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歯科

2022年6月28日 (火)

【循環器科】 カンファレンス鑑定の結果等を踏まえて医師の注意義務の有無について判断された事例

 判例タイムズNo1496号で掲載された東京地裁令和2年5月29日判決です。 

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(世田山・奥の院)
 事例は、先天性心疾患の治療のため心臓手術を受けた生後3か月半余りの乳児が、術後、低酸素性虚血性脳症を発症して重大な脳神経障害を残した症例について、カンファレンス鑑定の結果等に照らし、医師において、術前に再度心エコー検査を実施する注意義務や術中に人工心肺の送血カニューレの位置などを調整する注意義務を負っていたとはいえないとして、診療契約上の債務不履行または不法行為に基づく損害賠償請求が棄却された事例。
 解説には、「本件において、鑑定人の1人は再度エコー検査を実施しなかつたことは不適切である旨の意見を述べていたが、本判決は、その趣旨を吟味するとともに、同鑑定人が、APW(大動脈肺動脈窓)の不存在を断定することは困難であり、これが存在する前提で手術をする必要がある旨述べていることも考慮して、上記意見は法的な意味での実施義務があったという趣旨を述べるものではないとして、他の鑑定人の意見も踏まえ、被告病院の医師らは注意義務①(術前に再度心エコー検査を実施する注意義務)を負っていたとはいえないと判断している。
 このように、鑑定人が医学的見地から述べる意見は、直ちに法的な責任の有無の判断につながるものではなく、裁判所において法的な観点から評価する必要がある。
 医師の診療行為は不適切ではないという鑑定人の意見について、その趣旨や根拠を慎重に検討した上、結論において医師の注意義務違反を認めた裁判例として東京地判令和元年9月12日医療判例解説85号2頁がある。」と説明されています。
 
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(世田山・不動明王)

2022年6月19日 (日)

【脳神経外科】 破裂脳動脈瘤に対する血管内治療であるコイル塞栓術を受けた女性が、術中の前記動脈瘤の再破裂により死亡したことにつき、医師らの手技上の注意義務違反を認定した上で、原判決を変更し、請求を一部認容した事例

 判例時報No2515号で紹介された広島高裁令和3年2月24日付判決です。 

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 主治医が、左側構成成分のネック部分までカバーする立体的なフレームを形成することができなかったところ、これは本件手術当時の医療水準にもとり、医師にフレーミングについての注意義務違反があったと認定しました。
 
 なお、「本件判決によると、本件手術については、コイルを挿入する度などに大量の画像が撮影され、当該画像は、撮影後1ないし2ヶ月はハードディスクに保存されていたが、女性の死後まもなくその父親が病院宛てに質問状を出すなど、医事紛争に発展する可能性が高かったにもかかわらず、何故か、その後、ほとんどの画像が放射線技師により消去されるところとなり、そのため、本件動脈瘤の破裂の瞬間や破裂後に執刀医らがコイルをどのように操作したかなどを裏付けとなる画像が残されていないという事情があった。」
 
 なんとまあ。
 「そのような中で、本判決は、手術記録などのカルテの記載やコイル塞栓術に関する医学文献などを詳細に分析し、義務違反の基準となるコイル塞栓術の医療水準を確定した上で、本件手術における医師の不手際を綿密に認定していった」
 画像が消去されたというのが気になりますね。

2022年5月15日 (日)

【産婦人科】 3億円の賠償支払いが命じられた事例

 判例時報No2512号で紹介された京都地裁令和3年3月26日判決です。

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                              (笠松山)

 無痛分娩のための腰椎麻酔における注意義務違反により母親が重篤な後遺障害を負い、胎児が樹徳な後遺障害を負って約6年後に死亡した事案につき、債務不履行により医療法人に対し、総額約3億円の賠償支払が命じられた事例です。

 原告は、医師が母親に対して腰椎麻酔を行うに際し、カテーテルを硬膜外腔に留めた上で麻酔薬を分割投入する義務に反し、硬膜外針をくも膜下腔まで刺入させ、同所に留置したカテーテルから麻酔薬を一度に注入したこと、また、全脊髄麻酔症状を呈した場合に速やかに呼吸を確保し、血圧の回復ができるよう、人工呼吸器等を準備し、あらかじめ太い静脈路を確保しておく義務があるのにこれをいずれも怠ったことにより発生したと主張し、これに対し、病院側は、注意義務違反については争いませんでした。

 36歳の母親(ロシア国籍)は植物人間状態、子どもは重篤な後遺障害を負い6年後に死亡したという、とても痛ましい案件です。

 まだ若い父親と、母親の実母(ロシアから来日)が、介護をされているようです。

 こんな不幸なことがあっていいのだろうかと思います。

 お悔やみ申し上げます。

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                             (朝倉・野田)

2022年4月22日 (金)

【その他】 経鼻チューブが咽頭部内でとぐろを巻き、その先端が胃に届かない状態で食道内に留置され、そのまま栄養剤等が注入されたため、患者が誤嚥性肺炎によって死亡したことにつき、医師に過失があったとされた事例

 判例時報No2506・2507合併号です。 

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(世田山)
 本判決の特徴は、本件チューブの誤挿入の事実(咽頭部でとぐろを巻いていたために先端に胃が届いていなかったというもの)と、その状態での栄養剤の注入による誤嚥性肺炎と本件患者の死亡との因果関係が認定された事例です。
 本件は、経鼻チューブが留置された状況や、救急搬送時に撮影されたCT等の検査結果、発熱等の全身症状が現れた経過等から誤挿入が認定された事例であり、類似例に乏しいようです。

2022年2月17日 (木)

【内科】 ソリリスを投与中の患者が髄膜炎菌感染症に罹患し症状が急激に悪化して死亡したことについて、担当医に高熱、嘔吐等の症状から髄膜炎菌感染症を疑って速やかに抗菌薬を投与すべき義務を怠った過失があった等として、損害賠償責任を認めた事例

 判例時報No2503号で紹介された京都地裁令和3年2月17日判決です。

 女性患者A(29歳)は、平成28年4月から、大学病院血液内科において、発作性夜間ヘモグロビン尿症の治療のためにエクリズマブ(ソリリス)の継続的な投与を受けており、同年8月、本件病院産科において出産した。

 8月22日午前中、本件病院でソリリスの投与を受けて帰宅したところ、夕方から急激な悪寒、高熱等が生じたあめ、本件病院産科に電話をした。

 対応した助産師Bからは、乳腺炎と考えられるので一晩様子を見るよう指示があったが、その後も症状が治まらず、同日午後10時頃本件病院産科を受診した。

 産科の当直医Cは、診察の結果、ソリリスの副作用により発症率が高まる髄膜炎菌感染症の可能性を考え、Aを血液内科に引き継いだ。

 血液内科の当直医Dは、髄膜炎菌感染症を積極的に疑うことはできないと考え、血液培養検査の指示をして経過観察したが、Aは、同月23日午前4時25分頃にショック状態となり、抗菌薬を投与するも、午前10時43分死亡した。

 同月24日に細菌培養検査の結果が判明し、髄膜炎菌が同定された。 

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(楢原山の丁石地蔵)
 本判決は、医薬品の重大な副作用として添付文書には記載されているものの、国内では死亡例がなく、発症例も少ない疾患が相応に疑われる場合において、抗菌薬を投与すべき義務があったか否かが問題となった微妙な事案において、これを肯定する判断を示したものです。
 我が国を代表する大学病院での医療事故ですが、平成29年に提訴されて令和3年判決ですから、審理期間は相当に長いといえます。
 
 そのような中で、患者側に立たれた代理人弁護士の先生方には、頭が下がる思いです。ネットでご経歴を見ると、医療事故専門というわけでもなさそうです。
 田舎弁護士も、このような弁護士になりたいと思いつつ、初老になってしまいました💦

2022年1月20日 (木)

【歯科】 インプラント治療のトラブル&リカバリー

 デンタルダイヤモンド社から昨年7月に出版された「インプラント治療のトラブル&リカバリー」を購入しました。 

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(笠松山・ガメラ岩)
 編集委員の竹島明道先生によれば、本書は、序章から8章で構成されていますが、以下のとおり説明されています。
「序章では、わが国におけるインプラント治療の碩学である小宮山彌太郎先生に、インプラントを巡るトラブルについて論じていただいた。
 1章では術中に生じたトラブルとして、出血や急変、器材トラブルなど、まさにいま診療室で対処しなければならないトラブルへの対処方法が詳述されており、万が一のときに対応できるものとなっている。
 2章では術後に生じたトラブルとして、痛みや腫れ、知覚異常、インプラント体の除去のポイントなどが解説されており、その後の患者トラブルの防止に役立つ内容となっている。
 3、4章では補綴トラブルへの対処が解説されている。3章では、インプラント体の破折やインプラントシステムの特定法などの機能面にフォーカスし、4章では、ジンジバルラインや歯間乳頭を含む歯周組織の問題など、審美面でのトラブルについて解説されている。
 5章では周囲組織のトラブルとして、インプラント周囲粘膜炎やインプラント周囲炎への対応が解説され、6章ではこれらのトラブルを予防するためのメインテナンスについて、歯科衛生士らの視点を交えて考察されている。
 7,8章では、現在から未来に向けて問題視されつつあるトラブルへの対応法について解説されている。7章では経年的変化への対応として、訪問診療におけるインプラントトラブルの対応法など、人生100年時代を見据えた内容となつており、8章では法律および契約のトラブルとして、医事紛争・係争を未然に防ぐポイントと実際にそこに至ったときの対処法が解説されている。」
 本書は、インプラントを巡る各種トラブルについて、わかりやすく解説されており、知見の乏しい田舎弁護士にも趣旨は理解可能な内容となつております。 

2022年1月10日 (月)

【歯科】 歯学生の口腔インプラント学 

 医歯薬出版から、2014年に出版されていた「歯学生の口腔インプラント学」です。 医学書は薄くても高いです。この書籍も100頁少しの本ですが、8800円します。法律書も高いですが、医学書はもっと高いです💦

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(くるしま海峡)
 田舎弁護士は、興味がある分野については、高額な専門書もお金を惜しむことなく勉強のために自己投資します💦
 歯科関係の書籍やセミナーで、数十万円のお金は使っています。
 7章で構成されています。
 第2章では、口腔インプラント治療の特徴として、①インプラント治療の特徴、②基本構造、③成功基準と治療成績、④適応症と禁忌症、⑤リスクファクター、⑥治療の手順、⑦埋入時期と治癒期間が解説されています。
 医学生の入門書的な位置づけのようです。

2022年1月 3日 (月)

【歯科】 2021年改訂 事例に学ぶ歯科法律トラブルの傾向と対策

 日本歯科新聞社から、2021年改訂歯科法律トラブルの傾向と対策が出ました。著者は、歯科医師として15年の臨床経験のある弁護士の方です(北大歯学部、北大法科大学院卒)。 

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(霊仙山)
 基本的には、現場の歯科医師の先生向けの書籍となっておりますが、一般の弁護士も、臨床の現場というのは疎いので参考になりました。
 3章で構成されています。①法的トラブル、対応、予防の基本、②患者、スタッフ他28のトラブル対応事例、③コロナ禍・災害時対応ー12のQ&Aからとなっています。
 2021年改訂版は、法改正と新型コロナの出現に対応するためのものです。
 法科大学院という制度により、医師、歯科医師、薬剤師、公認会計士等の専門職の方が、司法試験を目指して、弁護士になられることを散見するようになりました。
 専門的なフィールドがあるため、その分野に特化した形の弁護士になられる方が多いように思います。
 他方、田舎弁護士は、医師でもなく、公認会計士でもないことから、専門的なフィールドはありません💦
 もっとも、大半の弁護士が、田舎弁護士と同じような環境にあろうかと思います。田舎弁護士ができることは、今回ご紹介させていただいたような書籍を読んで、地方の弁護士の中では相対的に深掘りができるよう努力させていただくことです。
 頑張りたいと思います。
 

2021年12月27日 (月)

【産婦人科】 減胎手術の事案

 判例時報No2497号で紹介された大阪高裁令和2年12月17日判決です。 

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(笠松山の三叉路)
 妊娠していた5胎の胎児の一部を減胎する手術(減胎手術)について、担当医師が母体に対する危険防止のために経験上必要とされる最善の注意を尽くす義務に違反し、広く使われていた穿刺針よりも太い穿刺針で多数回の穿刺を行ったとして、医療法人に対する損害賠償が認められた事例です。
 減胎手術は、母体保護法の定める術式に合致しない手術である旨や、減胎される胎児の選び方について倫理面の問題が指摘されているところ、減胎手術につき医療過誤として医療側の過失を問題とする裁判例は多いとはいえないようです。
 減胎と言うこと自体が田舎弁護士は初めてきく言葉です💦
 笠松山の三叉路のようにどちらにいったら笠松山に登れるのか、的確な案内板が欲しいですね

2021年11月 4日 (木)

【その他】 胸腔鏡下拡大胸腺摘出術における術者である医師に手技上の過失があるのかが問題とされた事案

 判例時報No2493号で紹介された令和2年12月22日付広島地裁判決です。 

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(伊予富士)
 胸腔鏡下拡大胸腺摘出術とは、胸腺摘出術の一種であり、胸部等に複数箇所の穴(ポート)を開けて、胸腔鏡(内視鏡)やリガシュア等の器具をその穴から挿入し、胸腺をその周囲の脂肪組織とともに、摘出する術式です。
 近時、医学の進歩に伴い、外科手術においては、患部をメスで切るのではなくて内視鏡を使用しての手術が多く行われるようになっています。
 裁判所は、
 亡Zが左腕頭静脈の下縁に1㎝程度の裂傷が存在していたのであるから、同裂傷は、胸腺静脈が左腕頭静脈から枝分かれした根元が切り離され、切離部位が圧迫止血等の操作によってそのまま拡大した結果生じたものと考えるのが自然である
 P2医師が、胸腺静脈が左上頭静脈から枝分かれした根元から5㎜以上離れた部位を切離し、出血が生じたものであれば、左腕頭静脈側に残存した胸腺静脈を胸腺組織等により圧迫することにより止血することができた
 これらの事実を踏まえ、本判決は、P2医師が2本目の胸腺静脈を切離するに際して、枝分かれした根元から5㎜程度離れた部位を切離すべき注意義務を負っていたのにこれを怠り、根元を切離したのであるから過失があると判示しました。

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