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2022年3月16日 (水)

【流通】 東京地裁平成16年3月31日判決 金融商事判例1192号38頁

 金融商事判例1192号38頁で紹介された東京地裁平成16年3月31日判決です。

 事件は、2事件あります。

 事案は以下のとおりです。

 「1 本件は、一般家庭用LPガスを販売する中小業者であるXらが、大手販売業者であるYらに対し、独占禁止法24条に基づきYらによるLPガスの販売行為等の差止めを求めた事件である。平成12年の改正によって創設された独占禁止法24条に基づく本格的な差止請求訴訟であり、公刊されている限りでは、差別対価を問題とした最初の事例である。Yらの営業秘密の観点から弁論が分離されて〔(1)事件〕、(2)事件〕となり、主張および立証が事件ごとになされたために、認定された事実に差異が生じている。」

 不当な差別対価を理由に、差止の裁判を提訴されています。 

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(笠松山)

「2 本件の事案の概要は次のとおりである。

 〔(1)事件〕について
 Y1は、静岡県に本拠地を置くLPガス販売業者(東京証券取引市場一部上場)であり、静岡県においては、一般家庭用LPガスを10立方メートルあたり5700円台から6200円台で、東京都、神奈川県、千葉県および埼玉県においては、新規顧客に対して10立方メートルあたり4300円、既存の顧客に対しては6000円前後で販売していることから、東京都、神奈川県、千葉県および埼玉県において一般家庭用LPガスを販売している中小販売業者であるXらが、Y1の価格設定が一般指定3項の「差別対価」に当たるとして、10立方メートルあたり4300円以下の価格での販売を差し止めるとともに、Y2がY1のためにLPガスの販売をしているとして、Y1からY2に対する業務委託の差止め等を求めたものであり、地域による差別対価と相手方による差別対価が問題となった。

 〔(2)事件〕について
 Yは、東京都に本拠地を置くLPガス販売業者(東京証券取引市場一部上場)であり、東京都、神奈川県、千葉県および埼玉県において、新規顧客に対してLPガスを10立方メートルあたり4195円またはそれ以下の価格で、既存の顧客に対しては5000円台で販売していることから、東京都、神奈川県、千葉県および埼玉県において一般家庭用LPガスを販売している中小販売業者であるXらが、Yの価格設定が一般指定3項の「差別対価」に当たるとして、10立方メートルあたり4195円以下の価格での販売を差し止めたものであり、相手方による差別対価が問題となった。」

 金額的には、かなり差異があるように感じますね。 

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(笠松山)

「3 差別対価には、小売段階(売り手段階)と卸段階(買い手段階)のものがあり、本件で問題となったのは小売段階(売り手段階)における公正競争阻害性である。


 この点について、本判決は、「自己の商品・役務をどのような価格で販売するかは、商品・役務の品質決定とともに、本来的には、市場における需要動向、自らの生産性、同業者の価格設定等を踏まえた当該事業者の自由な販売戦略に委ねられているものであり、このような個々の事業者の活動を通じて市場における競争の活性化がもたらされ、消費者利益の増大が図られるものと解される。

 そうすると、以上のような価格を通じた業者間の能率競争を確保するとの法の趣旨に鑑みるならば、売り手段階における差別対価が公正競争を阻害するものであるか否かは、結局のところ、当該売り手が自らと同等あるいはそれ以上に効率的な業者が市場において立ち行かなくなるような価格政策を採っているかどうかにより判断されることとなるものと解するべきである。

 そして、このような公正競争阻害性の認定にあたっては、市場の動向、供給コストの差、当該小売業者の市場における支配力、価格差を設けた主観的意図等を総合的に勘案することとなるが、市場において価格差が存在することは、業者間の能率競争が行われていることや市場における需給調整が機能していることの現れとみることができるから、同一業者の供給する商品・役務に存在する価格差が不当廉売を含むものであることが明らかな場合は格別、そうでない事案においては、小売業者による需要の動向や供給コストの差に応じた価格決定を萎縮させ、価格の硬直化と市場の需給調整力の減衰を招くことのないよう慎重に認定を行う必要がある。」とした。」


 「本判決が、独占禁止法上、差別対価の基準として、「自己と同等あるいはそれ以上に効率的な業者が市場において立ち行かなくなるような価格政策」としているのは、本来非効率な業者が効率的な業者を駆逐するために、地域によって、または相手方によって販売価格に差を設けることは公正競争を阻害するという趣旨によるものであろう。この点において、不当な差別対価の公正競争阻害性は不当廉売と同質のものとなるが、本判決は不当廉売以外の場合にも、公正競争阻害性が認められる余地を残した判示をしている。これは、おそらく、本来非効率的な業者が、原価割れでなくても、欺瞞的顧客誘引等の独占禁止法上許されない手段を用いて競争者を排除している場合や、独占禁止法上、許されない目的の手段として価格差を設けている場合を想定したものと思われる。
 そのうえで本判決は、市場の動向、供給コストの差、当該小売業者の市場における支配力、価格差を設けた主観的意図等をもとに、Yらの設定した地域による販売価格の差、相手方による販売価格の差には公正競争阻害性が認められないとした。」

 ここは、不当廉売型の場合において、「原価割れ」を要件とすべきかどうかについての解説ですね。

 「4 差別対価は同一(同等・同質)の商品・役務について異なる価格を設定することであり、同一の機会に提供された商品・役務の販売価格に差があることを前提としているが、本件のLPガス販売契約は継続的供給契約であるため、何を比較して販売価格に差があるというのかが問題となる。この点について本判決は、LPガス販売は顧客が比較的自由に販売業者との間の契約を解約していることから、LPガス販売契約が継続的供給契約であるとしても、Yは、LPガスを供給する都度、価格を設定して販売していることになるとして、同一市場において、同一機会に新規顧客と既存の顧客との間に販売価格の差を設けていることになると認定した。」

 ここは、被告が、同一市場において、同一機会に新規顧客と既存の顧客との間に販売価格の差を設けているということをいいたいのでしょう。

「5 本件では、Xらは、公正競争阻害性について、Yがブローカー(自らLPガスを供給する能力がないにもかかわらず、顧客と直接LPガス販売契約を締結したうえで、LPガス販売契約上の地位を他のLPガス販売事業者に売却することにより利益を得ている業者)等を利用して、既存業者の顧客を獲得していることを主張したが、本判決は、価格差別の公正競争阻害性は、価格の設定そのものの公正競争に与える影響が問題とされるべきであり、ブローカー等の利用は差別対価における公正競争阻害性の判断に影響を及ぼすものではないと判断した。
 また、Xらは、公正競争阻害性について、Yは特定の業者をねらい打ちにして顧客を奪取し、また顧客を奪取すべきでない業者を決めていると主張したが、本判決は、市場において価格競争を行う場合に、相手方の競争力をも考慮に入れて販売戦略を立てることは当然であり、これをもって公正競争を阻害しているということはできないと判断した。」

「6 地域による差別対価の先例としては、石川県で「北国新聞」を販売している新聞社が、富山県で、北国新聞よりも低い購読料で「富山新聞」を販売したという第二次北国新聞事件(東京高決昭和32・3・18審決集8巻82頁)があり、相手方による差別対価の先例としては、価格協定を締結、実施すると同時に、協力的な流通業者に事業者団体を構成させ、その構成員にだけ大幅な値引き価格で商品を供給した東京リノリューム事件(昭和55年2月7日勧告審決・審決集26巻85頁)がある。


 本判決は、これまで判例としてほとんど先例のない部分に関して判断した事例であり、実務上、参考になると思われる。」

 金融商事判例に直接あたって勉強しておく必要があるようです。

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