【建築・不動産】 (仮登記に基づく本登記)甲所有の不動産について、乙のための所有権移転登記請求権の仮登記後に、甲から丙への所有権移転の登記がされている場合、当該仮登記に基づく本登記手続は、どのようにすればよいか?
甲が、乙に不動産を売り渡して仮登記を設定した後に、甲が丙へ売り渡して本登記をした場合、甲は、当該仮登記に基づく本登記手続をするためには、どしたらいいだろうか?という質問です。
これに対して、新訂判決による登記は、以下のとおりわかりやすく解説しております(P265以下)。
「仮登記に基づく本登記の申請は、一般の申請手続と同様、仮登記権利者及び仮登記義務者が共同してするのが原則であり、仮登記義務者が本登記手続に協力しないときは、本登記手続をすべきことを命ずる確定判決(確定判決と同一の効力を有するものを含む)を得て、登記権利者が単独で申請することができます(不動産登記法63条1項)。この場合、請求の趣旨及び判決の主文において、どの仮登記に基づき本登記手続を求めるものであるかを明示する必要があります。
仮登記に基づく本登記をした場合には、当該本登記の順位は、当該仮登記の順位によりますから(法106条)、所有権に関する仮登記に基づく本登記について、登記上の利害関係を有する第三者がある場合には、当該第三者の承諾があるときに限り、申請することができます(法109条1項)。
その申請に当たっては、当該第三者が承諾したことを証する当該第三者が作成した情報又は当該第三者に対抗することができる裁判があったことを証する情報(裁判書の正本等)の提供を要します。当該第三者の権利に関する登記は、登記官が当該申請に基づく本登記をする際に職権により抹消します(法109条2項)。
法109条1項にいう「登記上の利害関係を有する第三者」とは、仮登記に基づく本登記がされた場合において、その不動産に関する権利を害されることが登記の形式上明らかな第三者をいうものと解されています。
所有権に関する仮登記後にされた抵当権その他の制限物権の登記名義人、仮差押・仮処分・差押えの登記名義人などはもちろん、設問のように、所有権に関する仮登記後に所有権登記名義人から所有権移転の登記を経た第三者も、登記上の利害関係人に当たります。すなわち、所有権に関する仮登記後に第三者への所有権移転登記がされた場合の本登記義務者は、仮登記義務者である前の所有権登記名義人であって、現在の所有権登記名義人は、当該仮登記に基づく本登記をするについての登記上の利害関係人として、その承諾がなければ本登記の申請をすることができないということになります。」
「所有権に関する仮登記後に数次の所有権移転の登記がされている場合、これらの数次の移転登記は全て職権抹消されることになりますが、本登記についての承諾は、現在の所有権登記名義人のみの承諾を得れば足りるとされています。」
「なお、所有権の仮登記後に相続による所有権移転の登記がされている場合において、当該仮登記に基づく本登記をするときは、その登記義務者は、相続による所有権移転の登記名義人であり、当該相続登記は本登記に伴い、職権抹消されます」
「仮登記権利者は、仮登記の効力として、これらの第三者に対し、仮登記に基づく本登記についての承諾を求めることができ、他方、当該第三者は、承諾義務を負うことになります。第三者が任意の承諾に応じない場合は、仮登記権利者は、その者に対して、当該仮登記に基づく本登記をするについて承諾すべき旨を請求する訴訟を提訴することができます。この承諾請求訴訟は、仮登記義務者に対する本登記手続請求の訴訟に併合提起しても、あるいは別訴によっても差しつかえありません。」
「設問については、乙の仮登記の本登記手続について甲及び丙の協力が得られない場合には、乙は、甲に対し、その本登記手続を求める訴訟を、丙に対しては、当該本登記について承諾を求めるそれぞれ提起し、勝訴の各確定判決を得た上で、単独で仮登記に基づく本登記の申請をすることができます。同一の判決による場合には、当該判決書の正本が登記原因証明情報と承諾証明情報を兼ねることになります。」
登記って、私のような田舎弁護士にとっては、非常に難解なので、このような書籍があるはありがたいです(但し、いつ、役立つかわかりませんが)
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