【労働・労災】 不合理な待遇差の禁止・差別的取扱いの禁止を図るための人事制度のチェック(実務対応①)とその見直し(実務対応②及び③)及び規程等の整備(実務対応④)
「最新同一労働同一賃金27の実務ポイント」(新日本法規)P48~の抜粋です。
まず、(1)不合理な待遇の禁止(パート・有期雇用労働8)についてです。
事業主は、その雇用するパートタイム・有期雇用労働者の基本給、賞与その他の待遇のそれぞれについて、当該待遇に対応する通常の労働者の待遇との間において、当該パートタイム・有期雇用労働者及び通常の労働者の①職務の内容(業務の内容+責任の程度)、②当該職務の内容及び配置の変更の範囲ならびに③その他の事情のうち、当該待遇の性質及び当該待遇を行う目的に照らして適切と認められるものを考慮して、不合理と認められる相違を設けえはならないことが定められました。
次に、(2)差別的取扱の禁止(パート・有期雇用労働9)についてです。
事業主は、①職務の内容が通常の労働者と同一のパートタイム・有期雇用労働者であって、②当該事業所における慣行その他の事業からみて、当該事業主との雇用関係が終了するまでの全期間において、その職務の内容及び配置が当該通常の労働者の職務の内容及び配置の変更の範囲と同一の範囲で変更されることが見込まれるものについては、パートタイム・有期雇用労働者であることを理由として、基本給、賞与その他の待遇のそれぞれについて、差別的取扱いをしてはならないことが定められました。
そして、(3)実務対応です。
まず、実務対応①は、自社に、パートタイム・有期雇用労働者の対象となる雇用形態の労働者がいるかを確認し、正社員との間に、不合理かいなかはともかくとして、待遇差が存在するかを確認とするための作業です。
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次に、実務対応②は、差別的取扱いの禁止を定めるパートタイム・有期雇用労働法9条の適用を回避するための工夫です。
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次に、実務対応③は、不合理な待遇差の禁止を定めるパートタイム・有期雇用労働法8条に抵触しないようにするための作業です。
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最後に、実務対応④は、実務対応②及び③を実行するために必要な規程等の見直し・整備作業です。
※実務対応②
均等待遇の要件を満たさないようにするためには、①業務に伴う責任の程度と②昇進(人材活用の仕組みの1つ)で、正社員とパートタイム・有期雇用労働者で、明確な差異を設けることです。
①については、正社員とパートタイム・有期雇用労働者で、与えられている権限の範囲、業務の成果について求められている役割、トラブル発生時や臨時・緊急時に求められる対応の程度で、明らかな差異を設ける必要があります。
②については、人材活用の仕組み・運用等の違いとして、転勤が無理であれば、昇進で明らかな差異を設けることです。
※※実務対応③
通常の労働者の賃金は、正社員としての職務を遂行し得る人材の獲得やその定着を図る目的の下に構築されていることを念頭に置いた上で、基本給・賞与・退職金いずれについても、次の3点に留意して、パートタイム・有期雇用労働者の賃金の制度設計をすべきです。それが同一労働同一賃金をクリアすることにつながります。
①通常の労働者とパートタイム・有期雇用労働者との間で、職務の内容等が異なっていること
②基本給・賞与・退職金の決定基準・ルールが、通常の労働者とパートタイム・有期雇用労働者で相違していること
③パートタイム・有期雇用労働者に賞与や退職金を支給しない制度設計とするなら、それは、パートタイム・有期雇用労働者には、決定基準・ルールが設けられていないということです。したがって、通常の労働者に支給や退職金の決定基準・ルールがそのままパートタイム・有期雇用労働者に適用されることがないよう、賞与や退職金の性質・目的をパートタイム・有期雇用労働者には妥当しないものとしておくこと
④通常の労働者への転換を推進するための措置を講じることが事業主に課せられていますが、パートタイム・有期雇用労働者が属人的な身分として固定化されないよう実際に機能する正社員登用制度を設けておくことは、不合理性を判断する上で、「その他の事情」として重要な考慮要素となること。
(東陽町ニケル)
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