【脳神経外科】 脳腫瘍部分切除術を受けた後に死亡した事案
判例時報No2383号で紹介された東京地裁平成29年10月26日判決です。
第1の争点は、亡Aが悪性高熱症を発症していたかという点です。
裁判所は、現在の医学的知見では、術後悪性高熱症自体が稀である上、術後1時間以上経過して体温が上昇した患者が悪性高熱症を発症している可能性はさらに低いものとなるところ、亡Aの高体温が確認されたのが麻酔終了後約8時間を経過した後であることなどを根拠に、悪性高熱症を発症していたとまではいえないと判断されました。
第2の争点は、悪性高熱症の疑いのあった12月7日午前0時又は8日午前0時までにダントロレンを投与しなかったことに過失があるかという点です。
当該時点んにおける亡Aの症状は、悪性高熱症の疑いの程度は高いものではなかったとして、Yの責任を否定しました。
第3の争点は、本件病院の医師が亡Aの適切な治療を受ける期待権を侵害したか否かという点です。
本判決は、期待権の侵害が成り立ちうる前提として、当該医療行為が著しく不適切なものである必要があるところ、本件医療行為が著しく不適切であるとは認められないので、Xらの主張は理由がないとしました。
適切な医療行為を受ける期待権の侵害も問題となっていますが、最高裁平成23年2月25日判決が、医療行為が著しく不適切なものである事案について検討しうるにとどまると判示しているところ、本判決もこの立場を踏襲しております。
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