【金融・企業法務】 一般的な中小企業のM&Aの流れ のおさらい
一般的なM&Aの手続の流れは、以下のとおりになっております。
以下、M&Aの第一線で活躍されている加藤真朗先生の中小企業のM&Aから適宜抜粋等しながら、解説を加えます。
① 案件化
⇒例えば、M&A仲介業者から、ノンネームシート、案件概要書等と呼ばれるごく簡単な資料が買い手候補に提供されることから始まります。
② 秘密保持契約
⇒案件化すると、M&A当事者間において秘密保持契約が締結されます。秘密保持契約締結後、対象会社の詳細情報(インフォメーション・メモランダム)が買い手に提供されます。その内容は、会社名等会社概要、役員構成等組織構成、事業概要、マーケット概要、商流・仕入れ先・販売先、許認可・法規制、財務状況、中期的な見通し等です。
(中央大学駿河台キャンパスの19F)
③ バリュエーション(企業価値評価)
⇒売却価格を検討するにあたって企業価値を算定します。
④ スキームの策定
⇒バリュエーションと並行して、スキームの策定も行います。スキームの策定に際しての考慮要素は、税務、許認可、簿外債務など多岐にわたします。
⑤ 基本合意(LOI、MOU)
⇒M&A取引については、多くの事案で、当事者間において基本合意が締結されます。M&A取引は契約事項が多岐にわたるため、当事者が全ての事項に関して合意するには長期を要します。そのため、当事者がM&A取引を進めることに前向きな場合は、中間的に基本合意を締結することが多くあります。
⑥ DD
⇒対象会社の内容を調査するため、買い手により、事業DD、財務DD、法務DDなどのDDが実施されます。買い手のリスク回避のために必須のプロセスです。DDの結果によっては、買収自体が取りやめられたり、スキームが再検討されたり、買収価格が主に減額方向で交渉されるなどします。
⑦ 最終契約
⇒当事者間において、DDにより明らかになった問題点を織り込み、最終契約に向けての交渉が行われます。価格だけではなく、クロージングの前提条件、表明保証条項、誓約条項など各種条項について交渉がなされ、合意に至ると最終契約が締結されます。
⇒中小企業のM&Aの場合、クロージングと同日に最終契約が締結されることもあります。
⑧ クロージング
⇒M&A取引における決済日であり、通常はその効力発生日になります。株式譲渡代金の支払や登記必要書類等の授受がなされます。
⇒一般的には、当日に、対象会社の株主総会、取締役会が開催され、登記事項については登記までなされます。
⑨ PMI(買収後の経営統合過程)
⇒M&A当事者の、経営戦略、販売・仕入れ体制、労務管理、情報システム等を有機的・効果的に統合し、M&Aによるシナジー効果を実現するための重要な過程です。
最近では、田舎弁護士の関与先も、M&Aを実施することが増えました。ただ、ごくごく小さな会社(但し、キャッシュは豊富)が、買収型のM&Aを実施する際に、M&Aに馴れていない税理士や中小企業診断士の先生が関与し、後日、莫大な簿外債務が判明し、株式譲渡というスキームを選択したために、とんでもないことになったことがあります。
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