<(_ _)>

🚓交通事故🚓

🚚 書籍紹介(流通)

« 2024年5月 | トップページ | 2024年7月 »

2024年6月

2024年6月30日 (日)

【行政】 普通地方公共団体が締結した支出負担行為たる契約が違法であっても、私法上無効ではない場合において、当該契約に基づく債務の履行としてされた支出命令の適法性 最高裁平成25年3月21日判決

 昨日の続きです。それでは、最高裁平成25年3月21日判決をみていきたいと思います。

 判決は以下のとおりです。

「第1 事案の概要
 本件は,築上町(以下「町」という。)が町有地上の建物の取壊しに伴いこれを使用していた団体との間で同団体に移転補償をすることを合意してその旨の契約を締結した上,その契約に基づき町長が補償金の支出命令をしたところ,町の住民である被上告人らが,上記契約は公序良俗に反し無効であるか又は地方自治法2条14項,地方財政法4条1項に反して違法であるから,上記支出命令も違法であり,それにより町が損害を受けたとして,町の執行機関である上告人を相手に,地方自治法242条の2第1項4号本文に基づき,町長として上記支出命令をしたAに対して不法行為に基づく損害賠償の請求をすることを求める住民訴訟である。」

第3 職権による検討
 1 原審の適法に確定した事実関係等の概要は,次のとおりである。
 (1) 船田地区集会所(以下「本件集会所」という。)は,昭和46年5月27日,当時の椎田町がその所有地に建設した鉄筋コンクリート造2階建,延べ床面積約260平方メートルの建物である。本件集会所は,その建設以来,椎田町の財産として登録されないまま,1階部分がB協議会(以下「B協議会」という。)によりその事務所として無償で使用されていた。
 (2) 本件集会所は,福岡県が施行する県道豊津椎田線の拡幅工事に伴い取り壊されることとなり,本件集会所内のB協議会の事務所(以下「本件事務所」という。)も移転を要することとなった。
 平成18年1月10日に椎田町と築城町との合併により設置された町は,B協議会から本件事務所の移転補償費の支払を求められていたところ,本件集会所の取壊しに伴い福岡県から支払われる補償金でB協議会に対する移転補償費を支払うこととし,同20年3月,本件集会所について建物台帳を作成してこれを町の普通財産として登録した。その上で,町長の職にあったAは,町を代表して,同月7日,B協議会との間で,町がB協議会に対し本件事務所の移転補償費3000万円を含む合計3204万2400円の移転補償費を支払うことなどを約する契約(以下「本件移転補償契約」という。)を締結し,また,同月24日,福岡県との間で,町が福岡県から本件集会所の移転補償費として5820万0700円の支払を受けることなどを約する契約を締結した。
 (3) Aは,本件移転補償契約に基づき,本件事務所の移転補償費3000万円のうち2100万円については平成20年4月7日に,残額の900万円については同21年3月13日に,それぞれ支出命令をした(以下,後者の支出命令を「本件支出命令」という。)。
 (4) B協議会は,平成20年8月まで本件事務所を使用していたが,それ以降は別の事務所を使用している。本件集会所は,平成21年1月に取り壊された。
 (5) 被上告人らのうち3名は平成21年8月25日に,その余の被上告人らは同年11月6日に,それぞれ町の監査委員に対して本件移転補償契約に基づく公金の支出等につき住民監査請求をした。」

 次に原審の判断です。

「2 原審は,上記事実関係等の下において,本件移転補償契約は,公序良俗に反し無効であるとはいえないが,著しく不相当であって地方自治法2条14項,地方財政法4条1項に反し違法であるなどとした上で,要旨次のとおり判断し,被上告人らの請求のうち適法な住民監査請求を経た本件支出命令に関する部分を認容すべきものとした。
 支出負担行為が契約であり,それが私法上無効とはいえないものの違法である場合において,支出命令権者が支出負担行為を是正する権限を有するときは,支出命令権者は地方公共団体に対して当該違法な支出負担行為に基づく支出命令を発すべきではないという財務会計法規上の不作為義務を負っており同義務に違反して発せられた支出命令は違法である。本件においても,Aは,自ら本件移転補償契約を締結しており,町長として契約の是正を行う権限を有していたのであるから,本件支出命令は違法であり,Aは本件支出命令につき町に対して損害賠償責任を負う。」

 では最高裁の判断です。

「3 しかしながら,原審の上記判断は是認することができない。その理由は,次のとおりである。

 (1) 地方自治法242条の2第1項4号に定める普通地方公共団体の職員に対する損害賠償の請求は,財務会計上の行為を行う権限を有する当該職員に対して職務上の義務に違反する財務会計上の行為による当該職員の個人としての損害賠償義務の履行を求めるものにほかならないから,当該職員の財務会計上の行為を捉えて上記損害賠償の請求をすることができるのは,たといこれに先行する原因行為に違法事由が存する場合であっても,その原因行為を前提としてされた当該職員の行為自体が財務会計法規上の義務に違反する違法なものであるときに限られると解するのが相当である(最高裁昭和61年(行ツ)第133号平成4年12月15日第三小法廷判決・民集46巻9号2753頁参照)。


 しかるところ,普通地方公共団体が締結した債務を負担する契約が違法に締結されたものであるとしても,それが私法上無効ではない場合には,当該普通地方公共団体はその相手方に対しそれに基づく債務を履行すべき義務を負うのであるから,その債務の履行としてされる財務会計上の行為を行う権限を有する職員は,当該普通地方公共団体において当該相手方に対する当該債務を解消することができるときでなければ,当該行為を行ってはならないという財務会計法規上の義務を負うものではないと解される。そして,当該行為が支出負担行為たる契約に基づく債務の履行としてされる支出命令である場合においても,支出負担行為と支出命令は公金を支出するために行われる一連の行為ではあるが互いに独立した財務会計上の行為というべきものであるから(最高裁平成11年(行ヒ)第131号同14年7月16日第三小法廷判決・民集56巻6号1339頁参照),以上の理は,同様に当てはまるものと解するのが相当である。


 そうすると,普通地方公共団体が締結した支出負担行為たる契約が違法に締結されたものであるとしても,それが私法上無効ではない場合には,当該普通地方公共団体が当該契約の取消権又は解除権を有しているときや,当該契約が著しく合理性を欠きそのためその締結に予算執行の適正確保の見地から看過し得ない瑕疵が存し,かつ,当該普通地方公共団体が当該契約の相手方に事実上の働きかけを真しに行えば相手方において当該契約の解消に応ずる蓋然性が大きかったというような,客観的にみて当該普通地方公共団体が当該契約を解消することができる特殊な事情があるときでない限り,当該契約に基づく債務の履行として支出命令を行う権限を有する職員は,当該契約の是正を行う職務上の権限を有していても,違法な契約に基づいて支出命令を行ってはならないという財務会計法規上の義務を負うものとはいえず,当該職員が上記債務の履行として行う支出命令がこのような財務会計法規上の義務に違反する違法なものとなることはないと解するのが相当である(最高裁平成17年(行ヒ)第304号同20年1月18日第二小法廷判決・民集62巻1号1頁,最高裁平成21年(行ヒ)第162号同年12月17日第一小法廷判決・裁判集民事232号707頁参照)。


 (2) これを本件についてみるに,前記事実関係等の下においては,本件移転補償契約は,違法に締結されたものであるとしても,公序良俗に反し私法上無効であるとはいえず,他にこれを私法上無効とみるべき事情もうかがわれないところ,町がその取消権又は解除権を有していたとはいえず,また,町がB協議会に事実上の働きかけを真しに行えばB協議会においてその解消に応ずる蓋然性が大きかったというような,客観的にみて町がこれを解消することができる特殊な事情があったともいえないから,Aが本件移転補償契約に基づいて支出命令を行ってはならないという財務会計法規上の義務を負っていたとはいえずAが当該契約に基づく債務の履行として行った本件支出命令がこのような財務会計法規上の義務に違反する違法なものであったということはできない。そうすると,Aは,本件支出命令につき,町に対して損害賠償責任を負うものではない。
 4 以上と異なる原審の前記判断には,判決に影響を及ぼすことが明らかな法令の違反があり,原判決は破棄を免れない。そして,以上に説示したところによれば,被上告人らの本件支出命令に関する請求は理由がないから,第1審判決中上告人敗訴部分を取り消し,被上告人らの上記請求を棄却すべきである。
 よって,裁判官全員一致の意見で,主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官 金築誠志 裁判官 櫻井龍子 裁判官 横田尤孝 裁判官 白木 勇 裁判官 山浦善樹)」

20240616_1425032
(林道木地川線)
 この最高裁判決に対する判例タイムズNo1416号の解説は以下のとおりです。
 「そもそも支出負担行為は、知行公共団体の支出の原因となるべき契約その他の行為であるのに対して、支出命令は、地方公共団体の長が支出負担行為に基づき公金を支出しようとする場合に会計管理者に対してする命令であって、互いに独立した財務会計上の行為というべきものであることからすると、支出命令とその原因となる出負担行為の違法との関係についても、一日校長事件判決が示す一般的法理が適用されるべきであり、支出負担行為の違法性が支出命令に無条件に承継される旨の見解はこれを整合し難いものと考えられる。
  そして、支出負担行為が契約である場合、それが違法に締結されたものであっても私法上無効とはいえないときには、地方公共団体はその契約を解消しない限り契約の相手方に対してその契約に基づく債務を履行すべき義務を負うのであるから、地方公共団体がその契約を解消することが可能とはいえないときにまで地方公共団体の長に対しその契約に基づき支出命令を行ってはならないという財務会計上の義務を課すことは、地方公共団体の長をディレンマに追い込むことになり相当とはいえないと考えられる。
  本判決は、以上のような立場から、支出負担行為が契約である場合には、支出命令を行う権限を有する職員がその契約の是正を行う権限を有していても、行政行為を原因とする平成16年判決ではなく、契約を原因行為とする平成20年判決の趣旨が及び、その契約が私法上無効であるか、地方公共団体がその契約を法律上又は事実上解消することができるときでない限り、その契約に基づく債務の履行として行われた支出命令が違法なものとはいえないとしたものと考えられる。」
 次には、例外的に違法となる要件について考えてみたいと思います。😅

2024年6月29日 (土)

【行政】 普通地方公共団体が締結した支出負担行為たる契約が違法であっても、私法上無効ではない場合において当該契約に基づく債務の履行といてされた支出命令の適法性 最高裁平成25年3月21日判決 実務住民訴訟

 ぎょうせいから出版されている「実務住民訴訟」P115以下の記述です。自治法232条の4第1項の「支出命令」の解説となっております。

 「支出命令とは、その権限を有する長又はその委任等(通常は「専決」で処理されています。)を受けた職員が、支出負担行為に係る地方公共団体の債務が確定した旨(債権者及び金額が確定し、履行期が到来したこと)会計管理者(自治法168条)に通知し、その支出を命令する行為をいいます(自治法232条の4第1項)。」

 ※なお、支出負担行為とは、法令又は予算の定めるところに従ってなされる支出の原因となるべき契約その他の行為をいいます(自治法232条の3)。具体例としては、工事等の請負契約、物品の購入契約、委託契約のような私法上の行為、給料、退職手当等の支給決定のような公法上の行為、地方公共団体の不法行為に基づく損害賠償金の支出を決定する行為のような地方公共団体の内部意思決定行為がこれに当たります。

 「例えば補助金の支出に公益上の必要がないとか、随意契約の要件がないのに随意契約によったとかという違法事由は、支出負担行為に関する違法事由なのですが、裁判例には支出命令のみを審判の対象に掲げて争っているような例も見受けられます。支出命令は機関相互間の内部的行為ですから、これは正確ではありません。」

Original_ff16d9489d1441458b9c313ba43eb41                             (林道木地川線)

 「支出負担行為が財務会計法規上の義務に違反して違法なものである場合には支出命令も(また後述の支出も)違法になり、それを看過して支出命令を発する等財務会計法規上の義務に違反すれば責任を負うのが原則ですが(本来的権限者はいずれも長等ですが、受任者や専決者による場合は異なることがあります。)、

 支出負担行為が第三者との契約である場合には、その契約に拘束されますから、当該契約に基づく債務の履行としての支出命令をした者の責任については、契約が私法上無効でない場合(私法上無効であるのに支出命令を発すれば、当該支出命令について当然に責任を負います。)には、

 ①当該地方公共団体が当該契約の取消権又は解除権を有しているときや、

 ②当該契約が著しく合理性を欠きそのためその締結に予算執行の適正確保の見地から看過し得ない瑕疵が存し、かつ、相手方において当該契約の解消に応ずる蓋然性が大きかったというような、客観的にみて当該地方公共団体が当該契約を解消することができる特殊な事情があるときでなければ、

 当該契約に基づく債務の履行としての支出命令を行う権限を有する職員は、違法な支出負担行為(契約)に基づいて支出命令を行ってはならないという財務会計法規上の義務を負うものではないとされています(最高裁平成25年3月21日判決)」 

20240616_134934
 支出負担行為が第三者との契約の場合
   当該契約が私法上無効であるにもかかわらず、支出命令を発すれば、当該支出命令について当然に責任を負う
   当該契約が私法上無効ではない場合には、前記①又は②のような場合でなければ、当該支出命令について責任を負わない
 ということになります。
 ですので、契約が私法上無効であるか否かによって、判断の基準が変わることになります😅

 

 

 

 

 

2024年6月28日 (金)

【倒産】 偏頗行為の否認⁉

 ここ数年なぜか裁判所から大型の管財事件の打診はないために、田舎弁護士の破産法の知見は干乾びているような状態です😅

 ところで、破産事件の申立をサポートする際に、申立てや受任通知以前の負債の支払いについてはいわゆる否認の問題が生じることがあることが多いために、聞き取りも慎重になります。

 否認の1類型として、偏頗行為の否認というものがあります。要は、債権者間の平等弁済を害する行為についての否認です。さらに、破産法では、さらに2つのケースを定めております。

 第1は、支払不能等の後の担保の供与または債務の消滅に関する行為として、本旨弁済を対象とするものです。

 否認の主な要件は、3つです。

 ① 支払不能となった後または破産手続開始申立てがあった後にした行為

 ② 既存債務についてされた担保の供与または債務の消滅に関する行為

 ③ 受益者の悪意

 倒産してしまってからは、それを知っているのであれば本旨弁済もだめですよということです。

20240622_111432
(東京深川資料館)

 第2は、支払不能前30日以内の、破産者の義務に基づかない担保の供与または債務の消滅に関する行為として、非本旨弁済を対象とするものです。

 これも否認の主な要件は、3つです。

 ① 破産者の義務に基づかない

 ② 支払い不能となる前30日以内になされた行為

 ③ 受益者の悪意

 この非本旨弁済が他の破産債権者を害することを知っていた場合には、だめですよということです。

 但し、③の受益者の悪意については、証明責任が転換されています。伊藤眞の教科書によれば、「受益者たる債権者の側で、行為の当時、他の破産債権者の側で、行為の当時、他の破産債権者を害する事実を知らなかったことを証明して、はじめて否認の成立が阻却される。」と説明されています。そして、「他の破産債権者の利益を害する事実とは、偏頗行為否認の基礎である債権者平等を害する事実を意味し、具体的には、30日内の支払不能の発生が確実に予測された事実と解され」ています。また、青林書院破産法によれば、「破産債権者を害する事実・・具体的には、支払不能が近接しているという事実の認識を問題とすべき」と説明されています。さらに、弘文堂破産法によれば、「支払不能の発生が相当程度以上の蓋然性をもって予測される状態を意味すると解すべき」と説明されています。

 そして、田舎弁護士も破産管財人になったときに利用したことがありますが、相手方と交渉が難航しそうな場合には、破産裁判所に、否認の請求の申立てを行い、裁判所で相手方と和解、和解が難しい場合には、決定をいただくということで対応していました。

 裁判所に否認の査定をした場合には、相手方も、相当程度のお金を支払う意向を示すことが少なくないので、裁判所で和解していました。

 他方で、相手方である債権者としては、管財人に対抗するためには、やはり、善意であることの立証ができるかどうかに尽きると思いますが、支払期限よりも先に支払うということは、どうして?という疑問を抱いて債務者に質問することもあるのではないかと思います。債務者がいやもう債務超過でやっていけないので等と言うと、受益者が悪意ということになってしまうので、余計なことはきかないようがいいかもしれませんね😅

2024年6月27日 (木)

【弁護士考】 最近の弁護士出身の最高裁判事の顔ぶれ

 最高裁のサイトに、最高裁判所判事が紹介されているリンクがあります。

 弁護士出身の最高裁判事を見てみました。

 まずは、草野幸一氏です。西村あさひ法律事務所の代表パートナーです。

 次に、渡邊恵理子氏です。現在は弁護士ですが、米国のロースクール修了、公正取引委員会勤務、慶応大学大学院教授、司法試験考査委員(経済法)をされています。

 3人目が、岡正晶氏です。昭和57年から一貫として弁護士をされており、日弁連委員会委員長をされ、また、倒産法関係に詳しい弁護士のようです。

 4人目が、宮川美津子氏です。TMIのパートナーです。

 この中で、田舎弁護士のようなマチ弁からみて親近感をわくのは、岡氏だけです。あとは、履歴をみる限り、いわゆるビジネスロイヤーの方のようです。

 昔は、もっと市井に近い方が、弁護士出身の最高裁判事になられたような気がしています。 

Original_9c509796ecb648f2b85731d1eb40722
(大島自然研究路)
 さて、写真は大島自然研究路ですが、海岸沿いを歩きますが、ギリシャではないかと思うような光景にも出くわしたりしますよ。

 

 

 

 

 

 

2024年6月26日 (水)

【法律・その他】 近隣に居住する私人間の騒音や振動についてのご相談

 近隣に居住する私人間の騒音や振動についてのご相談を受けることがあります。

 被害者と称する方は、加害者とされる方に対して、慰謝料の請求や、騒音や振動を差し止めるという形で、争われることがほとんどのように思います。

 この点については、新日本法規受忍限度の理論と実務(井上繁規著)が詳しく解説しています。

 まず、慰謝料について検討します。

 この点については、最高裁平成8年3月24日付判決は、侵害行為の態様、侵害の程度、被侵害利益の性質と内容、地域環境、侵害行為の開始とその後の継続の経過及び状況、その間に採られた被害の防止に関する措置の有無及びその内容、効果等の諸般の事情を総合的に考察して、被害が一般社会に生活上受忍すべき限度を超えるものかどうかによって決すべきであると判示しています。

 そして、下級審の判例は、過去の損害賠償請求について、この判断基準に従って判断しているものと評価できます。

 次に、差止請求です。

 この点について明示している最高裁の判例は見当たりませんが、損害賠償請求における受忍限度と差止請求における受忍限度とで、差異をもうけているのが、下級審判例の現状であるといえます。

 即ち受忍限度を超える違法があると認定判断されたとしても、そのことをもって直ちに差止請求において受忍限度を超える違法があると認定判断されることにはつながりません。差止請求が認容されるためには、より高度な違法があることが必要であると考えられています。

Original_4dd7c4e87a8544a9be8ca4e4c753145
(北三方ケ森アドベンチャーロード)

 

2024年6月25日 (火)

【学校】 公立小学校の教員が、女子数人を蹴るなどの悪ふざけをした2年生の男子を追いかけて捕まえ、胸元をつかんで壁に押し当て大声で叱った行為が、国家賠償法上違法とはいえないとされた事例 最高裁平成21年4月28日判決

 公立小学校の教員が、悪ふざけをした2年生の男子Xを追い掛けて捕まえ、その胸元を右手でつかんで壁に押し当て、大声で「もう、すんなよ」と叱った行為は、

 上記男子が、休み時間に、通り掛かった女子数人を蹴った上、これに注意した上記教員のでん部付近を2回にわたって蹴って逃げ出したことから、このような悪ふざけをしないように指導するために行われたものであり、悪ふざけの罰として肉体的苦痛を与えるために行われたものではないなど判示の事情の下においては、

 その目的、態様、継続時間等から判断して、教員が児童に対して行うことが許される教育的指導の範囲を逸脱するものではなく、学校教育法11条ただし書にいう体罰に該当せず、国家賠償法上違法とはいえないとして、

 Xの請求を棄却しました。 

75982_368275369887918_990528576_n
(朝倉・古墳群)
 
 第1審は、本件行為は学校教育法11条但書で禁じられている体罰に該当するとして、Xの請求を約65万円の支払を認められる範囲で認めました。
 第2審も、①胸元をつかむという行為は、けんか闘争の際にしばしばみられる不穏当な行為であり、Xを捕まえるためであれば、手をつかむなど、により穏当な方法によることも可能であったはずであること、②Xの年齢、XとAの身長差及び両名にそれまで面識がなかったことなどに照らし、Xの被った恐怖心は相当なものであったと推認されること等を総合すれば、本件行為は、社会通念に照らして教育的指導の範囲を逸脱するものであり、学校教育法11条ただし書により全面的に禁止されている体罰に該当し、違法であると判断して、Xの請求を約21万円の支払を命ずる限度で認容しました。
 最高裁は、Aの本件行為は、児童の身体に対する有形力の行使ではあるが、他人を蹴るというXの一連の悪ふざけについて、これからはそのような悪ふざけをしないようにXを指導するために行われたものであり、悪ふざけの罰として被上告人に肉体的苦痛を与えるために行われたものではないことが明らかであること、Aは、自分自身もXによる悪ふざけの対象となったことに立腹して本件行為を行っており、本件行為にやや穏当を欠くところがなかったとはいえないとしても、本件行為は、その目的、態様、継続時間等から判断して、教員が児童に対して行うことが許される教育的指導の範囲を逸脱するものではなく、学校教育法11条ただし書にいう体罰に該当するものではないというべきである。従って、Aのした行為に違法性は認められないと判断しました。
 体罰については、学校が児童生徒の問題行動に適切に対応し、生徒指導の一層の充実を図ることができるよう、平成19年2月5日付の問題行動を起こす児童生徒に対する指導についてと題する通知を発出し、その別紙として、学校教育法第11条に規定する児童生徒の懲戒・体罰に関する考え方をとりまとめました。
 
 (1)児童生徒への指導に当たり、学校教育法第11条ただし書きにいう体罰は、いかなる場合においても行ってはならない。教員等が児童生徒に対して行った懲戒の行為が体罰に当たるかどうかは、当該児童生徒の年齢、健康、心身の発達状況、当該行為が行われた場所的時間的環境、懲戒の態様等の諸条件を総合的に考え、個々の事案ごとに判断する必要がある。
 (2)(1)により、その懲戒の内容が身体的性質のもの、すなわち、身体に対する侵害を内容とする懲戒(殴る、蹴る等)、被罰者に肉体的苦痛を与えるような懲戒(正座・直立等特定の姿勢を長時間にわたって保持させる等)に当たると判断された場合には、体罰に該当する。
 (3)個々の懲戒が体罰に当たるか否かは、単に、懲戒を受けた児童生徒や保護者の主観的な言動により判断されるのではなく、上記(1)の諸条件を客観的に考慮して判断されるべきであり、特に児童生徒1人1人の状況に配慮を尽くした行為であったかどうか等の観点が重要である。
 (4)児童生徒に対する有形力(目に見える物理的な力)の行使にうより行われた懲戒は、その一切が体罰として許されないというものではない。
 以上が、文科省見解です。
 
20240316_131631_20240611134701
(横峰寺)
 教員による体罰に関する判例のリーディングケース(※刑事事件のようです)とされる大阪高判昭和33年5月16日は、殴打のような暴力行為は、たとえ教育上筆余があるとする懲戒行為としてでも、その理由によって犯罪成立上違法性を阻却せしめるという法意であるとはとうてい解されないと判示し、体罰について、厳格な立場を示し、その上告審である最高裁も同判決を維持しております。
 他方、東京高判昭和56年4月1日判決は、児童生徒に対する有形力の行使が一定の限度で許されるとの見解に立ち、その許容限度について、教育基本法、学校教育法その他の関連諸法令にうかがわれる基本的な教育原理と教育方針を念頭に置き、更に生徒の年齢、性別、性格、生育過程、身体的状況、非行等の内容、懲戒の趣旨、有形力の行使の態様・程度、教育的効果、身体的侵害の大小・結果等を総合して、社会通念に則り、結局は各事例ごとに相当性の有無を具体的・個別的に判定するほかないものといわざるを得ないと判示しました。
 また、浦和地判昭和60年2月22日判決は、生徒の心身の発達に応じて慎重な教育上の配慮・・・のもとで行われる限りにおいては、状況に応じ一定限度で懲戒のための有形力の行使が許容されると判示し、担任教諭が授業中に離席した中学生を注意するために出席簿で頭を叩いた行為について、教師の懲戒権の許容限度内の適法行為であると判断しました。
 
20240525_1402272
(笠松山)
 田舎弁護士が小中学校のころ、教師による体罰は散見されました。
 小学校では、木の板で教師が尻を叩くという行為がありました。叩かれた行為は、学校外の任意の課外活動に誰1人クラスでの参加者がいなかったということに起因するものでした。現在では、アウトでしょう。
 中学校では、刑事事件に発展してもおかしくない体罰を行う教師がいました。問題行動が多くて1年ほどで異動されました。理不尽な理由で、細いスチール棒で頭を叩かれたこともあり、その時は、田舎弁護士の父親が学校にクレームをつけにいきました。  
 いずれにせよ、児童生徒に有形力の行使に及ぶ場合には、体罰と評価される可能性もあります。日頃から、教師の皆様においても、児童生徒の有形力の行使に及んだ場合に、体罰と評価されることがないよう、考えておく必要があるでしょう。                 

 

2024年6月24日 (月)

【金融・企業法務】銀行法務21・6月号

 銀行法務21・6月号が届きました。

 銀行法務に特化した専門誌であるため、地方の田舎弁護士にとってはなかなか読み応えがある内容のものとなっております😵

 関心を示した掲載としては、①空家等対策特別措置法の改正概要と金融機関の役割、②大阪倒産実務交流会レポート・イセ食品(鶏卵事業)グループの会社更生事件、③地域金融機関における近時の不祥事事件の分析、④フリーランス新法への実務対応とフリーランス人材有効活用のポイント、⑤金融商事実務判例紹介です。

Original_27994f27564d4dc4a82903b2102447c

                             (北三方ケ森)

 そういえば、20年位前までは、金融機関からの依頼は、貸金についての請求や保全が中心でした。しかし、このような依頼は、ここ数年激減しております。

 ご相談があっても、ほとんど、電話による相談で対応が終わっています。

 とはいえ、急にご相談にこられることもあるため、勉強はしておく必要があります😄

2024年6月23日 (日)

【離婚】婚姻費用の分担額に係る手続外の合意の存在を否定し、相手方が分担すべき婚姻費用の額を改定標準算定方式に従って算定した事例 東京高裁令和5年6月21日決定

 家庭の法と裁判第50号が届きました。

 原審は、Aが、Bによる月額5万円の支払の提案に対し、何ら留保を付することなく、「5万円で承諾しました。ありがとうございます。」と応じていることを重視して、本件合意が成立していると認定し、Bに婚姻費用として月額5万円の支払等を命じました。

 この決定に対して、Aが不服申立てをしました。

 なお、Bですが、令和4年10月までは概ね月5万円を支払っていたようですが、11月からは支払っておりません😖

 東京高裁は、別居から本件やりとりの日の前日までAB間で婚姻費用について何らの具体的な話し合いがされていないことを認定した上で、

 本件やりとりにおいて、Aが5万円で承諾しましたとの返信に加え、2人分の養育費、慰謝料、今後Aが働けるようになるまでの最低限の生活費、Dの今までの児童手当をもらえるのであればもう再構築は望まないこと、金額については専門家と相談することも併せてBに伝えており、専門家でないAやBが別居中の婚姻費用と離婚に伴う養育費等の給付を区別できていたか疑問があること、Aが本件やり取りの翌々月には本件婚姻費用分担調停を申し立てていることなどを総合考慮し、婚姻費用の分担額について確定的な合意があったと認めるのは相当でなく、後に両者の収入を踏まえて具体的な協議や審判手続等を経て婚姻費用の分担額が定められるまで、暫定的に支払われる額について提案と承諾がされたにとどまるものと認めるのが相当であるとして、本件合意の成立を否定しました。 

Original_755e08df6272431c9f4c89c4b79c16d
(北三方ケ森)
 東京高裁ですが、手続外の合意の存在を否定し、双方の収入をベースに生活費の金額を定めております。
 そもそも、申立人であるAは手続外の合意を認めていないことからすれば、原審がその合意を認めて、審判という形式で判断したことは適切ではないと考えます。
 また、解説にあがっている手続外の合意について検討されている裁判例は、全て、判決であり、審判ではありません。
 いずれにせよ、Bは、年収500万円程度の収入を見込めるのに対して、Aは無収入ということで、最終的には、月額11万円の支払を認めました。
 小さな子どもを扶養している妻への適切な生活費は、きちんと支払っていただきたいものです😡

2024年6月22日 (土)

【法律その他】全訂六版 書式借地非訟・民事非訟の実務

 先月、民事法研究会から、全訂六版書式借地非訟・民事非訟の実務が出版されました。非訟事件に属する事件としては、非訟事件手続法に規定される民事非訟事件、公示催告事件、過料事件、会社法に規定される会社に係る非訟事件のほか、借地非訟事件、家事審判事件、家事調停事件、民事調停事件があり、また、民事執行事件、破産事件、会社更生事件、民事再生事件等も非訟事件に含まれるとされています。

 非訟事件の特徴ですが、その手続は、公開の対審構造をとらず、職権探知が可能で、決定の方式で裁判がなされ、不服申立ては抗告の形式で、抗告審でも公開の対審は行われず、裁判状況に応じて不当と認めれば取消・変更ができ、既判力がないとされています。

 本書では、当事者の利害の対立があり争訟的性格が強い借地非訟事件と、非訟事件手続法第3編に規定されている民事非訟事件が取り上げられています。 

20240602_1357082
(世田山展望所)
 もっとも、本書を購入したのは、所有者不明土地管理命令の概要を知るためでした。令和3年の民法改正において、裁判所は、所有者を知ることができず、またはその所在を知ることができない土地について、必要があると認めるときは、利害関係人の請求により、その請求に係る土地または共有持分を対象として、所有者不明土地管理人による管理を命ずる処分をすることができるとされました。
 請求権者は、利害関係人であり、例えば、対象となる土地が適切に管理されていないために不利益を被るおそれがある隣接地所有者や、土地の共有者の一部が不特定または所在不明である場合の他の共有者、その土地を取得してより適切に管理しようとする公共事業実施者などが、利害関係人にあたるとされています。なお、国の行政機関の長又は地方公共団体の長は、適切な管理のために特に必要と認めるときは、同様の請求ができます。
 また、申立人は、「申立ての原因及び申立てを理由付ける事実」の一内容として、必要とされる管理行為の具体的内容を申立書で明らかにすることが必要になります。
 そして、本書は、申立書等の書式が収録されています。
 登記の嘱託ですが、管理命令の対象となる土地について、所有権の登記はされているものの、登記簿上の所有者が被相続人名義のままとなっている場合、管理命令の登記の全訂として、選任された管理人において相続登記を行う必要があります。裁判所書記官としては、管理人による相続登記の完了後に嘱託登記を行うことになります。
 取消決定についてですが、例えば、所有者であると主張する者が、所有者不明土地等の所有権が自己に帰属することを証明した場合(所有者であると主張する者が、所有者不明土地管理人に対して所有者不明土地の所有権確認訴訟を提起し、勝訴判決を得た場合など)は、裁判所は、その者の申立てにより、所有者不明土地管理命令を取り消さなければならない。この場合、管理人は、その者に対して事務の経過および結果を報告し、所有者不明土地を引き渡すことになります。
 以上、簡単に気になる点を引用しました😅

2024年6月21日 (金)

【離婚】 住宅ローン付き不動産を財産分与で名義変更できますか?というご相談

 離婚のご相談の際に、住宅ローン付きの不動産を、財産分与で名義変更できますか?というご相談は、時折受けますが、回答は非常に難しいものです。

 当事者が合意すれば可能じゃないかということですが、確かに、名義変更自体は可能です。

 しかしながら、住宅ローンを借りる際に、金融機関との間では、名義変更をする際には金融機関の事前の承諾が必要となっているため、この承諾が現実にはなかなか難しいこともあるために、回答を難しくしております。

 金融機関の中には、期限の利益の喪失を言われたこともあり、大きなリスクがあります。団体信用保険も契約違反を理由に保険金が支払われない可能性もあるでしょう。

 このようなリスクがあるために、中には、借換で対応された方もいますが、分与を受ける方に借換できる程の信用がないことが多くて、件数としてはやはり少ないです。

 そのため、このリスクをお互いに承知の上で、名義変更を行う方もいます。ローンをきちんと支払っておけば、大きな問題にはならないであろうという期待をしての対応です。

 他方、公正証書でよくみられるのは、住宅ローンを完済するまではそのままの名義として、完済後に名義変更を行うというものです。

 ただし、住宅ローンの完済が遠い将来になることも多くて、その間、他人名義の不動産に居住するという不安定な立場におかれます。

 そのため、不動産に仮登記を設定している場合もあります。

 そして、いずれの方法をとったとしても、住宅ローンを支払わずに、破産手続をとる方もいます。 

20240602_1514262_20240605220801
(笠松山から)
  結局のところ、リスクを完全に0にすることはできないので、よくよく検討の上、対応すべきと回答することになります。
 すみません😅

2024年6月20日 (木)

【弁護士考】 次から次へと起こる弁護士の不祥事をどう考えたらいいのだろうか😖

 田舎弁護士が登録した大昔は、弁護士の不祥事は全国的にも年に数える程しかありませんでした。ところが、弁護士の数が増えるにつれて、必然的に、弁護士の不祥事も多発し、報道等を賑わせるようなことが多くなったように感じます。

 田舎弁護士なりに、その大きな原因を考えてみることにします。

 司法試験の合格者数を増やしたことにより難易度が下がったため、弁護士資格を大切にしない人が増えたのではないかと思います。

 田舎弁護士のころは、現代の科挙とも言われる非常に難易度の高い資格試験であり、例えば田舎弁護士が合格した平成8年度は、受験者が約2万5000人、最終合格者が732人、合格率は、2.88%でした。なお、田舎弁護士は、丙案といって受験回数3回以下の恩典を受けていないために、500番以内で合格しております。

 ところが、現在の司法試験は、受験者が約3万9000人、合格者が1781名、合格率は、45.34%でした。

 制度が違うと雖も、合格率が、2%と、45%との違いがあります。

 昔と比べれば、今の司法試験は、少し頑張れば合格できるようなものに変貌しています。

 田舎弁護士のころに合格した弁護士は、田舎弁護士を含めて、この貴重なプラチナ資格を失わないように、間違いを起こさないように細心の注意を払いながら仕事をしていたように思います。特に営業等をしなくても、真面目に仕事をすれば、小金持ち程度以上の収入は得られてきました。

 しかしながら、今では、都会でも地方でも弁護士は有り余っているように感じます。

 そのため、真面目に仕事ができるということだけでは、事務所を維持するための収入すら得られるのが困難になってきているように感じます。

 現に、この地方においても、裁判や調停の相手方についている弁護士が、県外の弁護士ということが増えました。

 地産地消というわけにはいっておりません。 

 また、元代議士の中堅の弁護士が、犯罪に加担するような時代になってしまいました。

Photo_20240607204301
(近見山)
 田舎弁護士の息子は、東京大学の4年生ですが、息子が望んだとしても、人口減少が進むこの地域での、田舎弁護士の事務所の継承については、止めるつもりです。また、人間同士が激しく対立している事案を取り扱っていることから、大きなストレスを受け、また、法令等も制定や改正等が激しいことから、老人になっても勉強をしなくてはなりません。
 田舎弁護士の場合は、複数の会社・団体の役員、そして、多くの顧問先企業様からの顧問料という安定収入をいただいているため、個人案件が減少しても、事務所を維持していくことはしばらくの間は可能ですが、田舎弁護士がお取引先様からの期待に応えられなくなると顧問先の数は漸減していくでしょう。
 とはいえ、20歳代や30歳代の若い弁護士からみると、田舎弁護士のような老弁では気付かない地方での生き残り方を見いだすことは可能でしょう。現に、地方の企業が他社にはない特色を打ち出して、大きく成長しているのはよく見る光景で、一部の弁護士はこのような特色を打ち出して安定した事務所経営に成功されています。
 若い弁護士やその卵からは、生き残りのためのヒントをいただけたらと思っております。
 田舎弁護士が不祥事を起こして、若い弁護士達の反面教師にならないよう、今からでも、何か1つ位は専門色を打ち出していこうと思っております😅
 今日はいろいろと考えてしまいました。
 そういえば、今日は田舎弁護士の誕生日でした😄
 

2024年6月19日 (水)

【交通事故】 自賠責保険・共済紛争処理機構の運用変更

 平成25年11月から令和5年7月末にかけて、自賠責保険会社・共済組合への請求時に提出されていない新しい資料が紛争処理の申請者から提出された場合には、申請者に対して、新資料は審査の対象にならない旨の説明を行った上で、申請を取り下げさせて保険会社などへ異議申立てを行うよう促される等、新資料の受付を制限する運用がまかり通っていました。

 Original_76c7e35f83e84cbfb76668ad018d939                              (笠松山)

 しかしながら、令和5年8月から、このような運用が廃止され、新資料が添付された申請があった場合でもその受付を行うよう運用が改善されました。

 この点については、田舎弁護士も、このような運用があったために、形式的に、1度異議申立てを経由せざる得ないことが複数回ありました。

 ところが、令和5年11月28日に、監督官庁である国土交通省から、上記の新しい運用に関して、「当該運用の統一を機構内で引きつづき徹底すること」という行政指導を受けました。

 そこで、再度、機構の運用の変更に伴う内容の周知と題する書面が、令和6年5月13日付で、機構から、日弁連会長宛に発出されました。

 以前の運用は、機構では当たり前だと主張され、また、青本にも上記運用について注意する旨の記載があったように思います😅

2024年6月18日 (火)

【金融・企業法務】 会社が作成する災害時の緊急連絡網に、ご本人の家族の連絡先を入れることができるでしょうか!?

 多くの会社や団体では、災害時に、従業員に連絡をとるための緊急連絡網を作成していると思われますが、従業員本人であればともかく緊急連絡先として従業員の家族の氏名(奥様)や電話番号の情報を入手することは問題ないだろうかという素朴な疑問が生じることがあります。

 この点については、「雇用管理分野における個人情報保護に関するガイドライン 事例集」のP8において、

 2.措置に関する事例 利用目的の特定に関して(法第15条第1項関係) 【利用目的を具体的、個別的に特定している例】

(2) 「雇用契約の締結の際にご記入いただいたご家族等の氏名、住所、電話番号は、法令に基づく各種手続のほか、社内規定に基づく各種手当の支給及びご本人に万一のことがあった際の緊急連絡先としてのみ使用させていただきます。」として、問題がない事例として挙げております。

 また、東京都帰宅困難者対策条例 第四条は、以下のとおり規定しています。

 事業者は、その社会的責任を認識して、従業者の安全並びに管理する施設及び設備の安全性の確保に努めるとともに、大規模災害の発生時において、都、区市町村、他の事業者その他関係機関と連携し、帰宅困難者対策に取り組むよう努めなければならない。
2 2 事業者は、あらかじめ、大規模災害の発生時における従業者との連絡手段の確保に努めるとともに、家族その他の緊急連絡を要する者との連絡手段の確保、待機し、又は避難する場所の確認、徒歩による帰宅経路の確認その他必要な準備を行うことを従業者へ周知するよう努めなければならない。

 このことからすれば、大規模災害の発生時の時のような場合の緊急連絡先として、家族等の氏名、住所、電話番号を利用目的を具体的、個別的に特定した上であれば、取得すること自体には問題がないと思います。

 但し、大昔にあったように(小学校や中学校で、連絡網という文書が配布されていたと思います)、配布する等の場合には、第三者提供の問題も生じるかとは思います。

 Original_55ede70f84974f8babc76b1f6aa29bb                             (笠松山・庭藤)

2024年6月17日 (月)

【労働・労災】 有期契約社員の業務災害による休業中の雇止めはできるの⁉

 例えば、X社の有期契約社員のYさんが、仕事中に高所から転落して入院することになりました。Yさんの入院中に契約期間が満了となるような場合、X社は、Yさんが休業中であっても予定どおりに期間満了として、その後の更新を行わなくても、問題は生じないだろか?というケースの場合には、どのように考えるべきでしょうか。 

 労働基準法第19条1項:使用者は、労働者が業務上負傷し、又は疾病にかかり療養のために休業する期間及びその後三十日間並びに産前産後の女性が第六十五条の規定によつて休業する期間及びその後三十日間は、解雇してはならない。ただし、使用者が、第八十一条の規定によつて打切補償を支払う場合又は天災事変その他やむを得ない事由のために事業の継続が不可能となつた場合においては、この限りでない。

20240427_144857
(高田馬場ガード下)
 労働基準法第19条第1項では、業務上災害による休業期間中とその後30日間について、労働者を解雇することを原則として禁止しております。
 
 では、有期労働契約の期間満了日が上記期間中に到達する場合、その満了日をもって雇止めを行うことは、労基法第19条違反となるのでしょうか? 

 行政解釈(昭和23年1月16日基発第56号、昭和63年3月14日基発第150号)では、「一定の期間又は一定の事業の完了に必要な期間までを契約期間とする労働契約を締結していた労働者の労働契約は、他に契約期間満了後引き続き雇用関係が更新されたと認められる事実がない限りその期間満了とともに終了する。したがって、業務上負傷し又は疾病にかかり療養するため休業する期間中の者の労働契約もその契約期間満了とともに労働契約は終了するものであって労働基準法第19条第1項の適用はない」としています。

 但し、一言で「有期労働契約」といっても、(ア)純粋な有期労働契約と認められる場合、(イ)期間の定めのない労働契約と同視できるような実態が認められる場合(ウ)契約更新について労働者に合理的な期待が生じていると認められる場合
 の3つがあります。

(ア)の場合は期間満了とともにその契約は終了するため、問題はありません。

(イ)や(ウ)に該当する場合は、期間の定めのない労働契約と同様に、業務上災害で休業期間中とその後30日間は雇止めができないこともありますので、注意が必要です。 

 思い切って打ち切り補償も考えられますが、かなりの大金になります( ;∀;)

 

2024年6月16日 (日)

【建築・不動産】 サンドエロージョン現象でガス会社に生じた損害 横浜地裁平成15年9月12日判決

 サンドエロージョン現象でガス会社に生じた損害については、判例時報1851号で掲載された横浜地裁平成15年9月12日判決が参考になります。

Ⅰ ガス会社

 (ア)外注工事費等(緊急修理分)    901万8967円    ⇒  全額認容

 (イ)外注工事費等(本修理分)    1357万4042円    ⇒  全額認容

 (ウ)社員出勤費            467万4860円    ⇒  全額認容

 (エ)設計監督費             65万9234円    ⇒  65万9233円認容

 (オ)諸経費              512万6878円    ⇒  全額認容

 (カ)ガスメーター修理費         25万4500円    ⇒  全額認容

 (キ)深夜勤務者タクシー料金        1万8952円    ⇒  全額認容

 

Ⅱ ガス需要者

 (ア)器械修理費            12万5700円     ⇒  全額認容

 (イ)弁当代               6万7619円     ⇒  否認。相当因果関係のある損害ではない

 

Original_0edbbfd0ca1a4e7d85ca57f1b942fec

                           (北三方ケ森・階段地獄)

2024年6月15日 (土)

【金融・企業法務】 銀行法務21 発注・受注企業の関係性と価格転嫁交渉における留意点

 銀行法務21・5月号で掲載されたTOPIC 知っておきたい取引先企業の価格転嫁へのアプローチサポート(1)発注・受注企業の関係性と価格転嫁交渉における留意点です。

 令和5年11月29日に公正取引委員会が公表した「労務費の適切な転嫁のための価格交渉に関する指針」です。

 本指針で求められているのは、十分な協議を行うこと、つまり、当事者間で誠実なやり取りを行うことです。

 発注者として採るべき行為のポイントとしては、①経営トップの労務費の転嫁の方針を対内的・対外的に発信すること、②サプライチェーン全体で傷みを分け合うことでパートナーシップを構築すること、③発注者は受注者が希望すれば協議できる機会を提供すること、④発注者は受注者から協議の申入を受けたら、テーブルにつき、誠実に対応すること、⑤発注者は受注者が公表資料を用いて値上げの説明を行った場合には、合理的な根拠があるものとして尊重することが、挙げられています。

 他方、受注者として採るべき行為のポイントとしては、①受注者は自ら価格交渉を申し入れる必要があること、②申し入れるタイミングを見計らい、協議においては自ら希望する価格を発注者に提示すること、③受注者は値上げを希望する以上、その理由をしっかり説明する必要があることが、挙げられています。

 なお、本指針は、法律や規則ではなく、本指針に沿った行動を採れなくても直ちに優越的地位の濫用や下請法違反となるわけではないとされています。 

20240526_121759
(北三方ケ森・階段地獄)
 公正取引委員会は、本指針等を踏まえ、下請法上の買いたたきの解釈・考え方が更に明確になるよう、下請法運用基準の改正を行うこととし、原案を4月1日に公表し、30日を期限として広く意見を募集し、下請法運用基準を改正することにした旨を、5月27日に公表しました。
 下請法については、田舎弁護士も時折ご相談を受けているために、勉強しておく必要があります。
 

2024年6月14日 (金)

【弁護士考】 国選弁護⁉

 裁判員裁判制度の導入、被疑者国選弁護制度の勾留事件全件への拡大、被疑者・被告人に対する福祉的支援の要請等により、量的にも質的にも弁護士人に求められる役割は拡大される一方で、個々の弁護士が被疑者、被告人、その他事件の関係者等の言動によって過度の負担を感じ、刑事弁護活動から離れていく事例も報告されており、日弁連においても、その対策を検討するためのアンケートを実施することになったという連絡がきました。

 国選弁護は、一旦選任されると、辞められないために、長期間にわたり、被疑者・被告人と接することになります。

 大半の方は、弁護士に対してリスペクトを払っていただけるのですが、一部に、過度の負担を感じさせる案件もあり、実のところ、田舎弁護士も、それが原因となって、国選の被疑者弁護については、取り扱わなくなりました。

 特に必要性もないのに早朝や夜間に面会を度々求められる、物品や金員等過大な差し入れを要求される、刑事弁護とは関係のないことを度々要求される、被害妄想を弁護人にぶつけてくること等、苦労がありました。

 このような事態になった際に、関係機関等に相談したこともありましたが、相談すらのっていただけず、自力での解決をせざるを得ませんでした。

 今から思うと、力をつけるための経験であったと思いますが、当時は、不眠等に悩まされるようなこともありました。

 今では、刑事弁護は、被告人国選だけ登録しております。(なお、被疑者国選は、田舎弁護士は出張が多いために、十分な接見を行うことができないというのも理由の1つです。)

 Original_0edbbfd0ca1a4e7d85ca57f1b942fec                           (北三方ケ森・階段地獄)

 もっと前に、対策を検討すべきではなかったかと思いますが、それでもやらないよりは大分ましですので、早急な対策の実施を要望したいと思います。

2024年6月13日 (木)

【建築・不動産】 サンドエロージョン現象にまつわる案件  福島地裁令和2年2月18日判決

 サンドエロージョン現象についてのお話です。ネット検索の文献調査が中心となりますが、意外とみあたらないものです。

 サンドエロージョン現象とは、水道管から漏水して噴出した水に付近の土砂が混ざり、他企業管にジェット状に当たることにより他企業管を摩耗して、最終的に穴を開けてしまう現象です。

 福島市の水道局が、私道下の給水菅漏水によるガス管損傷事故にかかる損害賠償請求事件についての報告を、令和3年に全国会議で発表されていました。

 平成26年に、私道下の個人給水菅が漏水して、給水菅の真下に敷設されていたガス管に穴が空いたという事案です。

 昭和44年にF組合が給水菅を設置し、昭和45年にもF組合がガス管を設置した、昭和50年にF組合がX社にガス管を譲渡して、昭和61年にX社がガス管を取り換えたという事案です。

 この事案でも、X社が、福島市に対して、国賠法2条1項又は民法717条1項に基づき、損害賠償請求を行ったというものです。

 裁判所は、いずれの法的責任も否定しております。

 このケースでは、給水菅について福島市の関与がないようですので、東京高裁判決に従っても、国賠法2条1項の責任を問うのは難しいでしょう。

 また、本件給水菅に老朽化の所見がないこと、団地内近隣で同様の漏水の履歴がないこと、X社の昭和61年に行ったガス管入れ替え工事による影響が窺われること、以上から、給水菅は老朽化により破損したものではないこと、また、十分に離隔を設けていればガス管の損傷は回避できた可能性があったことを理由に、設置又は保存の瑕疵を否定しております。

 報告書では、十分な離隔距離を確保すれば事故が防げることを裏付けることになったと評価されています。

 この点については、東京高裁は、離隔距離の一事をもって給水菅の瑕疵を否定する根拠とはならないと判断していることと評価が異なっております。

 なお、2012年には、漏水でガス管を損傷、京都市が大阪ガスに10億円賠償したというニュースや、東京ガスのガス管の損傷原因と対策についてのレポートなどが、ネットで検索できました。

20240526_121333

                           (北三方ケ森・階段地獄)

 裁判例も、横浜地裁、東京高裁、福島地裁程度しか、見当できませんでした。しばらく、研究を重ねたいと思います。 

2024年6月12日 (水)

【建築・不動産】 サンドエロジョーン現象にまつわる案件 東京高裁平成16年12月22日判決

 横浜地裁平成15年9月12日判決の控訴審判決です。裁判例については、「東京平河法律事務所」の最近の判例から引用させていただきました。

 横浜地裁は、本件給水管が「公の営造物」(国賠法2条1項)に該当するとの判断をしましたが、東京高裁は、「公の営造物とは,国又は地方公共団体その他これに準ずる行政主体により直接公の目的に供せられる有体物ないし物的施設をいうところ,当該国,地方公共団体等がこれに対して法律上の管理権を持たない場合であっても,事実上管理しているものであれば足りるが,直接公の目的に供せられることが必要である。これを本件についてみると,本件配水管を含む配水管はそこから給水管を分岐させて市民一般に水を供給するという公の目的を有する公の営造物ということができるが,本件給水管を含む給水管は配水管から分岐して,個々の水需要者のみに水を供給するための設備であって,直接市民一般に水を供給するという公の目的に供せられているものとはいい難いものである。後に述べるように,本件給水管について控訴人の占有を認めることができるほか,本件給水管の破裂部分が本件配水管から約15センチメートルしか離れていないものではあるが,これらの点をもって本件給水管を配水管の延長部分にすぎないとして公の営造物とみることは,上記配水管と給水管の機能ないし役割の違いを無視するとともに営造物の範囲をあいまいにするもので相当ではないというべきである。」と判断して、「公の営造物」に該当することを否定しました。

 もっとも、東京高裁は、以下の理由により、本件給水菅が横浜市が占有する「土地の工作物」(民法717条)に該当することを認めました。その上で、事故は本件給水菅の老朽化による破裂が原因であり、工作物の保存に瑕疵があったと判断しました。

 ガス管と給水菅との離隔距離が短かったこと(なんと1センチメートル)については、本件事故は給水菅の老朽化による破裂に基づく漏水によるものであって、本件ガス管の本件給水菅との離隔距離の一事をもって本件給水菅の瑕疵を否定する根拠にはならないと判断しております。 

20240526_120846_20240528174701
(北三方ケ森・階段地獄)
 なお、令和元年9月13日作成の水道局の資料によれば、平成27年1月に発生した水道管漏水事故について、横浜市は、東京ガスに対して、約900万円の賠償を支払っております。
 
 賠償を行う理由が明記されていましたので、引用します。
 「水道管の敷設にあたっては、事故防止等の観点から、他の埋設菅に対して、一定の離隔距離を確保するなどの対応を行う必要があります。しかし、昭和60年に、下水道工事に伴う水道管の移設工事を施工した際、道路内において他企業菅がふくそうしている状況にあったことから、一部の水道管(給水菅)で既に埋設されているガス管との離隔距離を確保するなどの措置を講ずることができませんでした。このため、今回の事故については、本市に責任があることを認め、東京ガスに対して、損害賠償を行うものです。」
 なお、支払の原資については、「このたび、東京ガスから提示された請求内容について、加入している保険会社の鑑定人と協議、検討した結果、妥当と考えられることから」とされていますので、保険でカバーされるのでしょう😅
 そして、いよいよ東京高裁判決に言及している下りです。
 「なお、お客さまの所有である給水菅の漏水事故について水道局が賠償責任を負う理由につきましては、過去の同様の事故について、本市が被告となった事件の判決(東京高裁判決)において、市は公道下の給水菅について「事実上支配し、その瑕疵を修補することができ、損害の発生を防止し得る関係にあった者ということができ、」民法717条第1項の土地の工作物であるところの給水菅の占有者であると判断されました。公道下の給水菅については、これまで事実上、本市が維持管理を行ってきたことから、本市が民法第717条第1項の土地の工作物の責任者として賠償責任を負うものです。」
 昭和47年にガス管が敷設され、昭和60年に水道管が敷設、そして、離隔は、17㎝という事案だったようです。
 他方、平成19年5月に発生した水道管漏水事故については、上と事情が異なっております。
 平成24年作成の資料によれば、昭和43年に水道管が敷設され、昭和56年にガス管が敷設、そして、離隔は、2㎝という事案だったようです。
 このときは、横浜簡易裁判所で協議が行われましたが、横浜市が認めている30%の賠償の範囲で東京ガスに支払ったようです。

 

2024年6月11日 (火)

【建築・不動産】 サンドエロジョーン現象にまつわる案件 横浜地裁平成15年9月12日判決

 サンドエロージョン現象とは、耳慣れない言葉です。

 サンドエロージョン現象とは、水道管から漏水した水が水圧とともに付近の土砂と混ざり合い、近接した部材(ガス管)の一点に集中的に当たることにより、研磨し、損傷させることで、最終的に穴を開けてしまう現象です。

 大分市上下水道局のパンフレットはわかりやすいです😄

 20240526_101428

                           (龍岡木地登山口)

 ネットで検索すると、横浜市水道局と東京ガスさんの紛争ケースが散見されます。

 まず、ガス会社が市に対し、市が管理する水道管が老朽化により漏水し、そのためガス管が破損されてガス供給が停止し損害を被ったとして、国賠請求が認容された事例です。

 争点は、3つありましたが、主なものとしては、①本件給水管は、国賠法2条1項の「公の営造物」にあたるか、②本件事故と相当因果関係のある損害です。

 横浜市は、「本件給水管は、公の営造物であるというためには,国又は公共団体が直接に公の目的に供している物であることが必要であるところ,そもそも給水管は,その使用者又は所有者である水需要者に水を供給するための水道管であり,もっぱら水需要者自身の用に供されるものであること,被告においては,横浜市水道条例17条により,給水装置の使用者又は所有者が,給水装置から水道水が漏水しないように管理する義務を課せられており,管理義務を怠ったために生じた損害の賠償は使用者又は所有者の責任とされていること等からすると,給水装置である給水管は公の目的に供される物ではない上,その管理義務はその使用者又は所有者にあり,被告は法律上も事実上も管理していないのであるから,給水管は公の営造物とはいえない。」として、争いました。

 これに対して、裁判所は、以下のとおり判断し、横浜市の主張を認めませんでした

 「 ア 被告が横浜市内の各家庭へ水を供給するために配水管を設置してこれを管理しており,配水管が市民に水を供給するという公の目的を有する公の営造物であることは当事者間に争いがないが,私人所有の給水管であっても,その設置場所及び瑕疵の部位から見て被告が事実上管理しており配水管と一体をなすと認められる部分については,配水管の延長部分として配水管と同様にこれを管理する義務を負うものと解するのが相当である。
  本件給水管の破裂部は,本件給水管所有者の所有する土地から見ると幅員6メートルの車道を挟んだ反対側の歩道下に埋設されている部分に存するところ,一般に給水管の使用者あるいは所有者が公道下の給水管を管理することは非常に困難であり,また恒常的かつ積極的に管理する意思も有しないのが通常である。
  これに対し,被告が,道路内の漏水についての連絡先は水道局のみであり,また給水管の使用者又は所有者に公道下の給水管についてまで維持管理を要求するものではないとの広報活動を行っていること,昭和52年度から道路内の漏水については原則として無料で修理していること,被告自身,平成7年発生の事故において,私人所有の給水管であっても,公道下に埋設されている場合は,事実上被告が管理する水道管であることを認めていること,本件事故後撤去した本件給水管を持ち帰り,いったん管理下に置いたが,本件給水管はその後所在不明となったことからすれば,被告には本件給水管の所有者が水需要者であることの認識が乏しいといわざるを得ないことに照らせば,被告には公道下の給水管を事実上管理する意思がうかがわれ,また,被告は,その管理する配管台帳図の検索により給水管の所在位置の概略と埋設時期を把握することができ,公道の掘削についても私人と同程度に困難であるとは到底いえず,公道下の給水管について事実上管理することが可能であることからすれば,公道下の給水管については被告が事実上管理するものというべきであり,かつ本件給水管の破裂箇所が水道施設である配水管の結合部から15センチメートル程度しか離れておらず,本件給水管の所有者である私人所有土地との距離と比較して相対的に極めて近接しているといえることからすれば,本件給水管の破裂部に対しては,本件配水管に対すると同様の注意を払わない限り,本件配水管そのものに対する十分な管理をしたことにはならないというべきであり,上記破裂部は,本件配水管の管理義務の範囲内に含まれると解するのが相当である。
 イ(ア) これに対し,被告は,横浜市水道条例17条において,給水管の使用者又は所有者は,水道水が漏水することのないよう充分な注意をもって給水管を管理しなければならないこと,その管理を怠ったために生じた損害の賠償は,使用者又は所有者の責任とすること,給水管に異常があり,修繕を必要とするときは,その修繕に要する費用は原則として使用者又は所有者の負担とすることが規定されているから,そもそも給水管は公の営造物には当たらないと主張する。しかし,前記のとおり,被告が公道下の給水管についてまで私人に恒常的かつ積極的な管理を要求しているとは考えにくく,公道下の給水管の修繕に要する費用については被告が原則として負担しているのが現状である。
  (イ) また,被告は,本件給水管の設置者であり当初の所有者である長銀不動産が,本件給水管を新設するにあたり,十分に管理することを誓約したのであるから,本件給水管は,公の営造物には当たらないと主張する。しかし,その誓約の内容は,本件給水管について被告に無断で止水栓を開栓し盗水したり,器具類を破損したりすることのないよう十分に管理することを内容とするものであって,一般的な管理まで誓約したものとは認められない。
 ウ 以上より,本件事故は,公の営造物である配水管と同様に被告が管理義務を負う給水管部分が老朽化により破裂したことを原因とするものであるから,この給水管の管理の瑕疵は,公の営造物である配水管の管理の瑕疵と同一と評価することが相当である。
  よって,被告は本件事故により生じた損害を賠償する責任がある。」

 この横浜地裁判決は、東京高裁に控訴されて、結論については、第1審判決が維持されましたが、その理由に大きく変わりました。東京高裁判決の解説については、明日いたします。

 

2024年6月10日 (月)

【医療事故】 賠償科学 No50

 田舎弁護士も所属している「日本賠償科学会」から、賠償科学No50が送られてきました。

 第76回から第78回までの研究会が収録されています😄

 第76回研究会・シンポジウムは、「医事紛争が当事者となった病院の運営・医師その他の医療スタッフに及ぼす影響」でした。

 第77回研究会・シンポジウムは、「院内事故調査と医療安全」でした。

 第78回研究会・シンポジウムは、「善きサマリア人法の多角的考察」でした。 

20240526_095258
(水が峠トンネル)
 原著論文「交通事故後の脊椎の後遺障害認定に残された諸問題」の「画像診断の限界について」では、田舎弁護士を含む交通事故事案を取り扱う弁護士にとって耳の痛いお話が載っていました。
 
 「横行する外傷性椎間板ヘルニアの問題であるが、本診断名は当該事故による外力がヘルニアを発生させ、神経組織の圧迫症状を惹起したことが明らかな場合に限られて下されるべきであり、誤って安易に診断名として記載されてはならない。
  つまり臨床上、椎間板ヘルニアとは単なる画像所見だけでなく、そのヘルニアによる神経根や脊髄の圧迫性の臨床症状(主として神経根性のしびれや放散痛、脊髄症性の四肢の運動麻痺)が存在してはじめて妥当性を持つ傷病名(=診断名)となる。したがって、画像の上の単なる無症候性の椎間板の後方膨隆所見が傷病名とならないことは自明の理である。
  当該事故による真正の外傷性椎間板ヘルニアとは、当該外力が画像上所見されたヘルニアを発生させた事故起因性が明らかな場合に限られなければならないことも他言は要しないであろう。
  その証明には、ヘルニアが受傷前には存在しないが受傷直後に認められるか、受傷直後から数週間以内に経時的に徐々に増大してきた経過が所見されるMRIが必要である。このようなエビデンスがなく、例えば頸部椎間板に接した椎体縁に骨棘があるのであれば、変形性脊椎症に伴う椎間板の後方膨隆を基盤として、当該外力が誘因となつて、頸部神経根症状、もしくは頸髄症状を発症したものとして、外傷性頸椎症性神経根症か、同脊髄症(または頚髄不全損傷)と診断されるのが正しい。外傷性椎間板ヘルニアと診断するには、このようにMRI上で経時的にヘルニアが発生、または増大した変化を確認することが必須といえる。
 安易に事故起因性を主張する内容の意見書は、患者に無益な被害者意識を助長し、治療上の予後を不良とすることは外科医の常識であるだけでなく、事実、社会的にもしばしば無用な混乱を招くことになる。」
  う~ん。確かにそのとおりではありますね😅

2024年6月 9日 (日)

【学校】 小学校の教諭の行為及び発言が、いずれも教諭が児童に対して行うことが許される教育的指導の範囲を逸脱したものであるとして、国賠法1条1項の適用上違法であるとされた事例 熊本地裁令和5年2月10日判決

 判例時報No2588号で紹介された熊本地裁令和5年2月10日判決です。

 本件は、原告が、当時通っていた被告が設置する小学校において、原告のクラスの担任であったA教諭(以下「A教諭」という。)から、(1)原告の腕を強く掴み正面から首元を掴んで教室の壁方向に押しやる行為(以下「本件行為」という。)を受けたこと、(2)同クラスの児童全員の前で、①「お前ははっきり言ってクソだ。」、②「もう学校に来なくていい。」、③「もう原告とは話すな。」「もう原告とは関わるな。」「友達を選びなさい。本当にこの人といたら楽しい、安心できるという友達と過ごしなさい。」、④「親に言っても無駄だ。俺は撤回しないから。」と言われたこと(以下①~④の発言を合わせて「本件発言」といい、個別の発言については、上記の数字に応じて「本件発言①」などという。)が、いずれも違法な行為であるなどと主張して、被告に対し、国家賠償法1条1項に基づき、慰謝料等の損害合計275万円及びこれに対する本件行為の後であり本件発言の日である令和2年11月11日から支払済みまで民法所定の年3分の割合による遅延損害金の支払を求める事案です

 裁判所は、本件行為Ⅱついても、本件発言①から④についても、教育的指導の範囲を逸脱したことは明らかで違法があると判断しております(慰謝料等として12万円の支払義務を認めております。)。

 なお、A教諭は、「戒告処分」を受けております。 

20240608_121102
(嫁ちゃんランチ)
 教育上必要があれば、懲戒権はありますが、体罰は一切不可となっております。
 体罰については、「公立小学校の教員が、悪ふざけをした2年生の男子を追いかけて捕まえ、その胸元をつかんで壁に押し当てて大声で叱った行為が、その目的、態様、継続時間等から判断して、教員が児童に対して行うことが許される教育的指導の範囲を逸脱するものではなく、学教法11条ただし書にいう体罰に該当せず、国賠法上違法とは言えないと判断した判決(最高裁平成21年4月28日)がある。同判決の調査官解説によれば、同判決は、教員が児童に対してした有形力が軽微な事案についての事例的判断であり、一般的な判断基準を示したものではないとされている。しかし、同判決が、学教法11条に基づく懲戒の違法性に関し、その教育上の目的、態様、継続時間等を総合考慮して判断をした点については、一定の先例性がある」と解説されています。
 体罰にあたっては、有形力は全て×というわけではなさそうです😟

 

【金融・企業法務】 抵当不動産の賃借人は、抵当権者が物上代位権を行使して賃料債権を差し押さえる前に、賃貸人との間でした、抵当権設定登記の後に取得した賃貸人に対する債権と、上記の差押えがされた後の期間に対応する賃料債権とを、直ちに対等額で相殺する旨の合意の効力を、抵当権者に対応することができるか?

 判タ第1519号に掲載された最高裁令和5年11月27日判決です。

 本件は、建物の根抵当権者であり、物上代位権を行使して賃料債権を差し押さえたxが、賃借人であるYに対して、当該賃料債権のうち未払いの支払いを求める事案です。

 Yは、上記の差押えに先立ち、賃貸人との間で、期限の利益を放棄した賃料債務に係る債権と、Yの賃貸人に対する債権(根抵当権設定登記前に取得した債権と、同登記後に取得した債権がある)とを、直ちに対当額で相殺する旨の合意(本件相殺合意)を有していたことから、Yが本件相殺合意の効力をXに対抗できるか否かが争われました。

 第1審と第2審は、相殺優先説をとり、Yを勝たせました。ところが、最高裁は、物上代位優先説をとり、Xを勝たせました。

 20240525_115353

                         (龍岡木地・素掘りのトンネル)

 草野耕一裁判官の補足意見では、①登記後取得債権が、敷金返還請求権のように賃貸借契約の重要部分といえる合意から生じた債権(賃借人に固有の債権)である場合においては、物上代位優位論を否定し相殺優位論を肯定し得る場合があるかもしれない。②本意見で述べられていることは飽くまでも登記後取得債権と将来賃料債権の間における相殺の可否についてであって、抵当権設定登記の前に賃借人が取得した賃貸人に対する債権を自働債権とする相殺や差押えがされる前の期間に対応する賃料債権を受働債権とする相殺の可否についての見解を合意を含意するものではない。と述べておられます。☺

 実務では、賃料支払いと敷金返還債務について相殺する旨の合意を設けていることを目にすることがありますが、草野裁判官によれば、このような場合には、相殺優位論を肯定できるかもしれないということのようですね😃

 

2024年6月 8日 (土)

【離婚】 東京地裁及び大阪地裁における令和5年改正DV防止法に基づく保護命令手続の運用

 離婚事件を取り扱っていると、DV防止法に基づく保護命令について、ご相談を受けることがあります。DV防止法も複数回改正を経ており、勉強しておかないと、取り残される案件の1つです。

 令和6年4月1日から施行されていますが、さて、どのような点がこれまでと変わったのでしょうか?

 20240427_162956

                          (阿佐ヶ谷にあるあんみつ屋)

 まず、接近禁止命令の要件が、「暴力又は生命、身体」から、「自由、名誉も即は財産」に対する脅迫も、okとなった点です。

 第2に、接近禁止命令の期間についても、6か月から1年と延長になりました。

 第3に、電話等禁止命令も、禁止対象行為に含まれることになりました。

 第4に、子への電話等禁止命令が創設されました。

 第5に、保護命令違反が、これまでは、懲役1年以下又は100万円以下の罰金が、懲役2年以下又は200万円以下の罰金に、厳罰化されました。

 判例タイムズ1519号で書式を含めてわかりやすく解説されています。

2024年6月 7日 (金)

四国百名山である楢原山に登ってきました😄

 今治市玉川にある楢原山(1041㍍)に登ってきました。蒼社川本流とその支流の木地川に挟まれています。山頂には、1300年前に創建された奈良原神社跡があります。

 Original_577d08525b41427ba7fafba9f3c81bd

                             (楢原山山頂)

 楢原山へは、登山者であれば、通常、鈍川木地か、龍岡木地の、どちらかのコースになります。龍岡木地の方が、少し楽しめると思います。

 20240525_120250                            (木漏れ日の橋)

 木漏れ日の橋の下には、降りることが可能です。時々、犬を連れている方をみかけます。

20240525_132806                             (山椒)

 登山道には、途中、山椒の林があります😄 20240525_1410422

                            (山頂近くの眺望)

 山頂は、眺望は今一つですが、放送塔の近くでは、眺望がひらけているところがあります。

 20240525_141935                            (嫁ちゃんランチ)

 嫁ちゃんランチは、飛騨カレー&フジ今治店で購入したパンでした😄

2024年6月 6日 (木)

嫁ちゃんランチ持参で、北三方ケ森に登ってきました。

 北三方ケ森は、標高977㍍の山で、いわゆる水源の森山です。北西側に降った雨は、立岩川となって北条方面に流れ下り、北東側は蒼社川となって玉川ダムを満たし、今治方面へ、南側は石手川となって石手川ダムを経由して、松山平野を潤します。

 ルートは、龍岡木地経由か松山市米野側経由の水ヶ峠か、又は、高縄山からが、一般的です。

 本日は、龍岡木地経由で、水ヶ峠、そして、階段地獄を経て、北三方ケ森の往復というコースです。

 20240526_103121

                          (四国のみち・至水ヶ峠)

 龍岡木地の登山口から水ヶ峠までは、概ね沢沿いで、爽快な道です。また、なぜか、ところどころに石畳があります😄

 20240526_111243

                             (名物・よろこぶ)

 また、途中で、奇妙なこぶ状に曲がった杉もあります。こぶをみて、よろこぶという方もいます。 

20240526_113555
(水ヶ峠)
 水ヶ峠は、トンネルが有名ですが、これが本当の水ヶ峠です。ベンチがありますよ
 
20240526_120846
(階段地獄)
 いわゆる階段地獄です。急峻な上り坂に、階段が上まで敷かれています。
 
Original_7b92b5ac7d6f4d4cb2327c2334b4093
(北三方ケ森)
 山頂です。ベンチもあります😄
 
20240526_1444252
(山頂)
 眺望は、正面の木が大きくなって、悪いです。平成5年ころは、木が小さくて見通しがよかったようです
 
20240526_125422
(嫁ちゃんランチ)
 嫁ちゃんランチです。ナポリタン&唐揚げです😄

2024年6月 5日 (水)

【弁護士考】 弁護士会照会に応じたことが、不法行為又は債務不履行を構成することはないとされた事例 東京地裁令和4年12月26日判決

 判例時報No2587号で掲載された東京地裁令和4年12月26日判決です。 

20240518_114636
(三崎稲荷神社)
 病院を経営する法人が、弁護士法23条の2第2項に基づく照会に応じて患者の診療録等を開示したことが同患者に対する不法行為又は債務不履行を構成することはないとして、不法行為に基づく損害賠償請求及び債務不履行責任に基づく損害賠償請求が、いずれも棄却された事例。
 東京地裁は、X(原告)とY(病院)との間の診療契約上の附随義務として、Yは、Xに対し、Xの診療経過等を含む診療上知り得た患者の秘密を正当な理由なく第三者に漏えい、開示等をしてはならない義務(守秘義務)を負っていたとした一方、23条照会を受けた団体は、当該照会の必要性等について積極的に調査をすべき義務は負わないと説示しました。
 そして、Yが本件報告をしたことにつき守秘義務違反が問われるのは極めてまれな場合に限られるが、そのような場合には当たらないとして、Xの請求を棄却しました。
 正当な判断というべきです。
 さらに、本判決は、個人情報保護法との関係についても言及しており、同法27条1項1号の「法令に基づく場合」にも、別途守秘義務違反に問われ得るというのであれば、同号を設けた意義が没却されるとして、同号に該当する場合には、診療契約の相手方との関係でも、不法行為や債務不履行を構成することはない旨判示しております。
 この点についても、正当な判断です。
 20240518_114920
                           (LEC 水道橋)
 きれいな建物になっていますが、今から35年ほど前には、多数回通学した司法試験予備校の1つです。初心忘るべからずですね😄

2024年6月 4日 (火)

【労働・労災】 ケース解説 休職・休業・復職の実務と書式

 新日本法規から、令和6年4月に、休職・休業・復職の実務と書式が出ました。先日、新日本法規の担当者が持参されたので、早速、購入しました😄

 私傷病休職制度の運用として、①休職要件の運用、②休職期間中の処遇の運用、③復職要件・休職期間満了退職の運用等は、一読が必要だなと思いました。  20240518_184238                            (東陽町・小料理早和)

 田舎弁護士へのご相談も、休職、休業、復職にかかわることが増えています。ほとんどの場合、精神的な事情が原因で、心療内科の診断書を取り付けて、一方的に休職してしまいます。

 また、その原因は私傷病だと思われるのに、業務上のことが原因だと主張をされる方もおられます。

 本当に、最近増えている相談の1つですので、相談を受ける弁護士も、休職制度についてもしっかりとした理解をした上でのアドバイスが求められているように思います。

 良質なリーガルサービスが提供できるよう、頑張っていきます😄

 

2024年6月 3日 (月)

【労働・労災】 ケース別懲戒処分通知書作成の実務とモデル文例

 新日本法規から、令和6年2月に、ケース別懲戒処分通知書作成の実務とモデル文例が出版されていましたので、先日、田舎弁護士の事務所を訪ねられた新日本法規の担当者から数冊書籍を購入しました。

 20240518_182849

                            (東陽町・小料理早和)

 本書は、懲戒処分通知書の作成を主眼に置き、「第1章 ミス・欠勤早退・職務懈怠」、「第2章 業務命令違反」、「第3章 職場規律違反」、「第4章 経歴詐称」、「第5章 ハラスメント」、「第6章 私生活上の非違行為」の類型ごとに合計49件の懲戒事例を取り上げ、全ての懲戒事例において、具体的なケースを設定し、冒頭に事前準備等の留意点及び記載事項の留意点を箇条書きにまとめ、懲戒処分通知書のモデル文例を紹介し、調査のポイント、懲戒処分の手続、懲戒処分の量定等について、法規定や裁判例等を踏まえて解説しております。

 懲戒処分も、よくご相談があります。

 総じていえることは、大きな会社の場合には、総務人事部門がしっかりしているので、少なくとも、労働基準法や通達等が要求している手続は遵守検討の上、懲戒処分を検討しております。他方、同族会社を中心に、中小の会社は、社長の一言ということで、いきなり懲戒解雇ということに至っていることが少なくありません。

 懲戒手続のことを経営者に説明すると、必ず、うちは、大会社じゃないから と言われるのですが、会社の大小を問わず、労働基準法や労働契約法等は適用されるだけですので、十分な理解が必要です。残念ながら、社労士の先生も、顧問契約の解消を恐れてか、余り強いことを言っていないことが少なくないように思います😖

2024年6月 2日 (日)

【相続】 非典型財産の相続実務 ー金融商品、デジタル財産、知的財産、地位、権利、特殊な不動産・動産等ー

 新日本法規から、令和6年4月に出版された「非典型財産の相続実務」です。先日、新日本法規の方が来られましたので、いつものように数冊の専門書を購入いたしました😄

 20240518_184757

                           (東陽町・小料理早和)

 非典型財産としては普段余り気にしないようなもの、iDeCoや暗号資産、電子マネー、SNSアカウント、航空会社のマイル、太陽光発電など、相続の場面以外にも日常的に接する財産について、わかりやすく解説されており、新しい知見を知るためには、役立ちそうな印象をいだきました。

 出張の時に、行き帰りの際に読み物として持参しておこうと思います。新しい知見を取得するというのは、仕事の面でも役立ちますが、生きていく上でも必要なことだと思います。

 さて、田舎弁護士も、アラカンですが、年々衰える、体力に加えて知力も維持できるよう、努めていきたいと思います。田舎弁護士の同輩や先輩の弁護士の方の中には、知的成長を怠っているような残念な方に遭遇することがあります。弁護士は、顧客に対しては、良質なリーガルサービスの提供を行わなければなりませんが、その中には、当然、弁護士の専門分野に属する知見の獲得については研鑽が必要ということになります。それを怠ると、昔話(自慢話)が好きな、法律を少し知っているお爺さん、お婆さんに、容易に転化してしまいます。

 田舎弁護士も、後輩たちからそのようなことを言われないように、体力に加えて、知力も維持してきたいと思います。

 えっ、体力はともかく、知力は元からないですって!?

 

2024年6月 1日 (土)

【建築・不動産】 Q&Aとケースでみる 休眠担保権等の抹消登記

 新日本法規から、令和6年2月に出版された「Q&Aとケースでみる 休眠担保権等の抹消登記」を購入しました。

 ほとんど使うことはないと思いますが、稀に休眠担保権の相談を受けることがあるために、その時のために購入しました。この種の本は、購読する方が少なく再版も期待できないので、お守りとして購入しておきました。 

20240518_195827

                            (東陽町・小料理早和)

 不動産登記法70条4項後段の特例による抹消(弁済供託利用による休眠担保権の抹消の特例)や、不動産登記法70条の2の特例による抹消(解散した法人の担保権に関する登記の抹消)等は、もしかして、利用させていただくかもしれません😅

 そのために購入しました。

 近い将来、せっかく購入したこの書籍が利用できるよう期待しております😄

« 2024年5月 | トップページ | 2024年7月 »

2025年3月
            1
2 3 4 5 6 7 8
9 10 11 12 13 14 15
16 17 18 19 20 21 22
23 24 25 26 27 28 29
30 31          

🏦 書籍紹介(企業法務・金融)

無料ブログはココログ