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2024年11月

2024年11月30日 (土)

【金融・企業法務】 仕入先である免税事業者との取引について、インボイス制度の実施を契機として取引条件を見直すことを検討しておりますが、独占禁止法等の上では、どのような行為が問題となりますか? 令和4年1月19日公表の公正取引委員会外作成の免税事業者及びその取引先のインボイス制度への対応に関するQ&A

 インボイス制度関連では、独占禁止法や下請法違反関連のご相談を受けることがあります。このブログでも1度執筆したことがありますが、再度後学のために、公正取引委員会のHPの「免税事業者及びその取引先のインボイス制度への対応に関するQ&A」を紹介いたします。

 A 事業者がどのような条件で取引するかについては、基本的に、取引当事者間の自主的な判断に委ねられるものですが、免税事業者等の小規模事業者は、売上先の事業者との間で取引条件について情報量や交渉力の面で格差があり、取引条件が一方的に不利になりやすい場合も想定されます。
 自己の取引上の地位が相手方に優越している一方の当事者が、取引の相手方に対し、その地位を利用して、正常な商慣習に照らして不当に不利益を与えることは、優越的地位の濫用として、独占禁止法上問題となるおそれがあります。
 仕入先である免税事業者との取引について、インボイス制度の実施を契機として取引条件を見直すことそれ自体が、直ちに問題となるものではありませんが、見直しに当たっては、「優越的地位の濫用」に該当する行為を行わないよう注意が必要です。

 以下では、インボイス制度の実施を契機として、免税事業者と取引を行う事業者がその取引条件を見直す場合に、優越的地位の濫用として問題となるおそれがある行為であるかについて、行為類型ごとにその考え方を示します(注1)

 また、以下に記載する行為類型のうち、下請法の規制の対象となるもの(注2)については、その考え方を明らかにします。下請法と独占禁止法のいずれも適用可能な行為については、通常、下請法が適用されます。なお、以下に記載する行為類型のうち、建設業を営む者が業として請け負う建設工事の請負契約については、下請法ではなく、建設業法が適用されますので、建設業法の規制の対象となる場合についても、その考え方を明らかにします。

(注1)以下において、独占禁止法上問題となるのは、行為者の地位が相手方に優越していること、また、免税事業者が今後の取引に与える影響等を懸念して、行為者による要請等を受け入れざるを得ないことが前提となります。

(注2)事業者(買手)と免税事業者である仕入先との取引が、下請法にいう親事業者と下請事業者の取引に該当する場合であって、下請法第2条第1項から第4項までに規定する①製造委託、②修理委託、③情報成果物作成委託、④役務提供委託に該当する場合には、下請法の規制の対象となります。

(参考1)優越的地位の濫用規制に関する独占禁止法上の基本的な考え方は、「優越的地位の濫用に関する独占禁止法上の考え方」(平成22年公正取引委員会)で示しているとおりです。

(参考2)下請法の運用に関する基本的な考え方は、「下請代金支払遅延等防止法に関する運用基準」(平成15年公正取引委員会事務総長通達第18号)で示しているとおりです。

(参考3)建設工事の請負契約に係る元請負人と下請負人との関係については、「建設業法令遵守ガイドライン(第7版)」(令和3年7月 国土交通省不動産・建設経済局建設業課)で具体的に示しています。

(参考4)下請法及び建設業法並びに独占禁止法の優越的地位の濫用規制に関するご相談については、別紙の「下請法及び建設業法並びに優越的地位の濫用規制に係る相談窓口」までお問い合わせください。

1 取引対価の引下げ

 取引上優越した地位にある事業者(買手)が、インボイス制度の実施後の免税事業者との取引において、仕入税額控除ができないことを理由に、免税事業者に対して取引価格の引下げを要請し、取引価格の再交渉において、仕入税額控除が制限される分(注3)について、免税事業者の仕入れや諸経費の支払いに係る消費税の負担をも考慮した上で、双方納得の上で取引価格を設定すれば、結果的に取引価格が引き下げられたとしても、独占禁止法上問題となるものではありません。

 しかし、再交渉が形式的なものにすぎず、仕入側の事業者(買手)の都合のみで著しく低い価格を設定し、免税事業者が負担していた消費税額も払えないような価格を設定した場合には、優越的地位の濫用として、独占禁止法上問題となります。

 また、取引上優越した地位にある事業者(買手)からの要請に応じて仕入先が免税事業者から課税事業者となった場合であって、その際、仕入先が納税義務を負うこととなる消費税分を勘案した取引価格の交渉が形式的なものにすぎず、著しく低い取引価格を設定した場合についても同様です。

(注3)免税事業者からの課税仕入れについては、インボイス制度の実施後3年間は、仕入税額相当額の8割、その後の3年間は同5割の控除ができることとされています。

 なお、下請法の規制の対象となる場合で、事業者(買手)が免税事業者である仕入先に対して、仕入先の責めに帰すべき理由がないのに、発注時に定めた下請代金の額を減じた場合には、下請法第4条第1項第3号で禁止されている下請代金の減額として問題となります。この場合において、仕入先が免税事業者であることは、仕入先の責めに帰すべき理由には当たりません。

 また、下請法の規制の対象となる場合で、事業者(買手)が免税事業者である仕入先に対して、給付の内容と同種又は類似の内容の給付に対して通常支払われる対価に比べて、免税事業者が負担していた消費税額も払えないような下請代金など、著しく低い下請代金の額を不当に定めた場合には、下請法第4条第1項第5号で禁止されている買いたたきとして問題となります。

 下請法の規制の対象となる場合で、事業者(買手)からの要請に応じて仕入先が免税事業者から課税事業者となった場合であって、給付の内容と同種又は類似の内容の給付に対して通常支払われる対価に比べて著しく低い下請代金の額を不当に定めた場合についても、同様です。

 なお、建設業法の規制の対象となる場合で、元請負人(建設工事の下請契約における注文者で建設業者であるもの。以下同じ。)が、自己の取引上の地位を不当に利用して免税事業者である下請負人(建設工事の下請契約における請負人。以下同じ。)と合意することなく、下請代金の額を一方的に減額して、免税事業者が負担していた消費税額も払えないような代金による下請契約を締結した場合や、免税事業者である下請負人に対して、契約後に、取り決めた下請代金の額を一方的に減額した場合等により、下請代金の額がその工事を施工するために通常必要と認められる原価に満たない金額となる場合には、建設業法第19条の3の「不当に低い請負代金の禁止」の規定に違反する行為として問題となります。

2 商品・役務の成果物の受領拒否、返品

 取引上の地位が相手方に優越している事業者(買手)が、仕入先から商品を購入する契約をした後において、仕入先が免税事業者であることを理由に、商品の受領を拒否することは、優越的地位の濫用として問題となります。
 また、同様に、当該仕入先から受領した商品を返品することは、どのような場合に、どのような条件で返品するかについて、当該仕入先との間で明確になっておらず、当該仕入先にあらかじめ計算できない不利益を与えることとなる場合、その他正当な理由がないのに、当該仕入先から受領した商品を返品する場合には、優越的地位の濫用として問題となります。

 なお、下請法の規制の対象となる場合で、事業者(買手)が免税事業者である仕入先に対して、仕入先の責めに帰すべき理由がないのに、給付の受領を拒む場合又は仕入先に給付に係る物を引き取らせる場合には、下請法第4条第1項第1号又は第4号で禁止されている受領拒否又は返品として問題となります。この場合において、仕入先が免税事業者であることは、仕入先の責めに帰すべき理由には当たりません。

3 協賛金等の負担の要請等

 取引上優越した地位にある事業者(買手)が、インボイス制度の実施を契機として、免税事業者である仕入先に対し、取引価格の据置きを受け入れるが、その代わりに、取引の相手方に別途、協賛金、販売促進費等の名目での金銭の負担を要請することは、当該協賛金等の負担額及びその算出根拠等について、当該仕入先との間で明確になっておらず、当該仕入先にあらかじめ計算できない不利益を与えることとなる場合や、当該仕入先が得る直接の利益等を勘案して合理的であると認められる範囲を超えた負担となり、当該仕入先に不利益を与えることとなる場合には、優越的地位の濫用として問題となります。
 その他、取引価格の据置きを受け入れる代わりに、正当な理由がないのに、発注内容に含まれていない役務の提供その他経済上の利益の無償提供を要請することは、優越的地位の濫用として問題となります。

 なお、下請法の規制の対象となる場合で、事業者(買手)が免税事業者である仕入先に対して、自己のために金銭、役務その他の経済上の利益を提供させることによって、仕入先の利益を不当に害する場合には、下請法第4条第2項第3号で禁止されている不当な経済上の利益の提供要請として問題となります。

4 購入・利用強制

 取引上優越した地位にある事業者(買手)が、インボイス制度の実施を契機として、免税事業者である仕入先に対し、取引価格の据置きを受け入れるが、その代わりに、当該取引に係る商品・役務以外の商品・役務の購入を要請することは、当該仕入先が、それが事業遂行上必要としない商品・役務であり、又はその購入を希望していないときであったとしても、優越的地位の濫用として問題となります。

 なお、下請法の規制の対象となる場合で、事業者(買手)が免税事業者である仕入先に対して、給付の内容を均質にし、又はその改善を図るため必要がある場合その他正当な理由がある場合を除き、自己の指定する物を強制して購入させ、又は役務を強制して利用させる場合には、下請法第4条第1項第6号で禁止されている購入・利用強制として問題となります。

 また、建設業法の規制の対象となる場合で、元請負人が、免税事業者である下請負人と下請契約を締結した後に、自己の取引上の地位を不当に利用して、当該下請負人に使用資材若しくは機械器具又はこれらの購入先を指定し、これらを当該下請負人に購入させて、その利益を害すると認められた場合には、建設業法第19条の4の「不当な使用資材等の購入強制の禁止」の規定に違反する行為として問題となります。

5 取引の停止

 事業者がどの事業者と取引するかは基本的に自由ですが、例えば、取引上の地位が相手方に優越している事業者(買手)が、インボイス制度の実施を契機として、免税事業者である仕入先に対して、一方的に、免税事業者が負担していた消費税額も払えないような価格など著しく低い取引価格を設定し、不当に不利益を与えることとなる場合であって、これに応じない相手方との取引を停止した場合には、独占禁止法上問題となるおそれがあります。

6 登録事業者となるような慫慂等

 課税事業者が、インボイスに対応するために、取引先の免税事業者に対し、課税事業者になるよう要請することがあります。このような要請を行うこと自体は、独占禁止法上問題となるものではありません
 しかし、課税事業者になるよう要請することにとどまらず、課税事業者にならなければ、取引価格を引き下げるとか、それにも応じなければ取引を打ち切ることにするなどと一方的に通告することは、独占禁止法上又は下請法上、問題となるおそれがあります。例えば、免税事業者が取引価格の維持を求めたにもかかわらず、取引価格を引き下げる理由を書面、電子メール等で免税事業者に回答することなく、取引価格を引き下げる場合は、これに該当します。また、免税事業者が、当該要請に応じて課税事業者となるに際し、例えば、消費税の適正な転嫁分の取引価格への反映の必要性について、価格の交渉の場において明示的に協議することなく、従来どおりに取引価格を据え置く場合についても同様です(上記1、5等参照)。
 したがって、取引先の免税事業者との間で、取引価格等について再交渉する場合には、免税事業者と十分に協議を行っていただき、仕入側の事業者の都合のみで低い価格を設定する等しないよう、注意する必要があります。

20241104_1314312                              (星ヶ森)

 インボイス制度後の免税事業者との取引に係る下請法等の考え方として、3つの事例を紹介しております

 事例1 報酬総額11万円で契約を行った。取引完了後、インボイス発行事業者でなかったことが、請求段階で判明したため、下請事業者が提出してきた請求書に記載された金額にもかかわらず、消費税相当額の1万円の一部又は全部を支払わないことにした。

 ⇒それ、下請法違反です。発注者(買手)が下請事業者に対して、免税事業者であることを理由に、消費税相当額の一部又は全部を支払わない行為は、下請法第4条第1項第3号で禁止されている下請代金の減額として問題となります。

 事例2 継続的に取引関係のある下請事業者と、免税事業者であることを理由に単価10万円で発注を行った。その後、今後の取引があることを踏まえ、下請事業者に課税転換を求めた。結果、下請事業者が課税事業者となったにもかかわらず、その後の価格交渉に応じず、一方的に単価を据え置くこととした。

 ⇒それ、下請法違反です。下請事業者が課税事業者になったにもかかわらず、免税事業者であることを前提に行われた単価からの交渉に応じず、一方的に従来どおりに単価を据え置いて発注する行為は、下請法第4条第1項第5号で禁止されている買いたたきとして問題となります。

 事例3 課税事業者が、取引先である免税事業者に対して、課税転換を求めた。その際、インボイス事業者にならなければ、消費税分はお支払いできません。承諾いただけなければ今後の取引は考えさせていただきますという文言を用いて要請を行った。また、要請にあたっての価格交渉も応じなかった。

 ⇒それ、独占禁止法上問題となります。課税事業者になるよう要請すること自体は独占禁止法上問題となりませんが、それにとどまらず、課税事業者にならなければ取引価格を引き下げる、それにも応じなければ取引を打ち切るなとと一方的に通告することは、独占禁止法上問題となるおそれがあります。また、課税事業者となるに際して、価格交渉の場において明示的な協議なしに価格を据え置く場合も同様です。

 

 

2024年11月29日 (金)

【離婚】親族法の親子、夫婦に関連する部分の改正がありました😅

 銀行法務21・11月に掲載された「2024年通常国会成立の金融関係法の概要」の一部です。

 親族法の親子、夫婦に関連する部分を中心とした民法の改正があり、令和6年5月24日に公布されました。改正法の施行は、公布日から2年以内の政令で定める日となっております。

 第1に、離婚後の共同親権が認められたということです。従前は、父母が協議離婚をする際には、協議で、その一方を親権者と定めなければなりませんでした。改正法は、その双方または一方を親権者と定めることとされ、父母双方が共同親権者となり得ることになりました。裁判上の離婚における裁判所の判断においても同様です。もっとも、裁判所は、子の利益、父と母との関係その他の一切の事情を顧慮し、共同親権によってこの利益が害されるときは、父母の一方を親権者と定めなければならないことになりました。

 第2に、父母の共同親権を原則とした上で、一方が親権を行うことができないときや、子の利益のため急迫の事情があるとき、監護および教育に関する日常行為に係る親権の行使については、他方のみで親権行使が可能になりました。但し、特定事項に係る親権の行使について、父母間の協議が整わず、子の利益のために必要とあるときは、裁判所が当該事項に係る親権の行使を父母の一方が単独でできる旨定められました。

 第3に、父母が協議上の離婚をするときは、子の監護の分掌についても協議で定めることとしたほか、父母が子の監護に要する費用の分担を定めなかったときでも、子の監護を主として行っている父または母が、他方に対して、毎月末に、養育費の支払いを請求できるようになりました。

 第4に、養育費を一般の先取特権を有する債権として優先権を認めるとともに、債務名義がなくても、子の監護を主として行っている父または母は、子の養育費であることを証する文書を提出することで、他方に対する財産開示手続や給料に係る情報取得の申立等ができるようにして、当該申立がなされたときは、その開示された債権に対する差押命令の申立てがなされたものとみなされることになりました。

 第5に、面会交流については、父母以外の親族についても、家庭裁判所が審判で定めることができるようになりました。

 第6に、配偶者の強度の精神病が離婚原因の1つから外れたほか、夫婦間契約についての夫婦間の取消権も削除されました。

 第7に、離婚の際の財産分与の除斥期間についても、従来は、離婚の時から2年とされていたものが5年に伸長されたほか、財産分与を決めるにあたっての婚姻中の財産の取得、維持についての各当事者の寄与の程度は、原則として相等しいものとされました。

 世間では、共同親権が大きく取り上げられていますが、実は、共同親権以外にも大きな改正がされております。

 マチ弁であれば、絶対に必要な知見ですので、学習しておく必要があります。

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                              (横峰寺)

 先日横峰寺を参詣しました。暑かったのでアイスクリンをいただきました😅

2024年11月28日 (木)

【労働・労災】 詳解裁量労働制

 今月中央経済社からTMI編集の詳解裁量労働制が出版されましたので予約注文していたところ、先日田舎弁護士の元に届きました。

 6つの章で構成されています。①裁量労働制の概要、②専門業務型裁量労働制、③企画業務型裁量労働制、④他の法令と裁量労働制との関係、⑤裁量労働制に係る労働基準監督署の監督指導への対応、⑥裁量労働制の導入例です。

 田舎弁護士的には、弁護士との関係でも問題となる②専門業務型裁量労働制を中心に読みました😅

 同書P44には以下のとおり解説されています。

 「専門業務型裁量労働制は、法令に列挙されている専門的な業務(対象業務)に従事する労働者について、実際の労働時間(実労働時間)にかかわらず、あらかじめ労使協定で定めた時間(みなし労働時間)を労働したものとみなす制度である(労基法38条の3)。

  例えば、労使協定でみなし労働時間を1日8時間と定めた場合、実際には1日7時間労働した日でも1日9時間労働した日でも、1日8時間労働したものとみなされる。」

 ⇒裁量労働制はあくまでみなし労働時間制であり、「労働時間の算定」に関する特例にすぎないため、労働時間に関する規定の適用が除外されるわけではなく、労働時間に関する規定における「労働時間」の算定方法(カウント法法)を「実労働時間」ではなく「みなし労働時間」で行うというものである。P96

 「専門業務型裁量労働制の導入までの流れとしては、①労使協定の締結、②労働基準監督署長への労使協定の届出、③労働契約上の根拠を定めること、④労働者の津甥取得、⑤対象業務に就かせることの5つのステップがある。そして、これらのステップを踏むことにより、専門業務型裁量労働制が適用され、みなし労働時間という法的効果が生じることとなる。」

 ⇒対象業務の中には、弁護士の業務(労基則24条の2の2第2項6号、対象業務告示10号)があります。

 ⇒対象業務の中の、「学校教育法に規定する大学における教授研究の業務主として研究に従事するものに限る)(労基則24条の2の2代2項6号、対象業務告示7号」では、かなり詳しい解説が掲載されています。「基発」は省略しますね。

 「『教育研究の業務』とは、学校教育法に規定する大学の教授、准教授又は講師の業務をいう。『教授研究』とは、学校教育法に規定する教授等が、学生を教授し、その研究を指導し、研究に従事することをいう。『主として研究に従事する』とは、業務の中心はあくまで研究の業務であることをいうものであり、具体的には、研究の業務のほかに講義等の授業の業務に従事する場合に、その時間が、多くとも、1週の所定労働時間又は法定労働時間のうち短いものについて、そのおおむね5割に満たない程度であることをいう。

 なお、大学病院等において行われる診療の業務について、専ら診療行為を行う教授等が従事するものは、教授研究の業務に含まれないものであるが、医学研究を行う教授等がその一環として従事する診療の業務であって、チーム制(複数の医師が共同で診療の業務を担当するため、当該診療の業務について代替要員の確保が容易である体制をいう)により行われるものは、教授研究の業務として取り扱って差し支えない。

 学校教育法に規定する大学の助手については、専ら人文科学又は自然科学に関する研究の業務に従事する場合には、労基則24条の2の2第2項1号に基づき、専門業務型裁量労働制の対象となる。

 学校教育法に規定する大学の助教については、専ら人文科学又は自然科学に関する研究の業務に従事すると判断できる場合は、労基則24条の2の2第2項1号の業務のうち「人文科学若しくは自然科学に関する研究の業務」として専門業務型裁量労働制の対象業務と取り扱う。

 なお、この場合において助教は、教授の業務を行うことができることになっていることから、その時間が、1週の所定労働時間又は法定労働時間のうち短いものの1割程度以下であり、他の時間においては人文科学又は自然科学に関する研究に従事するものとして取り扱って差し支えない。」 

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(横峰寺)
 「専門業務型裁量労働制の導入後の態様として、①同意の撤回、②適用解除、③実施把握(定期的なモニタリング)、④記録の作成及び保存、⑤健康・福祉確保措置、苦情処理措置の実施がある。」
 裁量労働制ですが、労働案件を積極的に取り扱っている弁護士でなければ、地方では、余り知見のない弁護士も少なくないと思いますが、今後増えることが想定されている制度でもあり、また、本書は改正法の立法に携わった弁護士が執筆しており、信頼性が高い書籍となっております😄 

2024年11月27日 (水)

【法律その他】 改正障害者差別解消法が令和6年4月1日から施行されました。

 我が国においては、障害のある人もない人も、お互いにその人らしさを認め合いながら、共に生きる社会を実現することを目指しています。障害者差別解消法では、障害を理由とする不当な差別的取り扱いを禁止し、障害のある人から申出があった場合に、合理的配慮の提供を求めることを通じて、共生社会を実現しようとしております。

 令和6年4月1日から、改正障害者差別解消法が施行され、事業者による障害のある人への合理的配慮の提供が法的義務となりました。

 同法第8条第1項は、事業者は、その事業を行うに当たり、障害を理由として、障害者でない者と不当な差別的取扱いをすることにより、障害者の権利利益を侵害してはならない と規定しております。

 もっとも、障害のある人に対する障害を理由とした異なる取扱いに正当な理由がある場合、すなわち、①その行為が客観的に見て正当な目的の下に行われたものであり、②その目的に照らしてやむを得ないと言えるものは、不当な差別的取扱いにはならないとされています。

 正当な理由に相当するか否かについては、個別の事案毎に、障害者、事業者、第三者の権利利益から、具体的場面や状況に応じて総合的・客観的に判断する必要があります。

 次に、同法第8条第2項は、事業者は、その事業を行うに当たり、障害者から現に社会的障壁の除去を必要としている旨の意思の表明があった場合において、その実施に伴う負担が過重でないときは、障害者の権利利益を侵害することとならないよう、当該障害者の性別、年齢及び障害の状態に応じて、社会的障壁の除去について必要かつ合理的な配慮をしなければならない と規定しております。

 これを合理的配慮の提供と呼んでいます。

 そして、障害者からの申出への対応が難しい場合でも、建設的対話と相互理解を深めることで、目的に応じた代替手段をみつけることが可能となります。

 そして、同法第12条によれば、主務大臣は、第8条の規定の施行に関し、特に必要があると認めるときは、対応指針に定める事項について、当該事業者に対し、報告を求め、又は助言、指導若しくは勧告をすることができる と規定して、実効性の確保を図っております(報告をしない、あるいは虚偽の報告をした場合には、20万円以下の過料に処せられます。第26条)。 

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(星ヶ森)
 ところで、この法律では、障害者の表記ですが、他の文献等では、障がい者等の表記も散見されます。
 
 令和4年公表「公用文作成の考え方」のポイントと文例P98では、「現在『障害者』という語は様々な議論があり、『障碍者』『障がい者』等の表記も行われているが、この「公用文作成の考え方」においては『障害者』という表記を用いている。」と解説されています。
 
 また、京都府亀岡市においては、原則として、「障がい」と表記するものの、例外として、①国等の法令、制度などの名称や用語、地方公共団体の条例を用いる場合、②国、その他の機関・団体の名称等の固有名詞を用いる場合、③対象が人でない場合には、「障害」の表記を用いるということです。  

2024年11月26日 (火)

【労働・労災】 フレックスタイム制

 フレックスタイム制は、昭和62年の労基法改正により導入された制度で、平成30年にも改正がなされています。

 田舎弁護士のころは、司法試験の受験科目には、労働法は選択科目という位置づけで必須科目とはされていませんでした。田舎弁護士は、国際公法を選択し、それはそれなりにおもしろい科目ではあったのですが、実務に有益かどうかという点からすれば、国際公法はまず使わないので、労働法や破産法、あるいは両訴訟法を選択していた方が役立っていたと思います。

 フレックスタイム制のおさらいのために、菅野労働法P466以下を適宜引用しながら、解説したいと思います。

 「フレックスタイム制とは、労働者が、1か月などの単位期間のなかで一定時間数(契約時間)労働することを条件として、1日の労働時間を自己の選択する時に開始し、かつ終了できる制度である。」

 単位期間は、当初は、1か月以内でしたが、平成30年の法改正では、3か月以内に拡張しました。

 「通常は、出退勤のなされるべき時間帯(フレキシブルタイム)が定められる。また、全員が必ず勤務すべき時間帯(コアタイム)を定めるものが多い。」

 「要件 (ア)始業・終業時刻自主決定の就業規則上の保障

  フレックスタイム制の第1の要件は、一定範囲の労働者につき始業・終業時刻を各労働者の決定に委ねることを就業規則で定めることである(労基法法32条の3第1項)。」

 使用者は、コアタイムの時間帯を除き、労働者に対して、ある時刻までの出勤や居残りを命ずることができないことになります(これらは労働者の同意を得てはじめて行うことができます)

 「(イ)労使協定の締結

  第2の要件は、一定の事項を定めた事業場の労使協定を締結することである。」

  単位期間において働くべき「総労働時間」は、いわば当該期間の総所定労働時間であり、労働者はその時間分の労働義務を負うので、単位期間を通じての総実労働時間がそれに不足する場合は、不足分は欠勤時間として取り扱われ、超過する部分は、超過分は所定外労働時間として取り扱われます。総労働時間は、平均して週の法定労働時間を超えないものであることが要求されています。

 「法的効果 1か月以内の期間のフレックスタイム制

 「上記の要件を満たせば、使用者は、1か月以内の清算期間のフレックスタイム制をとる労働者について、清算期間を平均し週法定労働時間(40時間)を超えない範囲内において、1週または1日の法定労働時間を超えて「労働させる」(つまり、本人が自らの選択で労働することを放任する)ことができる。いいかえれば、上記のフレックスタイム制をとる場合は、1週および1日については法定労働時間を超えても時間外労働とならない。」

 ⇒1か月以内の清算期間のフレックスタイム制において時間外労働が成立するのは、労働者が自らの選択で労働時間を按配した結果、当該清算期間における労働時間の合計が清算期間における法定労働時間の枠を超えた場合ということになります。 

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(横峰寺バス停)
 勉強しないといけない分野が増えていますね。

2024年11月25日 (月)

【労働・労災】 専門業務型裁量労働制

 最近、裁量労働制を導入するところが増えております。田舎弁護士の業種である弁護士を採用する場合も同様です。

 菅野労働法を読みながら考えたいと思います。

 裁量労働制は、専門業務型であれ、企業業務型であれ、法所定の業務について労使協定でみなし労働時間数を定めた場合には、当該業務を遂行する労働者については、実際の労働時間数に関わりなく協定で定める時間数労働したものと「みなす」ことができる制度です

 菅野労働法は、ただしとして、「裁量労働のみなし制においても、休憩、休日、時間外・休日労働、深夜業の法規制は依然として及ぶ。したがって、みなし労働時間数が法定労働時間を超える場合には、超えた同時間数分については三六協定の締結・届出と割増賃金の支払が必要である。また、深夜時間帯において労働が行われた場合には、その時間帯については割増賃金の支払が必要となると解説されています。

 HRNews 弁護士が解説 大学教員の裁量労働制において、裁量労働制の留意点として、小國隆輔弁護士が、概ね以下のとおり解説されています。

 完全週休2日制の大学で、大学の教員については、実労働時間にかかわらず、1日8時間労働とみなすという裁量労働制を導入した場合、本来、休日である土曜日に、3時間だけでも働いた場合には、裁量労働制のもとでは、土曜日の労働時間は8時間とみなされる関係上、この週の労働時間は、8時間×6日=48時間となり、週40時間の法定労働時間を超えるので、土曜日の労働に対しては、8時間分の割増賃金の支払が必要になってしまう。また、深夜(午後10時~翌日午前5時)の時間帯に労働をした場合には、深夜労働の割増賃金が発生する。裁量労働制を導入する際には、土日曜日を対象外にする、週2日の休日を確実に確保する、深夜労働をさせない、休日出勤の事前承認制を徹底して、予想外の人件費増加を招かないようにしたい。

 また、小國弁護士は、大学教員に専門業務型裁量労働制を適用するに際して、教授、准教授、助教、助手、講師について、厚労省通達では、教授、准教授、講師は、学校教育法に規定する大学の教授研究の業務(主として研究に従事するものに限る)に、助教・助手は、人文科学若しくは自然科学に関する研究の業務に該当するという解釈が示されているので、それに基づいて運用されていることが一般的だと説明されています。

 他方、厚労省通達では、主として研究に従事するものに限るの解釈につき、講義等の授業の業務に従事する場合に、その時間がおおむね5割に満たない程度をいうとされており、実務的には、おおむね5割は比較的緩やかに解されていること、他方、人文科学若しくは自然科学に関する研究の業務については、9割程度は研究業務に従事することが必要であるところ、助教については判断が微妙なので、教授等と同様に「大学の教授研究の業務」に該当すると考える余地があることを指摘されています。

 また、平成31年4月1日施行の働き方改革法の適応により、原則として、全労働時間の状況を把握する義務が課せられた(労衛法66条の8の3)ところ、裁量労働制を適用される大学教員も、タイムカードやICカード等で、実労働時間を把握して記録しなければならなくなりました。そのため、小國弁護士は、特に、土曜日日曜日に大学へ来て兼業副業の作業をする場合などには、時間外休日労働にならないよう、兼業副業のために研究室等に滞在することを明確にさせることに加えて、タイムカードの打刻をしないよう、ルールを決めておくべきと指摘しています。

 なお、専門業務型裁量労働制の要件は、労使協定、就業規則の整備は当然ですが、制度の適用に際して本人の同意を得ることや、また、同意の撤回も可能となっておりますので、少々ハードルが高いところがあります。 

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(厳島社)
 なお、国立大学法人広島大学のHPには、専門業務型裁量労働制(令和6年4月以降)についての情報(概要、適用対象職員、適用に関する同意
非同意確認書、労働時間等の取り扱い、協定)が掲載されています。
 専門業務型裁量労働制の適用/非適用による労働時間等の違いについての表は、明快でわかりやすいです。
 なお、深夜帯に勤務する場合は、どうすればよいのですか?という質問(Q10)に対しては、「深夜帯(22:00から翌日の5:00まで)に勤務する場合には、「休日・深夜労働許可申請書」により事前に部局等の長に申請し、許可を受ける必要があります。ただし、健康・福祉確保の観点から、原則として、許可できません。なお、深夜帯での研究のうち、自己を高めるための研鑽、研修としての性格を有するものについては、部局等の長の許可なしで、当該教員等が健康等に留意しつつ、自己責任で行うことができます。」と回答されています。 
 松山市にある某私立大学において、平成30年4月の裁量労働制の導入により支給されなくなった夜間や休日の残業代などあわせて3700万円余りの支払を求める訴訟が提訴されて、昨年暮れに、大学側に1800万円の支払を命ずる旨の判決が松山地裁にて出されたということが報道されていました。報道によれば、労使協定の際に代表者の選出方法に問題があつたとして協定が無効になったようです。なお、同事案では、学部長が管理監督者に該当するかどうかも争いになったようですが、裁判所は否定しております。
 裁量労働制を導入する場合には、いろいろと検討しなければならないようです😅

 

2024年11月24日 (日)

【法律その他】動物愛護管理法の概要

 動物愛護管理法を少し調べてみました。

 動物介護管理法の概要は以下のとおりです。

 (1)基本原則
 すべての人が「動物は命あるもの」であることを認識し、みだりに動物を虐待することのないようにするのみでなく、人間と動物が共に生きていける社会を目指し、動物の習性をよく知ったうえで適正に取り扱うよう定めています。

 (2)動物愛護週間
広く国民の間に動物の愛護と適正な飼養についての関心と理解を深めるため、毎年9月20日から26日までを動物愛護週間とし、国及び地方公共団体ではその趣旨にふさわしい行事を実施しています。

 (3)動物の飼い主等の責任
 動物の飼い主は、動物の種類や習性等に応じて、動物の健康と安全を確保するように努め、動物が人の生命等に害を加えたり、迷惑を及ぼすことのないように努めなければなりません。また、みだりに繁殖することを防止するために不妊去勢手術等を行うこと、動物による感染症について正しい知識を持ち感染症の予防のために必要な注意を払うこと、動物が自分の所有であることを明らかにするための措置を講ずること等に努めなければなりません。なお、動物の所有情報を明らかにするためにマイクロチップなどによる所有明示を推進しています。

 なお、令和元年6月に改正された動物愛護管理法において、販売される犬及び猫に対し、マイクロチップの装着、所有者情報の登録等が義務化されました。

 (4)動物の飼養及び保管等に関するガイドライン
 家庭動物、展示動物、畜産動物、実験動物のそれぞれについて、動物の健康と安全を確保するとともに動物による人への危害や迷惑を防止するための飼養及び保管等に関する基準を定めています。

 また、動物を科学的利用に供する場合は、いわゆる「3Rの原則(苦痛の軽減等)」等に配慮するように努めなければなりません。また、実験動物を利用する際には苦痛の軽減、動物に代わり得るものの利用、数の少数化などの基準を定めています。

 (5)動物取扱業者の規制
 第一種動物取扱業者(動物の販売、保管、貸出、訓練、展示、競りあっせん、譲受飼養を営利目的で業として行う者)は、動物の適正な取扱いを確保するための基準等を満たしたうえで、都道府県知事又は政令指定都市の長の登録を受けなければなりません。登録を受けた動物取扱業者には、動物取扱責任者の選任及び都道府県知事等が行う研修会の受講が義務づけられています。また、都道府県知事又は政令指定都市の長は、施設や動物の取り扱いについて問題がある場合、改善するよう勧告や命令を行うことができ、必要がある場合には立入検査をすることができます。悪質な業者は、登録を拒否されたり、登録の取消や業務の停止命令を受けることがあります。

 また、飼養施設を設置して営利を目的とせず一定数以上の動物の取扱いを行う場合については、第二種動物取扱業者(動物の譲渡し、保管、貸出、訓練、展示を非営利で業として行う者)として、都道府県知事や政令指定都市の長に届け出なければなりません。

 (6)周辺の生活環境の保全
 多数に限らず1頭の動物を飼うことによっても、不適正な飼養により、周辺の生活環境が損なわれている事態が生じていると認められる場合、都道府県知事又は政令指定都市の長は、その事態を生じさせている者(飼い主等)に対して必要な措置をとるように指導、助言、勧告や命令等を行うことができます。

 (7)危険な動物の飼養規制
 国が定めた危険な動物とその交雑種は令和2年6月1日から愛玩の目的での飼養ができなくなりましたが、動物園や試験研究等で飼う場合は、法律に基づき都道府県知事又は政令指定都市の長の許可を受ける必要があり、動物が脱出できない構造の飼養施設を設けるなどして、事故防止を図らなければなりません。また、飼うにあたってはマイクロチップなどによる個体識別措置が義務づけられています。

 (8)犬及び猫の引取り等
 都道府県、政令指定都市又は中核市は、犬及び猫の引取りを行うとともに、道路、公園、広場、その他の公共の場所において発見された負傷動物等の収容を行います。

 (9)基本指針と推進計画
 動物の愛護及び管理に関する施策を総合的に推進するため、環境大臣が基本指針を、都道府県は推進計画を定めます。

 (10)動物愛護推進員と協議会
 都道府県知事等は動物の愛護と適正な飼養を推進するため、動物愛護推進員を委嘱するとともに、動物愛護推進員の活動を支援するため協議会を組織することができます。

 (11)罰則


 愛護動物* をみだりに殺し又は傷つけた場合は、5年以下の懲役又は500万円以下の罰金に処されます。

 また、愛護動物に対し

 みだりに、その身体に外傷が生ずるおそれのある暴行を加え、又はそのおそれのある行為をさせること

 みだりに、給餌若しくは給水をやめ、酷使し、その健康及び安全を保持することが困難な場所に拘束し、又は飼養密度が著しく適正を欠いた状態で愛護動物を飼養し若しくは保管することにより衰弱させること

 自己の飼養し、又は保管する愛護動物であって疾病にかかり、又は負傷したものの適切な保護を行わないこと

 排せつ物の堆積した施設又は他の愛護動物の死体が放置された施設であって自己の管理するものにおいて飼養し、又は保管すること

 その他の虐待を行った者は、1年以下の懲役又は100万円以下の罰金に処され、遺棄した者も、1年以下の懲役又は100万円以下の罰金に処されます。

*愛護動物とは 1 牛、馬、豚、めん羊、山羊、犬、猫、いえうさぎ、鶏、いえばと及びあひる 2 その他、人が占有している動物で哺乳類、鳥類又は爬虫類に属するもの

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(ほこりたけ)
 環境省のHPには、動物保護法違反により刑事事件になった2009年から2018年までの事案が紹介されています。
 (なお、2019年から2022年の事案も、追加されています。)
 罰金刑も多いようですが、最近の事案でも、執行猶予つきながらも、懲役8月、懲役1年6月もあるようです。
 なお、昨年1月に京都地裁で言い渡された事案は、爪を根本から切り舌を切断した京都猫殺傷事件は、とても酷い内容のものです。

 ① 6月19~23日の間に、自宅で、スコティッシュフォールドの18本の爪すべてを根本まで切り、同月27日までの間に同猫の舌を切断し、同猫の胸腹部を圧迫して、外傷性ショックにより殺害したこと

 ② 6月25日~7月23日にかけて、自宅で、エキゾチックショートヘアー1匹について、胸部に外傷を加えて肺出血させたこと

 ③ 6月30日~8月3日にかけて、自宅で、マンチカンのヒゲをタバコの火で焼損したこと

 ④ 7月2日~8月3日にかけて、自宅で、アメリカンショートヘアに過度の深爪をし、ヒゲをタバコの火で焼損したこと

 ⑤ 7月21日~8月3日にかけて、自宅で、ミヌエットに過度の深爪をし、しっぽをつかんで振り回ししっぽを脱臼させた件

 懲役1年6か月 保護観察付きの執行猶予判決でした。

 このような事案は、実刑もよかつたのではないでしょうか。

2024年11月23日 (土)

【学校】 試験の成績等の開示請求について 「情報公開・開示請求実務マニュアル」(平成28年)

 少し古くはなりましたが、「情報公開・開示請求実務マニュアル」に、試験の成績等の開示請求についての解説がされていました。

 わかりやすいと思いましたので、橋折ながら、説明したいと思います。

 この解説は旧法のものですが、現行の個人情報保護法についてもそのまま当てはまると思います。

 行政機関個人情報保護法14条7号柱書(旧法)は、国の機関、独立行政法人等、地方公共団体または地方独立行政法人が行う事務または事務に関する情報であって、開示することにより当該事務または事業の性質上、当該事務または事業の適正な遂行に支障を及ぼすおそれがあるものを不開示情報と定めている。

                          ↓

 本号に制度趣旨について、東京地判平成25年2月7日および東京地判平成25年7月4日は、国の機関等が行う事務・事業は、公共の利益のためのものであり、開示請求に基づく開示により事務・事業の適正な遂行に支障を及ぼすおそれのある情報を不開示とすることに合理的な理由があるため、これらの情報を不開示情報としたものであるとした上で、当該事務又は事業の適正な遂行に支障を及ぼすおそれとは、当該事務・事業の目的、その目的達成のための手法等に照らして、その適正な遂行に支障を及ぼすおそれをいう

                          ↓

 本号にいう支障の程度につき、大阪地判平成20年1月31日は、名目的なものでは足りず実質的なものが要求され、おそれの程度も単なる確率的な可能性ではなく、法的保護に値する蓋然性が必要とする。

 東京地判平成25年2月7日は、ほぼ同趣旨を説いた上で、さらに、これらの要件の判断にあたっては、個人情報開示請求をした者が当該情報を知る利益と、客観的具体的に想定される当該情報を開示することにより生じる不利益とを比較考量して判断すべきとする。

                          ↓

 大阪地判平成20年1月31日は、新司法試験受験者である原告が法務大臣に対して行った答案およびそれを採点した考査委員が付した素点が記載された文書の開示請求の一部不開示処分決定処分取消請求について、司法試験委員会において回答の困難な質問や照会を増大させ、同委員会が本来の業務以外にかかる質問や照会に対する対応に今まで以上に時間を割かれるようになり、事柄の性質上、十分な時間を割いても受験者らが納得する回答ができるものでもないことなどを理由に、開示により司法試験事務の適正な遂行に実質的な支障をおよぼすおそれが、法的保護に値する蓋然性の程度まで認められるとして、請求を棄却しました。

 大阪地判平成20年1月31日が掲載された判例タイムズNo1267によれば、「試験に関連する情報公開の裁判例としては、

 公立学校教員採用選考筆記審査の択一式問題とその解答の開示を求めた事案についての、高知地裁平成10年3月31日判決(原告負け)、その控訴審である高松高裁平成10年12月24日判決(原告勝ち)、その上告審である最高裁平成14年10月11日判決(原告勝ち)

 保育士試験における自己の解答用紙及び問題ごとの配点と得点の開示を求めた事案についての、東京地裁平成15年8月8日判決(原告勝ち)、その控訴審である東京高裁平成16年1月21日判決(原告負け)

 旧司法試験における論文式の科目別得点等の開示を認めた事案についての、東京地裁平成16年9月29日(原告一部勝ち)、その控訴審である東京高裁平成17年7月14日判決(原告一部勝ち)」があるようです。

  最高裁平成14年10月11日判決は、択一式試験の問題とその解答についてのものですが、判例タイムズの解説によれば、その他の出題形式で行われた試験問題等についても択一式試験と同様に解することができるかどうかは、今後に残された問題であるとしております。 

  旧司法試験における事案については、前記東京地裁平成16年9月29日判決は、「司法試験第二次試験の受験者の行政機関個人情報保護法13条1項に基づく自己の試験成績等の処理情報の開示請求に対する一部不開示決定処分につき、論文式試験の科目別得点及び総合順位を不開示とした部分ならびに口述試験の科目別得点を不開示とした部分は、同法14条1項1号ニに該当するから適法であるとし、口述試験の総合順位を不開示とした部分は、同法条項1号ニ又は3号のいずれにも該当しないから違法であるとして、その部分の取消請求を認めた事例」、その控訴審である東京高裁平成17年7月14日判決は、「司法試験第二次試験の受験者が,司法試験管理委員会委員長に対し,行政機関の保有する電子計算機処理に係る個人情報の保護に関する法律(平成15年法律第58号による全部改正前の昭和63年法律95号。ただし,平成15年法律第119号による改正前)13条1項に基づいてした同試験ファイルに記録された自己の試験成績等の処理情報の開示請求に対する一部不開示決定の取消請求につき,同決定のうち,論文式試験の科目別得点及び口述試験の科目別得点を不開示とした部分は,同処理情報を開示することにより同法14条1項1号ニに該当するから適法であるとし,論文式試験の総合順位を不開示とした部分は,同処理情報を開示することにより同号ニ又は同項3号のいずれにも該当しないから違法であるとして,前記請求を一部認容した事例」と判断されています。

  保育士試験における自己の解答用紙及び問題ごとの配点と得点の開示を求めた事案については、前記東京高裁平成16年1月21日判決は、「保育士試験の趣旨、目的を実行するために最も重要なことは、適正な試験問題を成することである。そして、そのためには、試験委員にふさわしい者を確保してその専門的識見を活用し、かつ、良問の作成を阻害する要因をできるだけ除いておく必要があると考えられる。このような点から見ると、解答用紙及び問題ごとの配点と得点の開示は、この試験制度の趣旨、目的に合致しない面があることを否定できず、「事務の適正な執行に支障が生ずるおそれ」かあるといわざるを得ない。すなわち、前記ののとおり 開示することにより、一方においては、採点及び合否判定の過程を透明化し、健全な批評、批判を通じて試験の適性の確保を実現するという効果を期待することができるものの、他方においては、試験委員のなり手の確保が困難となり、試験問題が不適切なものになりがちになり、試験委員及び事務局において質問に対する回答をするための事務が増加するおそれに加えて、採点基準が推定されて受験技術が発達し、機械的、断片的知識しか有しない者が高得点を獲得する可能性があるという、いわば副作用ともいうべき難点がある。そして、全体としてみると、現時点において、開示のこの弊害は、相当程度現実的なものとみられるのに対し、開示に判う事務の透明化が、上記副作用を押さえて試験の適正化を実現する蓋然性は低いと考えざるを得ず、この副作用がある以上、解答用紙及び問題ごとの配点と得点の開示は、保育士試験の実施に関する東京都の事務の適正な執行にに支障を生ずるおそれがあるものと評価せざるを得ないのである。」

 なお、最高裁判事で東京大学名誉教授でもある宇賀克也先生の「教育と個人情報」という論文に、以上のお話を総括されています。

 「入試や各種資格試験の成績の本人開示については、近年大きな変化がみられた。すなわち、試験成績の開示は一般的になり、大学入試センター試験や大学独自の試験成績が本人開示されていなかった時代(横浜地判平成11年3月8日、東京高判平成12年3月30日)とは隔世の観がある。他方、採点済みの答案については(1)受験予備校等が対価を支払うなどして、多くの受験者の答案と得点の通知を収集することで、具体的な採点基準を探り、また、高い答案を得た者の答案を分析して、多数の受験生に示す等、受験技術の習得に特化した受験指導を行うことが十分に予想でき、その結果、受験生の中には、合格者や高得点の者の答案を無批判に暗記対象とするなどして、受験技術偏重の傾向が悪化するおそれがあること、(2)個々の受験者の提出した答案を開示することになれば、成績通知による各科目別の得点を受験者相互間で比較検討することが可能となり、受験生の中には、その分析結果を基に、自己の答案が低いことについて疑問を持つ者が現れ、試験実施期間に質問や照会をする者が出現することになり、試験実施機関がその対応に時間が割かれることになること、(3)そのことへの煩わしさから、かかる質問や照会の行われにくい問題を作成し採点することになると、本来の目的である高度の専門的な知見に基づく多角的視点による採点が行われなくなったり、本来の趣旨から外れた考慮を必要とする問題作成や採点に煩わしさを感じ、優秀な試験委員を確保することが困難になることを理由として、本人開示を否定する裁判例がある(大阪地判平成20年1月31日、東京高判平成16年1月21日)。このような論理を前提としても、多肢選択式問題への解答の評価を記載した部分については、採点者の裁量の余地はないので、不開示とする合理的な理由はないことになろう」

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                            (朝倉・須賀神社) 

2024年11月22日 (金)

【金融・企業法務】 中小企業買収の法務 第2版

 中央経済社から今年の8月に出版された「中小企業買収の法務第2版」です。

 

2024年11月21日 (木)

【行政】夜間飲酒酩酊して歩行中に歩道を遮る形で設置されていた高さ38㎝のガードレールにつまづいて道路の下の川(コンクリート川底)に転落し死亡した事故について、歩道及び河川を管理する自治体並びに同ガードレールを設置した会社に損害賠償責任(過失相殺6割)があるとされた事例

 判例時報1765号で掲載された大阪高裁平成13年1月23日判決です。古い裁判例ですが、家内に倉庫から探してもらいました😅

 土地の工作物の設置の瑕疵、公の営造物の管理の瑕疵について、裁判所は、「本件事故は、土地工作物である本件ガードレールの設置の瑕疵により発生したものであり、公の営造物である道路(本件歩道等)及び河川(今井戸川)の管理の瑕疵により発生したものと認めることができる。

 すなわち、本件事故現場は、公の営造物である道路(本件歩道等)と河川(今井戸川)が交差する所であるが、同所には高さ三八センチメートルしかない瑕疵のある本件ガードレールが設置されているだけで、今井戸川への転落防止のための相当な措置が講じられていない。そのため、道路及び河川が交錯する本件事故現場は、歩行者の転落防止等通常有すべき安全性を欠いていたことが認められる。

 道路管理者は、本件歩道等の通行者が危険な本件事故現場に近づかないように誘導もしくは通行止めにする等、相当な措置を講ずるべきであったのに、これを怠った管理責任がある。河川管理者は、本件ガードレール自体を十分な高さのものにして設置するか、本件ガードレールに沿ってより高い柵を設置する等、今井戸川への転落防止のための適当な措置を講ずるべきであったのに、これを怠った管理責任がある。」

 第1審は、原告の請求を棄却されていますので、逆転勝訴ということになります。 

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(朝倉地区・野田天満宮)
 今治市朝倉の野田天満宮です。明治33年の柱がありました。厳かな雰囲気が漂っております。
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                             (たこの飾り)

 たこの飾りは面白いと感じました。

2024年11月20日 (水)

【行政】 市道を歩行中に道路脇に存在した側溝に転落した事故につき、道路に管理の瑕疵があるとして、国家賠償責任が認められた事例 福島地裁平成30年9月11日判決

 判例時報2405号に掲載された福島地裁平成30年9月11日判決です。

 原告(当時78歳)が,市道を自転車を押して歩いていて側溝に転落して全身を強打し,頚髄損傷後遺症等の障害を負ったとして,被告市に対し,国賠を求めた事案です。

 裁判所は,市は防護柵,照明,看板等の側溝への転落事故防止の措置を講じていなかったとして,道路(公の営造物)に管理の瑕疵があるとした上で,原告は元々走行していた自転車を傾斜で降りて押しながら歩行したもので,交通量から左側通行はやむを得ないとして,左側通行による過失相殺の主張を退け,身体障害者等級1級の後遺障害を認め,治療費等の他,賃セによる平均賃金額の70%を基礎賃金として,休業損害及び逸失利益を算定し,相当損害金を認めました。 Original_e9239d3262d944eeb806ce6902972f9

                              (ガメラ岩)

 今治市朝倉地区にあるがめら岩(おんびき岩)です。有名な観光スポットになっておりますが、ロープ撤去後は、転落しやすいので注意願います。

2024年11月19日 (火)

【弁護士考】 「弁護士費用・補償サービスのご案内」と題するFAXが送られてきました。

 簡単にいえば、一定の利用料を事件終了時に負担していただくことを前提に、着手金や実費を肩代わりしてくれるという制度です。

 例えば、仮に、貸金1000万円の事件で、着手金等が50万円かかる場合に、50万円を肩代わりしてもらい、

 1000万円が回収できた場合に、リスク補償料の名目で50万円の1~2倍、つまり、50万円から100万円を支払ってもらうというシステムです。

 そうすると、仮にリスク補償料が2倍と判断された場合には、100万円となりますが、勝訴の際に、立替金の50万円とリスク補償料の100万円、合計150万円を、依頼人に支払っていただくというものです。

 そのため、金銭等の請求でなければ、利用できないようです。

 なお、負けてしまった場合には、立替金の償還については免除されるとのことです。

 弁護士費用特約と異なり、弁護士費用は旧日弁連報酬規定に準じた形のものを想定されているように読めるので、仮にそうだとすれば、弁護士にとっても使いやすいものといえます。

 なお、着手金等の立て替え払いですが、ケースによっては、一部になることもあるようです。

 被害者としても訴訟が起こせないのであれば、泣き寝入りになることが多いでしょうから、相談者としては、選択肢の1つに入りそうですね。

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                              (向日葵亭)

 愛大本部近くにある向日葵亭のとんかつ定食(980円です)。ごはんと汁物はセルフサービスです。とんかつはサクサクして美味しかったですよ。

2024年11月18日 (月)

【労働・労災】 令和6年度 労働基準法の実務相談

 中央経済社から今年の7月に出版された「令和6年度 労働基準法の実務相談」です。

 全国社会保険労務士会連合会が編集されています。

 労働基準法・安衛法、労働契約法・パート有期雇用労働法・高年齢者雇用安定法、育児・介護休業法、男女雇用機会均等法、労働施策総合推進法、労働者派遣法、労働組合法の各分野の実務的な事例304項目についての解説が、わかりやすく説明されています。

 例えば、社長の自宅の家事を担当する者を会社が雇用して給料を支払う場合、労基法の適用はどうなりますか(Q176)は、なかなかおもしろいですね。

 行政解釈では、法人で雇われ、その役職員の家庭において、その家族の指揮命令の下で家事一般に従事している者も家事使用人であるとしていることから、Q176のような事例ですと、労基法の適用はないということになります。

 ある ある ような事例の解説がされているのが魅力ですね。

 Original_24436a7f73ff48f3956c9ee3a8d0cfb                          (嫁ちゃんランチ・栗弁当)

2024年11月17日 (日)

【行政】市の設置・管理する側溝より水路に転落死亡した事故につき、市の右側溝の設置・管理の瑕疵を認め国家賠償責任が認められたが、ローソンの土盛部分の設置・保存の瑕疵及び不法行為による損害賠償責任は否定された事例 富山地裁平成26年9月24日判決

 判例時報No2242号で紹介された富山地裁平成26年9月24日判決です。

 市の側溝の設置管理の瑕疵は認め国家賠償責任は認められてしまいました。

 以下、判決要旨を引用します。

 Aは平成24年3月31日午前2時ころ、酒に酔ってY2店舗の駐車場の東側の道路の歩道(東側歩道)から足を踏み外して側溝より水路に転落し、顔面を強打し副鼻腔損傷を負い、血液吸引による窒息により死亡したこと、

 本件側溝はY1市の管理する農業用水路とY2(ローソン)の管理する本件土地の土盛部分により構成され、本件土盛部分は水路側壁部分よりかさあげられているので、本件側溝の西側は本件土盛部分によって二段の段差が形成された形状であったこと、

 本件事故当時は、本件店舗から東側歩道を約200メートル北上した地域内には店舗や共同住宅が立ち並び複数のコンビニの店舗が開店され、昼夜を問わず買い物客が東側歩道を利用しており、コンビニや飲食店等では、来店者等の安全に配慮して周辺の側溝には基本的には蓋を設置し、又は防護柵を設置しており、Y1市としても、通行者の安全を考慮して、本件側溝に蓋を設置する等の措置を講ずるべきであったこと

 従って、Y1市としては、本件側溝ないしその不可欠な構成部分である本件水路が通常有すべき安全性を欠いており、本件水路に係る設置又は管理に瑕疵があるから、Xらに対し国賠法2条1項に基づく損害賠償責任があると判断しております。

  

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(朝倉・たんぼアート)

2024年11月16日 (土)

【建築・不動産】 不動産の取得時効 No2 ★執筆記事6000件達成★

 昨日の続きです。

 「訴訟における主張立証責任の観点からみると、『占有者は所有の意思で占有するものと推定されるのであるから(民法186条1項)、占有者の占有が自主占有に当たらないことを理由に取得時効の成立を争う者は右占有が他主占有にあたることについての立証責任を負う』(最三小判昭和54・7・31判事942号39頁)。

  もっとも、裁判実務の上では、単に占有があるだけで所有の意思が推定されることはない。自主占有か否かは権原(占有をするに至った原因)によって判断される。

  最一小判昭和44・5・22判時561号38頁では、『取得時効の要件としての所有の意思の有無は、占有の根拠となった客観的事実によって決定されるべき』であると述べられ、その上で、『占有者がその性質上所有の意思のないものとされる権原に基づき占有を取得した事実が証明されるか、又は占有者が占有中、真の所有者であれば通常はとらない態度を示し、若しくは所有者であれば当然とるべき行動に出なかったなど、外形的客観的にみて占有者が他人の所有権を排斥して占有する意思を有していなかったものと解される事情が証明されるときは、占有者の内心の意思のいかんを問わず、その所有の意思を否定し、時効による所有権取得の主張』は排斥されるものとされている(最一小判昭和58・3・24判時1084号66頁。お綱の譲り渡し事件)。」

 「3 取得時効の登記上の取り扱い

 取得時効が成立する場合の法律関係は、実体法上は、前所有者の所有権が占有者に承継されるのではなく、前所有者が所有権を失い、占有者が所有権を原始取得する。

 しかし、登記上は、占有者が原始取得したとは取り扱われず、前所有者の所有権を取得したものとみなされている。」「この方法は確定した判例法理(大判大14・7・8民集4巻9号412頁)、登記実務である(明44・6・22民事第414民事局長回答)。占有者が不動産の時効取得をした場合には、「前所有者の権利登記抹消+占有者の保存登記」という方法ではなく、占有者が移転登記によって所有権の移転登記を受ける方法(法律構成)が採られる。

 東京地判昭50・1・22訟月21巻13号2651頁では、不動産が甲から乙に、乙から丙にそれぞれ譲渡された後に丙が占有を続け、丙が時効取得したけれども登記名義が甲のままになっている場合において、『不動産の登記簿上の所有者と、その時効取得を主張する者との間に、その不動産を前者から買い受けて後者に売り渡した中間者があるということだけでは、その不動産を永続して占有するという事実状態を権利関係に高めようとする民法162条の適用を拒むに足りる理由があるとは考えられない』、『不動産を時効取得した者は、直接、登記簿上の所有者に対し、所有権移転登記の登記請求権を取得するのであるから、いわゆる中間省略登記の問題を生ずる余地もない。』として、丙はに対して、直接に時効取得を原因とする移転登記手続を請求することができるものとされた。」

 「訴訟においては、時効取得が登記上は原始取得ではなく承継取得として扱われることから、時効取得を原因とする所有権移転登記手続を求める必要がある。請求の趣旨における登記原因の日付(不登59条3号、不登令3条6号)は、時効の起算点となる。時効の起算点を登記原因の日付とする理由は、『時効の効力として権利の得喪が生じるのは、時効期間満了の時であるが、その効力は、時効期間開始の時、その起算日に遡る』(民144条)からである」 

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(本谷温泉クリームソーダ)

 本日の記事で、執筆数6000となります。振り返ると、20年近くにわたって、「田舎弁護士の訟廷日誌」を綴ることができました。現在でも、1日3~500件程のアクセスがあります😄 

 当初は、息子ちゃん曰く、尖った雰囲気があるものだったようです。

 今は、基本的には、書籍や裁判例等を勉強した際の備忘録的な内容になっております。

 昨年に、家族問題、交通事故トラブル、医療関係事故を綴った他の3つのブログは削除しました。

2024年11月15日 (金)

【建築・不動産】 不動産の取得時効 No1

 不動産の取得時効の勉強のために、日本加除出版から今年の8月に出版された渡辺晋弁護士の「不動産登記請求訴訟」を購入しました。

 まず、「はじめに」の文章が参考になります。

 「訴えから登記までは、1 登記手続に協力すべき者に対して実体法上登記請求権を有する者が、2 訴えを提起し、裁判所の審理を経て確定判決を得て3 確定判決を提出して登記を申請し、登記官が登記を行う というプロセスをたどる。

  これを、分析整理すると、① 実体法上登記請求権を有するか ② 具体の事案に即して、どのような訴訟を行うか ③ どのような形式の判決を経て、登記を申請するか がそれぞれ検討課題となる。

  まず、①の実体法上の登記請求権については、法律上明文の定めはもうけられておらず、民法と契約を解釈し、登記請求権の有無が判定される。本書では、民法にしたがって、登記請求権がいかなる場合に認められるかを整理した。

  次に、②の不動産登記請求訴訟の種類は、不動産登記法が共同申請の原則を採用していることから、判決による相手方の意思表示の擬制を求める給付訴訟となる。

  さらに、③の判決の形式と登記申請に関しては、確定判決が不動産登記法上の登記義務者の意思表示に代わるものだから、判決主文が登記申請を可能にするものでなければならない。そのため、不動産登記請求訴訟は、どのような主文の判決を求めるかが重要な課題となる。」 

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(横峰寺遍路道)
 

 では、いよいよ、取得時効に入ります。大学生になったつもりでのおさらいですね😅

「1 取得時効の制度

 民法には、一定の事実状態が続いたまま時間が経過した場合には、従前の真実の権利の状態と一致するかどうかを問わず、事実状態をそのまま権利関係として認める仕組みが設けられている。この仕組みが時効制度である。時効制度には、取得時効消滅時効があり、権利者としての事実状態(事実上権利者らしい状態)を根拠にして真実の権利と認めるのが、取得時効である。

 取得時効には、長期取得時効短期取得時効がある。長期取得時効においては20年間の占有によって所有権が認められる。20年間、所有の意思をもって、平穏に、かつ、公然と他人の物を占有した者は、その所有権を取得する(民法162条1項)。

 2 所有の意思(自主占有)

 取得時効においては、所有の意思をもった占有の継続に、所有権の取得という効果が結びつけられており、取得時効の成否は、所有の意思の存否にかかる。所有の意思とは、事実上所有者と同様の排他的支配を行う意思である。

 所有の意思を持った占有を、自主占有という。自主占有か否か(所有の意思の有無)は、占有者が真実の所有者の所有権を否定するような対応で目的物を支配しているかどうかで判断される。

 例えば、売買契約を締結したうえで占有する買主は代表的な自主占有者であり、ほかに、境界線を越えて隣地を占有する者などが自主占有者となる。他方、賃借人や受寄者の占有は、自主占有ではなく、所有の意思のない他主占有である。」

 以降は、明日の続きです😅

2024年11月14日 (木)

【医療事故】 賠償科学No51が届きました。

 田舎弁護士が大昔バリバリの「損保弁護士」だったころに、医療に絡む知見を広く深く取得するために、日本賠償科学会に入会し、以降、不定期的に、研究会シンポジウムに参加してきました。

 最近は、ご依頼を受けている交通事故事案に医学的な論点が絡むことが減少していることや企業法務関係の会議の予定が立て込んでいること等のために、研究会シンポジウムに参加することが減っております。

 12月7日も大阪大学において第84回研究会(シンポジウム・災害医療と救護ー現場の実際と法的課題)が開催されるようですが、残念ながら別会議参加のために欠席ということになります。

 賠償科学No51は、第79回、第80回、第81回のシンポジウムが収録されていました。第79回が死因究明制度と死因調整システムの過去現在未来、第80回が医療に絡む保険約款の解釈、第81回が交通事故と素因減責です。

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                            (横峰寺遍路道)

 なお、日本賠償科学会の事務局は従前昭和大学でしたが、7月から大阪の早石病院に移転したようです。

2024年11月13日 (水)

【弁護士考】 ネットを利用した集客 et cetera

 田舎弁護士が弁護士業を営んでいる地域においても、事件の相手方の代理人が、今治以外、東京や大阪などの都会の法律事務所の弁護士ということが大半となりました。

 また、債務整理などに顕著ですが、交通事故事案で田舎弁護士に依頼された元依頼人の方も、ネットや折り込みチラシの広告をみて、債務整理については大都会の弁護士や司法書士に依頼されるというようなことも散見されるようになりました。なぜそれがわかるかというと、大都会の法律事務所は、定型的な事務処理を念頭においているようで、少し面倒な相手方や手続が面倒になると、地元の弁護士に相談した方がよいと、再び田舎弁護士に債務整理の相談として舞い戻ってくるからです。

 地元の弁護士であれば、距離が近いために一定の安心感はあるとは思いますが、対面での相談が原則ですので手軽さはありません。ネットで探した法律事務所の場合は、事務処理になれている弁護士や司法書士の事務職員が対応して、ある程度のところまで定型的に手続が進む手軽さがあります。

 ただ、料金表をみる限り、初期費用は余りかからないような感じですが、費用のトータルとしてはそれ相応の費用がかかるようなシステムになっているように感じます。

 また、大都会の法律事務所の中には、非弁提携をしているような悪徳弁護士もあり、また、その広告が派手なためにそれに魅入られて、依頼してしまって、2次被害にあうような方もおられます。

 ネットの気軽さの副作用という現象が生じているように思います。

 しかしながら、ネットでの集客を悪とするわけにはいきません。(もっとも、ネットにアレルギーをもっている地方の弁護士はベテランを中心にまだまだいるのではないかと思います)

 今後、法律事務所間の集客の手法として、ますますネットでの集客が大規模、かつ、効果的なものになることは当然の流れです。

 田舎弁護士の事務所は、今のところ、顧問先や元依頼人等の紹介事案が多いですが、この集客方法であれば、数に限りがあることになります。

 そのため、競争が全国規模化している現状に鑑みると、地方の弁護士においても、可能な範囲で、ネットでの効果的な集客を考えなければなりません。

 企業で言えば、EC事業に近いんですかね。

 とはいえ、田舎弁護士も、還暦が近いために、斬新的なよい知恵がうかばないんですね。

 (まあ、原状でも、生活できているんだから、まあ今のままでええんじゃないという悪魔の声もきこえます・・・)

 というわけで、良い知恵を借りに、若い弁護士さんにきていただけますと助かります😅 

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(横峰寺遍路道)

 遍路道を歩きながら、こんなことを考えております。 

2024年11月12日 (火)

【弁護過誤】 これで訴えられたら、かなわんな😵

 判例時報No2601号で掲載されている東京地裁令和5年1月13日判決です。

 相続開始前の遺留分放棄許可申立ての手続代理人となった弁護士について、依頼者への説明義務違反及び被相続人の財産調査義務違反はなく、債務不履行責任及び不法行為責任が否定された事例です。

 この件は、原告が、被相続人から住宅購入資金として3000万円を生前に贈与してもらいたいために、被相続人がその条件として遺留分放棄することを内容の合意を成立されて、その合意に基づいて、遺留分放棄許可申立てがされたものです。

 合意ですが、お約束という表題の下で、「私は、このたび私たち一家が土地付きの家を買うための資金として、お父さんから3000万円の贈与を受けます。また、私は、Cお姉さんとDさんが長い間、お父さんを助けて〇〇家の家業のために頑張って来てくれたことも良く理解しています。そのため、私は、お父さんが私に贈与してくれたお金以外の財産をCお姉さんとDさんの2人に相続させることにしても、将来、2人に対して遺留分を請求しないことをし、すぐに家庭裁判所に遺留分放棄申立ての手続をすることを約束します。」と記載された書面を原告は作成しています。

 被相続人が死亡したところ、被相続人の遺産がなんと5億円を超えたものであるために、弁護士の責任を追及されたようです。

 こんな事例ですが、原告に弁護士がついて、手続代理人だった弁護士に対して損害賠償請求されたようです。 

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(フジグラン松山・フードコート)
 このような事例は裁判になってもまずは被告が負けることはないと思いますが、訴えられること自体が弁護士にとっては大きな負担なので、そのリスクを逓減するために、念書等をとりつけるなどの対応が必要かもしれません。 

2024年11月11日 (月)

【弁護士考】 司法修習生等の就業活動等における差別的言動防止の取組について

 10月10日付で、日弁連会長から各単位会の会長宛に、頭書タイトルの文書が発出されました。

 「就業活動において、司法修習生等に対し、交際相手の有無や結婚・出産の予定を尋ねることや、『女性は産休・育休があるので採用できない』『女性は子どもの世話がある』『女性は体力が劣る』『女性は顧問先から信用されず企業法務が任せられない』など、募集又は採用にあたり女性であることを理由に異なって取り扱う言動」に対して、断じて許されないという内容です。

 このような時代錯誤のような言動が未だにされているものかと疑問に感じるところもありますが、日弁連の方ではこのようなクレームを受けているようです。

 田舎弁護士の事務所では、初めての勤務弁護士は女性弁護士になる予定でした(家庭の事情で内定辞退されてしまいましたが😅)。通常の弁護士業務を取り扱うに際して、男女で区別する合理的な理由がないからです。

 仮に上記のような言動をいまだにされているような弁護士がいるのであれば、そのような弁護士が所属する法律事務所は淘汰されるに違いありません。

 産休・育休の間のブランクも、働き方を工夫すれば小さな法律事務所でも対応できるでしょうし、最近の会社はむしろ女性弁護士の柔軟な意見の方を尊重されるように思います。

 他方で、小さな法律事務所の場合、産休・育休期間の間は、無給に近くなるところが多いと思いますので、勤務先においても手当の受給ができるように、雇用保険等の社保はきちんと整備しておく必要があります。ただ、最近は、雇用契約ではなくて、業務委託契約を締結している事務所も増えているときいておりますので、この辺りは改善しなければならないでしょう。

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                           (石川県九谷焼美術館)

 田舎弁護士も、気持ちの上では、「新進気鋭の弁護士」ですが、いつのまにか、「老弁」になりつつありますので、「新進気鋭の司法修習生」が、跡継ぎのつもりで、仕事を手伝ってくれるとありがたいなと思います。

 ただ、昔と異なり、大きな給料はだせなくなっておりますが😅

2024年11月10日 (日)

【労働・労災】 フリーランス法が11月1日から施行されました。

 近年、働き方の多様化が進み、フリーランスという働き方が社会に普及してきた一方で、フリーランスが取引先との関係で、報酬の不払やハラスメントなど様々な問題やトラブルが発生していることが明らかになっているため、個人であるフリーランスと、組織である発注事業者の間における交渉力などの格差、それに伴うフリーランスの取引上の弱い立場に着目し、フリーランスが安心して働ける環境を整備するために制定されたのが、フリーランス法です。

 多種多様な業界で活躍しているフリーランスとの業務委託取引について、「取引の適正化」と「就業環境の整備」の2つの観点から、発注事業者が守るべき義務と禁止行為を定めています。

 取引の適正化としては、

① 取引条件の明示義務(第3条)

  ⇒取引条件の明示については、発注事業者において、書面か電磁的方法のいずれかを選択します。

② 期日における報酬支払義務(第4条)

  ⇒発注した給付を受領した日から起算して60日以内のできる限り短い期間内で、支払期日を決めてその日までに支払う

③ 発注事業者の禁止行為(第5条)

  ⇒7つの禁止行為(下請け法と同じですね)

が、定められています。

 また、就業環境の整備については、

④ 募集情報の的確表示義務(第12条)

 ⇒発注事業者は、広告等によりフリーランスを募集する際は、その情報について、虚偽の表示または誤解を生じさせる表示をしてはならず、正確かつ最新の内容に保つ

⑤ 育児介護等と業務の両立に対する配慮義務(第13条)

 ⇒6ヶ月以上の業務委託における育児介護等と業務の両立を目的とした義務です。

⑥ ハラスメント対策に係る体制整備義務(第14条)

 ⇒ハラスメントによりフリーランスの就業環境が害されることを防ぐための義務です。

⑦ 中途解約等の事前予告・理由開示義務(第16条)

 ⇒6か月以上の業務委託の場合には、原則として30日前に予告が必要です。

が、定められています。 

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(大聖寺・実性院)

 息子と一緒に訪ねた加賀市大聖寺の実性院です。能登地震のため五輪塔がいくつか倒れていました。このお寺は、大聖寺藩主の歴代のお墓があります。 

2024年11月 9日 (土)

【金融・企業法務】 監査役等のための不祥事対応の手引き 内部通報制度

 月刊監査役10月号に、監査役等のための不祥事対応の手引きとして、「内部通報制度」が取り上げられていました。

 「内部通報制度」を設けている企業は年々増えていると思いますが、実態調査では、利用件数はそれほど多くないようです。内部通報制度については、適切な周知のほか、運用において信頼が得られているのかという視点も大切となっております。

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                              (兼六園)

 まず、通報を受けた時から通報者へのフィードバックまでの対応について、わかりやすい解説がされていましたので、少し紹介したいと思います。

ア 通報時の対応(通報受付⇒調査の要否の判断)

(ア)通報者への通知

   ⇒通報窓口は、通報者が通報を望まない場合や匿名通報のため通知先が不明である場合等を除き、通報者に対して、速やかに通報を受付した通知をするべきである。

(イ)匿名通報の扱い

   ⇒匿名による通報も実名による通報と同様に受け付けるべきである。

(ウ)調査の要否

   ⇒全くの荒唐無稽と思われるもの以外は、予断を持たずに調査対象とする

   ⇒調査の要否について判断した際には、通報者に対してその結果を通知すべきである。

(コラム)

 通報者が調査を望まない場合

 ⇒「ハラスメント事案で、調査を行うことで更なる精神的苦痛を与えてしまうなど、被害者である通報者への負担が重い場合は、通報者の意思に反してまで調査を行うことは望ましくない」

  「他方で、不正会計や製品偽装を念頭に置くと、通報内容が会社にとって改善すべき問題を含む場合に、・・・通報者の懸念点を確認し、その懸念点を解消することで通報者にも了解を得た上で調査を進められないか検討する。その上で、どうしても通報者からの了解が得られない場合には、監査役等の監査業務として調査を進める。・・・通報者からの信頼を損なわないように配慮」

イ 調査実施時の対応(調査方針の検討⇒調査の実施)

(ア)調査における通報者保護

⇒関係者へのヒアリングに際しては、対象者に対して通報者の探索や通報者に対する不利益な取り扱いをしてはならないことを念押すべきである。

⇒調査の実効性確保の観点~通報者を特定させる事項を調査担当者以外の外部に伝達せざるを得ない場合もあり得るが、その際には、通報者の同意を取得した上で、情報の伝達先にも改めて秘密保持についての注意換気する

(イ)通報者への説明

⇒推認のおそれが払拭し切れないこと自体は予め通報者に了解を得ていることが望ましい

ウ 調査後の対応(事実認定及び評価⇒是正措置・再発防止策の実施⇒通報者へのフィードバック)

(ア)事実認定及び評価

(イ)是正措置・再発防止策の実施

(ウ)通報者へのフィードバック

エ 社内報告

 

★わかりやすくまとめられていると思いました。 

2024年11月 8日 (金)

息子と、石川県の大聖寺城跡などを散策しました。

 先月、息子と、石川県加賀市にある大聖寺城跡を散策しました。 

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 大聖寺城(錦城山)への登山口です。南北朝時代の太平記に名前が載っております。最後は、関ヶ原の戦い前に、西軍に味方をした山口宗永の居城でしたが、東軍の前田年長に攻められて落城し、江戸時代初期に一国一城令によって廃城となっております。城跡は長年に渡り立ち入り禁止であったために、保存状態は極めて良好で、息子も大喜びで、本丸、北の丸、西の丸、鐘ヶ丸、東丸と6つの郭を駆け巡りました。
 
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(本丸)
 大聖寺は、四国で例えると、宇和島、中村、脇町、内子のように、落ち着いた街でした。
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(500羅漢)
 全昌寺の五百羅漢はみごとでした。
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(山の文化館)
 日本百名山の著者である深田久弥の山の文化館は、山好きの親子としては、楽しめました。
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(石川県九谷焼美術館)
 九谷焼では、九谷焼の歴史や、特徴のほか、お菓子や和菓子等も楽しめました。
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 息子と遊べて楽しかったです😅

2024年11月 7日 (木)

【離婚】 夫婦の一方が、他方に対し、婚姻前に自信の疾患(IgA腎症)について告知しなかったこと等が告知義務違反に当たる旨などを主張し、不法行為に基づく損害賠償請求をしたところ、不法行為の成立が否定された事例

 判例時報N02600号で掲載された東京地裁令和4年11月22日判決です。

 東京地裁の判断は、

 まず、A婚姻における重要事項につき故意に虚偽の内容を述べ、その内容を要素として相手方が婚姻の決断に至った場合等、事案によっては不法行為が成立する余地はある

 B他方で、広く告知義務を課し、これに反した場合の損害賠償責任を認めることは、婚姻前の時点で全面的にプライバシー情報を開示することを要求する結果や、過失による医学的な説明の誤りについても広く損害賠償責任を求める結果となりかねない旨を指摘した上、Aのような場合に至らない事案については、不法行為の成否につき慎重に検討すべきであるとした上で、

 Yは、平成27年時点でIgA腎症については少なくとも明確な治療法はない旨や人工透析の可能性がある旨などの説明を受けていること、他方で、IgA腎症の予後のリスクをどの程度重要なものとと見るかは評価の別れるところ、Yにおいても一定程度の説明はしており、故意に虚偽の説明をしたとは断定しがたいなどを指摘して、告知義務違反は認められないと判断しました。

 なお、解説によれば、「夫婦間の婚姻に関して、事前の告知義務違反に基づく損害賠償請求が問題となった裁判例または文献は、調査をした範囲では見当たらなかった」と説明されています。

 婚姻における重要事項、例えば、性的不能等はそれに該当すると思いますが、それ以外の事実というのは相手方によるため判断が微妙のような気がします。

 ただ、借金があるとは思わなかったとか、離婚歴があるとはきいていなかったとか、きいていた勤務先とは異なっていたとかなどは、たまに離婚のご相談ででてきます。。。 

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(横峰寺遍路道)

2024年11月 6日 (水)

【行政】 情報公開請求が権利濫用であると判断された裁判例 東京高裁令和5年8月2日判決

 判例時報No2600号に掲載された東京高裁令和5年8月2日判決です。

 Xは、自己の親族間のトラブルに対するY(大田区)の職員の対応に疑問を抱いたことなどを契機として、遅くとも平成30年には、大田区情報公開条例に基づく公文書開示請求等を通じて、Yの職員の行為を調査し、ブログ記事を掲載するようになりました。

 Xは、令和2年3月、Y議会議員の一人が掲載した、Yの健康政策部感染症対策課のA課長が区議会予算委員会で失礼な発言をしたと非難するブログ記事を見て、A課長に注目し、A課長の出勤簿等の公文書開示請求をしたほか、同課への訪問、電話連絡及びメール連絡をするようになりました。

 その後、Xは、感染症対策課への訪問の際のA課長や職員の対応について、A課長の謝罪を執拗に求め、同課に関わる大量の公文書開示請求を行い、A課長が要求に応じて謝罪をすると公文書開示請求を取り下げるなどしました。また、他部署に対しても同様に公文書開示請求やその取り下げを行いました。

 令和2年12月10日、Yの総務課長は、Xに対して、新型コロナウイルス感染症が再拡大する中で、公文書開示請求等に関連する問い合わせが長時間に及び、業務運営に滞留が生じていることなどを理由に、公文書開示請求に関する問い合わせ等は書面等に限定する旨の通知をしたところ、

 Xは、同月15日に、感染症対策課が管理している文書目録に記載されている以外の文書について、

 同月16日に、Xの問い合わせにより業務に滞留が生じたと健康政策部が判断した証拠が分かる文書について、

 同月17日に、新型コロナウイルス感染症に関して感染症対策課が受発信した文書などについて、

 対象の特定が困難で分量も多数に及ぶ公文書開示請求や個人情報保護条例に基づく自己情報開示請求を立て続けに行いました。

 令和2年12月23日、Xは、対象文書を「感染症対策課職員の超過勤務命令簿(残存するもの全て)」として、感染症対策課が管理する公文書の開示請求をしました。

 Xは、本件開示請求後も、感染症対策課に対して、本件開示請求等に関連してYが発した書面等に関して、対象文書が広範囲かつ大量になる可能性のある請求内容の公文書開示請求及び自己情報開示請求を繰り返し、街宣活動や謝罪要求を繰り返し、A課長を論難するブログ記事を掲載するなどをしました。

 Y区長は、情報公開・個人情報保護審査会の意見を聴いた上で、令和3年6月11日、本件開示請求は本件条例の目的お寄り利用者の責務に適合しないとして、本件条例9条3項に該当することを理由に、本件開示請求に係る公文書を開示しない旨の本件非開示決定をしました。

 Xは、本件非開示決定を不服として、Y区長に審査請求をし、その棄却採決が出る前に、本件非開示決定の取消し及び本件開示請求に係る公文書の開示決定の義務付けを求める本件訴えを提起しました。

 第1審は、本件開示請求は、本件条例の目的及び利用者の責務に反していると認められるから、本件非開示決定は適法であるとしえt、区分所開示決定の義務付けを求める部分を却下し、その余の請求を棄却したところ、Xは控訴しました。

 第2審は、開示請求は開示を求める文書の所轄部署に対し優位な地位を得たり自己満足を得るために行われたものであること及び開示のための作業量が所轄部署の業務に支障を及ぼす態様のものであることから、当該開示請求は、権利行使として相当なものとはいえず、条例の目的及び利用者の責務に反しているとして、適法と判断されました。

 なお、Xは、最高裁に上告・上告受理申立てをされていますが、最高裁においても、第2審と同様の結論となっております。 

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(星ヶ森)

 

2024年11月 5日 (火)

息子が、「田舎弁護士の訟廷日誌」の愛読者だった😅

 先月、家族旅行で、金沢に行きました。二日目は、田舎弁護士と息子の男闘呼組、嫁ちゃんと娘のアイドル組に別行動しました。

 息子ちゃんは、当然、お城です。

 大聖寺城跡に行きたいということで、金沢からいしかわ鉄道を使って1時間程度離れた大聖寺まで訪ねました。

 その道中で、このブログの話が出ました。

 なんと2005年から遡ってブログを読んでいるということでした。

 初期から中期にかけて、文体がかなり変わっているようで、人間の成長?の過程を垣間見ることができるとのことでした。

 息子ちゃん曰く、初期の文体は、まだギラギラ感があり、読んでいて面白いということでした。

 最近のは、専門書の解説が多くて、面白いところが減っているようです。また、文体も、おとなしくなっているとのことでした。

 特に、司法試験に受けると思った年に足きりにあって落ち込んでいるところの記事は参考になったということでした。

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                             (大聖寺城跡)

 びっくりしたな~ 

 パパさんも、君の成長にはびっくりしているよ😄

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(息子ちゃん)
 娘が社会人になってから、全員そろった家族旅行は数える程になりました。家族の絆を改めて感じる機会であり、折りをみて、提案したいと思います。
 息子ちゃん、これでいいかな😅

2024年11月 4日 (月)

【法律その他】 幽霊会社の資産の処分

 稀に、清算結了登記済みの会社の名義の不動産等が残存しているため、その不動産等処分についてのご相談があります。破産が随分前に終わっているようなケースにおいても同様です。

 このような場合には、清算人も死亡していることも多いので、裁判所にスポット清算人を選任してもらって手続を進めることが少なくないように思います。

 会社を放置していただけの場合は、会社の解散を決議して清算人を選任し、きちんとした清算手続をとることから始めるべきでしょう。

 また、債務超過状態にあるのであれば、破産申立てを行うということもあるかもしれません。

 相談している弁護士によっては、会社は破産手続をとらずに、経営者や保証人等個人の方だけ破産手続をとるということで進めることがあります。これは、会社に不動産等がある場合には、周囲が迷惑を受けるので、会社もまとめて破産手続をとってもらいたいと思いますし、また、田舎弁護士にご相談があればそのように勧めています。

 また、解散はしているものの、清算手続はとっている形跡がないような会社も、意外によくみかけます。

 会社をたたむ場合には、すくなくとも、税理士と司法書士の先生によく相談しながら、清算を進めて下さい。

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                            (金澤・玉泉邸)

2024年11月 3日 (日)

【弁護士考】民事訴訟 裁判官からの質問に答える技術

 学陽書房から5月に出版された「民事訴訟 裁判官からの質問に答える技術」です。

 新人・若手弁護士向けのわかりやすい入門書となっております。裁判官から質問されることが多い35問についての解説です。

 ③「請求の趣旨についてですが・・・」

  ⇒「請求の趣旨を記載する上で特に注意すべき事案は、不動産登記関係訴訟です。というのも、登記を行う法務局において独自の作法があり、法務局の作法に従っていない判決主文である場合、せっかく勝訴したにもかかわらず登記できないという事態が起こりうるためです。そのため、非典型的ないし複雑な事案については、事前に法務局等に照会し、法務局の作法に従った請求の趣旨になるように調整しておくべきです。」

 ⑯「原本に代えて写しを提出しますか」

  ⇒ 原本に代えて写しを提出

    「原本を所持しているものの(すなわち原本提出の方法によることができるものの)、相手方が原本の存在・成立を争わず、その写しをもって原本の提出に代えることに異議がない場合、原本に代えて写しを提出することができます」

  ⇒ 写しを原本として提出

    「当事者が写ししか所持していない場合もあります。この場合には、写し自体を原本として提出することになります。写しそのものを一種の報告文書(対応する原本があったこと、その内容が写しのとおりであることを報告するもの)とみて、原本として提出していますので、民訴規143条の原則通りの提出方法ということになるわけです。」   

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(金澤・玉泉邸)
 確かに、入門的な書籍ですが、新人弁護士は法廷で恥をかかないために、読んでいた方がいいような気がしました。 

2024年11月 2日 (土)

【金融・企業法務】 特集 家族経営会社の事業承継・株価評価・経営権

 「家庭の法と裁判」No52において、特集「家族経営の事業承継・株価評価・経営権」が掲載されていました。 

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(大聖寺城・本丸)
 ①家族経営会社における円滑な事業承継の手法ですが、生前における事業承継の実現、生前における死後の承継先の指定、他の法定相続人への遺留分への対応、事前対策では不十分あるいは対策が困難な場合における手当、税負担への対応、債務・保証・担保の承継への対応等が論じられています。
 
 ②相続・遺産分割時の非上場株式の評価ですが、具体的な評価方法について論じられています。
 ③家族経営会社の代表者の死亡により生じる経営権紛争ですが、これは弁護士であれば日々対応している領域でのお話ですので、おおいに参考になりました。
 
 ④最後は、事業承継税制の概要です。顧問先の社長さんから、税理士に相談しているお話をよくうかがいます。
 なお、本書は、金沢旅行の際に新幹線で読みました。

2024年11月 1日 (金)

【子ども】 共同親権の話が増えました。

 父母の離婚後の子の養育に関する民法等の一部を改正する法律が成立し、令和6年5月24日に公布されました。公布から2年以内の施行が予定されています。

 「家庭の法と裁判」No52に法務省の担当者による解説がありました。

 新民法819条1項は、父母が協議上の離婚をするときは、その協議で、その双方又は一方を親権者と定めるとされています。

        2項は、裁判上の離婚の場合は、裁判所が定めることになります。

 裁判所が親権者を定める場合には、子の利益のため、父母と子の関係、父と母との関係その他一切の事情を考慮しなければならないと定め、父母の双方を親権者と定めることにより子の利益を害すると認められる場合には、裁判所は必ず父母の一方を親権者と定めなければならないと規定しております。

 多くの場合、離婚後も父母の共同親権となるのではないかと思いますが、この場合の親権の行使については、共同して行うということになっております。

 但し、子の利益のため急迫の事情がある場合や、監護及び教育に関する日常の行為については、単独で行為することが可能です。

 なお、父母の意見対立の場合には、家裁にて判断することになります。

 そして、争点になる監護権については、必須とはされていませんが、実際に子どもを育てるということからすれば、監護権者の指定が今後は最大の争点になるのではないかと思います。

 なお、親権者の定めの協議が整わない場合でも、親権者の指定を求める家事審判又は家事調停の申立てがされていれば、協議離婚の届出が受理されることになりました。

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                             (九谷・赤絵)

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