【消費者法】 特定の商品の先物取引につき、委託玉と自己玉とを通算した売りの取組高と買いの取組高とが均衡するように自己玉を建てることを繰り返す取引手法を用いている商品取引員の従業員が、信義則上、専門的な知識を有しない委託者に対して負う説明義務 最高裁平成21年12月18日判決
判例時報No2072号(6月1日号)で紹介されていた最高裁平成21年12月18日判決です。
判例時報(14ページ以下)によれば、事案は以下のとおりです。
1 Xは、Y1との間で商品先物取引委託契約を締結し、これに基づき、平成17年6月14日から同年11月15日まで、Y1に委託して、東京工業品取引所の白金の商品先物取引を行い、その結果、Xは合計約680万円の損失を被った。
Y1は、少なくとも、右取引期間中、平成18年4月限及び6月限の白金について、それぞれ委託玉(商品取引員が顧客の委託に基づいてする取引)と自己玉(商品取引員が自己の計算をもってする取引)とを通算した売りの取組高と買いの取組高とが均衡するように自己玉を建てることを繰り返していた(本件取引手法)。
そして、本件取引手法が用いられると、取引が決済される場合、委託玉全体と自己玉とに生ずる結果が、一方に利益が生ずるなら他方に損失が生ずるという関係にあり、この意味で、委託者全体と商品取引員との間には利益相反の関係があった。
2 最高裁判決
最高裁は、専門的な知識を有しない委託者の投資判断は、商品取引員から提供される情報に相応の信用性があることを前提にしているとした上で、
本件取引手法には、委託者全体の総損金が総益金より多くなるようにするために、商品取引員において、故意に、委託者に対し、投資判断を誤らせるような不適切な情報を提供する危険が内在しており、商品取引員が提供する情報一般の信用性に対する委託者の評価を低下させる可能性が高く、委託者の投資判断に無視することのできない影響を与えるなどとして、
少なくとも、特定の商品の先物取引について本件取引手法を用いている商品取引員が専門的な知識を有しない委託者から当該特定の商品の先物取引を受託しようとする場合には、当該商品取引員の従業員は、信義則上、その取引を受託する前に、委託者に対し、その取引については、本件取引手法を用いていること及び本件取引手法は商品取引員と委託者との間に利益相反関係が生ずる可能性の高いものであることを十分に説明すべき義務を負うと判断しました。
3 ときおり、商品先物取引などの相談依頼を受けることがありますが、やはりにわか勉強では太刀打ちできない分野の1つですね。一昔前は、代理人にとっては不勉強な分野でも、優秀な裁判官が、釈明などで善導していただけましたが、最近の裁判所の中には余り釈明を行使しない場合があり、代理人が不勉強のままだと弁護過誤になりかねない状況が増えているように思われます。
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