髄液減少症の診断基準にも該当しないと判示して、従来の低髄液圧症候群であることも否定しました。

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