【交通事故】 裁判例と自賠責認定にみる神経症状の等級評価
令和6年4月に新日本法規から出版された「裁判例と自賠責認定にみる神経症状の等級評価」です。
高野真人弁護士らによつて、神経症状の後遺障害の態様と等級評価における要点がわかりやすく解説されています。
(1)頸部・腰部の捻挫、挫傷の場合の後遺障害
12級認定されるためには、頚椎・腰椎の脊柱の変性(椎間孔の狭小化)、椎間板ヘルニアや椎間板の膨隆による、脊髄や脊髄神経根を圧迫でするような状況が、画像検査で確認されること
神経圧迫等により異常がでていることを裏付ける検査所見があること
神経損傷箇所とその箇所の身体の支配領域との整合姓
14級認定の場合は、他覚的な所見の存在は要求されないものの、画像所見で症状がでそうな状態があると14級認定されることが多いといえそう
(2)肩・胸部・腰部から上肢や下肢にかけての神経症状
この類型は、末梢(手指あるいは足指方向)へ向かう部位の神経障害が神経症状発生の原因とされるタイプの障害
発症している症状がこれらの病態のものという確実な診断がなされ、症状が外傷をきっかけに発生したとされるのであれば、12級認定されやすいであろう
しかし、その後の治療によって病的状態が解消される場合もある。そのような場合に、症状が改善されず残っていると被害者が訴えても、障害の残存を裏付ける所見はなくなっているので、他覚的所見による裏付けを欠くとして14級認定にとどめられる場合もある。
(3)上肢・下肢の骨折・靱帯損傷等による障害
骨折した場合でも、あるいは靱帯損傷、肩腱板断裂、半月板損傷といった軟部組織の損傷が発生した場合でも、疼痛等の神経症状は時間経過とともに軽減するのが普通であるから、症状が残るというのであれば、症状が残る根拠理由が必要
骨折の場合、よく取り上げられるのが関節付近の部位の骨折。自賠責認定実務の傾向としては、関節面付近の骨折の場合、骨折部位の骨癒合が完成し、一部の欠損があるなどの不完全な形ではなく整復がうまく行われた場合は、疼痛などの症状の発生を認める根拠がないとして14級ないし等級非該当にとどめられる傾向にある。
骨の整復状況が決め手
手や手指、足や足指の骨折の場合は、骨癒合や整復良好であることを理由に12級とすることを否定した例は少ない 骨の構造が小さく絡みあっているので、一度骨折すれば、よほど軽微で狭い範囲のものでない限り、損傷が全くない状態に回復することはないだろうとの考え方が反映している
(4)脊髄損傷が問題となった事例
被害者の訴えの症状が脊髄損傷によるものかどうかが争いになることが少なくない
よく見られるのは、心因性の症状と認定される場合である。
他にも、(5)CRPS(RSD)が問題となった事例、(6)頭部外傷事例などについて説明がされています。
高野先生の講義をきくような解説となっております。
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