【金融・企業法務】 株主総会の決議を経て内規に従い支給されることになった会社法361条1項にいう取締役の報酬等に当たる退職慰労金年金につき、集団的、画一的な処理が制度上要請されているという理由のみから、内規の廃止により未支給の退職慰労年金債権を失わせることの可否 最高裁平成22年3月16日判決(第3小法廷)
金融法務事情No1900(6月25日)号の判例速報で、紹介された最高裁平成22年3月16日判決です。
1 事案は以下のとおりです。
本件は、Y銀行の取締役を退任したXが、平成11年の株主総会決議等を経て、当時の役員退職慰労金規定(本件内規)に従い退職慰労年金(月額13万3000円、支給期間20年間)を受給していたところ、その後に開催されたYの取締役会で本件規程の廃止決議がされたとして、その支給が打ち切られたため、Yに対して、未支給分の退職慰労年金の支払等を求めた事案です。
Xさんは、退職慰労一時金として、Y銀行から、5683万円支給されています。
Y銀行が退職慰労金の支払いを停止したのは、平成9年度に、270億円、平成10年度に、193億円の経常損失を計上し、さらに、同年度の不良債権処理額は約314億円に上り、そのため、Y銀行は、400億円の公的資金の投入を受け、さらに、平成15年8月には、金融庁から経営健全化目標の達成が不十分として業務改善命令を受け、平成15年8月から9月、元取締役に、退職慰労年金の支給の停止をお願いして、Xさんを除く大部分の者からは同意を得た背景があるようです。
同意された取締役は、経営責任を感じて、支給停止に同意されたのかもしれません。
そもそも、Xさんの退職慰労年金について、株主総会決議は平成11年6月ですが、そうすると、そのころには、Y銀行は大きな不良債権を抱えている状態に陥っていたわけです。
また、Xさんは、平成2年から平成11年6月まで、Y銀行の常務取締役として、幹部だった方のようです。
平成11年には、前記のとおり、既に、不健全な状態であったにもかかわらず、退職慰労年金の決議を行ったのか? 不思議です。
2 第1審は、Xが勝訴、第2審は、Xが敗訴、最高裁(第3審)は、原判決を棄却して、原審に差し戻しになりました。
最近、最高裁が、第2審の判断について、文句をいうことが多くなったように思います。昔は、無口な最高裁でしたが、今は、大変おしゃべりな最高裁になっています。
3 最高裁の判旨は以下のとおりです。
被上告人の取締役に対する退職慰労年金は、取締役の職務執行の対価として支給される趣旨を含むものと解されるから、会社法361条1項にいう報酬等に当たる。
↓
本件内規に従って決定された退職慰労年金が支給される場合であっても、取締役が退任により当然本件内規に基づき退職慰労年金債権を取得することはなく、被上告人の株主総会決議による個別の判断を経て初めて、被上告人と退任取締役との間で退職慰労年金の支給についての契約が成立し、当該退任取締役が具体的な退職慰労年金債権を取得するに至るものである。
↓
被上告人が、内規により退任役員に対して支給すべき退職慰労金の算定基準等を定めているからといって、異なる時期に退任する取締役相互間についてまで画一的に退職慰労年金の支給の可否、金額等を決定することが予定されているものではなく、退職慰労年金の支給につき、退任取締役相互間の公平を図るために、いったん成立した契約の効力を否定してまで集団的、画一的な処理を図ることが制度上要請されているとみることはできない。
↓
退任取締役が被上告人の株主総会決議による個別の判断を経て具体的な退職慰労年金債権を取得したものである以上、
その支給期間が長期にわたり、その間に社会経済情勢等が変化し得ることや、その後の本件内規の改廃により将来退任する取締役との間に不公平が生ずるおそれがあることなどを勘案しても、
退職慰労年金については、上記のような集団的、画一的処理が制度上要請されているという理由のみから、本件内規の廃止の効力を既に退任した取締役に及ぼすことは許されず、その同意なく上記退職慰労年金債権を失わせることはできない
以上から、最高裁は、内規の変更を理由に退職慰労年金を失わせることはできないとして、黙示的な合意の有無や、事情変更の原則の適用の有無等について審理を尽くさせるために、原審に差し戻しました。
なお、金融法務事情の解説では、企業年金の種類について整理されていました。私自身、大変参考になったので、紹介させていただきます。
①適格退職年金
平成24年3月までに新たな制度に移行または廃止予定
②厚生年金基金
厚生労働大臣の認可を受け、企業とは別の法人格を持った基金を設立した上で、基金において、厚生年金の代行部分および加算部分を含む年金資金を管理、運用し、年金給付を行うもの
※りそな銀行年金訴訟
③規約型確定給付企業年金
労使合意による年金規約に基づき、企業が生命保険会社等との間で契約を締結し、企業外で年金資金を管理・運用して年金給付を行うもの。規約の改正には過半数代表者等の同意を得た上で厚労大臣の承認が必要
※NTT年金訴訟等
④基金型確定給付企業年金
厚労大臣の認可を受け、企業とは別の法人格を持った企業年金基金を設立した上で、基金において年金資金を管理・運用し、年金給付を行うもの。厚生年金の代行は行わない。
⑤企業型確定拠出年金
企業が毎月、加入者への年金給付のための掛金を拠出し、それを元手に加入者が自分で運用商品を選択の上資産運用を行い、その運用結果に応じた年金額を受けとるもの。運用によるリスクは、加入者が負担するので、運用利回り低下等による減額という問題は生じない)
⑥自社年金
法令上の根拠によらず、各企業が独自に制度を設計して運営する年金制度。従業員または事業主が掛金を拠出し、事業主等がこれを運用して約定利回りで計算した給付金を一定期間年金として支払うというのが一般的である。
※早稲田大学年金訴訟、松下電器年金減額訴訟
いろんな企業年金があるのですねえ・・・
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