励みになります。クリックお願いします。<(_ _)>

  • にほんブログ村 士業ブログ 弁護士へ

<(_ _)>

  • 弁護士ドットコム|無料法律相談・弁護士/法律事務所検索ポータル

書籍紹介(企業法務・金融)

書籍紹介(不動産・建築)

書籍紹介(法律)

« 2009年2月 | トップページ | 2009年4月 »

2009年3月29日 (日)

【交通事故】 日本交通法学会 人身賠償補償研究会

 私は、日本交通法学会にも所属しており、同会主催で人身賠償補償研究会が日弁連会館(東京)で開催されましたので、参加させていただきました。

 報告者は、東京地裁の民事27部の裁判官3名で、同部の最近の判決についてというテーマでした。

 A裁判官は、27部の状況や事件の動向のほか、①飲酒運転事故について共に飲酒した後に同乗した者の責任を肯定した事例(平成20年9月4日)、②いわゆる被害者側の過失の法理の適用が否定された事例(平成20年3月11日)について、ご解説いただきました。

 B裁判官は、人身傷害補償保険契約にかかる処理についての考察ということです。過失相殺ある場合の代位の取り扱いについては、東京地裁平成19年2月22日、名古屋地裁平成19年10月16日、大阪地裁平成19年12月10日判決で、東京・名古屋・大阪の専門部が、訴訟基準差額説を採用したことから、今後は、訴訟基準差額説が主流となったといえるでしょう。なお、このブログでも、紹介した東京高裁平成20年3月13日判決は、訴訟基準差額説に立ち、充当を、積極損害、消極損害、慰謝料の損害項目ごとにわけて行っていますが、項目ごとにわけて充当することが自明とまではいえないのではないかということのようで、充当については、この考え方をとっていないようです。労災保険のように項目ごとに法律で決めているのとは異なる、現に自賠責保険は項目ごとに充当していないではないかと述べられていました。私なんて、東京高裁の判断ですから、実務はこれで動くのかなと思いましたが、やはり、最高裁判決でもない限り、必ずしもそのようにはならないようです。

 C裁判官は、故意免責に関する2つの最高裁判例を前提に、具体的な場合にどうなるかということについて、ケースごとに解説していただきました。基準は、故意によって生じた損害の保険契約当事者の意思解釈の問題ということであり、傷害と死亡とでは、被害の重大性において質的な差異、損害賠償の範囲において大きな差異があることを、視点に、意思解釈により判断されるということのようです。

 昨年の研究会にも参加させていただきましたが、あのころは、桜満開でした。今年は、まだあまり咲いていませんでした。cherryblossom

 どうしても地方に引っ込んでいると、IT社会とはいえ、情報に疎くなります。日弁連会館を訪れる目的の1つは、書籍の購入です。地下1階に、法律書専門の本屋さんがあり、重宝しています。ただし、定価販売だし、いくら買っても、送料代はばっちりとられてしまいますが・・・明日、大量に本が事務所に届くとは思います。

2009年3月25日 (水)

【弁護士研修】 検察審査会審査補助員・指定弁護士の職務についてのライブ研修(松山)

 検察審査会法の改正により、平成21年5月21日から、弁護士も審査補助員や指定弁護士として検察審査会制度に大きく関わることになります。

 愛媛弁護士会から、審査補助員候補者名簿、指定弁護士候補者名簿への登録に同意したこともあって、日弁連主催のライブ研修を、愛媛弁護士会会館で受講してきました。

ただ、受講されているのは、4、5人程度で、最後まで残っていたのは、私を入れて3人程度で、些か寂しい限りでした。

 検察審査会に対して、代理人として、審査申し立てを行ったのは、過去何件かありますが、そのうち、1件は、「不起訴不当」の議決をいただき、マスコミでも少しだけとりあげていただきました。

 ただ、再捜査?の結果、やはり不起訴ということになり、「なんだったんだ」という気持ちを大きく抱いたことがあります。

 今回、検察審査会で、「起訴相当の議決」を行った場合、検察官は再捜査・再処分を行うのですが、検察官が不起訴処分や一定期間内に公訴提起しなかった場合には、検察審査会で第2段階の審査に入り、起訴すべき旨の議決を行った場合には、議決書謄本の送付を受けた裁判所が検察官役の弁護士(指定弁護士)を指定し、指定弁護士が公訴を提起して、公判に立ち会いして、公訴の維持にあたるということになりました。

 似たような制度に付審判請求の場合の指定弁護士制度がありますが、指定弁護士をなさった弁護士の先生の反省談をうかがうことができ、大変参考になりました。

 ところで、最近5年間における庁別審査事件数調査表も載っていましたので紹介します。

 新受件数でいうと今治検察審査会は、

 H15 12件(4件) H16 6件(1件) H17 6件(0件) H18 6件(5件) H19 2件(4件) のようです。

 ( )内は、西条検察審査会の新受件数です。

 検察審査会法なんて、まずほとんど目にすることはありませんが、結構、おもしろいことが書いていますね。

 例えば、検察審査会って、検察事務の改善に関する建議又は勧告に関する事項も、掌るみたいです(2条1項2号)。具体的にどんなことしているのでしょうか?

 また、検察審査会は、3月、6月、9月、12月に開催されることになっているようです(21条1項)。

 しかし、次から次に法令が改正し、新しい制度が誕生するため、その知識の習得は、手間がかかり、本当にいやになりますね(本当はこんなこと言ってはいけないんだけどね)。会社法の改正は大ショックでしたが、近く、民法の改正が・・・・ crying

 改正されると、本代も馬鹿にならない額になりますよね。

 「経験」だけで生きていける時代ではなくなりつつありますし・・・

 頑張りたいと思います。 

2009年3月20日 (金)

【急募】 法律事務所事務員さん 募集 (今治) 

pen 急きょ、当事務所(今治)で、事務員職員の募集することになりました。長期勤続によるキャリア形成が可能な方が対象となります。

 【待遇】 pencil

 基本月額 15万円 (試用期間中は14万5000円)

 交通費別途、奨励給あり 賞与(前年度実績2ヶ月~6ヶ月)

 社会保険完備、退職金共済加入、あんしん財団共済加入

 【採用条件】(希望) japanesetea

 大卒 年齢は25歳位まで 性別不問

 四輪車運転免許必要 PC(ワード、エクセル)が使用できること

 筆跡が雑でないこと 書面を作成することが苦手でない方

 今治市内居住の方  数字が苦手でない方

 【勤務時間】 flair

 平日 午前9時から午後5時15分

 土曜日(隔週) 同上

 興味がある方は、3月27日までに、当事務所にご連絡ください(電話番号 telephone0898-23-2136 担当八木)

2009年3月15日 (日)

【交通事故】 低髄液圧症候群についての裁判例(消極) (神戸地裁平成20年11月6日)

 自保ジャーナルNo1774号(3月12日号)で紹介されている裁判例です。

 まず、低髄液圧症候群については、いまだその病態や診断基準が確立されていない疾患であることから、その認定は慎重に行わざるをえず、現時点では、国際頭痛分類の診断基準日本神経外傷学会の診断基準がほとんど同じであることから、これらの診断基準に基づいて認定を行うのが相当であるとして、低髄液圧症候群の診断基準を示しています。

 その上で、あてはめをしています。

 まず、起立性頭痛は、低髄液圧症候群の特徴的な症状であるが、原告の訴えている主な自覚症状は、頸部痛であり、起立性頭痛ではないこと

 次に、造影MRI検査による硬膜の増強についても、N医師が原告の脳MRI検査画像につき、硬膜下腔の拡大よりはくも膜腔の拡大所見があり、かかる所見は頭蓋内の髄液の増加を示すものであることから、低髄液圧症候群と矛盾するとの意見を述べていることなどから、造影MRI検査による硬膜の増強があるとは認められないこと

 さらに、原告の髄液圧は80㎜水柱と、診断基準の60㎜水柱を上回っていること

 RI脳槽・脊髄腔シンチグラフィ検査において早期(3時間内)の膀胱集積所見がみられてはいるが、脊髄からの髄液の正常の吸収を無視している事などの理由から低髄液圧症候群の診断基準とすることに批判的な見解もあることから、原告に早期膀胱集積所見がみられたことのみをもって、髄液の漏出があったと認めることはできない

 以上の理由から、原告の症状及び画像所見等は、国際頭痛分類の診断基準も日本神経外傷学会の診断基準もみたさないとして、原告が低髄液圧症候群の後遺障害を負ったと認めることはできないと判断しました。

 このところ、低髄液圧症候群については、消極的な裁判例が続いています。

2009年3月12日 (木)

【行政】 滞納地方税の徴税経緯を記録した個票が、つくば市情報公開条例で定める非公開情報に該当し、実施機関には部分公開も義務付けられないとして、個票についてされた非公開決定の取り消し請求が認められなかった事例(東京高裁平成20年3月12日)

 判例タイムズN01287(3月15日)号で紹介されていた裁判例です。

 Xらが、Y市長に対し、Y市情報公開条例に基づいて、滞納地方税の徴税経緯を記録した個票の公開を求めたところ、Y市長が、本条例9条1号(個人情報)、2号(法人等利益侵害情報)、6号(事務事業執行情報)、7号(法令秘情報)に該当するとして、その全部を非公開とする決定をし、その後、本件決定を取り消して、記事欄の日付部分以外を非公開とする裁決をしたことから、裁決の取り消しを求めて、提訴された事案です。

 原審は、記録台帳のうち納税義務者欄は本件条例9条1項1号、2号、7号に該当すること、記事欄、添付資料は同項6号、7号に該当するから、本件裁決に違法はないとして、Xらの請求を棄却しました。

 本判決は、本件条例9条2項では、この条例で定める非公開情報に該当する独立した一体な情報をさらに細分化し、その一部を非公開とし、その余の部分には非公開事由に該当する情報は記録されていないものとみなして、これを公開することまでは実施機関に義務付けていないと解した上、

 記事欄、添付資料は、納税義務者欄の記載と別の独立した情報ではなく、これと統合して一体的な情報をなして、本件条例9条1項1号、2号、6号、7号で定める非公開情報に該当するから、実施機関に記事欄、添付資料の一部公開を義務付けることはできないとして、

 Xらの請求を棄却しました。

 情報公開については、私も余り自信がありませんが、最高裁平成13年の判決で、実施機関には、非公開情報に該当する独立した一体の情報をさらに細分化して部分公開する義務はなく、裁判所も同様の理由では全部非公開決定を取り消すことはできないと判断しています。

 この判例からすれば、独立した一体な情報が非公開情報にあたる以上、部分公開を義務付けることはできないということになりますので、東京高裁は、当たり前のことを述べただけということになります。

 私も、今治市の情報公開審査会のメンバーであるため、勉強はしようと思いますが、なかなか、本格的に学習するには至っていません。happy01

  

2009年3月11日 (水)

【行政】 授業の休み時間中に発生した特別支援学級に在籍する当時8歳の自閉症児の転落負傷事故につき、担任教諭の指導に過失を認め、市に損害賠償を命じた事例(東京地裁八王子支部平成20年5月29日)

  判例タイムズNo1286号(3月1日号)で紹介されている裁判例です。

 X1は、自閉症児であり、平成16年11月当時、被告のY市の設置する小学校の特別支援学級の3年生でした。

 体育の授業開始前の休み時間中、X1が体育館内にある倉庫に出入りするなどしていた様子を目撃したX1の担任教諭であるY3から、「体育倉庫に入ってはいけません」と注意を受けたにもかかわらず、X1は再度別の倉庫に入っていきました。

 これをみたY3は、X1の入った倉庫の扉をあけ、倉庫内にいたX1に対し、「倉庫に入ってはいけないと言ったでしょう。そんなに入っていたかったら、入っていなさい。」と叱責した上、倉庫の扉を閉め、扉の前でX1が出てくるのを待ったが、X1が出てこなかったので、扉をあけたところ、X1の姿はありませんでした。

 その後、X1は、顔面から出血しながら学校1階の昇降口から校舎内へとはいってきたところを発見されました。

 裁判所は、

 まず、Y3による閉じこめ行為については、X1が倉庫の窓から地面に転落したとの事実を認定した上で、特別支援学級の担任教諭は、障害を持つ児童1人1人の行動の特質に対し日頃から注意し、自ら危険行為に出るおそれのある児童については、かかる結果の発生を回避すべく十分な指導や配慮をすべき義務がある

 Y3は、本件事故当時特別支援学級の担任となってから5年弱の経験を積み、その間、特別支援学級での教育指導に特化した研修を受け、毎年自閉症児や自閉症的傾向を持つ児童を指導してきたのであるから、X1に自閉症児の特徴である危険認知能力や判断能力が乏しい面があることを認識していたといえ、Y3は、Y3の閉じこめ行為によってX1に不安や混乱が生じて、X1が倉庫から脱出するために窓から外に出ることは十分に予見可能であったと判断して、Y3の過失を認定しました。

 Y市は、X1が自閉症児であることを理由に、素因減額ないし過失相殺も主張していたようですが、裁判所から一蹴されています。さすがに、子どもの場合には、抵抗がありますね。

 今回の判タには、「新民事訴訟法と法曹養成制度」と題する論文も掲載されています。現在の法科大学院制度、司法修習制度などに対する問題点を、わかりやすく整理して論じられている文章でした。

2009年3月10日 (火)

【建築・不動産】 1 信頼関係の破壊を理由とする賃貸借契約の解除が認められなかった事例 2 立退料の支払いを正当事由の補完事由として、老朽化した建物の解約申入れに基づく明渡請求が認容された事例

 判タNo1284(2月10日)号で紹介されていた裁判例です。

 地主による建物明け渡し請求訴訟ですが、主位的請求としては、借家人の占有権原の有無と信頼関係破壊(無断改築、無断使用、自動販売機の無断設置、他の賃借人の使用妨害)であり、予備的請求については、正当事由の有無でした。

 東京地裁平成20年4月23日は、

 主位的請求について、

 無断改築のみによっては、当時の賃貸人との信頼関係が、賃貸借契約の継続を困難ならしめる程度に破壊されたとまではいえない

 自動販売機設置は債務不履行にはあたるが、本件建物の利用状況に変化を与えるものではないから、当時の賃貸人との信頼関係が賃貸借契約の継続を困難にならしめる程度に破壊されたとまでは評価することはできない

 などとして、主位的請求については認めませんでした。

 予備的請求について、

 ①地主にて建物の使用を必要とする事情があること

 ②本件建物は築約80年の木造建築物であること

 ③借家人の建物使用の必要性については、

  X  < Y1~Y3

  X  > Y4

  X  =? Y5

 として、

 Y1~Y3 Y5との関係では、相当の立ち退き料の提供により、正当事由を具備し、

 Y4については、立ち退き料の提供なしに、正当事由を具備すると判断しました。

 借家人毎で正当事由をわけていますが、当然といえば当然ですね。

 

2009年3月 9日 (月)

【交通事故】 低髄液圧症候群についての裁判例(消極)

 交通事故民事裁判例集第41巻第1号で紹介されている東京地裁平成20年2月28日付け判決です。

 東京地裁は、

 ①起立性頭痛がなかったこと

 ②耳鳴りがなかったこと

 ③原告の場合、RIシンチグラフィーによっては、RIの腰部の髄液漏れは断定できるようなものではなかったこと(※判決文では具体的な内容はよくわかりません)

 ④頭部MRIにおける大脳下垂及び小脳扁桃の下垂という所見も、低髄液圧症候群の典型例における頭部MRI所見とはいえない程度の所見であること

 から、低髄液圧症候群については否定しました。

 国際頭痛学会における国際頭痛分類の診断基準を当てはめていますが、念のために、脳関髄液減少症研究会の診断基準のあてはめも検討しています。

 なお、後遺障害についても、「原告には後遺障害等級に該当する後遺障害が残存したとは認められない」とされて、消極的です。

 なかなか厳しい判決です。

 

2009年3月 6日 (金)

【弁護士考】 田舎弁護士がいる地域の弁護士需要

  田舎弁護士が住んでいる地域を管轄する裁判所(当然支部です)内では、現在、11名の弁護士が登録しています。

  管内の人口は、約18万人程度です。

 ただ、県庁所在地と隣接していることや交通の便が良いことから、県庁所在地で登録されている弁護士も、相当数おいでになっています。

 また、海運・造船の取引も多いため、大阪の弁護士さんの名前もよく裁判所の事件掲示板でみかけることも少なくないです。

 他方で、地裁一般民事事件は、過払金関係を除くと、減少傾向にある印象を受けています。離婚事件は、余り減っていないように感じます。

  私の事務所の場合には、顧問先様から顧問料や、ご紹介事件、損保会社からの事件で、現時点では、経営自体は安定していますが、ただ、過払金関係の訴訟は、昨年と比べると激減しており、他方で、執行関係が増加していおり(判決を得ても支払わないサラ金会社が増えているため)、個人の債務整理での売上げは今後は余り見込めるような状態ではありません。

 弁護士に対する需要はさほど強いものがなく、また、簡裁代理権のある司法書士の先生も活躍されておられることから、現在では弁護士の数としては十分に足りている状態です。

 ただ、国選事件等のある分野の事件については、引き受けられない方もおられ、引き受けざるを得ない弁護士の大きな負担となっています。 

 弁護士冬の時代は、都会では既に10年前から始まっていることでしょうが、田舎でも、その波が押し寄せてきたようです。「アリとキリギリス」のキリギリスにならないよう注意していきたいと思います。

 弁護士の業界も、田舎であれば食べていけるという時代ではありません。

 そのような状況なので、現在では、「一般的な」新人弁護士の募集はしておりません。

 但し、社会人経験があり、「即戦力になる方」であれば、別だとは思いますが・・・

 他の事務所でも、積極的に新人弁護士を採用しような事務所は、今年採用してしまっていることから、この地域ではないものと思われます。

 それと、最近の修習生の求職活動のやり方については、どうかな?と感じることがあります。

 数年前は、事務所訪問等をしていいのかどうかなどについて、直筆の手紙が、郵送されてきたものです。文章の内容については、一字一句チェックされているものと考えてください。私たちの仕事の中心は、書面書きなのですから。また、電話の場合でも、弁護士不在の場合には、弁護士がいる時間をきいて、改めて、電話したものです。面倒かと思いますが、これは、相手の立場になって考えられる人なのかということを試されているのです。

 そして、新旧試験を問わず、合格者数の数を大幅に増加させてしまったことや、修習期間を短縮させてしまったことから、近時登録された弁護士の資質については、よく話題に出ます。昔の修習生のように、能力については採用時に安心できるというわけではないのです。そこで、適切な自己アピールが必要です。これは、優良な顧問先を獲得するときにも役立ちます。

 ただ、昔優秀な修習生でも、自己鍛錬を怠ると、今の修習生から反面教師とされてしまいますが・・・

   

2009年3月 5日 (木)

【金融・企業法務】 振込依頼人と受取人との間に振込の原因となる法律関係が存在しない場合における受取人による当該振込みに係る預金の払戻請求と権利濫用(最高裁平成20年10月10日)

 判例時報No2026号(2月21日号)で紹介されている平成20年10月10日付け最高裁判例(第2小法廷)です。

 事案は、Xは、Y銀行に普通預金口座を開設し、Yの夫Wは、Z銀行に対して、1100万円の定期預金口座を開設していました。

 X・Wの家に、泥棒が入り、Xの普通預金とWの定期預金の通帳類を盗み、この泥棒から依頼を受けたTらが、Z銀行において、Wの定期預金を解約して、その解約金を、Y銀行のX名義の普通預金口座に振り込むよう依頼し、Xの普通預金口座に解約金が入金されました(本件振込)。

 Tらは、Y銀行において、X名義の普通預金口座から1100万円を払い戻しました(本件払戻)。

 Xは、Y銀行に対して、本件払戻にかかる預金1100万円の払戻を求めて提訴しました。

 第1審の東京地裁は、Y銀行が準占有者に対する弁済として保護されるのかという論点が中心で、Y銀行には過失があるとして、Xさんを勝たせました。

 第2審では、Y銀行は、抗弁を追加しました。

 すこしわかりにくいですが、以下のような抗弁です。

 (1)本件振込は、「誤振込」と同様に、受取人となったXにおいて、これを振込依頼人に返還しなければならない。

  ← 確かに、そうだな~

 (2)Xには、振込金相当額を最終的に自己のものとすべき実質的権利はない

  ← これもそうだな~ 元々は、Wのお金だからね。

 (3)XのY銀行に対する本件振込による預金の払戻は、権利濫用である。

  ← えっ それは結論としてはまずいのでは?

 第2審の東京高裁は、Y銀行の権利濫用の抗弁を認めました。

 その理由は、以下のとおりです。

 (1)本件振込に係る預金は、Xにおいて振込による利得を保持する法律上の原因を欠き、Xは、この利得により損失を受けた者へ、その利得を返還すべき

(2)Xとしては、本件振込に係る普通預金につき自己のために払戻を請求する固有の利益を有せず、これを振込者又は最終損失者へ返還すべきものとして保持し得るにとどまる

(3)Xの権利行使も、この返還義務の履行の範囲内に止まる

(4)この権利行使の方法は、特段の事情がない限り、自己への払戻請求ではなく、原状回復のための措置を執る方法によるべき

 という一般論を述べて、

(5)本件払戻により、Xの利得は消滅したから、Xには、不当利得返還義務の履行のために保持し得る利得も存在しない

(6)そうすると、Xの払戻請求は、固有の利益に基づくものでもないし、また、不当利得返還義務の履行手段としてのものでもない

(7)以上から、Xは、払戻を受けるべき正当な利益を欠き、権利濫用に該当する

 

 本件ケースにおいては、はっきりしたことはわかりませんが、Wの解約金が入金されたY名義の普通預金口座の権利者が誰かということも問題にされているようです。

 これについては、平成8年4月26日付最高裁で、

 振込依頼人から受取人の銀行の普通預金口座に振込があったときは、振込依頼人と受取人との間に振込の原因となる法律関係が存在するか否かにかかわりなく、受取人と銀行との間に振込金額相当の普通預金契約が成立し、受取人が銀行に対して右金額相当の普通預金債権を取得する

 と判断していることから、

 平成20年最高裁判決も、

 本件振込に係る金員は、本件振込により、本件普通預金の一部として上告人に帰属した

 と判断しています。

 とはいっても、最高裁の平成15年3月12日決定では、誤った振込があることを知った受取人が、その情を秘して預金の払戻を請求し、その払戻を受けた場合には、詐欺罪が成立すると判断していることから、

 誤振込の場合の払戻請求は、権利濫用になる場合も当然にあるはずです。

 今回の最高裁は、

(1)受取人が振込金額相当の普通預金債権を有することになる以上、その行使は、不当利得返還義務の履行手段としてのものに限定される理由はない

(2)振込依頼人と受取人との間に振込の原因となる法律関係が存在しない場合においては、「払戻しを受けることが当該振込にかかる金員を不正に取得するための行為であって、詐欺罪等の犯行の一環を成す場合など、これを認めることが著しく正義に反するような特段の事情があるときは、権利濫用にあたる」としても、受取人が振込依頼人に対して不当利得返還義務を負担しているというだけでは、権利濫用にはあたらない

 と判断しました。

 以上からすれば、払戻請求が権利濫用に該当しない場合には、金融機関に対して、払戻請求ができるということになります。

 なお、自判せずに、再度、準占有者による弁済について審理を尽くさせるために、差し戻しをしたのは、何故でしょう? 気になりますね。

2009年3月 3日 (火)

離婚弁護士の訟廷日誌 始動

  ひそかに、「離婚弁護士の訟廷日誌」を、このブログから、独立させて、立ち上げました。

  いつまで続くかわかりませんが、離婚や相続関係については、こちらの方で、書き綴っていきたいと思っています。

  よろしくお願いいたします。 o(*^▽^*)o

  

« 2009年2月 | トップページ | 2009年4月 »

2018年7月
1 2 3 4 5 6 7
8 9 10 11 12 13 14
15 16 17 18 19 20 21
22 23 24 25 26 27 28
29 30 31        

書籍紹介(労働・労災)

無料ブログはココログ