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2010年11月30日 (火)

【交通事故】 事故前無症状の脊柱管狭窄について、素因減額を適用するか否かにつき、第1審と第2審とで判断を異にした事例

 交通事故判例速報No533(H22・11)で、事故前無症状の脊柱管狭窄について、素因減額を適用するか否か?につき、第1審(広島地裁平成21年1月30日判決)と第2審(広島高裁平成22年1月28日判決)とで判断を異にした事例が紹介されていました。

 「脊柱管狭窄」が既往症として明記されている場合、大抵の損保会社は、素因減額の主張をしてきます。

 素因減額され、かつ、過失相殺された場合には、被害者が受け取ることができる損害額がざっくり削られますので、被害者側の弁護士としては、慎重に検討する必要があります。

 脊柱管狭窄症とは、脊柱管が狭くなり神経圧迫症状を呈する症状です。脊柱管狭窄で検索すると、「腰部脊柱管狭窄症」はヒットするのですが、「頚部脊柱管狭窄症」は余りヒットしません。なぜかな?と長年疑問に感じていましたが、解説によると、「腰部脊柱管狭窄症は、一つの疾患として確立されているが、頚部脊柱管狭窄症は一つの疾患として確立していない。整形外科の教科書にも記載がないことが多いようである。このため、脊椎骨の連なりで構成される骨性の脊柱管が本質的に狭い場合を脊柱管狭窄症と呼ぶ場合もあれば、骨棘、椎間板、靱帯の肥厚により神経が圧迫されている場合も含めて脊柱管狭窄症と呼ぶ場合もあり、未だ概念が固定化されているわけではないようである。」と記載されています。

 第1審は、原告には脊柱管が通常人に比して狭いという身体的特質があり、これが本件事故による頚椎椎間板ヘルニアの発生及び原告の症状の増悪に影響した可能性は認められるところであるとしつつも、不法行為により傷害を被った被害者が平均的な体格ないし通常の体質と異なる身体的特質を有しており、これが損害の拡大に寄与したとしても、この身体的特質が疾患に当たらないときは、原則として損害賠償の額を定めるに当たり斟酌することはできない」として、「人間の脊柱管については健常な人間においても、個人差があるとされているところ、そのような身体的特質を原告の損害賠償の算定に当たり斟酌することはできない」と判断して、素因減額を否定しました。

 第2審は、「第4乃至第6頚椎の間における脊柱管狭窄、第4頚椎から第5頚椎の間における椎間板の突出が被控訴人の後遺障害の原因とみられるところ、日本人女性の第5頸椎及び第6頸椎における高位での脊柱管の平均前後径は16㎜であり、これに対して、被控訴人の脊柱管の前後径は11乃至12㎜であって、12㎜以下では発育性狭窄と判断され、圧迫性の頚髄症が発症する確率が高いとされていること、被控訴人においては、脊柱管狭窄がある程度脊髄の圧迫に対し、影響しているといえることが認められる。」との事実を認定した上で、

 「不法行為により傷害を負った被害者が平均的な体格ないし通常の体質と異なる身体的特質を有しており、これが損害の拡大に寄与したとしても、この身体的特質が疾患に当たらないときは、原則として損害賠償の額を定めるにあたり、斟酌することはできないといえるが、

 当該疾患に当たるか否かは、単にそれが医学的な疾患に当たるかだけではなく、その態様、程度に照らし、加害者に損害の全額を賠償させるのは衡平を失するか否かを考慮する必要があり、発育性の素因であって自覚症状がなかったからといって当然に損害額の算定に当たって考慮する対象から外すべきということはできない」と規範定立したうえで、

 「被控訴人の脊柱管狭窄は、発育性狭窄と判断される程度のものであり、圧迫性の頚髄症が発症する確率が高いとされているものであって、個体差の範囲内に属するということはできず、また、誰にでも起こりうる通常の加齢による骨の変性とも異なるものである。被控訴人の脊柱管狭窄は、その程度及び上記衡平の見地に照らし、素因減額において考慮しうる身体的特質とみるべきである」として、素因減額を認め、その割合を2割としました。

 解説者によれば、控訴審で認定が覆った理由は、原告の脊柱管の幅が具体的に主張立証された点にあるということです。

 この辺りに留意する必要があるようです。

 

2010年11月29日 (月)

【金融・企業法務】 フランチャイズ契約において、フランチャイズチェーン運営者の情報提供義務・経営指導義務の違反が認められなかった事例 平成22年5月27日付大阪地裁判決

 判例時報No2088(11月11日号)で紹介された大阪地裁平成22年5月27日判決です。

 フランチャイザーであるXが、フランチャイジーであるYに対して未払いロイヤルティを請求したところ、逆に、YがXに対して、情報提供義務違反、経営指導義務違反を理由として損害賠償請求を行ってきたという事案です。

 裁判所は、いずれも、Xを勝訴させました。

 後者の事件については、

(1)フランチャイザーは、フランチャイジーに対して、客観的かつ正確な情報を提供すべき信義則上の保護義務を負っているが、Xの売上予測が誤りであったことの根拠はないし、市場調査結果報告書の記載に誤りがあったとは認められない

(2)Xは、Yに対し、本件FC契約上、所定の指導援助を行う義務があるが、Xは、Yに対し、弁当のメニューやレシピを提供し、インターネット上に加盟店同士が情報交換できる場を設け、業務全般に関するマニュアルを交付し、また、Yの店舗の経営を改善するため、積極的に営業に行くよう指導し、Yの店舗のエリア内の福祉関連施設を回って営業活動を行うなどしたのであるから、Xが経営指導を怠ったものと認めることは出来ない

 として、Yの請求を認めませんでした。

 Yさんは、大学卒業後、アパレル関係の会社に就職し、平成2年からは司法書士土地家屋調査士事務所で現場での測量等に従事していた方で、事業経営に携わった経験はなかったようです。

 経験がない方が、フランチャイズでそれを補おうと考えるのは自然ですが、今回の案件では、開業後の収支は良いものではなかったようです。営業不足が大きな原因の1つだったように思われますが、それを克服するのは難しかったようです。 

 

2010年11月28日 (日)

【金融・企業法務】 農業協同組合の代表理事が補助金の交付を受けることにより同組合の資金的負担のない形で堆肥センター建設事業を進めることにつき理事会の承認を得たにもかかわらず、その交付申請につき理事会に虚偽の報告をするなどして同組合の費用負担のもとで同事業を進めた場合において、資金の調達方法を調査、確認することなく、同事業が進められるのを放置した同組合の監事に、任務の懈怠があるとされた事例 最高裁平成21年11月27日付判決

  金融法務事情No1909(11月10日)号の「判決速報」で紹介された事案(最高裁平成21年11月27日判決)です。

 事案は、地方の農協ではよくありがちと思える内容です。

 農協の代表理事Aが、補助金の交付を受けることにより同組合の資金的負担のない形で堆肥センター建設事業を進めることにつき理事会の承認を得たにもかかわらず、補助金の交付申請につき理事会に虚偽の報告をするなど同組合の費用負担のもとで同事業を進めたというケースです。

 この建設事情を進めたため、農協は約5700万円程度の損害を被ったようです。

 ところで、何で、監事の中の1名だけを責任追及したのか不思議に思いましたが、他の監事は農協の求めに応じて、受領済みの役員報酬を任意に返還していたようです。

 原審は、原告においては、唯一の常勤理事である代表理事が、自らの責任を負担することを前提として理事会の一任を取り付け、様々な事項を処理判断するとの慣行が存在し、Aはその慣行に沿った形でなし崩し的に堆肥センター建設工事を実行に移したとして、監事であった被告に義務違反があったということはできないと判断しました。

 ところが、最高裁判決は、理事の業務執行を監査する監事の職責は、たとえ組合に上記のような慣行が存在したとしてもそれによって軽減されるものではないとした上、Aの一連の言動は、Aに明らかな善管注意義務違反があることをうかがわせるに十分なものであったとし、そのような状況で建設資金の調査方法を調査確認しなかった被告には、監事としての任務懈怠があると判断しました。

 信じられないことに、以前は、農協法には、理事会や監事による業務執行監査の規定が置かれていなかったようです。

 そのために、組合の運営が一部の常勤理事中心のものになるなど業務執行理事にたいする牽制機能が十分発揮されていない組合があったことから、平成4年の改正により、理事会や監事による業務執行監査の規定が置かれることになりました。

 そして、監事は、中会社における監査役の権限責任と同様となっていることから、株式会社における監査役に関する法の解釈適用が参考になります。

 監事、監査役の皆様、業務執行監査には十分に注意を払う必要があります。

2010年11月27日 (土)

弁護士会費の滞納

 11月号の「自由と正義」が送付されてきましたので、早速読んでみました。

 5人懲戒されていましたが、うち3人は、弁護士会費の滞納により大会命令を受けていました。

 登録番号をみると、中堅弁護士のようにみえますが、報道されているニュースをみると、お二人はベテランの方のようです。もうお一人は、働き盛りの年齢のようですが・・・・

 とにかく、弁護士会費は高いです。

 登録番号をみる限り、かなりのキャリアがあることは想像できますが、弁護士を長くやっていても、会費を支払うことができない弁護士が生じるようになったと思うと、恐ろしい限りです。

 また、相手方の情報を得るために勤務先に余事記載の域を超えて弁護士会照会をかけたことについて、不法行為自体は訴訟で否定されたものの、懲戒事由には該当するとして、戒告処分を受けた弁護士が紹介されていました。

 不法行為には該当しないとしても、懲戒事由には該当するとすれば、怖くて弁護士会照会などをかけることはできません。

 ただし、大阪弁護士会に懲戒処分は1つの先例となりますから、皆さん、弁護士会照会をかける時には、細心の注意を払う必要があると思いますので、気を付けましょう。

2010年11月26日 (金)

【金融・企業法務】 第150回金融法務研究会例会

 11月は、出張が続いています。

 またも、大阪出張です。

 きんざいの主催で大阪銀行協会で行われた金融法務研究会例会に出席してきました。

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 大阪銀行協会です。重厚感のある建物です。

 今回のテーマは、金融機関に対する否認権行使をめぐる判例と実務ということで、大阪の渉外系の法律事務所の先生が解説されました。

 否認権の定義から始まり、個別のケースを判例などをベースに検討していくというスタイルでした。

 ただ、私の場合、最近は何故か、規模の比較的大きい会社の管財事件が廻ってこないので、少し知識が怪しくなってきています。

 金融法務例会に出席した後は、必ず、ジュンク堂(大阪本店)を訪ねるようにしています。

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 ジュンク堂の喫茶室で販売していた桃ジュースです。一杯500円です。あっという間に飲んでしまいましたが・・・

2010年11月25日 (木)

【保険金】 刑事控訴事件を受任した弁護士が、期限までに控訴趣意書を提出しなかったため、第1審の実刑判決が確定し、依頼者である被告人との間で、約280万円を支払う旨の示談をした場合において、保険会社に対する弁護士賠償責任保険契約に基づく同額の保険金請求が10万円の限度で認容された事例

 判例タイムズNo1331(11月15日)号で紹介された平成22年5月12日の東京地裁判決です。

 原告の弁護士Xさんは、元依頼人である被告人Zに対して、多額のお金を支払っていますが、よくわからないような事案です。

 Xは、Zから、覚せい剤の事件の依頼を受けましたが、第1審では、懲役1年の実刑判決を受けました。

 弁護料としては、10万円を受け取っているだけなのに、Xは、第1審の時の保釈保証金200万円をZに貸したり、第2審でも、保釈報奨金の内金25万円をZに貸しつけています。

 う~ん 弁護士はこんなことは普通はしないぞ。

 第2審の控訴趣意書をXが提出期限を誤認してしまったため、第1審の実刑判決が確定してしまったものですが、Zはこれまで覚せい罪関係で4回服役しており、また、これを含む前科15犯あり、今回の事案も執行猶予満了後2年6か月での犯行であるため、およそ執行猶予がつくとは思われない案件だったようです。

 そのため、裁判所は、Zが受けた慰謝料の金額は10万円が相当と判断したため、Xの請求も10万円しか認めなかったものです。

 今回の判決で、裁判官が良いことを言っています。

 「「社会正義を実現することを使命」とし、「高い品性の陶やに努め」なければならない弁護士としては、懲戒請求を金銭で支払うことで防ぐというようなことに汲々とせず、また、不法・不当な賠償要求に対してはたとえ弱みがあったとしても毅然とした態度を取るべきであって、そうせずに、懲戒請求を金銭で防ぎ、不法・不当な賠償要求に屈して金銭を支払った上、それら金銭を保険金で賄うべく保険金請求をし、仮にそのような請求が認められるとするならば、多数の弁護士が契約していると思われる本件保険契約と同じ弁護士賠償責任保険契約は、弁護士の矜恃を捨てたものといわざるを得なくなろうが、ほとんどの被保険者たる弁護士はそのようなことを容認しないであろうし、容認しないと信じたい。」

 事案の性質を考えると、仮に懲戒されたとしても、過去に懲戒歴がなければ、戒告処分程度ですむはずです。仮に、過去に懲戒歴などがあり業務停止処分を回避するために元依頼人との間で多額の金員を支払う内容の示談を行ったのであれば、それは保険金請求すべきものではありません。

 

2010年11月24日 (水)

【建築・不動産】 (財)住宅リフォーム紛争処理支援センター 平成22年度紛争処理委員実務研修

 11月は、大阪や東京等の出張が続いています。

 (財)住宅リフォーム紛争処理支援センターの主催の紛争処理委員実務研修に参加してきました。

 会場は全国各地を選択できるのですが、高松や岡山会場の日は都合が悪かったので、大阪会場を選択しました。

 大阪会場は、なんとブリーゼブリーゼ(梅田)です。

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 梅田でひときわ目立つ超高層のビルです。 

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 午後1時30分から開催でした。

 国土交通省の担当官の「住宅紛争処理に関する制度と今後の政策展開について」、支援センター担当者の「相談紛争処理の実施状況について」のほか、弁護士による「住宅瑕疵担保責任保険類型集」の解説や、住宅に関する最新判例についての解説でした。

 研修会に出て思うことは、「講師の先生は、何でこんなに知識と経験が豊富なのか?」ということです。

 不断の努力のたまものなのでしょうが、私も、少しでも近づけるよう「普段」の努力をしていきたいと思います。

 判例解説については、いわゆる耐震偽装がらみの判例とそれ以外の判例の2にわけての解説でした。

 来年からは、愛媛弁護士会においても、建築士の先生方の協力を得て、リフォーム相談などを実施することになっています。今のうちに、勉強しておく必要があります。(^_^)

 ランチは、近くのレストラン(ネスパ)で摂りました。

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 2年前に、大阪に家族旅行した際に、たちよったお店です。コロッケ類が美味しいです。

 隠れ家的なお店です。

 

2010年11月23日 (火)

【知的財産権】 企業秘密保護 No9 営業秘密管理指針⑥

 今回で、第9日目になりますね。眠たいと思っておられる読者の皆様には申し訳ありません。引き続き、営業秘密管理指針に突入します。

 前回は、営業秘密の管理のために実施することが望ましい秘密管理方法として、物理的・技術的管理に続いて、人的管理をとりあげました。今回は、組織的管理のお話です。

 3.営業秘密の管理を適切に機能させるために実施することが望ましい組織的管理の在り方についてです。

(1) 基本的な考え方

  「営業秘密の管理においては、個別の管理方法を実効的に実施し、発生した問題に的確に対応していくため、組織的な管理を行うことが重要である。その際、自社の営業秘密の管理という視点のほか、他の事業者の営業秘密を侵害しないという視点をももつことが必要である。」

(2) 他社の営業秘密を侵害しないための組織的管理の意義

   「法人は、民事的責任を問われることがあり得るとともに、刑事罰の対象ともなりえ、さらに、事業者が他社の営業秘密の侵害にかかわった場合には、社会的な責任という観点から、その事業者の評判に大きな影響を与える可能性もある。したがって、事業者としては、自社の従業者等による営業秘密侵害行為への加担を未然に防止するための積極的・具体的な措置を講じることが望ましい。」

 ① 両罰規定と選任監督義務(刑事罰) 

 ② 相当の注意(民事上の措置) 

(3) 望ましい組織的な管理体制の構築の在り方

 ① 重要な情報資産(営業秘密として管理すべき情報資産)の把握

 ② 目安となる事項

 ③ 望ましい組織的管理のポイント(PDCAサイクルの確立)

  (ア)管理方針等(基本方針、規定、基準等)の策定<PLan>

     a 基本方針の策定

     b 実施計画の策定

(4) 営業秘密の管理と情報管理に関する国際規格(マネジメント規格)、個人情報保護等との関係

  営業秘密管理指針ですが、知財ネットに加入していなければ勉強しなかったでしょう。ありがたやありがたや。

2010年11月22日 (月)

【知的財産権】 企業秘密保護 No8 営業秘密管理指針⑤

 営業秘密管理指針の続きです。

 前回は、2.営業秘密の管理のために実施することが望ましい秘密管理方法として、(1)秘密指定、アクセス権者の指定、(2)物理的・技術的管理を鳥瞰していきましたが、本日は、(3)人的管理、(4)営業秘密侵害に備えた証拠確保等に関する管理をみていきたいと思います。

(3)人的管理

 ①基本的な考え方

   「厳重な物理的・技術的管理方法を採用しても、それを遵守すべき者が秘密管理の重要性を理解していなかったり、採用されている管理方法を的確に認識していなかった場合には、実効的な管理がなされず、その結果、意図的か否かにかかわらず、営業秘密が漏えいする危険性が相当にあるといえる。そこで、アクセス権者であるか否かにかかわらず、全ての従業者等において、自社の秘密保護に関する認識を持ち、営業秘密侵害や漏えいを防止するような意識を持つことが重要である。そのため、事業者としては誰がどのような営業秘密を扱っているかを把握した上で、誰にどのような義務を負わせるかを明確にするとともに、自社における営業秘密の取扱いに関するルール等を周知徹底させるために、日常的に教育・研修等を行う。また、従業者、退職者、派遣従業者、転入者、取引先等、対象に応じた適切な管理を行う。」

 ②人的管理

 (ア)従業者等に対する教育・研修の実施

  「秘密管理の重要性や管理組織の概要、具体的な秘密管理のルール等について、教育・研修を実施する。」

    a 教育・研修責任者の設置

    b 教育・研修内容の決定

      c 教育・研修の実施

 (イ)就業規則・契約等による従業者、退職者等への秘密保持の要請

   「契約、誓約書等により、営業秘密を開示した相手方(従業者、退職者等)の秘密保持義務を明確化する。就業規則や各種規程に秘密保持義務を規定し、従業者等に周知する。就業規則において秘密保持の規定を設ける場合には、労働関連法規に反しないよう留意する必要がある。退職者に秘密保持義務を課したい場合には、できる限り秘密保持契約を締結する。」

       a  就業規則等の規定

    b  従業者等、退職者等と締結する契約等

    c  退職者との競業避止契約

 (ウ)派遣従業者

 「派遣従業者に対しても、同程度の業務に従事している自社の従業者に対して課しているのと同等の秘密保持義務を遵守するよう規定する。ただし、これらの場合には、労働基準法や労働者派遣法に反しないよう留意する必要がある。」

 (エ)転入者

 「他の会社から転職した者を採用するときには、転職者が前職で負っていた秘密保持義務や競業避止義務の内容を確認する。」 

   a     転入者の契約関係の確認

       b  採用時の法的対処方法

       c  採用後の管理

 (オ)取引先

   a    自社情報

   b  取引先の情報  

(4)営業秘密侵害に備えた証拠確保等に関する管理

  「厳重な管理方法を実施した場合であっても、営業秘密が漏えいするおそれを完全になくすことはできない。そこで、営業秘密が漏えいした場合に備えて、証拠確保のための措置を講じることが考えられる。」

 人的管理は、非常に大切ですが、難しいところでもあります。営業秘密とは関係がありませんが、例えば、前の勤務先のことをぺらぺら喋る方は、おそらく今の勤務先のこともぺらぺら喋っていることが少なくないように思われます。うちの場合、法律事務所なので、口の堅い人でなければなりません。口が堅すぎで、ナゾだらけのスタッフも不気味ではありますが・・・・

2010年11月21日 (日)

【知的財産権】 企業秘密保護 No7 営業秘密管理指針④

 営業秘密管理指針の続きです。

 第3章 営業秘密を保護するための管理の在り方 中 2.営業秘密の管理のために実施することが望ましい秘密管理方法の概要の続きです。

 2. 営業秘密の管理のために実施することが望ましい秘密管理方法

(1)秘密指定、アクセス権者の指定

 ① 情報区分・秘密指定

  「営業秘密とその他の情報とを区分して管理し、営業秘密として区分した情報については、秘密であること及びその管理方法を指定・周知する。なお、取引先等から秘密情報の開示を受けている場合には、その秘密情報が自社の営業秘密に混入(コンタミネーション)しないようにする。」

 ② アクセス権者の指定

  「営業秘密ごとにアクセスできる権限をもつ者をあらかじめ指定する。営業秘密へのアクセス記録を残す。」

(2)物理的・技術的管理

 ① 基本的な考え方

  「営業秘密が記載・記録されている書面、記録媒体(USBメモリなど)等の管理に当たっては、媒体、保管庫、保管施設等について、媒体に記載・記録されている情報が秘密であることを認識できる措置を講じ、かつ、権限がない者がその媒体(又は情報)にアクセスすることができない措置を講じることが重要である。」

 →要は、秘密表示と、アクセス制限のことですね。

 ② 物理的管理

  (ア)秘密表示、分離保管

  「営業秘密が記載・記録されている媒体であることを、権限を持ってアクセスした者が客観的に認識可能な状態にする。具体的には、書面にマル秘マークを押したり、電子ファイルの開封に関するパスワードを設定したり、記録媒体などを他の情報のみが記録されているものと分離して保管したりすることなどが考えられる。」

     a 客観的に認識可能な表示 (営業秘密及び区分の表示)

     b 媒体の分離保管

     c  営業秘密の表示と分離保管の関係

  (イ)媒体の保管、持ち出し、複製の制限、廃棄

  「営業秘密を記載・記録している媒体は、保管庫に施錠して保管する。上記媒体については、その持ち出しをできる限り制限する。上記媒体の複製についてもできる限り制限する。上記媒体は、適切に回収する。上記媒体は、復元不可能な措置を講じて破棄する。」

     a 保管

      b  持ち出し・複製の制限

           c  回収・廃棄

  (ウ)施設等の管理

  「営業秘密の保管場所を施錠する。営業秘密を保管している施設への入退出を制限する。」

 ③ 技術的管理

  「電磁的に記録されているデータの取扱いに関する各種ルールをマニュアル化あるいはシステム化しておくことが考えられる。指定されたアクセス権者のみアクセス可能な措置を講じる。営業秘密を保存するコンピューターやシステムを外部ネットワークから遮断するなど不正アクセスに対する措置を講じる。営業秘密のデータを復元不可能な措置を講じて消去・廃棄する。」

 (ア)マニュアルなどの設定

 (イ)アクセス及びその管理者の特定・限定

 (ウ)外部からの侵入に対する防御

 (エ)データの消去、破棄

 営業秘密の管理にあたっては、物理的管理、技術的管理、人的管理などの具体的な管理方法により、行う必要があります。

 今回は、物理的管理、技術的管理の概要を採り上げました。

2010年11月20日 (土)

【知的財産権】 企業秘密保護 No6 営業管理指針③

 営業秘密管理指針の続きです。

第3章 営業秘密を保護するための管理の在り方

1.概要

(1)本章において目指す営業秘密の管理水準

  「営業秘密の管理は、どのような保護、成果を求めるかによって、それに必要な水準が異なる。本章では、まず、不正競争防止法の営業秘密として法的保護を享受し得る情報管理水準を示すことを目指すこととし、その上で更に高いセキュリティレベルを求める事業者の参考になるよう、高度な管理方法等も紹介する。なお、不正競争防止法の営業秘密として法的保護を享受し得る情報管理水準を達成するためには、本章で紹介する管理方法を全て実践しなければらないものではなく、事業者においてその情報を合理的に管理していることで足りることに留意する必要がある。」

(2)裁判例にみる秘密管理性の判断の傾向

 「裁判例は、営業秘密として不正競争防止法上の保護を受けるための要件(秘密管理性)として、①アクセス制限の存在、及び②客観的認識可能性の存在を必要としているが、裁判所で考慮されている具体的な管理方法をすべて実施していることまでを求めているのではなく、事業規模、業種、情報の性質、侵害態様等も踏まえ、秘密管理の合理性を総合的に判断する傾向にある。事業者においては、具体的な管理方法を適切に組み合わせてその管理水準を一定以上のものにすることにより、法的保護の可能性を高めることが望ましい。」

 ① 秘密管理性の要件と肯定的な判断要素とされる具体的な管理方法

 ② 裁判例にみる秘密管理性判断のポイント

(3)営業秘密管理のポイント

  「営業秘密の管理に当たっては、「物理的管理」、「技術的管理」、「人的管理」等の具体的な管理方法により、秘密情報をその他の情報と区分し、権限に基づきアクセスした者がそれを秘密であると認識して取り扱うために必要な措置を講じるとともに、権限のない者がアクセスすることができないような措置を講じることが必要である。また、具体的な管理方法による管理を適切に機能させるために、「組織的管理」をすることが重要である。」

 以上、営業管理指針第3章の1.概要の概要です。

2010年11月19日 (金)

【知的財産権】 企業秘密保護 No5 営業管理指針②

 営業秘密管理指針2010年改訂版(経済産業省)の続きです。

第2章 不正競争防止法上の営業秘密の保護

1.営業秘密の定義

  「『営業秘密』とは、①秘密として管理されていること、②有用な情報であること、③公然と知られていないことの三要件を満たす技術上、営業上の情報である。」

(1)秘密管理性(秘密として管理されていること)

  「『秘密管理性』が認められるためには、その情報を客観的に秘密として管理していると認識できる状態にあることが必要である。具体的には、①情報にアクセスできる者を特定すること、②情報にアクセスした者が、それを秘密であると認識できること、の2つが要件となる。」

(2)有用性(事業活動に有用な情報であること)

  「『有用性』が認められるためには、その情報が客観的に有用であることが必要である。一方、企業の反社会的な行為などの公序良俗に反する内容の情報は、『有用性』が認められない。」

(3)非公知性

2.営業秘密の民事的保護

 「不正競争防止法では、営業秘密の不正な取得・使用・開示行為を類型ごとに列挙してそれを『不正競争』と定義し、差止め、損害賠償、信用回復措置を請求することを可能としている。また、民事訴訟の場で証拠に含まれる営業秘密が公開されてしまうのを防ぐために、秘密保持命令や、裁判の公開停止などの制度等が特別に設けられている。」

(1)営業秘密に係わる「不正競争」の各類型

(2)不正競争行為に対する措置

① 差止請求権(3条、15条)

② 損害賠償請求権(4条~9条)

③ 信用回復措置請求権(14条)

(3)民事訴訟における営業秘密の保護

① 秘密保持命令(10条~12条)

② 書類の提出等(インカメラ審理)(7条2項、3項)

③ 営業秘密が問題となる訴訟における公開停止(13条)

3.営業秘密の刑事的保護

  「不正競争防止法は、営業秘密の不正取得・領得・不正使用・不正開示のうち、一定の行為について、10年以下の懲役又は1000万円以下の罰金(又はその両方)を科すこととしている(営業秘密侵害罪)。

 日本国内で管理されている営業秘密については、日本国外で不正に使用・開示した場合についても、処罰の対象となる。

 いずれの行為も、「不正の利益を得る目的」又は「営業秘密の保有者に損害を加える目的」で行う行為が刑事罰の対象であり、報道、内部告発の目的で行う行為は処罰の対象とはならない。

 なお、営業秘密侵害罪は、犯罪被害者保護の見地から、親告罪(被害者による告訴がなければ公訴を提起することができない犯罪)とされている。」

(1)営業秘密侵害罪の類型

(2)営業秘密侵害罪に関する留意点

①主観的要件

②行為態様

(ア)不正取得

(イ)領得

③国外犯

④親告罪

⑤両罰規定

⑥法定刑

 以上が、営業秘密管理指針第2章 不正競争防止法上の営業秘密の保護です。

2010年11月18日 (木)

【知的財産権】 企業機密保護 No4 営業管理指針①

 経済産業省は、平成15年1月30日に「営業秘密管理指針」を発表しました。平成17年10月に改訂され、平成22年4月9日に再改訂されました。

 営業秘密管理指針(概要)は、事業者に対して本指針に基づく適切な営業秘密の管理体制の構築等に資するよう作成されたものです。

 本指針の構成を鳥瞰してみます。

第1章 概説

1.背景

(1)営業秘密保護が求められた歴史的背景(平成2年~)

(2)営業秘密管理指針の策定等の背景(平成14年~)

 ① 営業秘密管理指針の策定等

 ② 営業秘密管理指針の改訂等

(3)今般の営業秘密管理指針の改訂等の背景(平成21年~)

 ① 平成21年の法改正等

 ② 今般の改訂の方針

    ⅰ 平成21年の法改正における処罰対象行為の明確化

    ⅱ 事業者の実態を踏まえた合理性のある秘密管理方法の提示

    ⅲ 中小企業等における管理体制の導入手順例や参照ツールの提示

2.営業秘密の管理の意義・ポイント

(1)知的資産経営による競争力向上

  「競争力の維持又は強化のためには、無形の経営資源である技術やノウハウなどを自社の強みとして経営者が的確に把握した上で適切に活用し、他社との差別化を行う知的資産経営が求められる。営業秘密を適切に管理することは、その差別化を持続させることを可能とするものであり、経営戦略の一部として行うことが重要である。」

(2)秘密管理における視座

  「秘密情報が漏えいした場合に、事後的に法的保護を受けることができる実効的な管理をすることが望ましいと同時に、漏えいリスク・管理コスト・業務効率のバランスを考慮した合理的な管理をすることが重要である。」

(3)コンプライアンスと人的管理

  「コンプライアンスの観点から、自社の従業者が他社の営業秘密を侵害しないための管理をすることが必要である。また、従業者を萎縮させることのない適切な管理をすることが求められる。さらに、営業秘密管理の実効性を高めるためにも「人」の管理が重要である。」

 以上が指針の第1章概説の概要です。

 抽象的ですが、詳細を知りたい方は、リンク先をクリックしてみてください。

2010年11月17日 (水)

【知的財産権】 企業秘密保護 No3

 今度は、営業秘密の刑事上の保護規定についてです。

 まず、2003年改正法によって、はじめて、営業秘密の侵害行為に対して、刑事罰が導入されました。

 しかし、これは、日本国内での犯罪のみを処罰し、国外犯には適用されなかったので、半導体や液晶などの分野において、アジア諸国の企業との競争が本格化する中で、日本企業の技術者が、週末に海外に出張しアルバイトでこれらの企業に営業の秘密を教えるとか、さらには、退職した日本企業の技術者が、会社の営業秘密を持ち出して、アジアの競争企業に再就職するなどの事例が増えてきました。

 そこで、2005年改正法は、現職の役員や従業者のみならず退職者の不正開示をも処罰し、退職者を受け入れる法人をも処罰できるように両罰規定を採用し、かかる処罰を国内犯のみならず国外犯にも適用するようになりました。

 そのわずか1年後には、2006年改正法は、刑罰上限を引き上げました。

 しかし、営業秘密侵害罪の構成要件として、「不正競争の目的」が主観的要件となっているために、競争関係の存在を前提としない単なる加害目的の行為や、外国政府等を利する目的で不正開示がなされた場合には、処罰できないことになっていました。

 また、処罰規定の構成として営業秘密の不正使用、不正開示行為を中心的な処罰対象行為として捉えているため、被害企業内の管理体制に残った痕跡から不正取得や領得の事実が明白であるにもかかわらず、当該企業外で行われる不正使用や不正開示を立証できないために、泣き寝入りせざるをえないことになっていました。

 そこで、2009年改正法は、「不正競争の目的」という不正競争防止法の主観的要件を削除し、財産侵害罪の主観的要件である「不正の利益を得る目的又は保有者に損害を加える目的」、即ち「図利加害目的」に変更しました。

 また、第三者に対して秘密に不正開示されたことの立証の困難性を救済するために、かかる不正開示前の段階である営業秘密の管理体制が突破された不正取得と不法領得の段階で侵害者を逮捕できるように構成要件を変更しました。

 

2010年11月16日 (火)

【知的財産権】 企業秘密保護 No2

 営業秘密を保護するために、不正競争防止法が置いている民事上の保護規定を見てみることにします。

 営業秘密の保有者は、①差止請求権の行使(不正競争防止法3条)の他、②損害賠償の請求(同4条)もできます。また、損害賠償請求と同時に、信用回復措置をも請求できます(同14条)。

 また、民事訴訟手続における保護規定としては、以下の6つの手続規定をあげることができます。

(1)逸失利益の立証容易化規定(5条1項)

(2)ライセンス料相当額の認定規定(5条3項)

(3)具体的態様の明示義務規定(6条)

(4)書類の提出およびインカメラ手続規定(7条)

(5)計算鑑定人規定(8条)

(6)立証困難な場合の相当な損害額認定規定(9条)

 他方、営業秘密の秘密性を保持するための手続規定としては、以下の2つの手続をあげることができます。

(1)秘密保持命令(10条、11条、12条)

(2)当事者尋問等の公開停止(13条)

2010年11月15日 (月)

【知的財産権】 企業秘密保護 No1

 経済産業省が発表している「営業秘密管理指針」が今年の4月9日に改訂されたことから、田舎弁護士である私も、民事法研究会から5月10日に出版された「企業秘密保護の理論と実務」(第4版)を購入して、少しだけ勉強してみることにしました。著者は、長内健弁護士という方で、中大法学部、ニューヨーク大学、外資系の法律事務所を経て、現在は独立した事務所を構えておられるベテランの先生のようです。

 難しいことは田舎弁護士にはわかりません。ただ、少しは理解しておかないと「恥」をかくと思いますので、暫く、私の備忘録的な日誌が続きますが、何とぞご容赦下さい。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 まず、「営業秘密」については、不正競争防止法によって保護されていることから、同法の理解が不可欠です。

 不正競争防止法では、「営業秘密」とは、2条6号で、秘密として管理されている生産方法、販売方法その他の事業活動に有用な技術上又は営業上の情報であって、公然と知られていないものをいいます。

 ①秘密管理性、②有用性、③非公知性が要求されています。

 

 次に、営業秘密に対する不正競争には、大別して、不正取得行為不正開示行為との2つの類型があります。

 不正取得行為は、いわゆる産業スパイ型の不正競争であり、不正開示行為は、社員や役員が外部に持ち出す型の不正競争です。

 つづぎ

 

2010年11月13日 (土)

【行政】 自動車の所有者が脅迫されて当該自動車を他人に引き渡したためにこれを利用し得ないという損害を被ったことが、愛知県県税条例72条所定の自動車税の減免である「天災その他特別の事情」による被害に当たるとはいないとされた事例 最高裁平成22年6月8日判決

 判例タイムズNo1331号(11月15日号)で紹介された最高裁平成22年7月6日判決です。

 事案は、時折発生しそうなケースです。

 自動車を購入したXが、当該自動車を右翼団体幹部を名乗る男に引き渡したところ、そのまま行方不明になったと主張して、自動車税の減免を申請したケースです。

 奈良県条例によれば、「知事は、天災その他特別の事情により被害を受けた者のうち、必要があると認めるものに対し、自動車税を減免することができる」としていたが、いかなる事情が上記特別の事情に当たるかについては、関係法令に特段の規定はなく、通達において、①天災により自動車の原動機等に被害を受けたあめ相当の期間において運行不能となったもの、②盗難により相当の期間において自動車を所有できなかったと認められるもの、③その他特別の事情によるもので総務部税務課と協議し必要と認めたものについて減免が可能と定められていました。

 最高裁は、納税者の意思に基づかないことが客観的に明らかな事由によって担税力を減少させる事情のみを指すと解したため、脅迫されたととはいえ、貸与することに承諾した本件においては、特別の事情には該当しないと判断しました。

 占有していないのに自動車税だけかかるという相談は、決して少なくはありません。

 特に、破産した会社は、あるべきはすの自動車がないということは結構あります。

 こんな場合、破産管財人は困るのですよね。ただ、管財人は、財団からの放棄という奥の手が使えますが、このケースのような場合は困ります。

 みなさん、どのようなアドバイスをされていますか?

2010年11月11日 (木)

【交通事故】 10年前自賠責12級認定受ける56歳男子は、本件の第2事故後第1事故の5か月半後に後遺障害12級神経障害が残存したとして、既往症として50%減額した 京都地裁平成22年3月30日判決

 自保ジャーナルNo1832号で紹介された京都地裁平成22年3月30日判決です。

 事案は以下のとおりです。

 平成16年12月25日、Xさんが、Y運転の車に追突されました(第1事故)。

 その約5か月半後の平成17年6月13日に、Z運転の車に追突されました(第2事故)。

 そして、Xさんは、10年前に同種の追突事故で、自賠責12級認定を受けていたようです。

 Xさんとしては、YとZに対して、連帯債務としての賠償を求めました。

 判決は、

 Yは、第2事故が発生に寄与した部分については、賠償義務を負わず、

 Zは、第1事故が発生に寄与した部分については、賠償義務を負わないとして、

 さらに、第1事故前から、疾患(10年前の事故の後遺障害)を理由に、50%素因減額しました。

 

 こんなケースは稀だと思いがちですが、実際は時々あります。

 今回の裁判例は、同種事案の落ち着き所として、参考になります。

 ただ、YとZとの代理人弁護士が同じ人なのは、偶然???

2010年11月10日 (水)

【消費者法】 NISからネットカードに契約上の地位が承継された場合、承継時点でNISに対して発生していた過払金返還請求権については、NISに対して請求できると判断した事例 平成22年5月31日松山地裁西条支部判決

 消費者法ニュース85号(2010年10月号)で紹介された松山地裁西条支部平成22年5月31日判決です。

 ネットカードが、過払金返還請求に対しては非常に消極的な対応に終始していることについては、消費者問題を取り扱っている弁護士や司法書士にとっては、周知の事実といえるものです。

 NISは、昔は、ニッシンという名前の会社だったのですが、その消費者金融部門をネットカードに売却したのはいいのですが、ネットカードの財務状態が悪化していることから、NISの取引を承継したネットカードが過払金返還請求に対して非常に消極的な対応に終始していることから、ネットカードに承継する前に発生したNISの過払金については、同社に対して請求することができないのか?ということを、素朴な疑問を抱いていました。

 今回の裁判例は、この素朴な疑問に応じた非常に理解しやすい判決だと評価しています。

 但し、裁判例としては、今回紹介させていただいた地裁判決のほかは、平成21年9月30日付け今治簡易裁判所判決位しか、私にはわかりませんでした。

 同様の判決を勝ち取られている方がおられましたら、ご教示してください。happy01

2010年11月 9日 (火)

【交通事故】 追突された31歳男子の軽度外傷性脳損傷か否かは必要でなく脳幹部の損傷で9級10号認定し3割の素因減額を適用した事例 東京高裁平成22年9月9日判決

 自保ジャーナルNo1832号で紹介された東京高裁平成22年9月9日付判決です。

 MTBI(軽度外傷性脳損傷)に関する裁判例です。

 第1審の東京地裁平成22年2月23日付判決は、「WHOの平成16年定義によったとしても、原告には、受傷後の混迷又は見当識障害・30分以内の意識喪失・24時間未満の外傷性後健忘症、又はこれら以外の短時間の神経学的な異常はいずれも認められないから、軽度外傷性脳損傷に該当しないことになる。」と判断しました。

 ところが、第2審の東京高裁は、「控訴人がWHOの定めた軽度外傷性脳損傷に関する平成16年の定義に該当するか否かについては、本件訴訟においてはそれを確定することが必要なわけではない。本件訴訟において重要なことは、本件事故によって控訴人が頭部に衝撃を受け脳幹部に損傷を来してこれを原因として後遺障害を残存させたか否かであるところ、この事実は上記のとおりこれを認めることができるものである。」と判断しました。

 そして、「たとえ、①控訴人が本件事故後に実況見分に立ち会って警察官に対して指示説明をし、その後自ら控訴人車を運転して東京都世田谷区Aまで帰って来ているとしても、すなわち、本件事故直後には強い意識障害はなかったとしても、②また、控訴人にはCT検査やMRI検査の画像所見において異常所見が認められないとしても、③さらには、控訴人車の同乗者には後遺障害が生じていないとしても、

 軽度外傷性脳損傷においては事故後すぐに症状が現れるとは限らず遅発性に現れることもあるというのであり、

 また、軽度外傷性脳損傷の場合には必ず画像所見に異常がみられるということでもないというのであるから、

 上記①②③の事実をもって控訴人において本件事故による脳幹部に損傷を来した(脳細胞の軸索が損傷した)事実を否定することができないものというべきである。」と説明しています。

 う~ん、第1審では、WHOの定めた軽度外傷性脳損傷の定義に該当するかどうかが争点となり、第1審裁判所は非該当と判断しています。

 第2審は、基準を示さず、「控訴人は、本件事故により頭部に衝撃を受け、これにより脳幹部に損傷を来し(脳細胞の軸索が損傷し(剪断ではない))、これを原因として」と認定して、後遺障害等級第9級を認定しています。

 この裁判所の判断は、画像所見がない場合、症状が遅発性の場合にも、即ち、MTBIに特徴的な場合にも、9級の後遺障害を認めています。

 今後、MTBIの議論がどのように展開していくのか、興味津々です。

 

2010年11月 8日 (月)

【金融・企業法務】 シンジケートローンを組成したアレンジャーの参加金融機関に対する情報提供義務違反による債務不履行責任及び不法行為責任が否定された事例 名古屋地裁平成22年3月26日判決

 判例タイムズNo1330号です。

 解説によれば、シローンにおけるアレンジャーの情報提供義務を巡ってアレンジャーが参加金融機関から責任を追及された事案についての裁判例は、これまでに公刊物に登載されたものの中に見当たらないようです。

 まず、参加金融機関としては、アレンジャーに対して、

 ①アレンジャーは、参加金融機関の利益に配慮しながら適正なシローンの組成に努める信認義務を負い、その一内容として情報提供義務を負う

 ②参加金融機関の参加の意思決定のために重大な情報であって、参加金融機関が独自に入手し得ない情報をアレンジャーが知っていながら参加金融機関に伝達していない場合等には、アレンジャーは信義則上の情報提供義務を負う

 と主張しました。

 しかし、裁判所は、①については、自己責任で判断すべきとして一蹴し、②については、債務不履行責任は否認し、不法行為責任として、以下の場合に、信義則上の情報提供義務を負うと判断しました。

 すなわち、

「少なくとも、a当該情報が、招聘を受けた金融機関の参加の可否の意思決定に影響を及ぼす重大な情報であり、かつ正確性・真実性のある情報であること、bアレンジャーにおいて、そのような性質の情報であることについて、特段の調査を要することなく容易に判断し得ることを要する」と判断しています。

 この要件だと、信義則上の情報提供義務を負う場合というのは、よっぽどの場合かな?と思いますが、いかがでしょうか?

 控訴されているようなので、控訴審判決でさらに議論が深くなることを期待しています。

2010年11月 7日 (日)

【交通事故】 起立性頭痛認められず国際頭痛分類分類基準の前提を欠きB医師診断にも疑問を入れ追突された47歳女子の低髄液圧症候群発症を否認した 東京地裁平成22年4月12日付判決

 自保ジャーナルNo1832号で紹介された東京地裁平成22年4月12日付判決です。

 裁判所の判断の理屈は、最近の流れに沿う形になっています。

 即ち、低髄液圧症候群の認定基準のうち、①国際頭痛分類第2版の診断基準、或いは、②日本神経外傷学会の診断基準を前提に、あてはめ、要件を充足しないことを理由に、低髄液圧症候群を否認し、他方、③脳脊髄液減少症ガイドライン2007の基準に対しては疑問視をして、その基準には従っていません。

 但し、神経症状として、14級は認定する(自賠責も14級併合認定)ものの、症状固定日については、平成15年12月15日(事故発生日は平成15年6月5日、原告側症状固定日は平成21年9月11日)、としています。

 低髄液圧症候群に対する裁判所の基本的な考え方は、ほぼ固まったのではないか???と思われる裁判例が続いています。

 このままでは、①或いは②の基準に該当しない被害者は救済されないことになります。

 脳脊髄液減少症を主唱するドクターの先生方に頑張っていただいて、裁判所が採用できるガイドライン作りが、被害者救済のために必要ではないかと思います。

2010年11月 6日 (土)

【知的財産権】  営業秘密管理指針 勉強会(松山)

 昨日、愛媛弁護士会館で、経済産業省の方を招いての勉強会がありましたので、早速参加してまいりました。

 特許庁等の主催で松山で平成22年11月16日に行われる説明会の際に、経済産業省が策定した営業秘密管理指針についての無料法律相談の相談委員を担当させていただくことになっています。

 そのために、民事法研究会から出している「企業秘密保護の理論と実務(第4版)」を購入して、少しだけ勉強させていただいていたのですが、やはり、専門家の方から直接レクチャーしてもらう方がいいだろうということで、「改正不正競争防止法について」の勉強会が松山で開催されることになりました。

 我が国が何故優れた技術力を持っていながら、事業では外国に負けることが少なくないのか? 勉強会は、ここからスタートしました。

 これについては、知的財産のつながり力の強化が必要ですが、その1つとして、営業秘密の保護が上げられています。

 また、営業秘密のうち、何をオープン化しているのかなど戦略的な思考も検討していく必要があります。営業秘密として管理していくべきか、特許等の知的財産権を取得していくのか、大企業だけではなく中小企業でも、このような戦略的な思考をしていく時代が到来しているようです。

 そして、営業秘密は、企業の長年の取組や多額の投資の結集であり、企業の収益を生み出す源としての価値を有しています。このような営業秘密は、一度侵害されると瞬時に拡散し、その回復が極めて困難となります。この対応としては、人的組織的管理といった相対的に安定性を欠く管理に頼らざるを得ないことから、侵害に対する予防には限界があります。

 営業秘密については、このような性質を踏まえた上で、企業内部における適切な管理と、法律による侵害行為に対する実効的な抑止を通じて保護が図られることが重要といえます。

 今回の改正では、営業秘密侵害罪の処罰対象範囲を拡大するなど大きな改正がなされました。

 また、経済産業省では、今年、営業秘密管理指針(改訂版)を発表されたわけですが、①企業に対して、高度な管理水準を一律に要求しているような印象を与えているのではないか、②必ずしも、中小企業によって、分かり易く、使いやすいものとはなっていないのではないかという指摘がされています

 今回の改訂では、①平成21年改正不正競争防止法における処罰対象行為の明確化、②企業の実態を踏まえた合理性のある秘密管理方法の提示、③中小企業等における管理体制の導入手順例や参照ツールの提示が盛り込まれています。

 その具体的な内容については、後日、このブログでもとりあげていきたいと思っています。

 勉強会には、愛媛の弁護士3名、香川の弁護士2名、合計5名だけの参加でしたが、結構濃い?勉強会となりました。

 また、夜遅くまで会館を利用させていただき、事務局長さんには大きなご迷惑をおかけしてしまいました。 <(_ _)>

2010年11月 5日 (金)

【金融・企業法務】 投資信託の受益証券を販売した銀行の不法行為責任が肯定された事例 大阪地裁平成22年8月26日判決

 銀行法務21・11月号で紹介された裁判例(大阪地裁平成22年8月26日判決)です。

 事案は、Y銀行の担当者による投資信託の受益証券の販売勧誘にあたり、適合性の原則違反、説明義務違反、断定的判断の提供の違法性があったかどうかが争われたケースです。

 裁判所は、

 証券会社の担当者が、顧客の意向と実情に反して、明らかに過大な危険を伴う取引を積極的に勧誘するなど、適合性の原則から著しく逸脱した証券取引の勧誘をしてこれを行わせたときは、当該行為は不法行為法上も違法となると解するのが相当である、

 担当者による取引の勧誘が適合性の原則から著しく逸脱していることを理由とする不法行為の成否に関し、顧客の適合性を判断するに当たっては、具体的な商品特性をふまえ、これとの相関関係において、顧客の投資経験、証券取引の知識、投資意向、財産状態等の諸要素を総合的に考慮する必要がある。

 投資経験及び知識がほとんどなく、

 慎重な投資意向を有する79歳という高齢で一人暮らし

 相当のリスクがあり理解が困難な本件投資信託の購入を勧誘し

 Y銀行の内部基準を形骸化するような運用

 →適合性の原則から著しく逸脱した投資信託の勧誘といえる

 と判断しました。

 但し、解説者によれば、Xは、インタビューシートに、安全性収益性のバランスに配慮すると記入したことや、今回の取引で生じた損害が約250万円程度でありXが預貯金が5000万円、月収が100万円弱あることから過大な危険といえるのか議論がわかれるのではないかと指摘されています。

【知的財産権】 企業秘密保護 N

2010年11月 3日 (水)

フジグラン今治で 北海道&東北物産展

 先ほど、フジグラン今治を訪ねました。

 なんと、北海道&東北の物産展を行っていました。

 ソーセージや、魚介類、肉類、ケーキ、ラーメン等、北の国ならではの物産展でした。

 妻は、ソーセージ、イカ辛、ソーセージ、キムチ、チーズケーキなどを買いました。

 私は、ワインと日本酒を購入しました。

 Photo_2

 「余市ワイン」のオリジナルブレンドミュラートゥルガウというワインだそうです。

 ラベルには、「収穫年度の異なる余市産ミュラートゥルガウをブレンド、フレッシュな果実味とほのかな甘さが魅力のワインです。」と記載されていました。

 それと、微発泡性清酒「ぷちぷち」も2本(330ミリリットル)購入しました 末廣酒造という福島県会津市にあるメーカーのものです。

 今日の夜は、楽しみだな~

2010年11月 2日 (火)

【消費者法】 プロミス「契約切替」事案

 サンライフや、クォークローン(タンポート・クラヴィス)から、プロミスに「契約の切替」がされた場合に、サンライフ時代の取引を、プロミスが承継するか?という論点が、ここ1年の間、活発に議論がされています。

 私が関与したケースにおいては、裁判所には実質的に考えていただき、現在のところ、サンライフ時代の取引についての承継を認めていただけていますが、現実には「契約の切替」という形式を重視する裁判所もあり、今のところ、担当する裁判官の考え1つによって、大きく結論が異なるところです。

 例えば、松山地裁には民事部が2つありますが、現時点では、どちらの部に係属するかで、その結論が大きく異なるような状態だと思われます。

 高裁判決レベルでも、いくつもの高裁で結論がわかれています。

 平成22年10月27日付大阪高裁判決

 平成22年10月08日付仙台高裁判決

 平成22年09月14日付名古屋高裁判決

 平成22年09月14日付大阪高裁判決

 平成22年07月22日付名古屋高裁判決

 平成22年07月15日付東京高裁判決

 平成22年05月27日付名古屋高裁判決

 以上は、消費者側勝訴の判決ですが、形式的に考えられ、そうではない判断をされた高裁判決もあるようです。

 私の場合、この論点が絡む案件のご依頼を受ける場合には、「担当される裁判官のご判断次第です」と説明するようにしています。

 また、この種案件の場合、敗訴すると、プロミスに負債が残る方が少なくないため、敗訴した場合には、真っ青です。

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