【倒産】 会社から取立委任を受けたを受けた約束手形につき商事留置権を有する銀行が、同会社の再生手続開始後の取立てに係る取立金を銀行取引約定に基づき同会社の債務の弁済に充当することの可否 最高裁平成23年12月15日判決
判例時報No2138号(3月21日号)で紹介された最高裁平成23年12月15日判決です。
結論としては、これまでの銀行実務を踏襲した内容になっています。
判例時報解説での論点は、2つに整理させています。
第1は、取立委任を受けた約束手形についての商事留置権によりその取立金も留置することができるのか?という点
第2は、取立金を法定の手続によらず会社の債務の弁済に充当し得る旨を定める銀行取引約定が民事再生法上も有効であるのか?という点
第1の点については、「本判決は、留置的効力が留置権の本質的な効力であること、留置権による競売制度もこのことを否定する趣旨に出たものではないこと等を理由に、取立金にも商事留置権の留置的効力が及ぶと判断したものである」としました。
第2の点についても、
「会社から取立委任を受けた約束手形につき商事留置権を有する銀行は、同会社の再生手続開始後に、これを取り立てた場合であっても、民事再生法53条2項の定める別除権の行使として、その取立金を留置することができることになるから、これについては、その額が被担保債権の額を上回るものでない限り、通常、再生計画の弁済原資や再生債務者の事業原資に充てることを予定しえないところであるといわなければならない。
このことに加えて、民事再生法88条が、別除権者は当該別除権に係る担保権の被担保債権については、その別除権の行使によって弁済を受けることができない債権の部分にのみ再生債権者としてその権利を行うことができる旨を規定し、同法94条2項が、別除権者は別除権の行使によって弁済を受けることができないと見込まれる債権の額を届け出なければならない旨を規定していることも考慮すると、
上記取立金を法定の手続によらず債務の弁済に充当できる旨定める銀行取引約定は、別除権の行使に付随する合意として、民事再生法上も有効であると解するのが相当である。」
田舎弁護士の住んでいる地域でも、民事再生事案は数年に1回くらいあるので、人ごとではない裁判例です。
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