【交通事故】 人身傷害補償保険による損害填補及び代位の範囲についての考察No2
交通事故の被害者が、人身傷害補償条項付きの自動車保険契約の被保険者であり、訴訟前に人身傷害補償保険金の支払を受けた場合に、保険会社が被害者の加害者に対する損害賠償請求権を代位取得する範囲(逆に言えば、被害者がこれによって加害者に対して有する損害賠償請求権を喪失する範囲)については、最近、ホットな話題であり、このブログでも紹介しています。
(財)日弁連交通事故相談センター交通事故相談ニュースNo21に、考え方について、整理がされていましたので、ご紹介させていただきます。
① 保険者優位説
人傷保険金は、損害額のうち加害者の過失割合に対応する損害部分に充当され、保険会社(保険者)は、支払った人傷保険金と同額の金額について被害者(被保険者)の加害者に対する損害賠償請求権を代位取得し、被害者は加害者に対して、その残額の損害賠償請求権を行使し得るに過ぎないという絶対説
② 被保険者優位説
人傷保険金は、損害額のうち被害者の過失割合に対応する損害部分(加害者に損害賠償請求できない部分)から優先的に充当され、人傷保険会社は、被害者の権利行使を害さない残額(過失相殺される部分を超えた、被害者が加害者に損害賠償請求できる部分に充当される額)についてのみ、損害賠償請求権を代位取得するという差額説
③ 按分説
人傷保険金は、被害者と加害者の過失割合に応じて、過失相殺される部分と過失相殺されない部分に充当され、人傷保険会社は、支払った保険金のうち、加害者の過失相殺分に相応する損害賠償請求権を代位取得するという比例按分説
最近は、差額説が有力ですが、以下のとおり、差額の基準を巡って対立しています。
人傷基準差額説 支払われた保険金は、人傷基準損害額のうちの被害者過失部分に相当する額にててん補され、その残部について代位する
訴訟基準差額説 支払われた保険金は、訴訟において認定された被害者の損害額のうち被害者過失部分に相当する額にててん補され、その残部について代位する
(地裁レベル)
① 平成18年6月21日 大阪地裁 判タ1228号
差額説(人傷基準差額説)
② 平成19年2月22日 東京地裁 判タ1232号
差額説(訴訟基準差額説)
③ 平成19年12月10日 大阪地裁 判タ1274号
差額説(訴訟基準差額説)
④ 平成16年7月7日 神戸地裁 交民37巻4号
比例按分説
(概説)
③の裁判例のケース
(1)全体の損害額
2億3341万0887円
(2)被害者の過失部分(25%)に相当する損害額
5835万2721円
(3)人傷保険金
1530万5052円
(4)あてはめ
5835万2721円>1530万5052円
なので、訴訟基準差額説からは、保険会社は代位しない。
(まとめ)
人傷保険金の請求方法については迷うところですが、(1)先に人傷保険金全部又は一部を取得した上で加害者に損害賠償金残額を請求する方法と、(2)加害者から損害賠償金を取得した後に人傷保険金を請求する方法が考えられますが、ご解説の弁護士の方は、現時点では、(1)の方が無難ではないかと説明されていますが、ケースバイケースでしょうか?
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