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2009年4月18日 (土)

【金融・企業法務】 ①金融機関の預金者に対する預金口座の取引経過開示義務の有無、②共同相続人の1人が被相続人名義の預金口座の取引経過開示請求権を単独で行使することの可否 (最高裁平成21年1月22日)

 旬刊金融法務事情No1864(4月15日)号で紹介された最高裁判決です(平成21年1月22日)。

 最高裁の判断は以下のとおりです。

① 預金契約は、預金者が金融機関に金銭の保管を委託し、金融機関は預金者に同種、同額の金銭を返還する義務を負うことを内容とするものであるから、消費寄託の性質を有するものである。

 しかし、預金契約に基づいて金融機関の処理すべき事務には、預金の返還だけでなく、振込入金の受入れ、各種料金の自動支払、利息の入金、定期預金の自動継続処理等、委任事務ないし準委任事務(委任事務等)の性質を有するものも多く含まれている。

 委任契約や準委任契約においては、受任者は委任者の求めに応じて委任事務等の処理の状況を報告すべき義務を負うが、これは、委任者にとって、委任事務等の処理状況を正確に把握するとともに、受任者の事務処理の適切さについて判断するためには、受任者から適宜上記報告を受けることが必要不可欠であるためと解される。

 このことは預金契約において金融機関が処理すべき事務についても同様であり、預金口座の取引経過は、預金契約に基づく金融機関の事務処理を反映したものであるから、預金者にとって、その開示を受けることが、預金の増減とその原因等について正確に把握するとともに、金融機関の事務処理の適切さについて判断するために必要不可欠であるということができる。

 したがって、金融機関は、預金契約に基づき、預金者の求めに応じて預金口座の取引経過を開示すべき義務を負うと解するのが相当である。

②そして、預金者が死亡した場合、その共同相続人の1人は、預金債権の一部を相続により取得するにとどまるが、これとは別に、共同相続人全員に帰属する預金契約上の地位に基づき、被相続人名義の預金口座についてその取引経過の開示を求める権利を単独で行使することができるというべきであり、他の共同相続人全員の同意がないことは上記権利行使を妨げる理由となるものではない。

③上告人は、共同相続人の1人に被相続人名義の預金口座の取引経過を開示することが預金者のプライバシーを侵害し、金融機関の守秘義務に違反するとの主張をするが、開示の相手方が共同相続人にとどまる限り、そのような問題が生ずる余地はないというべきである。

④なお、開示請求の態様、開示を求める対象ないし範囲等によっては、預金口座の取引経過の開示請求が権利の濫用に当たり許されない場合があると考えられるが、被上告人の本訴請求について、権利の濫用に当たるような事情はうかがわれない。

 今回の最高裁判決は、金融実務に与える影響は大きいようで、旬刊金融法務事情・リーガルNAVIでも、大手信託銀行の担当者が、守秘義務の緩和に一抹の不安を感じないわけではないと述べておられます。

 遺産分割事件を扱う田舎弁護士にとっては、大歓迎すべき判決なのですが・・・

 

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