励みになります。クリックお願いします。<(_ _)>

  • にほんブログ村 士業ブログ 弁護士へ

<(_ _)>

  • 弁護士ドットコム|無料法律相談・弁護士/法律事務所検索ポータル

書籍紹介(企業法務・金融)

書籍紹介(不動産・建築)

書籍紹介(法律)

« 2008年9月 | トップページ | 2008年11月 »

2008年10月31日 (金)

【交通事故】 最近の脳関髄液減少症を巡る裁判例

 外傷性低髄液圧症候群(脳脊髄液減少症)についての裁判例については、このブログでも、よくとりあげさせていただいております。

 自動車保険ジャーナルから、東京高裁「髄液漏訴訟」2判決が紹介されていました(自保ジャーナルNo1756号)。

 

民事判例編 

積極的判例

 (地裁判例)

 ① 横浜地裁・平成20年1月10日 自保ジャーナル第1727号(→控訴審東京高裁平成20年7月31日)

 (概要)

 ①の裁判例は、乗用車を運転して交差点を直進中、対抗右折乗用車に追突され、頭部打撲等から低髄液圧症候群を発症したとする事案です。裁判所は、被害者に、激しい起立性頭痛等があり、副作用の強いホルモン剤等服用しても改善しませんでしたところ、ブラッドパッチ療法で仕事ができるまで改善されたことなどから、原告は本件交通事故後に低髄液圧症候群に罹患したと認定、17ヶ月後に治癒したと認められた事例です。 

 消極的判例

 (地裁判例)

 ① 岡山地裁・平成17年1月20日 交民38巻1号107頁

 ② 神戸地裁・平成17年5月17日 交民38巻3号681頁

 ③ 横浜地裁・平成17年12月8日 交通事故判例速報478号

 ④ 横浜地裁・平成18年9月24日 自保ジャーナル1692号

 ⑤ 前橋地裁桐生支部・平成18年12月25日 自保ジャーナル1676号

 ⑥ 福岡地裁・平成19年5月17日 自保ジャーナル1692号

 ⑦ 横浜地裁相模原支部・平成19年6月26日 自保ジャーナル1698号

 ⑧ 福岡地裁田川支部・平成19年10月18日  自保ジャーナル1713号

 ⑨ 東京地裁・平成19年11月27日  自保ジャーナル1717号 ※控訴審東京高裁平成20年4月24日

 ⑩ 大阪地裁・平成19年3月14日   自保ジャーナル1717号

 ⑪ 東京地裁・平成20年2月28日 自保ジャーナル1727号(控訴中)

 ⑫ 横浜地裁・平成20年1月30日 自保ジャーナル1727号

 ⑬ 神戸地裁・平成19年4月26日 自保ジャーナル1727号

 ⑭ 静岡地裁浜松支部・平成19年12月3日(裁判官・酒井正史・矢作泰幸・神原文美) 判タNo1273号

 (概要)

 ⑨の裁判例は、日本神経外傷学会が組織した頭部外傷に伴う低髄液圧症候群作業部会の中間報告の示した診断基準が最新かつ国際頭痛分類の診断基準をふまえた客観性を有する見解であると指摘し、同基準の概要は、

 前提基準として、起立性頭痛又は体位による症状の変化があること、

 その基準に該当した場合に、

(1)造影MRIでびまん性の硬膜肥厚増強、

(2)腰痛穿刺にて低髄液圧の証明 

(3)髄液漏出を示す画像所見

のいずれかを満たすことで、低髄液圧症候群と診断し、

 更に、外傷性と診断するための条件として、

 外傷後30日以内に発症し、外傷以外の原因が否定的であること

を満たすことが必要と判断しました。

 そして、当該事案においては、これらの要件を欠き、外傷性低髄液圧症候群について、否定しました。

 ⑩の裁判例は、判旨自体はさらりとその理由を述べているに過ぎませんが、それ故に汎用性のある判例ともいえます。

 原告の脳脊髄液減少症の後遺障害に対する主張に対しては、

 まず、脳脊髄液減少症は未だ病態や診断基準が確立されていない疾病であるため、その認定にあたっては慎重に行う必要があるとして、

 (1)脳脊髄液減少症の特徴的な症状である起立性頭痛や特徴的な所見である硬膜下腔の拡大、小脳扁桃の下垂などを認めるに足りる証拠はないこと

 (2)RI脳槽脊髄腔シンチグラフィでの早期の尿中集積所見や、MRミエログラフィによる胸椎部での高信号の所見については、診断基準に採用することに批判的な立場もあることに鑑みれば

 現状においては、原告が脳脊髄液減少症に罹患したと認めることはできない」と判断しました。

  ⑪の裁判例は、乗用車を運転、停車中に乗用車に追突されて、頸椎捻挫等から低髄液圧症候群を発症したと主張される29歳男子につき、頭痛訴えが事故1年4か月までに1回であり、国際頭痛学会の低髄液圧症候群からも耳鳴りの訴えが1年4か月後であり、典型的症状の起立性頭痛がなく、原告が低髄液圧症候群を発症したと認めるに足りる証拠はないとして否認されました。

 原告は、医師が、(1)原告が本件事故後により難治性の後頸部痛及び頭痛が持続し、平成15年10月23日の初診時にも、上記症状を訴え、夕方になると症状が悪化すると訴えたこと、(2)頭部造影MRIにより円蓋部での大脳の下垂及び小脳扁桃の下垂が認められたこと、(3)同年11月25日でのRI脳槽シンチグラフィーにより髄液の腰部での早期漏出が認められたことを根拠に、低髄液圧症候群であると確定診断されたことを理由に、低髄液圧症候群を主張していました。

 ⑫の裁判例は、自転車を押して歩行横断中、停車しようとした乗用車に軽く衝突されて転倒、腰部打撲等から約1年の症状固定後低髄液圧症候群を発症、12級神経障害を残したとして主張された案件です。裁判所は、発症は、2年後であり、特徴的な症状である継続的な頭痛がほとんどない他、更年期障害、心因的症状の重複で、低髄液圧症候群は本件事故との因果関係はないと否認しました。

 ⑬の裁判例では、裁判所は、7歳男子の低髄液圧症候群等は頭を打っておらず、3日後運動会参加、バットで頭部打撲等から原因不明とし事故との因果関係を否認しました。

 ⑭の裁判例では、鑑定人が、低髄液圧症候群の発症を認めていたにも拘わらず、裁判所は、(1)低髄液圧症候群につき、病態が明らかでなく、診断の際には、頭痛等の多彩な症状と、画像診断(頭部MRIによる髄液減少所見及びRI脳槽シンチグラフィー、腰痛MRミエログラフィーによる髄液漏出所見)とが重要であるとされているものの、いまだ診断方法は確立されていないという医学的知見を前提に、(2)本件において、頭部MRIにおる髄液減少所見及び腰痛MRミエログラフィーによる髄液漏出所見は認められないこと、(3)Xの症状は、低髄液圧症候群の症状に一致するものの、外傷性頸部症候群の症状とも類似しており、外傷性頸部症候群である可能性を払拭できないこと、(4)A医師とは別の医師が、Xの症状はXの低血圧に由来すると診断していることなどから、A医師の診断及び鑑定結果は採用できないとして、低髄液圧症候群の発症を認めませんでした。※1鑑定が肯定されていても、判決は否定しています。※2治療費についても、症状固定後の治療費として原則として因果関係を否定としながらも、病院が低髄液圧症候群と診断したことなどを理由に、ブラッドパッチなどの治療費を認めています。これって、加害者側保険会社は、病院に請求できるのでしょうかね。 但し、他方で、寄与度減額として3割を減じています。

 (高裁判例)

 積極的判例 

 ① 東京高裁・平成20年7月31日 自保ジャーナルNo1756号

 (概要)

 事案は、横浜地裁平成20年1月10日のとおりです。加害者側が、原審及び控訴理由書にて、「髄液減少症」が発症したことを認めてしまい、後日、自白を撤回しようとしたものの、撤回の要件を欠くとして、自白した状態で認定されてしまったなんとも理解しがたいような内容です。

 解説者も、杉田雅彦弁護士も、「本判決はX・Y双方において医学的各争点について十分に争われた事案ではないので、先例的な価値は余りない」と説明されています。 

 消極的判例

 ① 福岡高裁・平成19年2月13日 判例時報1972号、自保ジャーナル1676号、交通事故判例速報489号

 ② 東京高裁平成20年4月24日 自保ジャーナルNo1756

  (概要)

 ①の裁判例は、 (1)追突事故により低髄液圧症候群、外傷性脊椎髄液漏の傷害を受けたとの被害者の主張について、ⅰ右傷害の最も典型的な症状である起立性頭痛が見られないこと、ⅱブラッドパッチ療法では症状が余り改善しなかったこと、ⅲRI脳槽造影では脊椎髄液漏の所見が見出せなかったことなどを理由に、被害者に脊椎髄液漏があるとするにはなお合理的な疑問があるとして、その主張を認めなかったものの、

 (2)被害者主張の治療費のうち、低髄液圧症候群の関係の治療費は事故と因果関係が認められない筋合いではあるが、低髄液圧症候群との診断をし、その治療をしたのは医療機関側の判断と責任によるものであるから、被害者が現にその関係の治療を支払っている以上、それを安易に減額することは相当ではないとして、被害者の主張する治療費のほぼ全額を損害と認めたものの

 他方で、(3)右被害者の頸椎捻挫の症状が長期化した背景には、本人の心因的要素があると考えざるを得ないとして、損害の公平負担な観点から民法722条を類推して、その損害のうち治療費と文書料を除いた額の50%を減ずるべきとしました。

 

 ②の裁判例は、「事案の概要」によれば、「当審においては、本件事故により低髄液圧症候群が発症したとの点に関する原判決の判断(消極)については敢えて争わず」と記載されていることから、控訴審で、低髄液圧症候群の発症については、十分な議論は尽くされていないようです。

刑事判例編

 消極的判例

 ① 平成20年4月21日 福岡地裁 自保ジャーナル1742号、交通事故判例速報No507

 ② 平成20年5月19日 静岡地裁 自保ジャーナル1742号、交通事故判例速報No507 

  

(概要)

 ①の裁判例は、検察官が「加療約5年以上の頭痛、頸部痛、視力低下及び集中力・記憶力低下などの障害を伴う外傷性脳脊髄液減少症の傷害」として起訴した事案ですが、裁判所は、検察官指摘の他覚的所見については、医師の意見がわかれていること等に鑑み、他覚的所見を全て否定し、客観性に疑問が残るとして、被害者が低髄液圧症候群であることを否定しました。

 ②の裁判例は、検察官が「加療約2185日を要する脳脊髄液減少症等の傷害」として起訴した事案ですが、裁判所は、国際頭痛分類の低髄液症候群の診断基準にも、新たに提唱された脳脊髄液減少症の診断基準にも該当しないと判示して、従来の低髄液圧症候群であることも否定しました。

にほんブログ村 士業ブログ 弁護士へ

2008年10月29日 (水)

【金融・企業法務】 破産管財人の源泉徴収義務 

  判例タイムズNo1276(11月1日)号で紹介された大阪地裁平成20年3月14日の判例です。

 事案は、破産管財人である原告が個人としての破産管財人に対して報酬を支払うとともに、破産者の元従業員らに対して退職金等を配当したが、これらについて源泉徴収による所得税及び納付をしなかったところ、住吉税務署長が、破産者に対して、源泉所得税の納税告知処分及び不納付加算税賦課決定処分をしたことから、原告が、不納付加算税賦課決定処分の取り消しを求めた取消訴訟です。

 論点は、①破産者又は管財人に源泉徴収義務はあるのか、あるとした場合、②源泉所得税の徴収納付をしなかったことにつき、国税通則法67条1項ただし書にいう「正当な理由」があるのかということです。

 大阪地裁は、①については、管財人に源泉徴収義務を認めたが、②については、退職金については正当な理由を認め、報酬については正当な理由を認めませんでした。

 現在、控訴中です。 

 国税通則法67条1項 源泉徴収による国税がその法定納期限までに完納されなかった場合には、税務署長は、当該納税者から、第36条1項2号(源泉徴収による国税の納税の告知)の規定による納税の告知に係る税額又はその法定納期限後に当該告知を受けることなく納付された税額に100分の10の割合を乗じて計算した金額に相当する不納付加算税を徴収する。ただし、当該告知又は納付に係る国税を法定納期限までに納付しなかったことについて正当な理由が認められる場合には、この限りではない

 破産管財人の報酬については、源泉徴収が必要だとしても、配当には、源泉徴収は不要であるとしなければ、多数の従業員をかかえる法人の事件は、手間が増え、また、手間が増えた分だけ管財人の報酬がふくらむことにもつながり、総債権者のためにもなりません。

 控訴審で、配当については、源泉徴収は不要であるとの判断がえられるを期待しています。 

 

にほんブログ村 士業ブログ 弁護士へ  

2008年10月28日 (火)

【離婚・夫婦】 東京家庭裁判所における人事訴訟の審理の実情 改訂版

 判例タイムズから「東京家庭裁判所における人事訴訟の審理の実情」(改訂版)(東京家庭裁判所家事第6部編著)が、今年の7月30日に出版されました(なお、平成20年3月現在での運用の実情)。

 初版については、以前ブログでご紹介させていただきました。

 初版と比べて、年金分割制度の説明などが入りましたが、改訂版になっても、相変わらず、代理人弁護士にとって耳の痛い話ばかりが記載されていました。

 自身の反省材料とするため、いくつか紹介いたします。

 P5 調停が前置していないとして、訴えの却下を求めるとの本案前の答弁をする代理人もいるが、これなどは調停前置主義を正しく理解していない典型であろう。crying

 P6 調停における対応と訴訟における対応とが全く一致するものではないとしても、通常の民事訴訟ではほとんどないような第1回口頭弁論期日において請求棄却の概括的答弁のみが記載された答弁書のみを持参し、詳細な答弁をしないような事例が少なからず見受けられることは問題ではないかと思われる。weep

 P10 本案訴訟提起の前にしかも調停の申立もない段階におけるものであるから、十分な疎明が求められるが、実際には、検討不十分なまま、とにかく早く差し押さえたいというだけで保全の申立てがされるということが少なくないように思われる。

 P11 処分禁止の仮処分なのに、財産分与の対象とならない当事者の特有財産に関する権利を主張するものも散見される。慰謝料請求権についても、そもそも家庭裁判所に管轄のない、離婚原因とは無関係な損害賠償請求権を被保全権利とするものもしばしば見られるから注意すべきである。

 P13 これまでのところ、離婚原因や付帯処分に関して、具体的な記載がされておらず、訴状や付帯処分の申立の記載としてははなはだ不十分なものが少なくないようである。また、資料の添付もないものが少なくなく

 P13 主観的な評価や価値的判断のみを記載した全く説得力のに訴状が少なくないし、逆に、法律の要件を念頭に置かないまま、当事者が言ったことをただそのままに記載した、はなはだ冗長な訴状もある(なお、当事者の陳述書と誤字等を含めて全く同じものを表題のみを訴状として提出されているものまで散見される)というのが現状である。おそらく、十分な事情聴取や法的検討もないまま訴状を作成したものと思われるが、訴訟代理人が調停段階から受任している場合が多いとすれば、この点も大いに問題であろう。

 P13 特に留意してもらいたいのは、付帯処分等についても具体的事由を明記していることと、調停の経過及び予想される争点を記載している点である。この調停の経過や予想される争点について全く記載のない訴状が少なくないのが実情である。

 P14 「特に必要があるとき」とあるように、自庁処理は、合意管轄や応訴管轄を許容しない人事訴訟の専属管轄において例外的な措置であるので、単に調停事件が係属していたという事情だけで、自庁処理が認められるわけではない。この点を誤解していると思われる代理人は少なくないようである。

 P15 (回付を)移送と間違えたり、自庁処理の問題であると誤解している場合も多いので、正確な理解が望まれるところである。

 P16 このような立法の経緯にもかかわらず、人事訴訟法は、原告に対して管轄選択の広汎な自由を認めたものであると主張してくる代理人がいることは残念である。

 P18 人訴規則19条1項は、家審規則2条と異なり、申立の趣旨及び理由の記載を要求していることに留意すべきである。しかし、このような規定があるにもかかわらず、十分な検討をすることなく、相当の財産分与を求めるとしか記載しない代理人も少なくない。

 P26 東京家裁では、公示送達事件についても原告本人尋問を実施している。これについては、代理人の中に抵抗する向きもあるが、実際には、訴状や陳述書の内容とは異なる事実が出てきたり、本人からの事情聴取が十分されていないことが露呈することも多いのである。人事訴訟は公益にかかわる事項を対象とするので、被告が出頭しないと予想して十分な準備をしないのは問題であろう。

 P27 (被告欠席の場合)実際には、早く審理を求めるといいながらも、付帯処分等について立証する資料を全く提出しないために、第1回口頭弁論期日に終結できなかった例も少なくない。十分な準備が求められるところである。

 

 P28 (第1回口頭弁論期日の運営)当事者等に対する事情聴取を十分にしていない代理人も多く、その場合には、当然ながら概括的な弁論に終始するため、争点整理が遅れがちになる傾向にある。

 P29 (人事訴訟における争点整理の意義)当事者の中には、人事訴訟事件の職分管轄が家庭裁判所に移管されたことから、家庭裁判所の職権探知に過度に依存するのか、自らは積極的に主張立証活動をしない者もないではない。実際に、訴状に財産分与を申し立てるとしか記載せず、全く主張立証をしようとしない代理人もいる。

 P30 (期日外釈明)東京家裁では、ファクシミリを利用してこれを行っており、担当書記官を通じて釈明することも多いが、書記官に対してきちんとした応答をしない代理人もおり、担当裁判官が自ら釈明をせざるえないこともあるのが実情である。

 P30 (準備書面等の提出期限)準備すべき事項等及び提出期限については、調書に記載することが多い。ただ、この点についても、必ずしも当事者において遵守されておらず、期日が単に書面の受け渡しと説明だけになってしまう例も少なくない。代理人の意識の向上を切に望みたい。

 P31 (書証等の提出)書証は、弾劾証拠となるものを除き、弁論準備手続等の争点整理手続中にすべて提出させる必要がある。人事訴訟の運営においても、書証の早期提出の慣行が確立するように努めなければならないが、この点も必ずしも励行されているとはいえないのが実情である。

 P33 (付帯処分等の審理方法)附帯処分等の審理のポイントを理解していない代理人も少なくない。例えば、財産分与について、申し立ての趣旨を相当な財産分与を求めるとしたり、特有財産の返還や不当利得返還を求める旨の申し立てをする代理人も多いのである。

 P33  (財産分与に関する処分)婚姻期間中に給与が取得されているから、それが貯蓄されているはずであるなどとして、その2分の1相当額の支払いを求めるなどという主張がされることが多いが(意外と思われるかもしれないが、このような主張は少なくないのである。これは、本人と代理人との認識の違いかもしれないが、主張する以上、きちんと検討した上で行って貰いたいところである。)、このような場合において、資産の存在が立証されることはほとんどないといってよい。 

P41 (参与員の権限) なお、参与員の発問に対して、その趣旨を執拗に問いただしたり、説明を求めるなど過剰な反応をする代理人もないではないが、国民の司法参加という観点からすると、このような態度は問題であろう。

 P42 (陳述書の活用) 実際には、訴状や準備書面を単に「ですます調」に変えただけの陳述書や、前述のとおり、陳述書をそのまま訴状とし、そのため、誤字脱字まで同じというものまで見受けられるのである。また、中には、真の争点を尋問によらず、陳述書に委ねようとする代理人もいるが、陳述書によって立証すべきは、争いがない事実や前提となる事実にとどめて、争点や重要な事実関係については、尋問で立証すべきである。本人尋問において、原告(又は被告)に対して、陳述書を示して、この記載内容に間違いがないことを確認するだけでは、立証事項について、十分証明されたことにはならないであろう。

 P56 (和解と当事者の出頭) このような和解は身分行為そのものであるため、実体法の要請として代理には親しまず、和解を成立させるためには本人の出頭が必要である。このことを理解していない訴訟代理人も多いので、和解による離婚をする場合には、事前に当事者の出頭が不可欠であることを改めて確認しておく必要がある。

 P58 (離婚請求事件以外の事件) 親子関係の不存在は、いわゆる嫡出推定の及ばない子についてのみ可能であって、外形的に懐胎が不可能である事情が認められない限り、嫡出否認の訴えによらなければならない。しかしながら、実際には、自然的な血縁がなければ、親子関係の不存在を確認できるという誤った考えによって、訴えが提起され、鑑定申請がされることが少なくない。

 P58 (渉外事件の特則) 国際裁判管轄権や準拠法等に関する正確な知識が必要となるが、残念ながら、当事者の中には、渉外事件であることすら頭にない場合も少なくないのである。

 

 結構、代理人弁護士に対する辛辣な言葉が並んでいます。

 最低限のことばかりですが、書証や準備書面の提出については、裁判所の定める期限どおり提出されないことって、少なくないような印象を受けます。遅れそうな場合には、相手方代理人や裁判所に一報入れるようにしています。

にほんブログ村 士業ブログ 弁護士へ  

2008年10月25日 (土)

【金融・企業法務】 解約返戻金と金融機関による相殺

 季刊事業再生と債権管理No122・2008年10月5日号(秋号)に、新保険法と債権管理という特集の中に、保険会社による債権回収と保険法改正というテーマの論文がありました。

 保険会社が、破産者である債務者に対して貸付金を有している場合に、解約返戻金と相殺できるか?という論点について、久保先生(立命館大学教授)が、わかりやすい説明をされていました(記事を引用して説明します)。

 破産手続が開始された場合、選任された破産管財人は、双方未履行の双務契約の解除選択権を有します(破産法53条1項)。

 従って、保険契約が継続し保険料が支払われている場合には、保険契約を解除するか、継続するかの選択をしなければなりませんが、通常は、解除を選択する場合が大半です(確かにそうですね。)。

 保険会社の貸付金は、別除権で担保されている債権以外は破産債権となり、破産管財人が保険契約を解除すると解約返戻金請求権が具体化します。この場合、保険会社の貸付債権は、それを自働債権、解約返戻金支払債務を受動債権とした相殺が可能かどうかが問題となります。

 まず、解約返戻金支払債務は、保険契約者の解約権行使によってはじめて具体化する条件付債務ですが、破産法67条2項後段は、破産開始後において、破産債権者の債務が条件付であっても相殺を認めていますので、この点は障害になりません。

 次に、解約返戻金支払債務が、破産債権者が破産手続開始後に負った債務と評価されると相殺権を行使できず(破産法71条1項)、保険会社の債権は破産債権として処遇されることになり、相殺の期待が大きく減殺されます(確かに)。

 この点については、最高裁平成17年1月17日が、特段の事情がない限り、相殺が許容されると判断していますので、特段の事情がない限り問題がありません。

 以上から、相殺は問題がないことになります。

(条文)

 破産法53条1項 双務契約について破産者及びその相手方が破産手続開始の時において共にまだその履行を完了していないときは、破産管財人は、契約を解除し、又は破産者の債務を履行して相手方の債務の履行を請求することができる。

 破産法67条2項 破産債権者の有する債権が破産手続開始の時において期限付若しくは解除条件付であるとき、又は103条2項1号に掲げるものであるときでも、破産債権者が前項の規定により相殺することを妨げない。破産債権者の負担する債務が期限付若しくは条件付であるとき、又は将来の請求権に関するものであるときも、同様とする。

 破産法71条1項 破産者債権者は、次に掲げる場合には、相殺をすることができない。1項 破産手続開始後に破産財団に対して債務を負担したとき

 金融機関からのご質問の中に、当社が、住宅ローンを融資しており、他社が発売している火災保険に住宅ローンのために質権を設定しているが、建物が落札されたので、当社は、貸付金と、火災保険の解約返戻金とを、相殺できないのだろうか?というものがありました。

 う~ん。解約返戻金については、質権の被担保債権ではないのであれば、そもそも対立する当事者間での債権ではないので、難しいのではないかと考えています。

 そもそも、なんで解約返戻金を質権の担保にしていないのかな???

 閑話休題

 保険法も平成20年5月30日に成立し、6月6日(公布日)から2年以内に施行されます。私の事務所では、損害保険がらみの保険約款などの解釈のご相談も多く取り扱っていますが、む~ん、勉強すること増やすなpoutと言いたいです。

 にほんブログ村 士業ブログ 弁護士へ  

【金融・企業法務】 定額郵便貯金につき、共同相続人の一人からの自己の相続分請求が認められなかった事例

 旬刊金融法務事情No1845(9月15日)号に、「定額郵便貯金についての共同相続人の一人から自己の相続分請求について」の論文が紹介されていました。

 銀行預金や通常の郵便貯金については、相続により、共同相続人に、分割して承継される(当然分割承継説)と考えられています。

 ところが、定額郵便貯金については、郵便貯金法7条1項が、一定の据置期間を定め、分割払戻しをしない条件で一定の金額を一時に預け入れするものと規定されていることから、共同相続人の一人から自己の相続分に基づく請求がされたとしても、その請求を認めない考え方が有力になっています。

 従って、預け入れから10年経過しない定額郵便貯金については、払戻が困難となり、東京地裁平成20年2月6日も、同様の考え方を採用しています。

 平成19年10月1日、郵政民営化法等に施行に伴い、定額郵便貯金は、機構に承継されました。

 しかし、郵便貯金法の附則5条3号により、同法施行の際に、現に存する旧郵便貯金法7条1項3号の定額郵便貯金は、「なおその効力を有する」とされていることから、預け入れから10年を経過しない定額郵便貯金については、共同相続人の一部からの相続分の払戻請求については、否定されそうです。

 解説者は、郵政民営化以降においても、同様の金融商品は販売されているようであるが、とすれば、分割請求を拒絶する法律は存在せず、特約のみとなるが、特約のみで、払戻請求が拒絶されることについては、消極的な見解です。

にほんブログ村 士業ブログ 弁護士へ  

2008年10月24日 (金)

【金融・企業法務】 夜間金庫を利用した場合の、預金契約の成立時期

 旬刊金融法務事情N01845(9月15日)号で、判決速報として、紹介されていた事案です。

 論点がはっきりしており、司法試験の論文でも使えそうな事案ですね。

 A会社が、取引銀行であるB銀行に、約400万円程のお金を、平成19年2月9日(金)から同月13日(火)午前8時35分(夜間金庫開扉時刻)までの間に(なお12日は祝日)、金銭を投入する形で預け入れました。

 B銀行は、13日午前9時19分、Aの当座預金口座への入金処理を行いました。

 ところがです。実は、A会社は、2月13日午前9時には、破産開始決定を受けていたのです。

 B銀行は、Aに対する貸付金と預金債務とを相殺しましたが、破産管財人は、預金は、破産手続開始決定後に成立したものだから、破産法71条1項1号の制限により相殺は無効であるとの主張をして、裁判所で争われることになりました。

 論点はただ一つ、夜間金庫の場合の、預金契約はいつ成立するのか?です。

 考え方は、2とおりあります。

 ① 銀行が受領した金銭の額を計算してこれを確認した説

 ② 金銭の交付があれば足りるとする説

 ②の説だと、破産手続開始決定前に預金債務が成立するので、B銀行の勝ち

 ①の説だと、破産手続開始決定後に預金債務が成立するので、管財人の勝ち

 大津地裁平成19年12月26日も、大阪高裁平成20年5月29日も、①の考え方を採用しており、銀行実務や学説も、①の説を支持している者が多いみたいです。

 400万円位のお金で、地銀も控訴までしてなぜここまで争ったのでしょうかね?訴訟費用も、きちんと回収する必要があると思いますね。

 管財人って、悩みがつきません。裁判所の管財人協議会や、全倒ネットのメーリングリストは、大変ありがたいですね。来月、広島で、全倒ネットの総会がありますが、出席できるよう、バスの予約きちんとしなくちゃと思います。

 夜間金庫で思い出すのは、少し前、偽の夜間金庫を作って捕まった犯人がいましたね。一見として、偽の夜間金庫とわかるような代物だったと思いますが、初めての人は間違えてお金を投入してしまうかもしれませんね。

 きんざいの金融法務例会で、夜間金庫について取り上げて貰えるとおもしろいなあと思います。

          にほんブログ村 士業ブログ 弁護士へ  

2008年10月23日 (木)

【弁護士考】 身体がいくつ入っても足りません (T_T)

081023_132801_edited_2  今日は、午後から、新居浜簡裁に調停(交通)のため、出席しました。撮影されている対象物は、JR新居浜駅です。いつも思うのですが、新居浜は、今治についで、愛媛県では、第3番目の都会になるのですが、駅周辺は、がらんとした印象をいだきます。市役所周辺はにぎやかなのですが・・・・ 

 事務所に戻ると、さらに、国選刑事事件が1件入っていました。第1回公判期日まで準備期間が2週間しかありません。名前をみると、数年前同種前科で弁護(国選)した人のようです。確か、この人執行猶予中なのですが・・・ また、警察署から、留置されている被告人の件で連絡があったようです。自白事件なのに、明日面会にいくと、5回目になります。親族からは、事件と関係ないような伝言頼まれますし・・・ 

 スケジュールをみると、尋問、尋問、尋問・・・・ 

 これ以上の仕事をかかえると、現在手持ち事件の記録を検討する時間が不足して、準備不足につながります。

 それゆえ、ご相談のご予約は、顧問先を除き、2週間以降先とさせていただいております。<(_ _)>

 新人弁護士さんが入所されるのであれば、かなり予約がとりやすくはなると思いますが、現在、顧問先等から要求されているレベルはかなり高くなっているので、耐えられるかどうか・・・・ したがって、社会人経験があるなど即戦力のある方を希望する次第です。教育するような手間暇はありません。

 そして、仕事が忙しいのと、売上げが上がるのとは、必ずしも比例しないのが大変残念です。

 例えば、報酬からいえば、実費の負担も考えると、離婚事件(勝訴)1件分=国選事件15件分くらいかな?coldsweats01  

  にほんブログ村 士業ブログ 弁護士へ  

2008年10月22日 (水)

【金融・企業法務】 顧問先企業様での研修会(伊予三島)

   縁あって、10年近く前から、高松に本社のある上場企業の子会社の法律顧問に就かせていただいておりますが、今日は、同社に招かれて、伊予三島のホテルで、債権事故対応についての研修の講師を務めさせていただきました。building

 最近、コンプライアンスなどの高まりから、顧問先企業様から、研修会の講師のご依頼を受けることが多くなっていますが、今回は、債権事故が生じた場合の対応策について、法律面から説明させていただきました。pencil

 午前10時10分から11時10分の予定でしたが、質疑応答をいただき、午前11時25分ころまで、かかってしまいました。

 午前11時10分からは第一線で活躍されている現場の担当者の方の講義が入っていたのですが、ご迷惑をおかけすることになりました。大変申し訳ありませんでした。ヾ(_ _*)ハンセイ・・・

 受講された方から、質疑が多数でましたが、さすが、第一線でご活躍されている方の質問で、私も、その回答に窮したこともたびたびでした。

 どうしても弁護士からの説明ということになりますと、「石橋もたたいても渡らない」ということになりがちですが、現場はそういうわけもいかず、現場でご担当された方が私の説明をきいても、余り参考にはならないことも多々あったかもしれません。coldsweats01

 今後の反省材料とさせていただければと思います。happy01

 四国中央市で研修会となったのは、支店が、四国各県庁所在地にあるため、みんながいきやすい場所ということで、選ばれたようです。さすが、「四国中央」市ですね。heart04

 伊予三島は、今日は、三島神社のお祭りで、大変にぎやかでした。少し写真をとってきたので、紹介いたします。

    081022_084801_edited

 伊予三島駅です。四国で最初の高架式の駅のようです。

    081022_085201_edited

 伊予三島駅前の商店街です。奥が伊予三島駅になります。手前はフジグランです。

    081022_091201_edited

 三島大社前です。お祭りのため、屋台がでています。

    081022_113501_edited

 門前の様子です。

  081022_113701_edited

 同じく、門前の様子です。

 

 このところ、ものすごく出張が多く、書面書きの時間があまりとれません。昨日は、動産執行の立ち会いで、松山、今日は、研修の講師として、伊予三島、明日は、調停出席のため、新居浜です。

 また、(民事)証拠調べ(尋問)もめちゃくちゃ多くなっています。最近1ヶ月で、5件ほど尋問しているのではないでしょうか?

 国選事件も、常時3件しか受けないと決めているのですが、いつのまにか5件にふくらんでしまっています。私に廻る国選事件は、特に質が悪いのが多くなっているのか、事務所の打ち合わせで、ガムをかみながら話をする者や、親族が愛想尽かして援助しないことをきいて逆ギレする者もいます。被害弁償金を立て替えさせられたこともありました・・・(当然かえしてくれません・・・) crying

 自分勝手な人たちが多く、 悪いことをする人相手の弁護は、性に合っていないな~と、最近しみじみ感じます。

 それでも、自白事件でも呼ばれたら、何度でも面会にいきますけどね。被告事件も、接見回数で、報酬増額して欲しいですね。嘘の申告なんてしませんから。coldsweats01

   にほんブログ村 士業ブログ 弁護士へ  

2008年10月20日 (月)

【介護・遺言・相続】 相続放棄 家裁裁判月報平成20年No10

 家裁裁判月報平成20年No10号に搭載された事例です。

 原審に松山家裁の相続放棄の申述を却下した決定を取り消して、相続放棄の申述を受理した抗告審(高松高裁平成20年3月5日)決定です。

 甲さんが、平成18年6月×日に死亡しました。甲さんの相続人は、妻Cと、次男Dと、抗告人である長男Eでした。

 Dは、相続人らを代表して、農協を訪ね、甲さんの債務の存否について確認したところ、農協からは、債務はないとの回答を得ました。

 そこで、相続人らは、相続手続を行い、農協の貯金などの名義変更手続を行いました。

 ところが、甲さんは、農協を貸主とする消費貸借契約の連帯保証人になっており、その金額は3億円にもなっていました。

 平成19年9月ころに至って、農協は、甲さんの相続人らに対して、債権回収を図るために、通知した。

 この通知に接したEさんは、平成19年11月、松山家裁に、相続放棄の申述受理申立を行いました。

 松山家裁は、形式的に、熟慮期間の起算点は、甲が死亡した平成18年6月×日であり、平成19年11月は、既に3ヶ月が経過していることを理由に申述を却下しました。

 これに対して、高松高裁は、松山家裁の決定を取り消し、相続放棄の申述を認めました。

 裁判要旨は、以下のとおりです。

 相続債務について調査を尽くしたにもかかわらず、債権者からの誤った回答により、債務が存在しないものと信じて限定承認又は放棄をすることなく熟慮期間が経過するなどした場合には、

 相続人において、遺産の構成につき錯誤に陥っているから、その錯誤が遺産内容の重要な部分に関するものであるときは、

 錯誤に陥っていることを認識した後改めて民法915条1項所定の期間内に、錯誤を理由として、単純承認の効果を否定して、限定承認又は放棄の申述受理の申立をすることができる。

 これって、結構ありませんか? 特に保証債務って、相続人にはわからない場合が少なくないですよね。

 私も、遺産の相談を受ける場合、保証債務含めて負債はないのか、あるとすればその額は、受け取るべき遺産に見合うものなのか、必ず確認しています。

 金融機関に債務の存在を確認する場合には、保証債務も忘れずに確認してください。後で泣かないためにも・・・

   にほんブログ村 士業ブログ 弁護士へ  

2008年10月19日 (日)

【地域情報】 新造船の進水式など 今治

 今治商工会議所の主催で、地場産業の、新造船の進水式見学や、タオル人形作りに、子どもと一緒に参加しました。

 ご承知の通り、今治の地場産業は、造船業とタオル製造業です。

 私は生まれて初めて、船の進水式を見学しました。     

         1019_122401_edited_3

 とても大きな船です。

 

  「1.3gp」をダウンロード   進水式の様子1

  「2.3gp」をダウンロード   進水式の様子2

  船が海にむかって一直線に走行する姿は大変見ものでした。

  進水式を見学した後、再び、バスで商工会議所のビルに戻り、研修室で、子どもとタオルで犬を2匹作りました。試行錯誤しましたが、なかなか楽しかったです。 

にほんブログ村 士業ブログ 弁護士へ  

2008年10月18日 (土)

【交通事故】 モンスター契約者 

 判例時報No2012(平成20年10月11日)号で紹介された東京高裁の決定です(平成20年7月1日)。

 事案は、甲さんは、損害保険会社である乙社との間で、自動車保険契約を締結していました。甲さんの長女が被保険自動車の運転中にひき起こした事故に係る保険金請求に関する交渉に関し、甲さんは、乙社の担当者の対応を不満として、同社に対し、多数回及び長時間にわたり架電をするなどし、同社において弁護士を交渉窓口とするよう通知した後も、同様に状態が続きました。

 平成19年11月20日から同20年2月22日までの期間における甲さんの乙社の複数の部門への架電は、多い日で、1日19回、長いときで1回約90分に及んでいたようです。

 そのため、乙社が甲さんを相手として、営業権を被保全権利とする仮地位仮処分として、営業妨害の禁止を求めたケースです。

 第1審は、

 営業利益の侵害が不法行為を構成することがあるとしても、損害賠償請求以外の差止請求の根拠となるものとはいえず、最終的には財産的利益にすぎない営業をなす権利は、所有権又は人格権とは性質を異にし、また、不正競争防止法3条1項、独占禁止法24条1項のような差し止めを許容する根拠もないから、営業権をもって差止請求権の法的根拠とすることはできないから、

 本件申立は、被保全権利の疎明を欠くとして、これを却下しました。

 これに対して、東京高裁は、

 保全されるべきものは、営業一般ではなく、固定資産及び流動資産の使用を前提に自然人たる従業員の労働行為によって構成される具体的な業務であるとし、このような所有権に裏付けられた財産権と個々の従業員の人格権との総体としての業務を遂行する権利を、「業務遂行権」として、法人は、この業務遂行権を被保全権利として、差し止めの根拠とすることを認めました。

 その上で、

 ①当該行為が権利行使としての相当性を超え

 ②法人の資産の本来予定された利用を著しく害し、かつ、これら従業員に受忍限度を超える困惑・不快を与え

 ③業務に及ぼす支障の程度が著しく、事後的な損害賠償では当該法人に回復の困難な重大な損害が発生すると認められる場合に、

 業務遂行権に対する違法な妨害行為になるとして、

 本件事案においては、この要件を充足し、保全の必要もあるとして、仮処分を認めました。

 この事案では、甲さんは、

 保険会社が顧客対応を弁護士に委任することは保険業法違反である

 契約者の同意なく無断で弁護士に委任するのはどういうことか

 弁護士とは話をしない

 乙社の担当者は嘘つきである

 対応者の上席者又は部門総責任者を出せ

 更なる上席者の氏名を教えよ

 適切に対応できる者を出せ

 他の人間が電話を代わるまで電話をかけ続ける

 と自らの主張や要求などを繰り返し述べました。

 

 いやいや、全く酷い内容です。crying

 東京高裁の決定は当然であり、第1審の判断は形式論に終始した納得できない内容であるとしかいいようがありません。

 弁護士事務所にも、これほどではありませんが、これに類するようなことがされることは時折あります。

 その都度、依頼者を相談しながら、対応していますが、今回のケースは、依頼者的な立場の方、つまり、自動車保険の契約者が相手方なので、さらに、問題を複雑にしています。

 会社にとっては、お客様なので、なかなか強い態度をとりにくいのです。

 モンスター契約者に対しては、業務妨害行為の差し止めが認められた事例であり、実務上、参考になります。

 にほんブログ村 士業ブログ 弁護士へ  

2008年10月17日 (金)

【弁護士研修】 平成20年紛争処理委員実務研修(高松) (財)住宅リフォーム紛争処理支援センター

 平成14年から、愛媛県弁護士会住宅紛争処理委員会の委員の端くれを勤めているため、以降毎年のように、(財)住宅リフォーム紛争処理支援センターの実務研修に出席するようにしています。

 昨日、高松のホテルで行われた平成20年度の研修は、①住宅瑕疵担保履行法等について、②特別住宅紛争処理の手続について、③住宅に関する参考とすべき判例についてなどをテーマとして、3時間程度の研修でした。

 平成12年4月1日、住宅品質確保法が施行され、10年間の瑕疵担保責任が義務化されたことは周知の事実となっていますが、平成17年のいわゆる姉歯事件をきっかけに、売り主などが瑕疵担保責任を果たすことが空振りにならないよう、平成19年、特定住宅瑕疵担保責任の履行確保等に関する法律が成立し、平成21年10月1日、本格的に施行されることになっています。

 個人的なことですが、現在、私は事務所兼居宅を建築中ですが、設計・建設の住宅性能評価を、登録住宅性能評価機関に申請いたしました(評価住宅)。

 昨日いただいた資料によれば、平成20年7月期は、全国で設計・建設の住宅性能評価の交付を受けたのは、一戸建ての住宅の場合、6834件あるようですが、そのうち、プレハブが3650件(53.4%)、在来木造が2809件(41.1%)を閉め、RC造は、わずかに1件です。

 実は、私が現在建築していただいている住宅も、RC造なので、現時点では、申請は極めて珍しいのではないかと密かに自負しているところであります。

 少し話にそれました。coldsweats01

 新築住宅の引き渡しが、平成21年10月1日以降であれば、保険或いは供託の資力確保が必要になります。

 すごいと思ったのは、評価住宅の申請手続は任意だったのですが、住宅瑕疵担保履行法により、平成21年10月1日以降の引き渡し物権の場合には、資力確保が義務付けられることになるわけです。

 つまり、今までは、評価住宅の申請は任意であり、それゆえ、住宅紛争処理委員会への申立も、地方ではあまり活用されていませんでしたが、来年からは資力確保が義務づけられることから、紛争処理委員会に対して申立がされる件数も、飛躍的に増加するものと想像しています。

 また、「住宅に関する参考とすべき判例について」と題して、犬塚浩弁護士の解説がありました。犬塚先生の講義はいつもわかりやすく大変参考になっています。

 とりわけ、

 ①契約違反イコール瑕疵とはただちには言えないこと(最高裁平成15年10月10日の判例は事例判例と考えるべきこと)、

 ②法令以外の基準としては、JASS(日本建築学会建築標準仕様書)などがあるが、裁判所によって考慮されるかどうか判断が分かれていること、

 ③工事が予定された最後の工程まで一応終了しておれば仕事の完成と評価されること、

 ④見積書に記載された見積もりは、あくまで見積もりであって、増減などの効果は、結局合意によって発生すると考えるべきこと、

 ⑤不具合事象が現れていないからと言って瑕疵がないとはいえないこと、

 ⑥建物建築業者は、地盤の強度調査をすべき義務を負っていること、

 ⑦スウェーデン式サウンディング試験は地盤支持力を調べるについても性能には問題があるとされていること、

 ⑧最高裁平成19年7月6日によれば、施工業者は、建築にあたり、契約関係にない居住者に対する関係でも、建物としての基本的な安全性が欠けることがないように配慮すべき注意義務を負っていること、

 ⑨地裁判例により、基本的な安全性の対象は緩くとらえられていること、

 ⑩建築士の名義貸しについては、賠償すべき損害の範囲は限定されない裁判例があること、

 ⑪過失相殺や損益相殺は比較的認められやすいこと

 ⑫慰謝料については裁判所によってバラバラであること

 ⑬注文者の指示が誤っているからといって、請負人が免責されるとは限らないこと

 ⑭請負代金請求と損害賠償請求については同時履行の抗弁権が認められているが、信義則違反のような場合には、抗弁が主張できないこと

 ⑮請負人側からの相殺も、同時履行の抗弁権が付着はしているが、東京高裁平成16年6月3日は、認めていること

 などたくさんのことを学びました。①から⑮は、犬塚先生が是非きちんと押さえてもらいたいという点を箇条書きにしたものです。

 平成14年以降、研修に参加していますが、今回の研修ほど、よく理解できたものはありません。やはり、自ら性能評価制度を利用して、これらの法令や制度がより身近になったからでしょう。 

 今後も、続けて研修を続けていきたいと思います。

 にほんブログ村 士業ブログ 弁護士へ  

2008年10月16日 (木)

【弁護士考】 これも戒告処分なのか? 自由と正義10月号

 「自由と正義」という日弁連発行の月刊の刊行物があります。

 昨日、2008年10月号が送られてきました。懲戒処分の公告という欄がありますが、反面教師などとしたいため、まず、この欄から読む弁護士が少なくありません。

 大阪の弁護士さんがある事件で戒告処分を受けていましたが、上告受理申立を行わなかったという理由だけで、戒告処分を受けるのであれば、なかなか厳しいご時世になったものです。

 事案は、Xさんから依頼を受けて、Y銀行に対して、不当利得返還請求事件、土地抵当権設定登記抹消登記手続請求事件について、Xさんの代理人として、B先生が就任したところ、控訴審で、いずれの事件も敗訴していましました。

 そのため、B先生は、Xさんから、上告申立は行ったのですが、上告受理申立については行わず、その後、上告申立はいずれの事件も棄却され、Xさんの敗訴判決が確定したという事案です。

 大阪弁護士会は、Xさんから上告受理申立について明示の依頼があったか否かはともかくとして、控訴審判決に対する不服申立にXさんの意思があることが推認されることからすれば、「職務懈怠」といわざるをえないと判断しています。

 どういう事案かはあまり説明されていませんが、一般的には、「銀行」を相手方とする裁判ですから、Xさんにとってもなかなか厳しい裁判ではないかと想像します。

 想像どおりだと、上告受理したとしても上告審でひっくりかえる可能性はかなり低いのではないかと思います。

 しかし、弁護士会は、戒告処分としています。

 これは、上告理由だけだと理由が限定されるため、やはり、上告受理という手続がある以上、これも併せて申立をする必要があるのでしょう。

 私の場合は、いつも、上告兼上告受理申立書を出していますが、やはり依頼人とのトラブルを回避するため、十分な説明と必要な手続は全て行っておく必要があるようです。

 上告兼上告受理申立の事案は、一般的に、逆転する可能性は極めて低いのですが、なかなか敗訴の理由について納得していただず、依頼人を納得させる一つの方法として、「低廉」な弁護士費用で上告等の申立を行う先生が少なくないのではないでしょうか?

 私自身、上告等の申立をしたのは、過去10年で2件程度、されたのも、2件程度ですが、いずれも、当事者との間で感情的な対立が激しい事案でした。

 おそらくは、B先生とXさんとの間で感情的な対立が背景にあるのではないかと思いますが、私自身は、この事案でしかも上告不受理が確実と思われる事案だったとすれば、戒告は些か厳しいのではないかと思います。

 つまり、上告受理申立により、勝訴の蓋然性がどの程度あるのかという点も十分に考慮されるべきではないかと思います。

 弁護士会は、おそらくは、上告審で審理されるという期待感を重視したのだと思いますが、個人的には、やはり、勝訴の蓋然性も重要な要素として考慮されるべきではないかと思います。

 ただし、弁護士会の見解が上告審で審理されるという依頼人の期待感を重視し、この事案を職務懈怠としている以上、今後も、私自身の職務としても、依頼人に対する説明を一層尽くし、かつ、必要な手続は全て講じる必要があります。

 でも、本音をいうと、「負け筋案件」は、余り受けたくないのですね。負けると、弁護士のせいにする方も一部ですがおられますし、また、成功報酬金もいただけないので・・・・coldsweats01 敗訴の可能性が高いというと、立腹される方もおられます。 coldsweats02

 とはいっても、負け筋案件で、和解に持ち込み、負けの度合いを小さくさせた時は嬉しいです。happy01

 私の場合、原告事件で負け筋案件を受ける時は、依頼者の気持ちを共感できる場合、顧問先の紹介がある場合に限定されます。

    にほんブログ村 士業ブログ 弁護士へ  

2008年10月15日 (水)

【金融・企業法務】 信用保証協会法の改正による新業務の追加 

 旬刊金融法務事情No1848(10月15日)のほうむブログというコラムに、「信用保証協会法改正による新業務の追加」というわかりやすい記事が掲載されていました。

 今月の「金融法務例会」のテーマにもなったので、それを踏まえて記事を読むとわかりやすかったです。

 まず、信用保証協会法の改正により、信用保証協会は、

 ①保証を行うにあたって、中小企業者の新株予約権を引き受けること

 ②求償権先に対する債権を金融機関等から譲り受けること

 ③事業再生ファンドに対して出資すること

 の3業務が追加されました。

 ①の新株予約権の引受は、信用保証協会が保証を行うにあたって、中小企業者が発行する新株予約権を引き受けることにより、信用保証料を割り引くなどの付加価値を提供するものと紹介されています。

 但し、利息制限法との関係や株式評価等の難しい問題も含んでいます。

 ②求償権先に対する債権の譲り受けは、求償権先である中小企業者の私的整理に反対する債権者の有する債権を信用保証協会が譲り受けることにより、円滑な債権者調整を行うことを目的としています。

 但し、信用保証協会が自ら債権回収を行うことはできず、弁護士又はサービサーに委託しなければならないようです。

 ③の事業再生ファンドに対する出資は、投資事業有限責任組合の形式をとる事業再生ファンドに対して、信用保証協会が有限責任組合員として出資することにより、地域の中小企業者の再生を支援することを目的にしています。

 加えて、主として不正利用防止のために不正利用者に関する情報を一元管理することを目的に、保証業務支援機関に関する規定も新設されています。

 また、同じタイミングで、中小企業信用保険法も改正され、一括決済方式により支払企業が負担する債務の保証も、新設されました。

 随分積極的な役割を持たせるものだなと感じました。

 信用保証協会に対するイメージが大きく変わりそうです。

 次から次、法改正や新法令、おびただしい裁判例など、私も、情報の海で溺れそうになっています。

 なんとか溺れないよう暇を見つけては学習していますが、最近は、尋問や遠方の出張が多く、時間がとれません。

 脳みそを入れ替えるわけにはいきませんし、なかなか難しいですね。

 相談の予約の電話がかかってきますが、新規の方の場合、残念ながら、10月29日以降でないと入らない状態です。2週間先です。大変ご迷惑をおかけしますが、弁護士一人事務所なので、仕方がありません。

 別に今治地方に弁護士の数が少ないからというわけではなく、単純に、事務所の広報活動の結果だとは思います。 

 にほんブログ村 士業ブログ 弁護士へ   

 なお、No1848は、「さんまエキスプレス」と題する債権執行書記官室の紹介という記事も載っていました。

2008年10月14日 (火)

【介護・遺言・相続】 特別養護老人ホームにおける入所者の誤嚥死亡事故について、ホームを設置した社会福祉法人の不法行為責任が認められた事例(松山地裁平成20年2月18日)

 判例タイムズNo1275(10月15日)号の事案です。

 一般に、老人や脳血管障害などの疾患のある者は、食事の際に、嚥下障害を起こすことが少なくないため、食品や調理方法、摂食方法などについて特段の配慮が必要と言われていますが、今回の事案では、特別の配慮をされていたのかどうかが争われたケースです。

 松山地裁は、

 Aは、医師からは、脳梗塞、脳血管障害等により食事の飲み込みが悪くなってきており、今後も嚥下障害が進行したり、誤嚥性肺炎の発症の可能性があるとの説明がなされていたことからすれば、

 Yとしては、食事の介助を行う職員が、①覚醒をきちんと確認しているか、②頸部を前屈させているか、③手、口腔内を清潔にすることを行っているか、④一口ずつ嚥下を確かめているかなどの点を確認し、これらのことが実際にきちんと行われるように介護を担当している職員を教育指導すべき中義務があった。

 しかし、Yは、上記のような教育、指導を特に行わず、職員が朝食介助を行った際にも、①覚醒の確認は十分におこなっておらず、②頸部を前屈させるということを全く行っておらず、③手、口腔内を清潔にするということも行っていないのであるから、Yに対する不法行為責任を是認し、Yに対して、賠償を認めました。

 控訴されているみたいです。

 介護施設からはご相談を受ける時がありますが、高齢者相手なので、大変な仕事だなと思います。油断すると取り返しの付かないことになりますので、皆さんご注意下さい。

 なお、判タNo1275には、過払金返還請求訴訟の弁護士費用が民法704条後段の損害には当たらないとされた「嫌な」裁判例が紹介されています(東京高裁平成19年12月19日)。crying 全くけしからんです。

にほんブログ村 士業ブログ 弁護士へ  

   閑話休題

 (弁)しまなみ法律事務所の事務所報ができあがりました。近々、皆様のお手元に届くかと思いますが、宜しくお願い申し上げます。happy01

2008年10月13日 (月)

【交通事故】 「貸主の運行供用者責任」に関する最高裁の事例判決(最判平成20年9月12日)

 交通事故判例速報No508(H20・10)(交通春秋社発行)に、紹介されている裁判例です。

 事案は、以下のとおりです。

 Aは、平成14年2月ころ、愛知県の某所にて、自動車を運転していたところ、赤信号で停止していた自動車に追突させるという事故を発生させました。

 Xは、Aの車に同乗しており、事故のために顔面に傷害を負いました。

 この自動車は、Xの父親であるBが所有しており、Bの経営する会社の仕事等に利用されていました。

 Xは、本件事故当時、某所で一人住まいをし、キャバクラに勤務していたが、仕事が休みの日には、実家に戻り、Bが経営する会社の仕事を手伝うこともあった。なお、Bは、Xが仕事を手伝う際にこの自動車を運転することは認めていました。

 運転者のAは、無免許だった。

 Yは、本件自動車を被保険自動車とする自動車損害賠償責任保険の保険会社です。

 平成14年2月の夜、Xは、Aを同乗して、バーを訪ね、Aと一緒に飲酒をしました。

 Aは、Xを起こして帰宅しようとしたが、Xが起きないため、カウンターの上に置かれた自動車のキーを利用して、Xをその助手席に運んだ上、自動車を運転し、Aの自宅に向かいました。

 Xは泥酔しており、Aに対して、自動車の運転を指示したことはありませんでした。

 Xは、Yに対して、Bが運行供用者として自賠法3条の規定による損害賠償責任を負担すると主張して、同法16条に基づき損害賠償額の支払を求めました。

  原審の名古屋高裁は、「XにはAに対して自動車の運転を依頼する意思がなく、Xは泥酔していた意識がなかったため、Aが本件自動車を運転するについて指示はおろか、運転していること自体認識はしていないこと、また、Aは自宅に帰るために自動車を運転していたに過ぎないことなどから、Xの自動車に対する運行支配はなかった」と判断し、Bの運行供用者性を否定しました。

 これに対して、最高裁は、

 本件の事実によれば、Xは、Bから本件自動車を運転することを認められていたところ、深夜、その実家から名古屋市内のバーまで本件自動車を運転したものであるから、その運行はBの容認するところであったと解することができる

 Xによる運行の後、飲酒したXが友人等に本件自動車の運転をゆだねることも、その容認に範囲内にあったとみられてもやむをえない

 Xは、電車やバスが運行されていない時間帯に、本件自動車のキーをバーのカウンターの上に置いて泥酔したのであるから、Aが帰宅するために、あるいはXを自宅に送り届けるために、キーを使用して自動車を運転することについて、Xの容認があったというべきである

 そうすると、BとAと面識がなく、Aという人物の存在すら認識していなかったとしても、

 本件運行は、Bの容認の範囲内にあったとみられてもやむをえないというべきであり、Bは、客観的外形的に見て、本件運行について、運行供用者にあたると解するのが相当であると判断しました。

 そして、原判決を破棄して、さらに、XがBに対する関係で法3条の「他人」にあたるといえるかどうかについて審理を尽くさせるために、本件を原審に差し戻しをしました。

 あれ、多分、原審においても、「他人性」についても大きな争点になっているのではないのでしょうか?何故、最高裁は、自判しなかったのか不思議です。

にほんブログ村 士業ブログ 弁護士へ  

2008年10月11日 (土)

【金融・企業法務】 第131回金融法務例会(内大阪銀行協会) 中小企業信用保険法および信用保証協会法改正の概要 

 昨日、きんざいが主催されている金融法務例会(大阪)に出席してきました。

 テーマは、中小企業信用保険法及び信用保証協会法改正の概要として、(社)全国信用保証協会連合会に在籍されている講師の先生2名の方に、解説していただきました。

 信用保証協会って、なんとなく、不良債権が最後にゆくつく所というイメージをもっていましたが、今回の研修を受けて、そのような印象は、根本的に間違ってることがわかりました。

 ちなみに、愛媛県信用保証協会のHPです。

 まず、中小企業信用保険法改正として、売掛債権早期現金化保証(仮称)のための新保険が創設されました。

 一括支払契約保証制度というのですが、一応、平成20年9月1日から施行されているようですが、講師の先生のお話によれば、調整が必要で現在受けられる状態ではないようです。

 ただ、静岡県信用保証協会のHPに概要が紹介されていましたので、そのHPを紹介します。

 一括決済方式には、ファクタリング方式、信託方式、併存的債務引受方式の3とおりあります。

 例えば、ファクタリング方式は、簡単に言えば、納入企業が、支払企業に対する売掛金を、個別に、期日前に、金融機関等に譲渡して、金融機関等から譲渡代価を支払って貰い(支払期日前なので、手形の割引みたいなイメージ)、支払企業は、金融機関等に期日が到来すれば、決済金を支払うのですが、信用保証協会は、支払企業が金融機関等に負っている決済金支払い債務を、保証するという仕組みです。

 ちょうど、納入企業も、手形の割引を受けるような形になるので、売掛債権の早期の資金化が可能となるわけです。

 次に、中小企業金融公庫法の改正に伴い、売掛債権の早期現金化を支援するために、売掛債権をプール化して、管理するための各業務を中小企業公庫に追加しました。

 先ほどの一括決済支援制度と似ており、金融機関等の代わりに、売掛債権をプールする特別目的会社SRCを作り、納入業者は、SRCに売掛債権を譲渡して、売掛債権の早期現金化を図ります。そして、支払起床のSRCに対する支払い債務を、中小企業金融公庫が貸付・保証等をすることになります。

 

 次は、予約保証制度の概要についても説明していただきました。

 簡単にいえば、いざというときに、中小企業が金融機関からお金を借りる際に、信用保証協会の保証付で、すぐに、融資が得られるようにしたわけですね。

 但し、貸付中止事由もあるので、気をつけないといけません。

 

 さらに、信用保証協会による再生支援業務強化の歩みについても、説明していただきました。

 信用保証協会も、再生支援の要請から、平成18年1月から、再生を支援するために、求償権を放棄することが可能となり、また、再生を支援するために求償権を消滅させる保証が、平成18年4月から解禁となりました。

 求償権放棄については、以下の4つの計画に基づく場合には、信用保証協会は、求償権を放棄することができるとされました(但し、政策公庫の事前承認必要)。

 ①中小企業再生支援協議会が策定を支援した再建計

 ②中小企業基盤整備機構が出資を行う再生ファンドが策定を支援した再建計画

 ③整理回収機構が策定を支援した再生計画

 ④私的整理に関するガイドラインに基づき成立した再建計画 

 また、先ほどの4計画に、(2)信用保証協会内に設置され、外部委員により構成された再生審査会が了承した再生計画に基づく場合には、信用保証協会は、中小企業者に対する債権の全部又は一部を消滅させることを目的とする保証を行うことができるとされました。

 さらに、信用保証協会は、その求償権先たる中小企業者の私的整理に反対する債権者(消極的な債権者)の有する債権の譲受けを行うことで、私的整理段階における円滑な債権者調整を可能とし、企業の再生プロセスの促進を図る債権譲受業務も、行うことが可能になりました。

 ただし、再生計画に反対もしくは消極的な債権者からの債権を譲り受けることから、協会の譲受価額は、ごね得にならないような適正な価格での譲り受けが求められているため、実際には、あまり例はないかもしれません。

 その他、いろいろご説明していただきましたが、睡魔に襲われ、一部記憶をなくしております。coldsweats01

 それはさておき、行き帰りの電車の中では、いつものように、行政法の通信講座(MD)を聴いていたのですが、残念ながら、まさに、子守歌と化していたのでした。think

 どうせなら、英会話に変えようかな・・・・slate

           にほんブログ村 士業ブログ 弁護士へ   

2008年10月10日 (金)

【弁護士考】 せこい (T_T) 国選弁護料の水増し

 国選弁護 岡山の弁護士が報酬を過大請求 刑事告訴も という記事を、新幹線の電光掲示板ニュースでみてびっくり。しかも、岡山駅の手前で・・・

 帰宅してから、インターネットでニュースをみると、詳細がわかり、さらにびっくり。

 報道によれば、複数回繰り返していることから、それが事実だとすれば、悪質と評価されるでしょうから、業務停止以上の懲戒は避けられないだろうな。

 この弁護士の経歴は、「早稲田大大学院を修了後の77年、愛知学院大助教授(商法)に就任。91年に副検事、95年に検事任官した。全国初の大学から検察官への転身で、名古屋区検、法務省法務総合研究所に勤務。97年退官し、00年弁護士登録した」ということのようです。

 あれ、司法研修所を卒業していないのか? ということは、司法試験は合格していないのかな???

 大学教授枠で弁護士になれたのか、特任検事枠で弁護士になれたのか、よくわかりませんが、落合先生のブログにも、この事件については紹介されていました。

 弁護士だからバッチをなくすようなことはしないだろうという性善説は、もはや過去の話のようです。しかも、この先生、元検察官ですよね・・・・

 弁護士の評判を下がるようなことは、やめて欲しいです。国選で儲けようと思ったらだめです。angry

 私の場合、国選事件は、起訴後の弁護しかやっていませんが、示談が成立した時は、その書類を添付して法テラスには報告させられているぞ。angry

 被疑者段階の接見は、自己申告だけだったのか? しかも、接見回数に応じて増額されるとは・・・

 起訴後の接見は何回しても報酬は増額されませんが、不公平ではないでしょうか?pout

 「じゃあ、被疑者段階から国選弁護を受けろ」って・・・

  し、失礼しました  coldsweats01

   にほんブログ村 士業ブログ 弁護士へ  

2008年10月 9日 (木)

【交通事故】 人身傷害補償保険による損害填補及び代位の範囲についての考察No2

  交通事故の被害者が、人身傷害補償条項付きの自動車保険契約の被保険者であり、訴訟前に人身傷害補償保険金の支払を受けた場合に、保険会社が被害者の加害者に対する損害賠償請求権を代位取得する範囲(逆に言えば、被害者がこれによって加害者に対して有する損害賠償請求権を喪失する範囲)については、最近、ホットな話題であり、このブログでも紹介しています。

 (財)日弁連交通事故相談センター交通事故相談ニュースNo21に、考え方について、整理がされていましたので、ご紹介させていただきます。

 ① 保険者優位説

  人傷保険金は、損害額のうち加害者の過失割合に対応する損害部分に充当され、保険会社(保険者)は、支払った人傷保険金と同額の金額について被害者(被保険者)の加害者に対する損害賠償請求権を代位取得し、被害者は加害者に対して、その残額の損害賠償請求権を行使し得るに過ぎないという絶対説

 ② 被保険者優位説

  人傷保険金は、損害額のうち被害者の過失割合に対応する損害部分(加害者に損害賠償請求できない部分)から優先的に充当され、人傷保険会社は、被害者の権利行使を害さない残額(過失相殺される部分を超えた、被害者が加害者に損害賠償請求できる部分に充当される額)についてのみ、損害賠償請求権を代位取得するという差額説

 ③ 按分説

 人傷保険金は、被害者と加害者の過失割合に応じて、過失相殺される部分と過失相殺されない部分に充当され、人傷保険会社は、支払った保険金のうち、加害者の過失相殺分に相応する損害賠償請求権を代位取得するという比例按分説 

 最近は、差額説が有力ですが、以下のとおり、差額の基準を巡って対立しています。

 人傷基準差額説 支払われた保険金は、人傷基準損害額のうちの被害者過失部分に相当する額にててん補され、その残部について代位する

 訴訟基準差額説 支払われた保険金は、訴訟において認定された被害者の損害額のうち被害者過失部分に相当する額にててん補され、その残部について代位する 

(地裁レベル)

① 平成18年6月21日 大阪地裁 判タ1228号

    差額説(人傷基準差額説)

② 平成19年2月22日 東京地裁 判タ1232号

    差額説(訴訟基準差額説)

③ 平成19年12月10日 大阪地裁 判タ1274号

    差額説(訴訟基準差額説)

④ 平成16年7月7日 神戸地裁 交民37巻4号

    比例按分説

(概説)

 ③の裁判例のケース

 (1)全体の損害額 

    2億3341万0887円

 (2)被害者の過失部分(25%)に相当する損害額

      5835万2721円

 (3)人傷保険金

      1530万5052円

 (4)あてはめ

  5835万2721円>1530万5052円

  なので、訴訟基準差額説からは、保険会社は代位しない。

 

 (まとめ)

 人傷保険金の請求方法については迷うところですが、(1)先に人傷保険金全部又は一部を取得した上で加害者に損害賠償金残額を請求する方法と、(2)加害者から損害賠償金を取得した後に人傷保険金を請求する方法が考えられますが、ご解説の弁護士の方は、現時点では、(1)の方が無難ではないかと説明されていますが、ケースバイケースでしょうか?

 にほんブログ村 士業ブログ 弁護士へ  

2008年10月 7日 (火)

【金融・企業法務】 破産管財人の源泉徴収義務の有無 No3

  破産管財人の源泉徴収義務の有無については、日頃から、関心をもっていますが、金融法務事情No1845(9月15日)、破産管財人の源泉徴収義務に関する検討(大阪高判平成20年4月25日に対する疑問を中心に)というテーマで、山本和彦一橋大教授が、論考を寄せられていたので、わかる範囲で、読んでみました。

 大阪高裁は、大阪地裁に引き続いて、配当などについての破産管財人の源泉徴収義務を肯定したものですが、この裁判の結果は、従来の破産管財人の実務と大きく異なる結論のものであり、実務に大きな混乱を招いています。

 理論的な問題はともかく、源泉徴収義務を肯定した場合に、源泉徴収を行う破産管財人の事務の増加による管財人報酬額の増加分や税理士への事務の委任による報酬が財団債権とされる結果、租税債権者や賃金債権者の債権者の一部のために生じる費用について、総債権者がそれを負担しなければならないことの不合理性は、現場にあわないものです。

 上告されているようなので、最高裁で是非見直しをしていただければと思います。

 特に地方では、会社の破産といっても、少額の管財事件であり、税理士の先生に頼むような余裕はない事案だらけです。この判例を受けて税務当局の調査が厳しくなるようでしたら、破産管財事件も、経済的なメリットが少ない案件の場合には、余り引き受けられないなあと考えています。

2008年10月 6日 (月)

【金融・企業法務】 金融機関が、融資の担保として差し入れられていた株式を売却処分して融資の弁済に充当したことについて、金融機関の善管注意義務違反が否定された事例(東京地裁平成20年4月21日)

 金融法務事情No1842(2008年8月5日)号の金融法務事情で紹介されていた裁判例(東京地裁平成20年4月21日)です(但し、控訴中)。

 事案は、概略、Xさんが、Y銀行に対する借り入れ債務の担保として、株式を預託していたのですが、Y銀行が、借り入れ債務の弁済期前に、株式を売却処分してしまったことから、Xさんが、Y銀行に対して損害賠償を求めた事案です。

 この事案、Xさんがかわいそうに思える内容なのです。coldsweats02

 というのは、債務の弁済期前に、売却が処分され、その後、売却された株の株価が上昇した事案のようです。crying

 XさんとY銀行との間には、担保株式の価値が一定限度下落した時点で、担保株式を処分して、貸金債務の弁済に充当することができる特約がありました。

 Xさんは、本件のような一時的な株価下落にすぎない状況下において本件担保差入証書3条(※特約のこと)に基づく権利行使することは、Xの責めに帰すべき事由がないことに比して、Xに甚大な被害をもたらすものであり、著しく信義に反し、あるいは公序良俗に違反する行為だと主張しました。

 裁判所も、Xが履行遅滞に陥っていなかったこと、処分された株の株価は1年後には2倍に上場していることから、Xが不満を抱くのも理解できないわけではないと、一応、Xさんに同情してみせます。

 しかし、特約の合理性、また、今回は株価は上昇したのですが場合によっては下落し続けることもあることから、特約は、信義則や公序良俗には違反しないと判断しました。bearing

 このケースでは、債務者が履行遅滞に陥っていないケースですが、履行に陥っているケースで、株式担保の時期・価格などにつき、善良な管理者の注意をもって任意売却処分をなす義務を肯定した大阪地裁昭和48年3月31日の裁判例があります。

 債権者側、或いは、債務者側から、時折、ご相談を受けることのある案件です。

 ただ、東京地裁の事案の場合、理屈はともかく、心情的には、Xさんの気持ちがわかるな~。

 にほんブログ村 士業ブログ 弁護士へ  

2008年10月 5日 (日)

【金融・企業法務】 預金契約等の預金者の認定

 銀行法務21(2008・10)で紹介された事案です。

 権利能力なき社団であるX(甲野寺檀徒信徒会)と、Z(宗教法人甲野寺)とが、

 Y農業協同組合の普通貯金(名義甲野寺(代)乙山太郎)、定期貯金(同上)

 Y銀行における普通預金(名義甲野寺代表乙山太郎)

 Y信託銀行の信託(名義宗教法人甲野寺)

 の帰属者は誰かという点について争われた案件です。

 さいたま地裁平成19年11月16日は、

契約当事者の事実認定にあたっては、

定期預貯金契約・普通預貯金契約・信託契約の別を問わず

 契約行使者(口座開設者

 契約行為者の法的地位(預貯金・信託金の出捐者と契約行為者との関係)

 契約の相手方である金融機関に表示された名義および名義人に関する情報

 通帳や届出印の保管状況

 入金および払戻しをおこなった者など

 を総合的に考慮することが相当である。

 本件事案では、名義や押印のみからは、ZとXのいずれを契約当事者として表示したものかは明らかでない

 しかし、乙山は、Xの代表世話人として、Xの目的を遂行するために、その役職上、Xを契約当事者とする意思で、本件預金契約等をし、口座を開設したことは明らかであると判示しました。

 従来、預金者の認定については、無記名定期預金・記名定期預金については、客観説を採用して判断されていましたが、平成15年2月21日、平成15年6月12日、平成15年6月26日の最高裁判例以降、預金者の認定を巡る議論がわかりにくくなっています。

 また、判例紹介の解説者によれば、定期預貯金契約・普通預貯金契約・信託契約の別を問わずと割り切った判断については、異論もありうるところと解説されています。

 なお、本号は、実務指針 改訂版金融検査マニュアルをふまえた不動産担保評価(上)という題目で、地方銀行に所属されておられる不動産鑑定士の方のわかりやすい記事がのっていました。

 

   にほんブログ村 士業ブログ 弁護士へ  

« 2008年9月 | トップページ | 2008年11月 »

2018年7月
1 2 3 4 5 6 7
8 9 10 11 12 13 14
15 16 17 18 19 20 21
22 23 24 25 26 27 28
29 30 31        

書籍紹介(労働・労災)

無料ブログはココログ