デザイナー会社から、タオル美術館が訴えられた裁判の第1審である令和6年3月28日付東京地裁判決が紹介されていました。
最高裁判所のHPや、日本ユニ著作権センターのHPからも、判決文の詳細は手に入れることは可能です。
(松山・日浦)
① 絵柄を商品化したタオルについて、絵柄を除くタオル部分には、それ自体独立して美術鑑賞の対象となる創作性を備えているものとはいえないとして、応用美術としての著作物性が否定
本件タオル部分の著作物性について、裁判所は、著作物とは、思想又は感情を創作的に表現したものであって、文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属するものであり、美術の著作物には、美術工芸品が含まれる。そして、美術工芸品以外の実用目的の美術量産品であっても、実用目的に係る機能と分離して、それ自体独立して美術鑑賞の対象となる創作性を備えている場合には、美術の範囲に属するものを創作的に表現したものとして、著作物に該当する。
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これを本件についてみると、被告商品は、A制作に係る本件絵柄をタオルに付して商品化した上、量産化されたものであるから、美術工芸品以外の実用目的の美術量産品であるといえる。そして、被告商品は、先に制作された本件絵柄を利用し製作されたタオル商品であるから、被告商品のうち本件絵柄と共通しその実質を同じくする部分(本件絵柄部分)は、何ら新たな創作的要素を含むものではなく、本件絵柄とは別個の著作物として保護すべき理由はない。
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このような観点~、被告商品のうち、本件絵柄部分を除き、新たに付与された部分(本件タオル部分)の創作性の存否につき検討するに、被告商品は、本件タオル部分において、凹凸、陰影、配色、色合いなどは、本件絵柄と共通しその実質を同じくする部分であると認めるのが相当であり、また、風合い、織り方などは、タオルとしての実用目的に係る機能と密接不可分に関連する部分であるから、当該機能と分離してそれ自体独立して美術鑑賞の対象となる創作性を備えているものとはいえない。
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そうすると、被告商品において、美術鑑賞の対象となるのは、あくまでA制作に係る美術的価値の高い本件絵柄部分であると認めるのが相当であり、一広の制作に係る本件タオル部分は、タオルとしての実用目的に係る機能と分離して、それ自体独立して美術鑑賞の対象となる創作性を備えているものと認めることはできない。
② 著作権者がその著作物に係る実施料のみを得ている場合における著作権法114条2項の適用又は類推適用の可否(消極)
著作権法114条2項は、著作権の排他的独占的効力に鑑み、著作権者、出版権者又は著作隣接権者においてその侵害の行為により売上が減少した逸失利益の額と、侵害者が侵害行為により受ける利益の額とが等しくなるとの経験則に基づき、当該利益の額を著作権者等の売上減少による逸失利益の額と推定するものである。
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しかしながら、著作権者等がその著作物の許諾によって得られる許諾料の額は、売上減少による逸失利益の額とは明らかに異なるものであり、両社が等しくなるとの経験則を認めることはできないことからすると、著作権者等がその著作物の許諾料のみを得ている場合には、前記の推定をする前提を欠くことになる。
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したがって、著作権者等がその著作物の許諾料のみを得ている場合には、著作権法114条2項の規程は適用又は類推適用されない。
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これを本件についてみると、弁論の全趣旨によれば、Aは、デザイナーであり、自身の著作物を管理するカボ企画を通じてライセンス料を得ており、タオル等の製造、販売は行っていない。そうすると、仮に被告らの侵害行為によって原告らの許諾料にかかる収入が減少するという関係が認められたとしても、Aは本件絵柄の許諾料のみを得ていたことになるから、著作権法114条2項の規定は、適用又は類推適用されない。
解説を見る限り、許諾料収入のみ得ている場合に推定規定が適用されるかについては、裁判例は積極的に解しているようです。
逸失利益の額ベースになるとそれは金額は巨大となり、本件でも、数十億円になっております。
他方で、推移亭されないとなれば、そんなに巨額にならないでしょうから、本件でも5000万円弱と認定されています。
そして、被告会社は、先に原告に3億円を前払いしているので、原告の請求棄却となったわけです。
控訴されているようですので、この論点の解釈については変化があるかもしれませんね。
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