【行政】 特別の利害関係を有する理事が加わってされた漁協の理事会の議決の効力 最高裁平成28年1月22日判決
判例タイムズNo1423号です。
今回の判タは、「遺言能力(遺言能力の理論的検討及びその判断・心理方法」と、「介護事故による損害賠償請求訴訟の裁判例概観」が特集として組まれていました。
それはさておき、頭書タイトルについての最高裁平成28年1月22日判決が紹介されていましたが、四国での事件のようです。
高知県安芸郡東洋町が、台風の被害に遭った漁業者の所属する町内の漁協に対して、当該漁業者の被害復旧等にあてるための資金として、町の規則に基づいて1000万円を貸し付けたことにつき、同町の住民である原告が、本件貸付けに係る支出負担行為等が違法であるとして、地方自治法242条の2第1項4号に基づき、当時の町長らに対し、1000万円の損害賠償請求をすることを、被告である東洋町長に求めた住民訴訟の事案です。
高裁は、本件貸付けの根拠となった本件規則は適法な公布手続きを経ていないから効力が生じていないとした上で、本件貸付けが町長の裁量によるものとして適法であるかを検討し、
本件規則には、資金の貸付けを受ける漁協において、理事会の議決がされている必要があると定められているところ、本件議決には、被害を受けた漁業者の経営者等が理事として加わっており、そのような理事会の議決は、水産業協同組合法37条2項等に反する手続上の瑕疵があって無効であり、このような瑕疵のある理事会の議決を前提に行われた本件支出負担行為等は、町長の裁量権の範囲を逸脱してされたもので違法であると解するべきであると判断しました。
最高裁は、漁業協同組合の理事会の議決が、当該議決について特別の利害関係を有する理事が加わってされたものであっても、当該理事を除外してもなお議決の成立に必要な多数が存するときは、その効力は否定されるものではないと解するのが相当であると判示し、
本件漁協の理事8名から特別の利害関係を有する理事2名を除外した6名の過半数にあたる4名が出席してその全員が賛成してされた本件貸付に係る理事会の議決は、無効であるとはいえないとして、
同議決が無効であることから本件支出負担行為等は町長の裁量権の範囲を逸脱してされたものとして違法であるとした原判決の被告敗訴部分を破棄し、原告が他に主張する本件支出負担行為等の違法事由の有無等について審理を尽くさせるために、上記部分につき本件を原審に差し戻す旨の判決をしました。
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