【流通】 有害物質が混入した冷凍餃子と同じ製造元において製造され、被告が輸入し原告に販売していた他の冷凍食品について、商品に瑕疵があるとされ、瑕疵担保責任に基づく損害賠償請求が認容された事例 東京地裁平成22年12月22日判決
判例タイムズNo1382号(2013年1月号)で紹介された平成22年12月22日付け東京地裁判決です。
本件の主たる争点は、①原告が被告から輸入した商品に瑕疵があるか否か、②原告が瑕疵の通知の懈怠(商法526条2項)により損害賠償請求権を失うかどうか、③損害額の3点でした。
本件判決は、
①の点について、
瑕疵担保責任における瑕疵とは、契約の目的物が、契約において当事者間で予定されていた品質・性能を欠くことをいうものと解されるとした上で、
本件商品が食品であり、原告がこれを他社等に販売していたことから、原告と被告の間では、本件商品が消費者の消費に供しうる品質を有し、それに基づいて他社への販売が可能である商品価値を有することが予定されており、こうした品質、商品価値を欠くことが瑕疵にあたるとしました。
その上で、冷凍餃子による中毒事件の発生後、冷凍餃子の製造元で製造された商品全般に対し、社会全体において、有害物質が混入している疑いがあるとの目が向けられていた状況や、高度な安全性の確保が必要で、有害物質混入の疑いがあるだけで商品価値を喪失する食品の性質などから、原告が被告から輸入した商品は、消費者の消費に供しうる品質やそれに基づいた他社への販売が可能である商品価値を有しておらず、瑕疵があったと認められるとしました。
②の点についても、
商法526条が商人間の売買において、買主に目的物の検査義務を課し、目的物に瑕疵があること等が判明した場合に売主に対する通知を義務付けている理由は、善意の売主に瑕疵等に対する善後策を講じる機会を与えることなどにあるとした上で、瑕疵が判明した後買主がなすべき通知の程度は、売主が善後策を検討するに足りる程度、すなわち、瑕疵の種類及び大体の範囲を明らかにする程度のもので足りるとしました。
その上で、原告が中毒事件の発生直後、商品の回収を自社のホームページにおいて告知し、取引先である被告などにもその旨の方針を伝えていたことは、瑕疵の種類及び大体の範囲を明らかにし、被告に善後策を講じさせる機会を与えるのに十分であったといえるとして、瑕疵の発見後、直ちにこれを被告に通知したと認められるとしました。
③の点については、破棄回収処分した商品の代金額、商品の回収保管経費、安全性確認検査費用、消費者対応や安全確認検査に要した人件費、主要新聞各社への社告掲載費用、廃棄費用、販売先への損害賠償費用が、本件商品の瑕疵によって生じた損害であると認められました。
こんな事案って、これからもありそうです。
瑕疵の通知って忘れそうなので、注意したいものですね。
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