【労働・労災】 パート・有期雇用労働者に対する同一労働同一賃金の適用の判断枠組み
不合理な待遇差の禁止等の検証については、難解ともいえますが、堀田陽平弁護士執筆の「企業における多様な働き方と人事の法務」において、わかりやすく解説がされていました。
(1)待遇差の有無・内容と当該待遇の性質・目的を確認
⇒まず、前提として、自社が雇用する従業員に、パート労働者、有期雇用労働者、派遣労働者がいるかを確認し、これらの者の待遇と、比較の対象となる従業員(通常の労働者)の待遇の相違の有無・程度と、当該待遇の性質・目的を確認します。
ここで検討する待遇は、金銭的な待遇だけでなく、休暇、福利厚生、テレワークの可否等あらゆる待遇を検討する必要があります。
(2)職務の内容等の相違を確認
⇒待遇に相違があった場合、次は、「職務の内容等」に違いがあるかを検討することになります。
具体的には、①職務の内容(労働者の業務の内容、当該業務に伴う責任の程度)と、②職務の内容及び配置の変更の範囲が、同一か、相違があるかを確認します。
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上記が「同一」である場合には、厳格な「均等待遇」が要請され、差別的取扱いが禁止されます。
他方で、相違がある場合には、「均衡待遇」が要請され、その待遇差が不合理であるかが判断されます。(1)(2)において、相違のある待遇の性質・目的と、職務の内容等に照らして、当該待遇差が「不合理であるか」を判断することになります。
(石手ダム)
菅野労働法第13版P861にも、均衡待遇と均等待遇の関係について、以下のとおり解説されています。
均等待遇規定は、均衡待遇規定の中に含まれている、通常の労働者と短時間・有期雇用労働者間で、㋐職務の内容及び㋑雇用の焉耆間における職務の内容・配置の変更範囲が同一であって、それら労働者間の異なる取扱いを正当化する「その他の事情」が認められない特別の場合を取り出して、両者の待遇の差別的取扱を禁止したものとなる。
そして、上記の特別の場合が別個に規定された結果、均衡待遇は、㋐㋑のいずれかないし双方の要素が同一でないために均等待遇規定が適用されない場合につき、それら事情と㋒「その他の事情」とを総合勘案して、両者の待遇間の不合理な相違を禁止するものであることになる。
他方で、短時間・有期雇用労働者と通常の労働者間において、「職務の内容」と「職務の内容及び配置の変更の範囲」が同じであれば、均等待遇により、原則として全ての待遇につき同一の待遇を与えることになる。
菅野労働法第13版P863は、主張立証責任についても触れています。
均衡待遇規定についての主張立証責任としては、労契法上の同規定(20条)制定以来、通達や学説は、通常の労働者と短時間・有期雇用労働者間の待遇の相違がある場合において、待遇のそれぞれについて、①職務の内容、②職務内容・配置の変更範囲、③その他の事情を考慮して、不合理な相違がどうかを評価判断するものであり、かかる評価を基礎付ける事実とかかる評価を妨げる事実とを、短時間・有期雇用労働者と事業主の双方がそれぞれ主張立証する責任があるものと解してきた。そして、ハマキュウレックス事件最判もその解釈を承認した。短時間・有期雇用労働者法の同規定も同様になる。
これに対して、差別的取扱い禁止規定については、その趣旨と構造から、原告の短時間・有期雇用労働者が、①通常の労働者と比較しての均衡上の不利益な取扱の存在と、②職務の内容および職務内容・配置の変更範囲の同一性、および③①の不利益取扱いが短時間・有期雇用労働者であることを理由としてされたことを主張立証する責任を負い、これに足して、被告の事業主が当該不利益取扱を正当化する理由を主張立証する責任を負うと考えられる。
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