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2025年4月

2025年4月25日 (金)

【弁護士考】 懲戒を受ける弁護士たち ⁉

 自由と正義4月号の懲戒を受けた弁護士たちの公告欄をみました。

 軽い順からみてみます

 戒告 2017年2月に依頼を受けたものの、2020年9月に至るまで、1回も報告や連絡をしなかった。

 戒告 争点とは関連性がなく、訴訟遂行上必要性及び相当性がない相手方の前科に関する詳細な事実が記載された書面を提出した

 戒告 2020年7月に依頼を受けたものの、2021年2月に依頼人にうその報告をした

 業務停止6月 後見の預り金を事務所の費用にあてた

 業務停止10月 手続上瑕疵のある取締役や代表取締役選任手続きに積極的に関与し、また、株主総会の議決を欠いた状態で廉価で株式を自己の譲渡した

 業務停止2年  業務停止中に、弁護士として仕事をした 

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(世田山・危ない橋)
 戒告に相当するような非行に及ぶ弁護士は、田舎弁護士の地域でも散見されます。例えば、弁護士は同じ係争案件について当事者の一方から相談を受けたら相手方の相談を受けたりましてや依頼を引き受けたりすることはできないのですが、それを平気でされる方もいます。このような最低の弁護士倫理観のかけている方は、退場していただきたいと思います。
 田舎弁護士は、お引き受けさせていただく事件の数を制限させていただいております。でなければ、ご依頼をいただいた事件に費やす十分な時間をかけることができなくなるからです。また、その代わり、費用は、HPでもご覧のとおり、通常よりは高めに設定しております😅
 弁護士にご依頼される、また、ご相談されることは、一生に1回あるかないかだと思います。
 
 そのような大事な相談やご依頼を十分に時間を使って対応できるよう日々心掛けております。
 2回目の相談は、詳細な相談メモを作成してお渡しさせていただいております(料金は別途かかりますが)
 そのため、集客効果のある、土日曜日や夜間相談、無料相談などは、一切行っておりません。(他のお客様のご依頼事件に費やす時間が少なくなってしまうからです)
 ご理解賜りたく存じます。

2025年4月20日 (日)

【子ども】 間接交流を認めた原審判を取り消し、試行的面会交流の実施を積極的に検討し、その結果をも踏まえて直接交流の可否等を検討させるべく、事件を原審に差し戻した事例 東京高裁令和5年11月30日決定

 判例時報No2617号で掲載された決定例です。

「3 検討
  (1)前記認定事実によれば、

 ①未成年者は、保育園に入園当初は、表情が硬く、集団生活に戸惑う様子が見られたこと

 ②家裁調査官による家庭訪問調査においても、未成年者は、初対面の家裁調査官に対して人見知りをして、短時間の滞在では十分に慣れることが難しく、母である相手方から離れようとしない様子が認められたこと、

 ③未成年者は、日常的に夜中に泣いて目を覚まし、一度も目を覚まさずに寝ていることの方が少ない状況であり、相手方は、精神的にも体力的にも余裕があるとは言えないこと、

 ④抗告人は、相手方の非難に強く反発して感情的になり、声が大きくなることがあったため、相手方の抗告人に対する不信感は根強いこと、

 ⑤抗告人は、未成年者が出生してから未成年者に接触した期間は短く、別居後、抗告人と未成年者の交流は行われていないことなどが認められる。

 これらの事情に鑑みると、未成年者は慣れない相手に対して不安を感じやすいといった特徴がうかがわれ、未成年者の負担を最小限に留めつつ面会交流を実施するためには、相手方の協力を得ながら、未成年者が抗告人に徐々に慣れるようにする手順を踏むことが必要であると考えられる。そうであるとすれば、相手方が、こうした手順を踏まないまま、抗告人と未成年者との直接の面会交流に協力することにつき、消極的な態度を示していることについては、一定程度理解できるところである。

 (2)しかしながら、父親が未成年者の成長を知ることは、父親にとって重要であるばかりでなく、未成年者にとっても、父親が自分に関心を示してくれていることを実感させることは、未成年者の健全な成長につながるというべきである。そして、抗告人は、第三者機関を利用して未成年者と直接の面会交流を行うことを希望し、既に第三者機関に相談し、当該第三者機関より支援が可能である旨の回答を得ているほか、第三者機関から面会交流を行うための具体的なルールに関する説明を受けていることが認められ、抗告人と未成年者が第三者機関を利用して直接の面会交流をする際、必要となる相手方の協力は、一定程度限定されたものになると考えられる。

 また、未成年者には、人見知りの傾向があり、新規の刺激から影響を受け易いといった傾向があるが、未成年者が令和3年7月以降現在に至るまで保育園に通園していることに照らせば、上記の傾向は、周囲の配慮により克服でき、あるいは成長に伴い自然と収まるものと考えられる。

 さらに、前記認定事実及び一件記録によれば、相手方は、抗告人に家事や育児に関する配慮が足りないと不満を持ち、抗告人も、相手方の非難に反発して感情的になり、声が大きくなることがあったことが認められるものの、抗告人が相手方に対し、直接の暴力に及んだとか、合理的な理由のない暴言ないし継続的ないし支配的な精神的暴力があったと認めることはできない。

 そうすると、相手方には、抗告人と未成年者が第三者機関を利用して直接の面会交流をすることに協力することが直ちに困難であると断じるに足りるだけの客観的かつ具体的な事情があると認めることはできない。仮に、直接の面会交流を実施することにより相手方の負担が主観的には増すとしても、相手方には監護補助者がいることをも考慮すれば、直接の面会交流の実施により、未成年者の福祉を害する程度にまで相手方の監護力が低下すると認めることはできない。

 (3)したがって、抗告人と未成年者の直接の面会交流については、前記(1)のような事情があることは認められるものの、前記(2)のとおり、これが直ちに困難であると断じるに足りるだけの客観的かつ具体的な事情があるとはいえないというべきであって、未成年者の年齢及び特性等に照らせば、なお、未成年者において、相手方と離れて抗告人と直接の面会交流を行うことができるかどうかについて、子の福祉の観点から、慎重に検討判断する必要があるというべきである。

 そうすると、本件においては、抗告人と未成年者との試行的面会交流の実施を積極的に検討し、その結果をも踏まえて、直接の面会交流の可否や、直接又は間接の面会交流の具体的方法、頻度、内容等を検討して定める必要があるというべきである。

 (4)よって、原審判は前記(2)の事情を適切に考慮していない点において取消しを免れない上、本件については、特に前記(3)に関して審理を尽くす必要があるので、原審判を取り消して、本件をさいたま家庭裁判所に差し戻すのが相当である。」

 もう一度、直接の交流が本当に難しいのか、難しい場合には、間接交流はどのように定めればいいのか、検討しなさいとされた決定でした。

 昔は、直接の交流って、当然でしょう的な雰囲気がありましたが、今はかなり様子が変わってきていますね。

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                              (永納山)

2025年4月19日 (土)

【交通事故】 日本交通法学会 交通法研究 52号

 田舎弁護士は、日本交通法学会の会員です。

 日本交通法学会から、交通法研究52号が届きました。

 昨年のシンポジウムが収録されています。確か、田舎弁護士も、WEBで参加したような気がします。しらんけど。

 報告1が、元裁判官の大島眞一弁護士の逸失利益算定の現在と課題です。

 年少女子の逸失利益、年少障害者逸失利益、死亡慰謝料・生活費控除率の基準について報告されています。

 報告2が、若林三奈龍谷大学教授の年少者・若年者の逸失利益算定です。

 報告3が、吉村良一立命館大名誉教授の障害を持つ年少者の逸失利益です。

 報告4が、溝口優裁判官の社会情勢の変化等を踏まえた主婦休損についての考察です。 

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(永納山)
 交通事故事案ですが、それでも、ぼちぼち、遠方の方を含めて、ご相談やご依頼がありますね。ただ、老弁の田舎弁護士では手一杯なことも多くて、お断りさせていただくこともかなりあります。 
 ご対応できる量を超えないよう注意しております😅

2025年4月18日 (金)

【金融・企業法務】 月刊監査役 4月号

 月刊監査役4月号が届きました。かなり読み応えのある論文が多数掲載されていました。

 まずは、2025年6月定時株主総会対応の要点です。その中で、東証の要請が整理されて説明されていました。資本効率改善の要請、女性活躍推進、英文開示、そして、従属上場会社関係の経営上ガバナンス上の重要課題です。

 次が、非上場会社のための監査役の監査等のポイントです。初心者にもわかるように平易に説明されていました。

 3つめが、企業法務におけるリーガルテックの進展です。電子契約サービス、契約書管理システム、リーガルリサーチ、契約審査などの分野において、進んでいるように思います。

 今回一番気になったのが、監査役等として知っておきたいアクティビストの視点ーターゲットになるか否かの分岐点です。アクティビストのターゲット選定基準は5つあるとのことです。割安、業績安定、キャッシュリッチ、事業ポートフォリオにおける不採算事業の有無、そして、コーポレートガバナンスということのようです。

 その他にも、⑤監査役等のための不祥事対応の手引きとして、不祥事発覚後の社外対応、⑥監査役等による業種別の会計監査のポイントでした。 

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(永納山)
 田舎弁護士ですが、最近は、裁判所を利用する案件が激減しました。田舎弁護士の仕事が、100とすれば、企業・団体の役員としての仕事が40、顧問先様の相談や依頼事件の仕事が40、残り10が交通事故の裁判所を使わない交渉案件、そして、最後の残り10が裁判所を利用している仕事です(印象)。
 
 昔のような大きな売上はありませんが、他方で、多数の仕事に追われているということもないので、無理はしないという方針でいます。
 おかげで、1つ1つの案件に十分な時間をかけることができ、お客様の満足度も高いです(弁護士費用も高いけど しらんけど)。

2025年4月17日 (木)

【金融・企業法務】 旬刊商事法務 4/5が届きました😇

 旬刊商事法務 4/5が届きました😇

 関心をもった論文としては、第1に、SSBJ(サステナビリティ基準委員会)によるサステナビリティ基準の公表と今後の対応です。いずれ、有価証券報告書における法定開示の対象となるのでしょうね。

 次が、株式会社の解散の訴えです。1号事由による解散請求が行われた公刊裁判例が紹介されています。

 3つめが、株主構成からコーポレートガバナンスを考えることの重要性です。その中に、大株主が存在する上場会社におけるコーポレートガバナンス上の問題の1場面として、上場子会社のコーポレートガバナンスがとりあげられていました。

 2023年12月に、東証は、「支配株主・支配的な株主を有する上場会社において独立社外取締役に期待される役割」という文書を公表しました。

 これは、東証に設置された「従属上場会社における少数株主保護の在り方等に関する研究会」での検討を踏まえてまとめられたものですが、同文書はその名称どおり、上場子会社における支配株主による搾取的行動に対処するため、独立社外取締役が果たすべき役割を提言しています。

 それ以外に、連結と会計帳簿閲覧請求権や、金融庁が全上場会社に対し株主総会前に有価証券報告書の提出を3月28日に要請したのは目新しい話です。 

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(永納山)

2025年4月16日 (水)

【金融・企業法務】 旬刊商事法務 3/25

 旬刊商事法務3/25が届きました。

 関心をもった掲載論文は、まずは、株式会社の解散の訴えです。余り利用することはありませんが、等分保有の事案で株主間の対立により新たな取締役の選任もできなくなった場合、いわゆるデッドロックの場合の1つの解決手段として検討したことはあります。

 次は、「株式の保有状況」の開示に関する「企業内容等の開示に関する内閣府令」等の改正の解説です。2025年3期の有価証券報告書等から適用されます。

 3つめは、2024年版株主総会白書から読み解く総会実務の施策と最新動向です。

 最後は、カスハラ防止条例が株主とのコミュニケーションに与える影響です。 

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(永納山)
 田舎弁護士も、3月から、商事法務研究会の会員となり、旬刊商事法務をわかる範囲で読むようにしております。なお、会員になれば、商事法務の書籍が2割引というのもいいですね😇

2025年4月11日 (金)

【弁護士考】 弁護士会関係の委員会!?

 愛媛弁護士会から、4月11日付をもって、田舎弁護士を次の委員会の委員に委嘱する旨の連絡がありました。

 司法修習委員会

 財務委員会

 総務委員会

 民事介入暴力対策委員会

 住宅紛争審査会運営委員会

 日弁連交通事故相談センター愛媛県支部支部委員会

 それ以外に、四国弁護士連合会の委員会、大本山の日本弁護士連合会の委員会の、委員に所属する必要があります。

 但し、田舎弁護士が側聞するところ、活発に運営されている委員会は、地方ではまだまだ少ないのではないかと思います。

 特に支部所属の弁護士の場合は、地理的な要因もあるためか、県庁所在地を訪ねるのが時間的に大きな負担となります。 

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(鈍川の桜)
 弁護士会は、強制加入団体なので、組織の維持のために必要な委員会、弁護士を監督するための委員会、後進育成のための委員会くらいとして、あとは、個々の弁護士による任意参加のサークル的な形の方がいいような気がします😅
 このように多くの委員会を割り当てられても、本質が自営業者に過ぎない弁護士が、仕事を後回しにして、その全てに十分な活動ができるはずがないと思います。

2025年4月 7日 (月)

【交通事故】 MIC 関節の医療画像鑑定セミナー・第2弾「膝」

 MICの関節の医療画像鑑定セミナー・第2弾「膝」を、WEBで受講しました。

 損害保険協会主催の医療セミナーの受講機会がなくなりましたので、このような交通事故に特化した医療セミナーは助かります。しかも、無料です。

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                               (円久寺)

 では、備忘録的に、ベタ打ちです。

1 後遺障害等級の認定要件(膝関節)

 8級7号(用廃)

  関節の強直(他動運動で可動域が10%以下)

  関節の完全弛緩性麻痺又はそれに近い状態(自動運動で可動域が10%以下) 

  人工関節を挿入した・かつ可動域が健側の1/2以下

  動揺関節のため常に硬性補装具を必要とする

 10級11号(著障)

  可動域が健側の1/2以下に制限されている

  人工関節を挿入した

  動揺関節のため時々硬性補装具を必要とする

 12級7号(単障)

  可動域が健側の3/4以下に制限されている

  重激な労働の際以外には硬性補装具を必要としない

  ※膝関節の主要運動:屈曲+伸展

   膝関節の参考運動:なし

 12級13号 局所に頑固な疼痛を残す場合(他覚的に証明可能)    ←画像鑑定

 14級9号  局所の疼痛や広範囲の痺れなどを残す場合(医学的に説明可能) ←画像鑑定

2 膝関節を構成する骨

  肩、膝は、三次元的に複雑な構造

3 主な筋肉

4 腱(筋と骨を繋いでいる)と靱帯(骨と骨を繋いでいる)の違い

5 膝の外傷によって生じる変化

  骨折 骨挫傷

  靱帯・腱・筋(腱板)の損傷

  軟骨の損傷

  上記変化による疼痛 可動域制限 不安定生

  12級以上の後遺障害として認定されるには可動域の制限が重要だが、膝の場合は動揺性・不安定生が重要

  可動域制限は、筋腱の損傷で生じる 靱帯損傷は動くが不安定になる

  ⇒これらの損傷は、CTやXPでは明らかにならない

   MRIは、

   骨の中の組織の状態がわかる   筋肉や靱帯等の軟組織の状態がわかる   炎症の程度や時期がわかる

               ↓

   事故が原因で生じた病変であることが説明できる

6 組織損傷(浮腫)に関するMRI画像の所見

  T2強調系  白く見える 信号上昇 高輝度 液体貯留(水は明瞭な白)

  T1強調系  灰色から黑 信号低下 低輝度

         液体貯留(水は明瞭な低信号だが出血があると少し信号が高い)

7 膝外傷の代表疾患

 靱帯損傷(断裂)   内・外側副靱帯、前・後十字靱帯

 半月板損傷     内側、外側半月板

 脛骨高原骨折

 膝蓋骨脱臼、骨折

8 膝の慢性病変 (区別する)

 変形性膝関節症

 半月板損傷 断裂

 靱帯損傷 断裂

 習慣性膝蓋骨脱臼等

 事故で生じた病変と慢性病変の区別

  MRIの撮影時期が事故後半年以内ならば病変の浮腫や損傷に応じた輝度変化が認められるので最近の病変といえる

  T2強調画像(脂肪抑制)で高信号(白色)  他のエピソードがなければ事故で生じた可能性が高い

 慢性病変 区別できる

  石灰化、筋萎縮、水は溜まっているが浮腫がない 病変の境界が明瞭

  各病変に特賞的な所見が認められる

 病変や病態が説明できる事故の状況は非常に重要

   下肢の外反や内反と靱帯の損傷が説明がつくか

   打撲の状態と骨折や骨挫傷との信号が説明がつくか 20250330_134525                              (霊仙山)

9 MRIを撮影するタイミング

  事故直後の早い時期のMRIはある方がよい

  3か月~1年は必ずいる 症状固定の直前くらい

  初回撮影が事故から1年を超えると厳しい  

  適切な時期に、適切な撮影 1.5テスラ以上の新しいMRI

10 膝は、靱帯損傷や半月板損傷が多く、可動域制限よりも不安定性が症状としては多い

11 素因減額にこだわりすぎないようにする 

  膝関節は、中年期以降では、もともと慢性病編が存在していることが多い すべての損傷変化が一回の事故で生じたと説明するのは難しい

  元来の病変が悪化と説明する方が真実であることが圧倒的に多い

12 後遺障害認定には

  画像所見と症状が一致している  可動域制限がでる状態か

  自然治癒しない損傷所見     骨挫傷よりは骨折 靱帯損傷よりは断裂

  慢性病変との鑑別(区別)ができているか 慢性病変の典型所見との区別があるか 信号から事故で生じた病変と説明できるか

  病変が生じる事故の状況であったか 筋や靱帯損傷が生じる状況であったか

 適切な事故のMRIが必要

13 まとめ

 膝の損傷は、適切なMRIがないと正確には判断できない

 部分断裂をいかに指摘して説明できるか

 膝関節の損傷は外反による損傷が多い

 膝関節は靱帯損傷が多く、不安定性を見逃さない 理学所見を丁寧に診察し記載

 初診時には、膝蓋骨等の膝関節の脱臼、半月板損傷、PCL損傷などは見逃されやすい 後から症状が出現した経過になると認定されないこともある

 20250330_133723                              (宮ヶ崎)

2025年4月 5日 (土)

【労働・労災】弁護士なら知っておくべき業務命令権の行使とその限界

 第一法規から出版された「弁護士ならしっておくべき業務命令権の行使とその限界」です。

 相談を受けやすい8つの事例について解説されています。①労働者がルールを守らず、反抗的なケース・解雇されたと主張しているケース、②労働者が時間外労働を拒否し、指示に対してパワハラと反論するケース、③労働者が就業時間に頻繁に離席し、終業時刻後に社内に残っているケース、④労働者から有給休暇を申請されたケース、⑤労働者が配転命令を拒絶しているケース、⑥労働者が欠勤等を繰り返しているケース、⑦労働者同士で金銭トラブルが発生しているケース、⑧労働者の身だしなみに問題があると考えられるケースです。

 例えば、⑥労働者が欠勤等を繰り返しているケースは近時相談が増えています。

 その対応についてですが、本書は以下のとおり説明しております。

 第1に、欠勤、遅刻、早退の理由を明らかにするよう業務命令を発します。

 第2に、その理由が、体調不良を理由としていた場合には、診断書の提出を求めます。

 第3に、欠勤理由を明らかにしない場合や診断書の提出がない場合は、懲戒処分を検討します。

 第4に、休職制度を設けているのに休職を経ずに直ちに解雇した場合には、解雇権濫用と評価されるかの生があるため、病院の受診や産業医との面談などを経て病状を確認し、必要に応じて休職などの対応をとります。

 1つ1つ、実務に直結した形で説明のある良書だと思います。

 Original_a215fb952f184888a6418c_20250328210901                              (八幡浜駅)

 

2025年4月 4日 (金)

【交通事故】 減収がない場合の消極損害(後遺症逸失利益)の認定傾向

 交通事故相談ニュース54号が届きました。今回の事例研究は、減収のない場合の消極損害(後遺症逸失利益)の認定傾向がとりあげられていました。

 減収のない場合には、加害者側(損保会社)から、後遺症逸失利益を否認するような反論がなされることがあります。特に比較的大きな会社や公務員の場合に顕著のような印象を受けます。

 裁判例の傾向としては、以下のように解説されています。

 現時点で減収がないとしても、裁判例は逸失利益を認める方向での認定が多い。

 その要因としては、2つの事情が挙げられる。

 1つは、将来の可能性である。よほど特殊な事情がない限り、基本的には将来の不利益な取扱いの可能性は十分ありうることである。

 2つめは、現在減収がないことの事情としては、本人の特別な努力や、職場や周囲の者のサポートがあって減収がないという状況になっていることである。

 他方、否定的な事情としては、1つめが、稼働の可能性があると言い難いこと、2つめが、既存障害が存在していることである。

 以上からすれば、減収がなくても、後遺症逸失利益は、十分な主張と立証があれば、認められる可能性が大きいといえます。 

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(宇和島・穂積亭) 

2025年4月 3日 (木)

【離婚】 離婚すると、必ず、共同親権になるの!?

 来年5月までに施行が予定されています「共同親権」についての、問い合わせが増えているように思います。

 この改正民法ですが、弁護士の中でも学習が進んでいない方がおられるようです。

 日本加除出版から出版された新制度まるわかり 家族法改正ガイドブックを参考にして、離婚後の「共同親権」の判断基準について、考えてみたいと思います。 

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(八幡浜駅で)
 離婚後において、父母の双方を親権者と定める(共同親権)か、その一方を親権者と定める(単独親権)かの判断基準については、民法の条文は、以下のとおり規定しています。
 
 (ア)父母の一方の単独親権と定めなければならない場合
 
  次の各号のいずれかに該当するときその他の父母の双方を親権者と定めることにより子の利益を害すると認められるとき
  ① 父又は母が子の心身に害悪を及ぼすおそれがあると認められるとき
  ② 父母の一方が他方の一方から身体に対する暴力その他の心身に有害な影響を及ぼす言動(暴力等)を受けるおそれの有無、父母の協議が調わない理由その他の事情を考慮して、父母が共同して親権を行うことが困難であると認められるとき
                           ↓
 (上記(ア)に該当しない場合、裁判所は、次の事情を考慮して、共同親権か単独親権かを判断する。
  裁判所は、共同親権か、単独親権かを判断するにあたっては、子の利益のため、父母と子の関係、父と母との関係その他一切の事情を考慮しなければならない。
 この記載ぶりからすると、改正民法は、離婚後の父母の親権については、共同親権を原則としちえるということはないと考えられます。
 また、(ア)②において、「父母が共同して親権を行うことが困難であると認められるとき」を判断する際に、子の養育に関して父母が平穏にコミニケーションをとることができない事情の有無及び程度やその事情に合理性が認められ得るかどうか等についても、当該考慮要素として考慮されると考えられています。
 ということは、父母の間で激しく対立が生じているような案件の相当数は、共同親権ではなくて、単独親権として、裁判所が判断することになろうと想像しております。
 

2025年4月 2日 (水)

【学校】わが国の将来を担う国立大学の新たな将来像

 令和7年3月31日、国立大学協会から、「わが国の将来を担う国立大学の新たな将来像」が公表されました。

 30頁ほどの分量ですので、全ての読み込みは難しいところですが、最初の部分に、「本将来像が国立大学の決意として目指すところの概要は以下のとおりである。」として、概要についての説明があります。

「(1)わが国の「知の総和」を増大させるため、地方及び女子の大学進学率を一層向上させ、意思と能力あるすべての者が高等教育を享受するという意識を持ち、そのための体制を構築する。同時に、学生定員の外枠等も活用して全学生の3割まで留学生受入れの拡大を図り、世界から多様な頭脳をわが国に導き入れる。

 (2)多様な分野における世界最先端研究を遂行する大学を中心に、学部定員の大学院定員への振替により、博士号取得者数を3倍に増加させる。併せて、公的部門や産業界等と協力して博士人材が活躍できる環境や条件を醸成する。

 (3)各道府県に配置された地方大学の大学数を減少させることなく、大学間連携も図りつつ学部および大学院の構成と定員を見直す。地方大学は、地方自治体や地域産業界との連携によって地方創生に主導的役割を果たし、地方における人口流出を抑えこむことに大きく貢献する。

 (4)大学病院における研究環境の整備や研究者の処遇については、文部科学省・厚生労働省と協働し適正化を図る。教員養成に関しては、国が「わが国の教育」とは何かを示した上で、初等中等教育の教員の質の高度化に取り組み、次世代人材の育成に寄与する。

 (5)研究への潤沢な資金と研究者の確保が必要であり、特に、研究者全体の層を広く厚くすることが最も重要である。また研究施設・設備や研究支援スタッフ等の研究環境の高度化を図る。

 (6)各国立大学は、統合の可能性も視野に入れた様々な連携と再編を通じ、各大学自身とその総体である「国立大学システム」の力を強化・増大させる。また国公私立大学間の様々な形の連携を通じて、わが国の高等教育全体のレベルアップを図り、さらに地方自治体や地域産業界との連携を通じて地方創生を主導していく。さらに、「知の総和」の重要な構成要素である女子学生や女性研究者・教員の活躍を促進し、また障害のある者等を含む共生社会の実現を目指す。」 

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(円久寺のサクラ)
 そして、「国立大学が有している機能としては、
① 世界レベルの学術研究を推進する機能、
② 新技術開発や産業のイノベーションにも繋がる先端研究を推進する機能
③ わが国の産業を支える優秀な人材を輩出する機能
④ 社会の多様な活動に参画できる人材を育成する機能
⑤ 初等中等教育に係わる教員を養成する機能
⑥ 医療人材を養成し、先端医療や地域医療に貢献する機能、
⑦ 外国人留学生を受け入れ、わが国のダイバーシティ向上に貢献する機能、
⑧ 地域産業や地域の活性化など広く地方創生に係わることのできる人材を輩出する機能など
 があり、各大学はこれらの中の全部または複数の機能を果たしている。

 本「将来像」を実現するために各大学は、これらの機能のうちのどの機能を中心としてわが国の「知の総和」の向上に取り組むのかを、ステークホルダーとの間で、また、国立大学間で真摯なかつ十分な議論を行い、自ら選択していく。」
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(霊仙山のぼたん)
 国立大学が故に公益性の高い活動が社会から求められていますが、他方で、その財政的支援については甚だ心許ないという現実があります。例えば、地域や社会の求めに応じて国立大学病院機能の高度化が求められていますが、多くの国立大学病院は赤字であり、その運営に不足する経費を教育研究の予算から補填せざるを得ないのは健全ではありません。また、学生に対する支援が充実しても、それはつまるところ家計負担への補助であり、国立大学の収入が増えるわけではありません。
 国立大学は先程の①から⑧の機能強化が求められていますが、そのためには国立大学に配分される教育研究経費の充実が重要なのです。
 田舎弁護士も、国立大学にかかわるまでは、私立の学校法人の法律顧問をしていた関係上、私立学校の経営者から財政的に厳しいという話をよくきかされていため、国立大学は国から多くの補助金をもらえていいなということを思っていましたが、実際に、国立大学の経営にかかわってみると、国立大学は地域から研究教育だけではなく産業、経済、福祉、文化等いろいろと公的な活動を求められいるにもかかわらず、その活動を裏付ける財政的な基盤は相当に危機的な状態にあるということがわかりました。
 
 運営交付金の在り方を含め、どこまで国が責任を持ち、どれだけの負担を学生や保護者及び社会に求めるのか、真摯な議論が早急に必要です

【交通事故】 「赤い本」が、届きました!?

 法曹関係者の間では、「赤い本」と呼ばれている書籍が届きました。正式なお名前は、民事交通事故訴訟損害賠償額算定基準2025です。交通事故を取り扱う弁護士では、必携の書とされております。

 この赤い本については、当然、裁判所の考え方等を知るために利用しているものですが、交通事故事案を余り扱っていないと思われる弁護士からは、裁判の証拠として赤本の一部を出してきたり、また、出してきた赤い本が最新版ではないということも、たまにあります。このようなことを目にすると、田舎弁護士としては、交通事故事案を余り取り扱っていない弁護士だと事実上推認しています。

 20250322_132145                            (マルナカ土居田店)

 赤い本の内容は全て大切ですが、昔は1冊だったのですが、途中から、分量が増えて、2分冊となっております。それだけ、交通事故を取り扱う弁護士であれば知っていなければならない知見が増えたということでしょう。トホホですね。

 さて、2025年の赤い本での裁判官の講演録は、次の4テーマでした。

 ① インプラント治療に関する費用

 ② 高齢被害者に後遺障害が残存した場合における将来介護費の認定

 ③ 兼業家事従事者の休業損害

 ④ 駐車場内における事故の過失相殺

 この中では、③や④については、実務上よく問題になりますね

 ③ 兼業家事従事者の休業損害については、5つのケースに対する解答を解説されています。

 (1)専業主婦の場合、(2)パートで、仕事を休まなかった場合、(3)正社員(賃金センサス【380万円】の収入がある場合)で仕事を休まなかった場合、(4)正社員(年収400万円)で仕事を休まなかった場合、(5)正社員(年収800万円)で仕事を休まなかった場合の、主婦休業損害についての質問です。

 解答としては、まずは、(2)については、一定の割合に限って休業損害を認める、(3)から(5)は休業損害が否定されるとしております。

  但し、(3)から(4)については、再考等として、以下のとおり解説されています。「小問の被害者の年齢である、40~44歳の女性学歴計賃金センサスは、416万8500円ですので、小問(3)、(4)については、被害者の就労状況、分担している家事の状況、家事への支障の程度等によっては、年齢別の賃金センサスを参考に基礎収入を認定することで、実収入が維持されたことを考慮してもなお一定の家事休業損害を認めることは可能かもしれません。ただし、その場合でも、実収入を得られる程度の就労が可能であったことは、休業割合において相応に考慮されることには注意が必要です。」と解説されています。

 そして、(5)については、「このように現在の家事休業損害の枠組みでは、高収入の被害者の場合、幼児が複数いるなどの事情で家事総量が通常よりも多く、配偶者も多忙で、被害者の努力によって就労を効率化させながら家事と両立させていたような事情があっても、実収入の減少の範囲でしか休業損害が認められない(実収入に減少がなければ休業損害が認められない)ということにならざるを得ず、なお、残された課題として指摘できるところです。」と解説されています。

 田舎弁護士の地域でも、(5)のようなことはたまに散見します。

 今回も、5つのケースを参考に、丁寧な分析がされていると思いました。

2025年4月 1日 (火)

【金融・企業法務】 旬刊商事法務3/15

 旬刊商事法務3/15が届きました。

 第69回東京大学比較法政進歩で、報告(1)として、松井智与東大教授による サプライチェーンマネジメントをめぐる企業法制上の諸論点

 報告(2)として、平井正博弁護士による、人権環境・通商規制とサプライチェーンマネジメント(1)規制の動向・底流と実務的観点から検討するガバナンスの課題

 企業支配権市場は日本を席巻するか

 上の各論文は、グローバルな視点で解説されています。

 そして、千葉地判令和3年1月28日の監査役1人である場合における報酬額の決定方法と任期中の増額変更は、興味深く目を通すことができました。

 田舎弁護士的には、千葉地判のようなケースが身近に感じますね。

 このケースは、監査役が一人しかいないので、自分でこれまでもらっていた監査報酬をUPさせたという事案でした。

 理屈からいえばそうなんだろうなという気もします。

 もっとも、会社の方も、本件増額決定に関する善管注意義務違反の有無を相殺の抗弁のところで主張されていましたが、裁判所は、監査役において、株主総会が定めた最高限度の範囲内で報酬額を決定する限り、善管注意義務違反は生じないと判示しております。

 これに対して、解説者は、増額させる際にはそれを正当化しうるだけの根拠や理由を説明することが善管注意義務から求められるとして、裁判所の判断に疑問を投げています。 

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(宇和島・穂積亭)

 

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