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2014年8月31日 (日)

【交通事故】 飛び石による損傷って、保険金の補償の対象になるの!?

 飛び石損傷による車両保険金請求は、年に1,2回相談を受けます。

 飛び石損傷による保険金請求は、結構難しい場合が多いのではないかと思います。

 最新号の自保ジャーナルNo1924号で紹介された東京高裁平成26年3月20日判決も、

 例えば、アウディの損傷は、X(請求者)の具体的な主張立証はなく、また、飛び石による損傷があったとしても、保険契約所定の「偶然の事故」によって生じたとは認めることができないこと、

 また、走行中に飛び石による損傷が発生したとしても、具体的な損傷箇所が指摘できないような微細な損傷については、保険契約締結時に当然発生が予想されている損害というべきであり、偶然の事故によって発生した損害とは認められないと判示しています。

 飛び石についての裁判例については、他にも、

 例えば、①原告の従業員Xが首都高速道路を原告所有の被保険車両ベンツで走行中、飛び石等により多数の損傷が生じたとして車両保険金請求する事案につき、Xの供述の不自然性から、事故の存在が証明されたとはいえないとして、請求を棄却した東京地裁平成25年7月31日判決

 ②原告所有のベンツやポルシェで高速道路を走行中、先行する大型貨物車からの土砂等の飛び石により損傷したとの保険金請求で、損傷の状況を合理的に説明できる事故はうかがわれず、具体的な事故発生の事実の主張立証はできていないとして請求を棄却した東京地裁平成24年10月1日判決が参考になります。

 

 

 

 

2014年8月30日 (土)

【交通事故】 鍼灸・マッサージ費用、カイロプラクティック費用は、治療費として認められるの!?

 最近、交通事故事案においても、被害者の方が痛みを緩和するために、鍼灸・マッサージ、カイロプラクティックの「施術」を受けておられる方が増えているように思います。

 確かに、鍼などの「施術」を受けると、気持ちがいいですからねえ。

 但し、鍼灸・マッサージ費用等のいわゆる東洋医学に基づく施術費やカイロプラクティック療法の費用が、賠償として認められるかについては、原則としては、医師の指示が必要であると説明されています(リーガルプログレッシブP128参照)。

 もっとも、医師の指示がない場合であっても、いわゆる東洋医学に基づく施術費については、「あん摩マッサージ指圧師、はり師、きゅう師等に関する法律」及び「柔道整復師法」により法的に免許制度が確立されていること、鍼灸治療については、医療機関で開設されているペインクリニック等が鍼灸治療を用いているなど、全国的に普及・一般化していることなどから、

 施術の必要性、有効性、施術期間・施術内容・施術費の相当性に関する具体的な主張立証がある場合には、その賠償が認められます。

 但し、この具体的な主張立証は結構手間がかかります。可能な限り、医師の指示を受けて、東洋医学の施術を受けるようした方が無難です。

 医師の行為は治療行為ですが、東洋医学の場合は施術行為なので、大きな差がありますので、注意が必要です。ご相談の際に、「知りませんでした。」と言われる方もおられますが、事前に弁護士に相談しておけばよいことが少なくないように思います。

 医師と鍼灸師等の先生、そして、弁護士が協力できれば、被害者にとってより良い方法がとれるのではないかと思います。 

 

2014年8月29日 (金)

【交通事故】 専業主夫の休業損害・逸失利益!?

 最近、交通事故の被害者になられた専業「主夫」の方のご相談を受けることが増えました。

 女性の場合であれば、主婦認定を受けることはたやすいですが、男性の場合は、主夫認定を受けるための立証に苦労することがあります。

 最新号の自保ジャーナル(No1924号)に実母介護で退職し、「専業主夫」の原告の休業損害は基礎収入をセンサス女子平均賃金で、逸失利益は月額25万円で認めた横浜地裁平成26年2月28日判決が紹介されていました。

 裁判所は、「今日の社会では、夫婦の経済生活のあり方は他種多様であり、妻が就労して賃金を得ることで経済基盤を支え、夫が専業主夫として家事に専念する形態もあり得ることであるから、専業主夫が交通事故により家事労働が不可能ないし困難になった場合には、その損害を休業損害として請求できるというべきである。」と判示しています。

 神戸地裁平成22年10月28日判決も、59歳男子家事従事者の休業損害について、センサス女子同年齢平均の70%を基礎に、症状固定までの188日間につき、50%の家事労働制限があったと認定しております。

 名古屋地裁平成20年5月21日判決も、12級片麻痺の既往を有し、同居の妻、次女はフルタイム稼働から、炊事を除く家事に従事している66歳男子について、センサス女子学歴計65歳以上平均賃金を基礎に入院中の休業損害を算出しています。 

 時代の流れですかね。。。 

 

2014年8月28日 (木)

【交通事故】 病院での治療費でも補償されないことがある!?

 病院での治療費でも、加害者側損保会社から補償されないことがあります。

 例えば「症状固定日」以降の治療費については補償が受けられない場合の典型的なケースですが、それ以外にも注意が必要なことがあります。

 病院って、交通事故ときくと、治療日は「自由診療」にするところが多いと思います。今なお、残念ながら、堂々と、「交通事故の場合には、健康保険使えません」という所もあります。

 しかしながら、病院での治療費については、支払い基準について健康保険を利用した場合の限度でしか支払いの対象にならないこともあるのです。

 例えば、同じような治療の場合でも、健康保険だと1点10円ですが、自由診療だと病院によっては25円位で設定することもあります。

 交通事故民事裁判例集第46巻第4号で紹介されている東京地裁平成25年8月6日判決(合議)が大変参考になります。

 ① 交通事故の被害者が「自由診療契約」に基づく治療を受けた場合であっても、「特に高い専門的知識や技術を有する治療がなされたわけではなく、健康保険に基づく治療の範囲により治療を実施することも十分可能であったとき」は、加害者が賠償すべき相当な治療費の額を判断する上で、健康保険法に基づく診療報酬体系による算定方法が一応の基準になるとした事例

 ② 自由診療契約に基づく「外来管理加算」、「理学療法」及び「マッサージ療法」、「初診料」及び「再診料」、「再診時療養指導管理料」について、健康保険に基づく診療報酬体系の各点数を超える部分については事故との相当因果関係を認めず、1点単価25円で算定されている治療費については1点単価10円の範囲で事故との相当因果関係を認めた事例

 1点単価10円を超える部分、つまり、15円の部分については、被害者である患者さんの負担になってしまいました。このケースでは、約115万円が患者さんの負担になっているみたいです。

 このようなことにならないよう気をつけた方がよいようです。

2014年8月27日 (水)

【交通事故】 過失相殺率の認定基準

 判例タイムズ社から、7月10日に、「民事交通訴訟における過失相殺率の認定基準 」(全訂5版)が出版されました。

 交通事故事案の場合、各当事者の過失相殺率が必ず問題になります。

 過失相殺率を算出する場合に、必ず参考にされるべき書籍が、今回ご紹介させていただいた書籍です。

 本書は、交通賠償実務をリードしている東京地裁の交通専門部が編集したとても権威のある書籍です。 

 本書は、①歩行者と四輪車・単車の事故、②歩行者と自転車との事故、③四輪車同士の事故、④単車と四輪車との事故、⑤自転車と四輪車・単車との事故、⑥高速道路上の事故、⑦駐車場内の事故に類型化して、各類型の事案に関する過失相殺率についての解説を加えています。

 即ち、本書は、各基準が想定している事故態様について、基本の過失相殺率・過失割合を設定し、事故態様ごとに修正要素をできるだけ具体化し、その修正要素に一定の数値を与え、基本の過失相殺率・過失割合と修正要素との組み合わせにより、特定の事故につき、できるだけ具体的妥当性を具備した過失相殺の割合を算出することができるように配慮されています。

 全訂4版は、344ページでしたが、今回は、508ページに膨らんでいます。

 大きな違いは、歩行者と自転車との事故や、駐車場内の事故等全訂4版になかった事故類型について認定基準が示されているところです。

 全訂4版には10年お世話になりました。

 全訂5版は何年お世話になるでしょうか。末永くおつきあい下さい。 

 

2014年8月26日 (火)

【倒産】 免責許可の決定の効力が及ばない破産債権であることを理由として当該破産債権が記載された破産債権表につき執行文付与の訴えを提起することの許否 最高裁平成26年4月24日判決

 判例タイムズNo1402号で紹介された最高裁平成26年4月24日判決です。

 免責許可の決定が確定した債務者に対し確定した破産債権を有する債権者が、当該破産債権が破産法253条1項各号に掲げる請求権に該当することを理由として、当該破産債権が記載された破産債権者表について執行文付与の訴えを提起することは許されない。

 

 この判決の立場を前提にしますと、債権者は、「破産事件の記録のある裁判所の裁判所書記官に対し、単純執行文の付与を申立て、同書記官のおいて破産債権者表に記載された破産債権が非免責債権であることが認められれば、執行文が付与されることになる。

 執行文付与を拒絶された場合、その処分に不服があれば、」債権者は、「執行文付与拒絶に対する異議申立てをすることができる。」と説明されています。

 余り考えたことはありませんが、もし相談があった場合には対応にこまりそうなところなので、参考になります。  

2014年8月25日 (月)

【金融・企業法務】 どこもかしこも、会社法改正

 金融法務事情No1999では、平成26年会社法改正の概要が紹介されていました。施行は、平成27年4月か5月頃をめどとされているようです。

 やはり、目玉は、コーポレート・ガバナンスの強化のために、取締役会の監督機能を強化したというところでしょうか。

 まずは、社外取締役を置くことが相当でない理由を、監査役会設置会社(公開会社であり、かつ、大会社)であって、その発行する株式について有価証券報告書を提出しなければならないものが社外取締役を置いていない場合には、取締役は、当該事業年度に関する定時株主総会において、社外取締役を置くことが相当ではない理由を説明しなければならないとしています。

 他方で、社外取締役の要件については、社外取締役の要件を厳格化して、親会社の関係者及び兄弟会社の業務執行者の2親等内の親族は、社外取締役となることはできないとしました。

 次に、機関設計として、①監査役会設置会社、②委員会設置会社(指名委員会等設置会社)のほか、③監査等委員会設置会社制度を創設しました。監査等委員である取締役の選解任や報酬等についてはどの独立性を確保するために、監査役と同様の規定かもうけられています。

 さらに、これは監督強化とはどのような関係にあるのかがわかりませんが、業務執行取締役でない取締役および監査役は、社外取締役または社外監査役でなくとも、株式会社との間で責任限定契約を締結することができるとされています。まあ、社外でなくても、業務執行しないので、受けるリスクは小さくしてやろうということなのでしょうね。

 最後に、会計監査人の選解任等に関する議案の内容の決定については、例えば、監査役会はこれまで同意権のみですが、改正法は、監査役会が決定することになっています。会計監査人の独立性を担保してやろうということなのですね。

 平成26年改正会社法は、それ以外にも、資金調達の場面におけるコーポレートガバナンスの在り方、親子会社に関する規律の在り方などの多岐にわたっています。

 会社法って、田舎弁護士には縁遠いものと思っていましたが、意外と最近よく使うので、少し勉強するようにしています。 

 

2014年8月24日 (日)

【交通事故】 転倒した車道で衝突された83歳男子の事故と死亡との因果関係を認め、素因と過失各30%と認定した 松山地裁今治支部平成26年3月25日判決

 自保ジャーナルNo1923号で紹介された松山地裁今治支部平成26年3月25日判決です。

 判決要旨については、自保ジャーナルP102を引用します。

 「②83歳男子Aが本件事故の約3ヶ月後に死亡した事案につき、Aは、『本件事故当時、83歳という高齢で、高血圧症や虚血性心疾患、糖尿病、高脂血症、肺結核等といった既往症があり、本件事故当時も、高血圧症や高脂血症等の治療を受けており、また、呼吸機能の低下も見られたところ、Aは、本件事故により右脛骨内果骨折のほか、左大腿骨擦過創、左膝打撲、左手関節捻挫等の傷害を負い、これをきっかけに、入院治療を余儀なくされ、食欲不振による栄養状態の悪化や廃用症候群状態となり、長期臥床に伴う活動性低下により循環不全に陥り、また、誤嚥性肺炎をはじめとした感染症を起こしやすい状態となり肺炎を併発し、更には脳梗塞を発症し、全身状態が悪化して遂に死亡するに至ったというのであるから、これら一連の経過に照らすと、高齢のAが本件事故により長期臥床による入院生活を余儀なくされたことと持病とが相俟って、死亡するに至ったと認めるのが相当である』と事故と死亡との因果関係を認めた。」 

 「③素因減額につき、『本件事故により右脛骨内果骨折等の傷害を負ったAが、長期臥床に伴う活動性低下により廃用症候群となり、循環不全に陥り、その後死去するに至った経過については、Aが高血圧症や高脂血症などといった複数の持病を抱えていたことも一因となったというべきであり、本件の損害賠償の額を定めるに当たっては、民法722条2項の過失相殺の規定を類推適用して、その損害の拡大に寄与したAの上記事情を斟酌することができるものというべきであり、その寄与割合は、30%とするのが相当である』と30%の素因減額を適用した」

 事故により長期臥床による入院生活を強いられたため、死亡の原因に「誤嚥性肺炎」が絡んでいるような案件では、なかなか、交通事故との死亡との因果関係自体を否定するのは難しいようです。 

 とはいえ、高血圧症や高脂血症等といった複数の持病も一因になっていたとして、30%の素因減額を認めています。

 但し、裁判所は、死亡診断書に記載されている死亡原因である「脳梗塞」については明確な判断を避けているようです。  

2014年8月23日 (土)

【金融・企業法務】 共同相続人の1人からの取引明細開示請求

 金融法務事情No1999で紹介された記事です。

 共同相続人の1人からの取引明細開示請求については、最高裁平成21年1月22日判決があり、骨子、①預金契約は消費寄託に加えて委任または準委任の性質を併存している場合が多く、金融機関は預金契約に基づき受任した事務処理の報告(取引開示)義務を負う、②被相続人が有していた預金契約上の地位を承継した相続人は取引開示請求権を単独で行使できると判断しております。

 従って、取引中の預金口座の取引履歴の開示については、権利濫用にあたるような事情がない限り、請求が可能ということになります。

 もっとも、相続開始の時点で既に預金口座が解約されている場合には、議論がわかれているところであり、例えば、東京高裁平成23年8月3日判決は、消極的に解していることは、以前のブログでもご紹介させていただいたとおりです。 

2014年8月22日 (金)

新たな領域における弁護士活動の意義と期待 ???

 自由と正義8月号が送られてきました。

 「弁護士数が飛躍的に増員し、中でも登録後数年の若手会員の数が非常に増え、ロースクールと司法試験の在り方も諸方面で議論になっている状況」、「このような環境の中で、弁護士自身が、時代のニーズをふまえ、様々な分野に進出していく必要がある」ということで、

 日弁連では、①行政の分野として、自治体等連繋して、多くの弁護士が任期付公務員として自治体に入ること、②国際法律の分野として、海外の法律に詳しい弁護士を全国各地に増やすこと、③企業の分野として、企業内に日々法律サービスを提供できる弁護士を増やすこと等の諸施策をとるようです。

 この議論の本音は、弁護士の数を増やしすぎて、食べていけないので、これまで弁護士が考えなかった分野に進出させて、食べていけるようにしたいということがあるように思いますが、任期付き公務員ではその期間に限定されるでしょうし、また、海外の法律に詳しい弁護士ってどうやって全国各地に増やせるのでしょうか。

 既存の弁護士事務所の経済的環境の悪化により新人弁護士を採用することができなくなっているという根本的な所を改善しなければ、将来どうなるかわからないような分野に進出しようと思う弁護士の数は多くないと思います。

 8月号の自由と正義で紹介されている懲戒を受けた弁護士は、例えば、弁護士会費を納められなかった者、依頼人からお金を借りた者等が紹介されており、弁護士の懐事情の悪化をうかがうことができます。

  中堅以上の弁護士は、新たな領域に開拓せよと言ってもなかなか難しいものです。

 また、伝統的な弁護士業務で食べていけない弁護士が増えているということこそ、大きな問題ではないかと思います。

 とはいえ、このような時代が到来している以上、市場から淘汰されない以上、顧客サービス及び「新たな領域」の開拓に努力していきたいと思います。

2014年8月21日 (木)

【金融・企業法務】 会社法の改正!? 社外取締役

 月刊監査役No630号では、会社法改正(6月27日公布)の特別寄稿が多数寄稿されていました。

 まずは、「社外取締役」の設置は強制はされないものの、強く推奨されるということになりました。つまり、社外取締役を置かない理由を定時株主総会での説明に加えて、事業報告、株主総会参考書類にも記載して説明しなければならないことになりました。社外監査役が2名以上いることのみをもっては理由とはならないことから、説明のハードルは結構高そうです。

 また、改正会社法は、これまでの監査役会設置会社、委員会設置会社(改正法以降は指名委員会等設置会社)という2つの選択肢に加えて、「監査等委員会設置会社」という3つめの選択肢を提供しています。監査等委員会設置会社は、社外取締役を過半数とする監査等委員会が取締役会に置かれ、その監査等委員会が監査等を行うというもので、監査役は存在しません。神田秀樹教授の論文には、「社外取締役を置いていない監査役会設置会社は、社外監査役をそのまま社外取締役とすればそれだけで監査等委員会設置会社に移行できるので、移行することは簡単であると言われている」と記載されています。

 そうすると、監査等委員会設置会社に移行する会社も少なくないのではないかと思われます。とはいえ、監査役会では社外監査役が半数以上とされていますが、監査等委員会は社外取締役が過半するでなければならないので、この点の手当は必要になります。

 社外取締役の役割ですが、神田先生の論文によれば、監査役がいる会社における社外取締役の役割と、そうではない会社における社外取締役の役割は異なるということです。

 後者の会社では、社外取締役は監査も担当することになりますが、監査役がいる会社では、監査は監査役が担当して、社外取締役は監督するということになります。どれが監査でどれが監督については、実際問題としては、会社により、また実際の状況により、異なるものと解説されています。

 私が司法試験に合格した平成8年の状況を比べると会社の機関設計は大きく様変わりしております。

 頑張って勉強していきます。 

 

 

 

 

2014年8月20日 (水)

【行政】 市長個人に対して損害賠償請求をすることを命じた住民訴訟の判決が確定したことから、地方自治法242条の3第2項に基づき提起された損害賠償請求訴訟において、市長から専決を委ねられた職員に財務会計法規上の義務違反はなく、市長にも指揮監督上の義務違反はないとして、損害賠償請求が棄却された事例 東京高裁平成26年2月26日判決

 判例タイムズNo2222で紹介された東京高裁平成26年2月26日判決です。

 争点は2つですが、ここでは、専決権者の支出負担行為等について、専決を行わせたYが損害賠償責任を負うかが問題となりました。

 まず、裁判所は、

 地方自治法242条の3第2項に基づく訴訟において、XがYに対して損害賠償の請求をすることができるためには、専決権者がした本件各支出が財務会計法規上の義務に違反する違法なものであり、かつ、Yにおいて、各専決権者が財務会計上の違法行為である本件各支出をすることを阻止すべき指揮監督上の義務に違反し、故意又は過失により各専決権者が本件各支出をすることを阻止しなかったことを要するとしました。

 そして、

 郵送費の支出については、①郵送費の支出は、本件不接続によって生じる住民の負担を軽減、是正するための費用であり、当該支出により得られる利益に比して、その支出による損失が著しく多額で均衡を欠くとはいえないこと、②郵送費の支出は、本件不接続の効果を実現したり助長したりするものではなく、当該支出を止めたとしても、本件不接続による違法は解消されないこと、③普通地方公共団体が住民の福祉を図るなどの役割を担っていることからすれば、専決権者が郵送費を支出したことが財務会計法規上の義務に違反し違法であるとまではいえないとしました。

 また、

 住基ネットサポート委託契約の締結については、①違法な本件不接続の継続を解消し、住基ネットに再接続するために有益であり、委託料が委託契約により得られる利益に比して著しく均衡を欠くほど多額であったとはいえないこと、②委託契約によって本件不接続が実現されたり助長されたりするとはいえず、本件委託契約を解消することによって本件不接続が解消できるとはいえないことからすれば、委託契約を締結したことに全く合理性がないとはいえず、専決権者が委託契約を締結したことが直ちに違法であるとはいえないとした。そして、委託契約の締結が違法ではない以上、これに基づく委託料の支出命令は違法ではないとしました。

 普通に考えれば、Yは、訴訟告知を受けていることから、参加的効力が及ぶのですが、今回は、新たな市長がYの意思に反して取り下げしたため、参加的効力が生じなかったようです。

 結果的には、Yは危機一髪のところで救われたようです。 

 

 

2014年8月19日 (火)

【金融・企業法務】 企業間取引における契約の解釈!?

 判例タイムズNo1401号に、「座談会 企業間取引における契約の解釈」という座談会記事が紹介されていました。

 司会者は、加藤新太郎裁判官です。

 M&A関係では、表明保証条項、価格調整条項、MAC条項、取引保護条項についての解釈や問題が生じた裁判例が紹介されていました。

 これらの条項は、M&A等についてご相談を受ける田舎弁護士にとっても、比較的身近なものですが、契約条項の解釈云々についてはあまり考えたことがなく、そのまま定型的な条項を、契約書の中に盛り込んできたので、少し反省しています。

 例えば、表明保証条項についてです。プロフェッショナル用語辞典によれば、表明保証条項は、M&Aや金銭消費貸借契約に定められる条項のうち、ある辞典における特定の事実について真実かつ正確であることを表明し、かつ保証する旨の定める条項のことをいいます。

 東京地判平成18年1月17日のアルコ事件においては、表明保証違反について善意であることを重大な過失に基づく場合は、悪意の場合と同視して、表明保証責任を免れると解する余地があるとして、解釈されています。

 そういえば、最近、いろんな顧問先から2,3日に1回程度契約書の点検依頼があります。一昔前は、契約書の雛形が欲しいという連絡がほとんどでしたが、現在は、顧問先にて詳細な契約書を作成して、それを点検して欲しいということが増えました。 

 「簡単な」契約書の点検ではなくなっているように思いますね。coldsweats01 

 顧問先の担当者のレベルが相当高くなっているように思います。 

 

 

2014年8月18日 (月)

【行政】 横浜市空き缶等及び吸い殻条例に基づいて市長が指定した喫煙禁止地区で喫煙した原告に対する過料処分が、当該過料処分をするには被処分者に当該場所が喫煙禁止地区であることの故意又は過失が必要であり、原告には過失が認められないとして、取り消された事例 横浜地裁平成26年1月22日判決

 判例時報の2223号で紹介された横浜地裁平成26年1月22日判決です。横浜地裁では、被告の横浜市が負けていますが、控訴審である東京高裁では、6月26日に横浜市が逆転勝訴しているようです。

 論点は、①条例30条に基づく過料処分をするためには、処分の相手方に同11条の3違反について故意又は過失が必要か否か、②①が肯定される場合において故意又は過失が必要であるとされる場合、原告に少なくとも過失があったか否かということでした。

 ここでは、①の論点について少し見ていきたいと思います。

 横浜地裁は、

 (1)本件過料処分は、喫煙禁止地区において、快適な都市環境にとって有害な屋外の公共の場所での喫煙を行政上の制裁をもって抑止しようとするのであるから、行政上の秩序罰としての性質を有すること、

 (2)その上で、我が国においていわゆる路上喫煙が禁止されている地域は現在のところ極めて限られているから、処分の相手方が喫煙禁止地区と認識し得ずに喫煙することはあり得ることであって、そのような物が過料処分を受けても今後は喫煙禁止地区において喫煙をしないようにしようとする動機付けをされないから、本条例30条の目的とする抑止効果を期待することはできないため、故意又は過失が不要であるとはいえない

 と判断して、故意又は過失が必要と判断しました。

 過料に関する主観的責任要件の適用があるかについては、以前、市川前弁護士とも議論したことがありました。結局、30年前であればともかく、現在においては、主観的責任要件不要説はとりえないのではないかということに落ち着きましたが、裁判例に非常に乏しい分野であるために、確定的な結論には至っておりません。

 高裁では横浜市が逆転勝訴しておりますが、早く判決文を読んでみたものです。 

 

2014年8月17日 (日)

【交通事故】 自賠責保険と任意自動車保険(対人賠償責任保険)との関係

 「自賠責保険」は、契約締結が強制される強制保険ですが、これに加えて、保険契約者が任意に契約締結の要否を判断する「任意自動車保険」があります。

 任意自動車保険は様々な名称で販売されています。標準的な商品は、①賠償責任保険(対人・対物賠償責任保険)、②自損事故保険、③無保険車傷害保険、④搭乗者傷害保険、⑤人身傷害補償型保険、⑥車両保険から構成されています。また、自動車を保有していない自動車使用者向けに、自動車運転者損害賠償責任保険(賠償責任保険と自損事故保険から構成)があります。

 いずれの商品にも、対人賠償責任保険が組み込まれており、「人身損害」に対する損害填補機能は、自賠責保険と対人賠償責任保険との二本立て構造になっております。

 対人賠償責任保険の標準約款は、「被保険者が法律上の損害賠償責任を負担することによって被る損害に対して、この賠償責任条項及び基本条項に従い、保険金を支払」うことを約し、その保険金は1回の対人事故による損害が「自賠責保険等によって支払われる金額を超過する場合に限り、その超過額に対してのみ保険金を支払」うと約定されているため、「対人賠償責任保険」は「自賠責保険」の「上積み保険」と言われています。 

2014年8月16日 (土)

【交通事故】 局部の神経症状の場合の、後遺症って!?

 むち打ちの場合には、いわゆる疼痛等の「局部の神経症状」が残存することがあります。

 本日は、局部の神経症状の場合の後遺障害の認定基準についてのお話です。

 自賠責保険では、従前の労災保険の障害認定基準に沿って、神経症状が画像所見や神経学的所見等の他覚的所見によって証明できるものを12級として、かかる証明は困難であるが受傷部位にほとんど常時疼痛を残すもの等の要件を満たす症状で医学的に説明可能なものを14級と認定しています。

 時々ご相談の際に、14級は不服なので、12級を認めさせたいというご相談があります。

 横浜地裁平成23年7月20日判決は、自賠責保険では14級だったのを判決では12級が認められたというものです。

 この事案だと傷病名は頸椎椎間板ヘルニアでしたが、椎間板ヘルニアは経年性変化によって生じるのが一般的であるため、画像所見のみをもって自賠責保険が12級を認定することはありません。

 自賠責保険において椎間板ヘルニアによる神経症状を12級と認定するためには、①画像上、ヘルニアに伴った脊髄・神経根の圧迫が認められること、②ヘルニアの態様や高位と整合する神経学的所見が認められること、③受傷直後から症状が出現していることが必要とされています。

 受傷部位の疼痛については、自賠責保険では、骨折等に伴う関節面の不整の残存が認められる場合や、腱板・半月板・軟骨など痛みの残存が医学的な経験則上で認められる関節軟骨組織の損傷が認められる場合に12級が認定されているようです。

 他方、判決においては、12級と14級の基準は明確にはなっていませんが、総じて、他覚的所見の有無を問題にしております。

 この辺りの区別って、駆け出し弁護士の頃はわかりませんでした。

 「詳説後遺障害」(創耕舎)(平成26年6月初版)P213も、「他覚的所見によって証明できる」というレベルに関しては、十分に理解されていないように思われると解説されています。 

 勉強を重ねていく必要がありますね。 

2014年8月15日 (金)

【労働・労災】 地域ユニオンへの対処法(民事法研究会)

 民事法研究会から6月10日に出版された「これで安心! 地域ユニオンへの対処法 」です。

 東京の出張の行き帰りで一読しました。 

 総論と各論とからなっています。

 総論は、6章から構成されており、①地域ユニオンとは何か、②地域ユニオンの問題点、③地域ユニオンから団体交渉を申し入れられた場合の対処法、④地域ユニオンとの団体交渉での注意点、⑤地域ユニオンとの団体交渉を終えるときの注意点、⑥地域ユニオンの団体交渉以外の活動に対する対応です。 

 各論は、8章から構成されており、総論にほぼ対応する形でのQ&Aとなっております。

 今回の書籍は、司法研修所同期の弁護士の執筆によるものですが、田舎弁護士はこのような書籍の執筆歴はないので、少々焦ります。。。。

 もっとも、団体交渉って、場数を踏まないと、臨機応変にはなかなか対応できないものですが。。。 

2014年8月14日 (木)

【労働・労災】 市の常勤的非常勤職印の退職手当の支給請求が認容された事例 福岡高裁平成25年12月12日判決

 判例時報No2222号で紹介された福岡高裁平成25年12月12日判決です。

 昭和54年に1年の任期で非常勤職員に任用され、以降毎年1年間の任期で再任用され、平成24年に退職した職員Xが、Y市に対して退職金の請求を求めたという事案です。

 第1審は、Xの請求を棄却しました。その理由は、①特別職の職員に退職手当条例が適用される余地はない、②Xは、一定の学識、経験、技能等を有し、これらの学識を要する職務に任命され、任用通知や規則において特別職の職員としての扱いを受けていたのであって、勤務実態に一般職の職員と共通する側面があったとしても、Xが一定の学識等に基づいて、随時、地方公共団体の業務に参画する者ではないとはいえず、一般職の職員に該当するとは認められないとしました。

 ところが、第2審は、Xの請求を認めました。その理由は以下のとおりです。

 ①Xは、中学校図書館において、勤務日数や勤務時間の点で正規職員と異なることなく勤務しており、また、その勤務条件からすると、他職に就いて賃金を得ることは不可能であり、さらには、校長による監督を受ける立場にあり、勤務成績が不良である場合には、市長によって解任される場合があるとされているのであるから、Xは一般職の職員に当たる、

 ②Xは、退職条例2条1項の常時勤務に服することを要する者には当たらないが、任期は、会計年度ごとの1年間であったが、空白期間のない再任用により事実上雇用関係が継続することになり、正規の職員について定められている勤務時間以上勤務した日が18日以上ある月が12月を超え、以後引き続き所定の勤務時間により勤務してきた者に該当するから、Xは、退職条例2条2項により、職員とみなされると判断しました。

 近時、人件費の関係等から、地方公務員においても、非常勤職員が増加しているが、裁判所によっては、勤務実態を重視して、退職手当金の支給を認める例も出てきております。

 本来、Xのような勤務実態であれば一般職とすべきでしょうが、そうではないにもかかわらず、退職手当金の支払いを命じられるとすれば、市の財政にとって少なくない負担にもなります。

 本判決は、今後の非常勤職員の採用の在り方、退職手当の支給の可否などを考える上で参考になると思います。 

 

 

2014年8月13日 (水)

【保険金】 保険契約における介入権

 金融法務事情No1998号で紹介された「実務相談室」です。

 「営業店からの質問」として、保険金受取人である顧客から、「父親は保険金2000真似んの死亡保険に加入しているのだが、保険契約者(兼被保険者)である父親に対して100万円の債権を有するAと50万円の債権を有するBの両方から、死亡保険の解約返戻金に対する差押命令がきたようだ。保険契約がなくなると自分たち遺族の生活保障がなくなり困るのだが、どうしたらよいか」との相談を受けました。解約返戻金を調べると100万円ほどでした。どのように回答すればよいでしょうか。

 保険法60条が定めている介入権の問題となります。

 即ち、保険法60条は、差押債権者等が死亡保険契約を解除した場合は、保険会社がその通知を受けた日から1ヵ月が経過するまでの間、解除の効果が発生しないこととした上で、その間に保険金受取人が保険契約者の同意を得て、解除によって支払われることになる解約返戻金等の金額を差押債権者に支払った場合は解除の効果が発生せず、保険契約が存続するとしています。この解除の効力を妨げる権利を介入権と呼んでいます。

 介入権の行使の方法や、複数の差押えが競合した場合の対応の仕方は、金融法務事情を購入して研究してみてください。

 このようなケースに遭遇した場合には、介入権というアドバイスができるよう知識としておさえておく必要があります。 

2014年8月12日 (火)

【労働・労災】 労務トラブル解決交渉術(民事法研究会)

 民事法研究会から、「ケースで学ぶ 労務トラブル解決交渉術 」という書籍が昨年12月に発行されていました。

 執筆者は、登録して10年経過したばかりの中堅弁護士です。

 ①解雇を巡る交渉、②残業代請求を巡る交渉、③うつ病による休職事案(労災含む)での交渉、④人員削減事案における交渉、⑤労働組合との交渉という、典型的な5分野についての具体的な交渉術を開示した、使用者側弁護士にとっては、是非読んでおきたい書籍の1つですね。 

 執筆者の弁護士が所属する法律事務所の代表弁護士が、本書の推薦文を書かれていますが、この中で、「使用者側が初回の提示以後に譲歩を示さない一発回答方式は、労使交渉において、相手方をまさに諦念の世界に至らしめなければならない非常に難しい方式である。」、「一発回答を習得することが、実は交渉術を勉強する極め付けであるといってよい」と書かれています。

 弁護士の交渉って、譲歩の余地を考えながら、交渉するものだと思っていましたが、実は、そうではないようです。

 私も、今後は、相手方をして諦念の境地に至らしめることができるよう、努力していきたいと思います。 

2014年8月11日 (月)

【倒産】 再生手続開始の申立てが民事再生法25条4号の不当な目的でされた場合に該当するとして棄却された事例 東京高決平成24年9月7日

 金融法務事情No1998で紹介された関西法務懇談会報告「再生手続開始の申立てが民事再生法25条4号の不当な目的でされた場合に該当するとして棄却された事例(東京高決平成24.9.7)」です。

 解説者は、松山地裁の裁判官です。

 東京高裁は、再生手続開始決定を取り消して、開始申立てを棄却しました。

 Y社が本件開始申立てを行った目的は、Xらからの「強制執行を止め、さらに連帯保証債務を否認することにあったと認めることができる。」、「本件の経過からすれば」、Yは「既に債務不存在確認等請求訴訟を提起していたが、より簡便に、かつ、真実連帯保証債務を負担していても、その負担を免れるため、民事再生手続における否認権行使を利用しようとしたと考えられ、本件開始申立ては、連帯保証債務の取消しのみを目的とした申立てと認めることができる」

 「このような連帯保証債務の取消しのみを目的とした申立ては、本来の目的から逸脱した濫用的な目的でされたものということができるから、本件開始申立ては、民事再生法25条4号(特に、不当な目的で再生手続開始の申立てがされたとき)に該当するというべきである」

 法25条4号を理由に通常再生事件において申立てが棄却されたのは、過去①高松高決平成17年10月25日、②東京高決平成24年3月9日の2件にとどまっているようです。

 (高松高決は、私が監督委員として関与した事案でしたが、取り込み詐欺等を理由に申立てが棄却された事例でした。)。

 今回の東京高裁の決定については、否認権行使のみを目的とする再生手続開始申立ては、法25条4号の不当な目的で申立てがされた場合に該当するとの法理を述べたものとして、批判的な検討がなされているようです。

 田舎弁護士には難しくてよくわかりません・・・・ 

2014年8月10日 (日)

【交通事故】 鍼灸施術費も補償されるの!?

 交通事故の被害者の方が、痛みを軽減するために、鍼灸院での治療を受けられるというのは、よくある話です。

 しかしながら、補償の対象になるのか?といわれると、医師の明確な指示がある場合には、余り問題にはなりませんが、医師の指示がない場合には、症状により有効かつ相当な場合でなければならず、なかなかハードルは高いところです。

 自保ジャーナルNo1922号で紹介された高松高裁平成26年3月26日判決も、医師の指示がない事案であり、鍼灸接骨院施術費は否定しています。

 以下、判決要旨を少し引用します(P174)。 

 男子会社員のXが乗用車を運転中、Y乗用車に左側面から衝突されて頸椎捻挫等を負った事案につき、

 Xは、「平成23年6月30日からE接骨院での施術を受け始めた。なお、この際、XがY付保の保険会社の担当者に対して一括対応を依頼したところ、同保険会社は、同日分の施術費の支払には応じたが、同年7月以降の支払には応じなかった(なお、Xは、E接骨院への通院に先立ち、DクリニックのD医師に同院へ通院することを告げ、D医師から構わない旨の返事をもらったと供述するが、D医師は、平成23年10月19日付け回答書において、Xから鍼灸接骨院への通院についての相談はなく、通院は指示していないし自主訓練(肩周辺のストレッチ)を十分に行えばよいため、鍼灸接骨院で施術を受ける必要はない旨を明確に述べており、これに反する上記X供述部分は採用することができない。)」と認定し、「本件E接骨院での施術については必要性・相当性がないから、同院での施術費は損害とは認められない。」と否認しました。 

 医師からの明確な指示のない、鍼灸施術費は、補償されない可能性が高くなりますので、まず、医師から明確な指示を受けること、また、過剰診療にならないようにすることが、必要だろうと思います。 

2014年8月 9日 (土)

【交通事故】 関節リウマチと素因減額!?

 自保ジャーナルNo1922号で紹介された松山地裁平成26年2月7日付判決です。

 事案は、症状固定時52歳女子無職の原告は、平成23年5月18日午後5時45分ころ、松山市内で自転車搭乗中、14歳女子の被告自転車に「事故の態様については当事者間に争いがある」状態で衝突され、原告自転車が転倒し、右手首負傷及び右大腿骨骨折等を負って右手首12級6号、右股関節10級11号の併合9級の後遺障害を残したとして、約3228万円を求めて14歳女子の両親に訴えを起こしたものです。

 裁判所は、休職中で無職の原告の休業損害、後遺障害逸失利益を認め、3割の過失相殺を適用して損害を認めました。

 今回取り上げる論点は、被害者の方が関節リウマチの持病を有していたとして、被告が素因減額の主張を行ったのですが、裁判所は、素因減額を否定しました。

 以下その理由を引用します。

 関節リウマチやその治療に使用されるステロイドの使用は、骨質を低下させることから、骨折のリスクが上昇する場合があること、

 前記骨折のリスクの上昇は必ずしも骨密度の低下には依存しないことが認められ、

 また、原告は、平成21年頃、D整形外科において、左足や右足指の関節リウマチについて、リハビリや投薬治療を受けてきたことが認められるものの、

 前記1で認定した本件事故の態様に照らせば、原告が関節リウマチに罹患していたか否かにかかわらず、傷害を負うことが必ずしも不自然ともいえないことにも照らせば、

 原告の骨質が、本件事故による原告の骨折の重症化や治療の長期化に寄与する程度に低下していたかや、また、それが寄与したとしてもその程度は明らかではないというほかないから、本件において、素因減額をすることが相当であるとまではいえない

 と判断しております。 

 裁判所は、被告側が、事故と疾患とが共に原因となって損害が発生したという要件を十分に立証することができないことから、素因減額を否定されたものと思われます。 

2014年8月 8日 (金)

【交通事故】 一般人よりも首の長いことから交通事故の症状が悪化した場合!?

 最高裁平成8年10月29日判決です。

 いわゆる「首の長い女性」事件と言われているものです。

 事案は、首が長く、これに伴う多少の頸椎不安定症がある女性被害者が追突されて頸椎捻挫の傷害を受け、左胸郭出口症候群やバレーリュー症候群を生じたというケースです。

 原審はなんと、40%もの素因減額を認めたというものです。

 最高裁は、「被害者が平均的な体格ないし通常の体質と異なる身体的特徴を有していたとしても、それが疾患に当たらない場合には、特段の事情の存しない限り、被害者の右身体的疾患を損害賠償の額を定めるに当たり斟酌することはできない」と判断しました。

 裁判では、身体的変性が、疾患なのか、それとも疾患には至らない身体的特徴にあたるのかが大きな問題となります。

 つまり、疾患と身体的特徴の区別が問題となります。

 これについては、平成26年6月に出版された詳説後遺障害(創耕舎)P86が実にわかりやすく説明されていますので、一部を引用します。

 「歳相応の老化現象による身体的変性は、それが医学的には疾患といえるとしても、身体的特徴にとどまり、それを超える身体的変化が疾患として評価されることになる。その意味で、ここでいう疾患は、医学的概念を基礎とするものではあるがー法的概念であり、身体的特徴と疾患とは連続性のある相対的概念である。」 

 医学的に疾患と判断されても、法的には疾患と評価されない可能性があるということです。弁護士として是非押さえておくべき知識だと思います。 

 

2014年8月 7日 (木)

【交通事故】 頸椎後縦靱帯骨化症で、交通事故の症状が悪化した!?

 最高裁平成8年10月29日判決です。いわゆる頸椎後縦靱帯骨化症事件と言われている事案です。

 即ち、頸椎後縦靱帯骨化症という疾患がある被害者が、追突され頸椎捻挫の傷害を受け、治療が長期化し、神経障害が残ったというケースです。

 最高裁は、昨日紹介した最高裁平成4年6月25日判決を引用して、被害者の疾患を斟酌することができると判断した上で、「そしてこのことは、加害行為前に疾患に伴う症状が発現していたかどうか、疾患が難病であるかどうか、疾患に罹患するにつき被害者の責めに帰すべき事由があるかどうか、加害行為により被害者が被った衝撃の強弱、被害拡大の素因を有しながら社会生活を営んでいる者の多寡等の事情によって左右されるものではないと判断しました。

 この判決によって、被害者に対する加害行為と加害行為前から存在した被害者の疾患とが共に原因となって損害が発生した場合には、素因減額されるということになります。

 つまり、賠償義務者側は、疾患を理由とする素因減額においては、①被害者の身体的変性が疾患に該当すること、②加害行為と当該疾患とが共に原因となって損害が発生したこと、③当該疾患を斟酌しないと損害の公平な分担という不法行為法の趣旨を害すること、④減額割合において検討すべき諸要素につき、立証責任を負うことになりますが、私自身は、ここまできれいに整理された加害者側の書面には出くわしたことがないですね。 

2014年8月 6日 (水)

【交通事故】 事故前の一酸化炭素中毒が原因で交通事故の症状が悪くなった場合!?

 最高裁平成4年6月25日判決の事案です。

 事案は、以下のとおりです。事故の1ヵ月前に一酸化炭素中毒に罹患していた男性被害者(個人タクシー運転手)が、事故による頭部打撲傷を引き金として、潜在化していた一酸化炭素中毒における精神症状が顕在化し、次第に増悪し、事故から3年1ヵ月後に死亡したというケースでした。

 最高裁は、「被害者に対する加害行為と被害者がり患していた疾患とがともに原因となって損害が発生した場合において、当該疾患の態様、程度などに照らし、加害者に損害の全部を賠償させるのが公平を失するときは、裁判所は、損害賠償の額を定めるに当たり、民法722条2項の過失相殺の規定を類推適用して、被害者の当該疾患をしんしゃくすることができる」と判断しています。

 その上で、最高裁は、賠償額を50%減額した原判決を是認しております。

 7月25日にみた最高裁昭和63年判決は、損害の「拡大」について被害者の素因が寄与している場合に、減額を肯定したものですが、最高裁平成4年判決は、損害の「発生」について被害者の素因が競合しているときに減額を肯定したものです。

 

2014年8月 5日 (火)

【労働・労災】 会社は合同労組をあなどるな! (労働調査会)

 労働調査会から5月30日に出版された「会社は合同労組をあなどるな! 」は、いうとても警告的な表現のされた書籍です。

 元労働基準局長の布施直春先生が執筆されています。

 全部で、10章にわかれています。

 ①合同労組との団体交渉の実務、②労働協約(和解合意書を含む)締結・解約の実務、③合同労組との日常対応の実務(団体交渉・労働協約を除く)、④労働組合・団体交渉・不当労働行為等の法律知識、⑤テーマ別団体交渉の進め方と問題解決の実務、⑥各種個別労働紛争解決制度の全体像、⑦都道府県労働局の個別労働紛争解決制度、⑧雇用均等室の男女雇用機会均等法についての紛争解決援助・調停、⑨雇用均等室のパート労働法についての助言・指導・勧告・調停、⑩都道府県労働委員会等のあっせんです。

 厚労省に勤務されていた実務家の執筆によるものであり、大変参考になりました。先日の東京出張の行き帰りでなんとか読み切ることができました。

 団交で使用者側の代理人を時折引き受けておりますが、団交の現場では裁判とは違う意味で即断が求められることが少なくないために、団交での使用者側の技術本として活用できる内容の書籍だと思います。 

2014年8月 4日 (月)

【建築・不動産】 共有物分割請求が権利の濫用に当たるとして棄却された事例 東京高裁平成25年7月25日判決

 判例時報No2220号で紹介された東京高裁平成25年7月25日判決です。

 事案は、Aの相続人の1人であるXが、Aの相続財産である建物(マンションの一室)について、他の相続人であるY及びBとの間で行った遺産分割協議の結果、XとYとの共有となっているとして、Yに対してその共有物分割を求めた事案です。

 裁判所は、本件建物のリフォーム費用を控除した実際の価格は1500万円前後と認められるとした上で、

 本件建物は床面積63.93㎡の区分建物であるから、現物を分割することができないとき、又は分割によってその価格を著しく減少させるおそれがあるときに該当するとし、

 また、YにXの持分価格の賠償金の支払能力があるとは認められないから、

 本件建物をYの単独所有とすることもできず、結局、裁判所は、本件建物の競売を命ずるほかないとしました。

 その上で、本件判決は、X、Y、Bは、Yはその存命中は本件建物に居住することを前提にAの遺産についての分割の協議をしたものと推認することができるところ、現時点でもその事情に変更はないこと、

 Xが本件建物の分割を求める理由としてあげる、外語専門学校に入通学するための資金取得等も、Xの生活歴等からみてXに安定した通学、就労等を期待することは困難であるといわざるを得ないなどとして、

 Xの本件建物の分割請求は、相続人間において、本件建物をX及びYの共有取得とする際に前提とした、Yが存命中本件建物を使用するという点を合理的理由なく覆すものであって、権利の濫用にあたると判断しました。

 Xにかなり問題があったようです。

 共有物分割請求の場合は、権利濫用を理由に否定した裁判例もちらほらあるようです。 

2014年8月 3日 (日)

【倒産】 いわゆる悪質商法の主体である法人の代表者が整理屋グループと組み詐害目的での資産移転行為をしたものの事後的に破産管財人の調査に協力した場合における裁量免責の可否 東京高裁平成26年3月5日決定

 金融法務事情No1997号で紹介された東京高裁平成26年3月5日判決です。

  裁判長は、あの「加藤新太郎」裁判官です。加藤裁判官の裁判例って度々紹介されますね。

 決定要旨を引用します。

 破産手続開始決定を受けた会社代表者個人について、

 ①破産に至った原因が、資産価値のない鉱泉権等を担保にすると標榜して出資法違反の出資募集行為を行い多額の借入れをしたという悪質商法に起因するものであり、

 ②資産移転行為は、いわゆる整理屋グループを使って行ったもので、動機の悪質性及び破産債権者や破産手続に対する不誠実性が顕著であるときは、

 ③事後的に破産管財人の調査に協力したという不誠実性を減殺する事情があったとしても、

 破産免責により破産者の経済的更正を図ることが社会公共的見地から相当とはいえず、

 裁量により免責を許可することはできない

 と判断しました。

 原決定は、裁量免責を認めたようです。破産者が事後的に管財人の調査に協力して6億円の破産財団が形成でき、管財人も、「かろうじて裁量免責を認める」という意見書を作成されたようですが、破産債権者から抗告されてしまったようです。 

 

2014年8月 2日 (土)

【労働・労災】 被告会社の従業員が会社の店舗内で脳幹出血で死亡したことにつき、死亡者の父母及び兄が被告会社には従業員に対する安全配慮義務違反があるとして求めた損害賠償請求が棄却された事例 名古屋地裁半田支部平成25年9月10日判決

 労働者の過労死について、判例時報No2220号で紹介された名古屋地裁半田支部平成25年9月10日判決です。

  裁判所は、

 Yには、Aに対し、脳幹出血発症前2ヵ月の期間を除いて、法定休日を付与すべき義務を怠った過失がある

 Yは、Aに対し、平成22年4月26日及び同年6月28日の勤務において、法定休憩を全く取得させなかった過失があると認定判断したが、

 Aの時間外労働は1ヵ月当たり45時間すら大幅に下回っており、このことにAの休日数、休憩時間、勤務後との時間的間隔、業務内容及び勤務形態等の業務の加重性において考慮すべき諸要素を併せ考慮しても、

 Aの業務と脳幹出血発症との関連性は相当に弱く相当因果関係は認められないと判断しました。

 業務の加重性の有無で相当因果関係が判断されているわけです。 

 

2014年8月 1日 (金)

【交通事故】 脳脊髄液減少症って!?

 低髄液圧症候群という病態については、従来から、脳脊髄液が漏出することによって起立性頭痛を特徴とする症状を生じるものと一般的に言われており、腰部神経の造影検査等で行われる腰椎穿刺後の起立性頭痛は以前から知られていたものです。

 しかし、昨今、一部の医師によって、頸椎捻挫や腰椎捻挫後に慢性化する頭痛等の症状が脳脊髄液漏出症によるものと主張され、マスコミ等に大きく取り上げられたことにより、注目を浴びるようになりました。

 裁判所の判例としては、国際頭痛分類や日本神経外傷学会の診断基準に沿って検討していることが多いようですが、相当数の裁判例は、国際頭痛分類や日本神経外傷学会の診断基準を満たさないとして、低髄液圧症候群の発症を否定しております。

 診断基準としては、他にも、「脳脊髄液減少症研究会ガイドライン作成委員会のガイドライン」がありますが、裁判所としては、この基準を用いることについては消極的です。

 現在、厚労省の研究班により、診断基準の策定作業がなされているところです。また、自賠責保険では、研究班の中間報告で示された画像診断基準に基づいた検討もすでになされているようです。

 とはいえ、髄液漏という事故外傷によって生じるのかどうか、ブラッドパッチ施術後も有症化している医学的原因は説明できるのか等多くの問題が残っております。

 被害者が混乱しないよう、医学界において明確な診断基準と治療方法を確立していただく必要があります。 

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