【消費者法】 過払い利息 (法定利息) の 発生時期
旬刊金融法務事情No1875(8月25日)号で紹介された最高裁平成21年7月17日第二小法廷判決です。
過払い利息(法定利息)の発生時期の最高裁判決が紹介されていました。
知らなかった・・・・
いつの間に・・・・
以下、判決文を引用します。
「過払金充当合意を含む基本契約に基づく継続的な金銭消費貸借取引においては、同取引におり発生した過払金返還請求権の消滅時効は、特段の事情がない限り、同取引が終了した時点から進行するものと解するのが相当である(①最高裁平成21年1月22日第一小法廷、②最高裁平成21年3月3日第三小法廷、③最高裁平成21年3月6日第二小法廷)。」
↓そのため
これらの最高裁判決を受けて、過払金の消滅時効の起算点が取引終了なんだから、過払い利息の発生の起算点も、取引終了と考えるべきと、サラ金から主張されていました。
↓ところが
最高裁平成21年7月17日第2小法廷判決は、
「貸主が悪意の受益者である場合における民法704条所定の利息は、過払金発生時から発生する」
と続けて、過払い利息の発生時期を、過払金発生時と判断しました。
胸がすくような判決です。本当にうれしいです。
もともと、最高裁平成21年3月3日第三小法廷の判決も、過払金返還請求権の消滅時効の起算点を過払金発生時であるとした原判決を破棄した上で、過払金発生時からの民法704条所定の利息を付して請求認容の自判をしています。
また、最高裁平成21年3月6日第二小法廷の判決も、過払い利息を付した第一審判決を是認して、控訴棄却の自判をしています。
この流れに沿うものでありますが、今回は、はっきりと述べた点で大きい意義を有するものではないかと考えます。
ただし、理由ははっきり述べていません。
旬刊金融法務事情の解説には、理由を3つ紹介していましたので、そのまま引用します(P68)。もっとも、これまで理由づけによく使われている内容です。
① 民法704条の文言は、単に「利息」としており「遅延利息」ないし「遅延損害金」とはしていないこと
②仮に履行期の到来が同条所定の利息の発生要件とされるのであれば、同条前段は、履行期を経過して履行遅滞に陥れば遅延損害金を付加して返還しなければならないという自明のことを注意的に規定したにすぎないということになり存在意義に乏しいこと
③悪意の受益者である貸金業者は取引継続中から過払金を運用することが可能であり、実際にもこれを利息制限法の制限を上回る利率で運用して利益を得ていたと思われるから、取引終了前からの法定利息を付加して返還させたところで、実質的な公平を失することはないこと
ところで、最近は、どの業者も、少し前と比べて、示談で返還してくれる元本に対する率が相当程度下がっており、提訴を余儀なくされる案件がものすごく増えています。
また、譲渡会社の経営がひどく「債権」譲渡を受けた譲受会社が、過払金の支払いを拒むケースがここ数カ月異常といえるくらい増えたように思います。このような場合、譲渡会社は事実上破綻、あるいは、休眠状態となっていることから、まだ余裕のある譲受会社に過払金支払い義務を承継したとして、提訴することになるのです。
巧妙な会社分割の手法を使う業者もあります。
他方で、過払い金を含む任意整理のご相談は、毎日のようにあります。年々、回収が難しくなっています。
このブログを読んで、迷った方は、すぐに、弁護士にご相談された方がいいと思います。来年になると、さらに厳しい状態になることが予想されますから。
ただし、最近、過払い金回収を広告などで大量に受ける法律専門家も少なくないですが、他方で、トラブルも少なからず発生しており、どこの弁護士に依頼されたらいいのか判断に迷うことが少なくないと思います。
気をつけていただきたいのは、
まず、実費を含む弁護士費用の確認
利息制限法に引きなおした金額をきちんと教えてもらえること
勝手な和解をしないようくぎを刺しておくこと
快く裁判も行ってもらえること
示談書はきちんともらえるのか確認しておくこと
そして、弁護士による説明があること
が、ポイントではないかと思います。
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