【行政】 固定資産評価基準及び市の評価要領に基づき宅地の価格に比準する方法によって決定された市街化区域内の農地等の価格につき、当該区域が市街化区域としての実態を有していないことのみを理由として上記価格が適正な時価を上回るとした原審の判断に違法があるとされた事例 最高裁平成21年6月5日判決
判例時報No2069号(5月1日号)で紹介された最高裁平成21年6月5日判決です。
事案を簡単に述べると、西宮市の地主さんが、平成12年度の、市街化区域内の農地や原野、雑種地について、固定資産評価基準(昭和38年自治省告示第158号。平成12年自治省告示第217号による改正前のもの)及び西宮市が同評価基準に基づいて土地を評価するために定めた西宮市土地評価要領に基づき、宅地の価格に比準する方法を用いたことについて、西宮市固定資産評価審査委員会の棄却決定を取り消すを求めた行政事件です。
なんと、平成13年に提訴され、第2審の判決は、平成18年3月という、非常な長期裁判です。
大阪高裁は、
本件区域はいまだ都市計画法7条2項にいう「おおむね10年以内に優先的かつ計画的に市街化を図るべき区域」とはかけ離れた状況にあり、一般的にはその区域内の農地、原野及び雑種地が宅地に準じた価格で取引される状況にはなく、西宮市長が決定した本件各土地の各価格はいずれも当該土地の適正な時価を上回ると認められるとして、前記各決定のうち本件各土地に係る部分は違法であると判断しました。
ところが、最高裁は、原審に差し戻ししてしまいました。
すなわち、固定資産評価基準等所定の市街化区域内の農地、原野及び雑種地の評価方法は適正な時価を算定する方法として一般的な合理性を有するものということができるから、西宮市長が決定した各価格が、固定資産評価基準等に従って決定されたものと認められる場合には、それらの定める評価方法によっては本件各土地の価格を適切に算定することのできない特別の事情が存しない限り、その適正な時価であると推認するのが相当であり、
本件区域全体の市街化の程度、見込みのみをもって直ちに、かかる特別の事情があるということはできないと判断しました。
最高裁は、本件区域全体の市街化の程度や見込みではなく、個々の農地の所在地その他の条件を具体的に検討が必要だととしたものです。
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