過払利息(法定利息)の発生時期
今日、うまれて初めて、弁護士さんの事務所によるTVコマーシャルをみました。若い女性が多重債務者の親族らしい方の心配をしているような内容でしたが、びっくりです。この前は、司法書士さんの事務所によるTVコマーシャルをみましたが、一瞬、サラ金さんのコマーシャルではないかと錯覚してしましました。
東京や大阪の地下鉄には、過払金を取り戻す広告に溢れていますが、どんどん倒産したり廃業したりしている所もあるため、依頼人と後日トラブルにならないのか心配です。
それはさておき、今日は、過払利息の発生時期についてのお話です。
最高裁平成21年1月22日判決は、過払金の消滅時効の起算点を取引終了日と判断したものですが、最近、消費者金融から、その判決との「整合性」と称して、過払利息(法定利息)の発生時期も、取引終了日であると主張してくることが、非常に多くなりました。
最高裁は、過払金充当合意を含む基本契約に基づく継続的な金銭消費貸借取引において、過払金返還請求権の消滅時効の起算日を同取引が終了した時点と判示しました。その根拠は、過払金充当合意の存在におり取引継続中に借主が貸金業者に対して過払金の返還請求を行使することが想定されていないことをあげています。
サラ金は、過払金充当合意の存在する当事者間において、取引終了以前には過払金の返還請求権の行使が想定できないという点は、最高裁判決のような過払金の不当利得返還請求権の消滅時効が問題となる場面と、不当利得返還請求権の法定利息の発生時期が問題となる場面とで、何ら異なるものではない と主張してくることがあります。
そして、大変残念なことですが、消費者金融の主張を認める高裁判例も出ているようです。
例えば、札幌高裁平成21年4月10日判決は、
(判決書の原典不見当であるため、正確かどうかはわかりませんが・・)
民法704条の利息は、悪意の受益者が受けた利益に付して返還すべきものであるから、利息の起算点となるのは、不当利得返還債務の弁済期からであると解される。
過払金充当合意を含む基本契約に基づく継続的な金銭消費貸借取引において、その取引の終了前は、悪意の受益者が受けた利益、すなわち、過払金充当合意を含む基本契約に基づく継続的な金銭消費貸借取引において、その取引の終了前は、悪意の受益者が受けた利益、すなわち、過払金が発生しても、その行使に法律上の障害があるから、過払金の弁済期は取引終了の日の翌日であると解される。
従って、上記取引の継続中は、たとえ過払金が発生しても、これに利息を付した上で、その後の借入金の元本に充当することはできない
と判断しました。
最高裁平成21年1月22日判決以前にも、過払利息の発生時期を、取引終了時と考えた高裁判決があります。相手方は、この高裁判決も金科玉条のように用います。
大阪高裁平成20年4月18日判決(裁判官・若林諒・小野洋一・冨田一彦)です。原典は、兵庫県弁護士会の判例検索でみることが可能です。
この判決は、基本契約に基づく継続的金銭消費貸借契約において、契約当事者間に過払金充当合意が存在することを認定した上で、
過払金の不当利得返還請求権の金額や内容は、後の貸付への充当が行われないこととなる取引終了日以降に確定するのであり、当該時点までは金額や内容が不確定浮動的であって、後の貸付への充当の有無、充当額等により変動することが予想されるから、利得の金額や内容も不確定浮動的であり、これにつき利息を付して返還させることは、当該利息の金額や内容自体不確定浮動的である上、不当利得制度を支える公平の原理をも考慮すると、不相当である
法定利息がつくのは、基本契約に基づく一連の取引が終了し、過払金返還債権の金額や内容が確定した時点と判断しました。
その他、地裁レベルの判決として、山口地裁宇部支部平成21年2月25日判決があるようですが、残念ながら、確認できていません。
ほんの少し前は、法定利息の発生時期については、ほとんど問題にならず、むしろ、過払金返還請求権の消滅時効の起算点はいつかという形で問題になっていました。
最高裁が今年の1月22日に、過払金返還請求権の消滅時効の起算点を、取引終了時説を採用したことにより決着(サラ金不利)がついたので、消費者金融側は、戦いの舞台を、今度は、過払い利息の起算点はいつかという問題提起を行い、消費者側弁護士や司法書士と激しい戦いを繰り広げています。
この論点については、残念ながら、現在、あまり文献がありません。
私も、試行錯誤を重ねて、準備書面を作成しています。あまり人に公表できるものではないので、早く、解説書がでればいいなあと思います。
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