【流通】 スーパーマーケットの顧客が店舗内で滑って負傷した場合、建物の管理に瑕疵がなかったとして、経営会社の損害賠償責任が否定された事例(名古屋地裁岡﨑支部平成22年12月22日判決)
判例時報No2113号(7月21日号)で紹介された名古屋地裁岡﨑支部平成22年12月22日判決です。
スーパー業を営んでいる会社にとっては、是非押さえておく裁判例の1つでしょう。判例時報の解説にも、「本件は、類似先例の見当たらないケースに関する判断事例として実務上参考になるものと思われる」と書かれています。
事案は、以下のとおりです。
スーパーのお客さんであるXさん(38歳女性)が、平成20年12月17日、Yが経営するスーパーマーケットに顧客として訪れ、入店後、豆腐等が配置されているコーナーの商品棚を見ながら歩いていたところ、突然、滑って負傷したという事案です。
争点は、床の管理の瑕疵等について、
① 元々本件店舗の床材は転倒事故を起こしやすいようなものでなく、また、転倒現場付近の床は若干水分を含んでいたという程度の状況にとどまるものであったと考えられ、滑り抵抗が常に転倒の危険を生じるほどに低下していたり、あるいは床の他の部分を極端な滑り抵抗の差が生じるような状況にあったと認められないこと
② 本件店舗において他に転倒事故が発生していた形跡が全くないことにも照らすと、転倒現場付近の床が一般的に転倒を誘発するような危険な状況にあったとはいえないこと
から、本件店舗の床の管理について瑕疵があったとは認められない判断しています。
※床材の滑り抵抗値についての知識
本件店舗の床材は、「コーデラ」というものであり、その滑り抵抗値(CSR)は乾燥時0・83、水濡れ時0・54、水+ダストの歳でも0・4であるところ、仮に当時の滑り抵抗値が0・4であったとしても、この数字は東京都福祉のまちづくり条例において認められている数字であり、本件店舗の床に水濡れがあったとしても、特段転倒事故を招くような危険な状況はなかった。
教科書事例としてはよく登場しそうなケースですが、裁判まではあまり発展しないケースなのかもしれません。
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