【倒産】 会社分割に対する否認権を行使した分割会社の破産管財人による新設会社に対する価格償還請求に理由があるとされた事例 東京地裁平成24年1月26日判決
金融法務事情No1945号(5月10日号)の判決速報で紹介された東京地裁平成24年1月26日判決です。
否認の対象となった会社分割の概要は以下のとおりです。
Zは、平成21年11月13日、本件会社分割を実施し、これに伴い、Y1が設立された。
Zは、当時、債務超過の状態にあったところ、本件会社分割は、不渡手形等を除き、事業継続に必要な預貯金、売掛金、在庫商品、機械、設備、工場等の資産の全部および得意先との取引関係、雇用契約、賃貸借契約、リース契約、保険契約等を含めた事業、営業権の全部をY1に移転するものであって、Y1に移転した資産の額は、貸借対照表上、約4950万円となった。
他方、負債については、取引先等の買掛金はY1に移転したが、金融債務は移転されず、Zに残った。その全額が破産債権であって、その額は約1億4000万円となった。なお、Y1に移転された負債についても、Zが重畳的に債務引受けをしている。
Y1は、本件会社分割の対価として、Y1の全部の株式60株およびY1を発行会社とする額面2000万円の社債を交付した。当該株式は、その後、300万円でY1の代表取締役の1人であるA(Zの取締役であったBの弟)に譲渡されている。
判決要旨は以下のとおりです。
① 会社分割に対する否認権を行使した分割会社の破産管財人による新設会社に対する価格償還請求は、会社分割からは相当の期間が経過し、資産の変動等が生じている可能性があり、個別の資産を特定して返還を求めることは困難であると認められる判示の事実関係のもとにおいては、資産の返還に代えて、その価格として算定した金員の支払いを求める限度で、その理由がある。
② 詐害性のある会社分割に係るコンサルタント業務に対する否認権を行使した分割会社の破産管財人による当該契約に基づく報酬の支払を受けた第三者に対する当該報酬の返還請求は、当該契約自体に詐害性があって、当該第三者が悪意であると認められる判示の事実関係のもとにおいては、その理由がある。
会社分割については、2,3年前から、濫用的な会社分割が問題となっており、詐害行為取消や否認が認められている裁判例も少なくありません。
田舎でも時折このような話しはきくことがあり、私自身も一度、詐害行為取消や否認権行使請求訴訟を担当したいなあと思っています。勉強になりますから。
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