【相続】 遺留分

2015年11月14日 (土)

【相続】 弁護士専門研修講座 遺留分ー理論及び実務上の問題点 を読んで

 弁護士専門研修講座(ぎょうせい)の「遺留分ー理論及び実務上の問題点」を再読しました。

 講演者は、松原正明早稲田ロー教授(元裁判官)です。

 第1に、遺留分の算定については、最判平成8年11月26日が判示した計算式によれば、

 個人の遺留分の侵害額=(被相続人が相続開始時に有していた財産の価格+贈与財産の価格-相続債務額)×遺留分率-特別受益財産額-相続によって得た額+遺留分権利者が負担すべき債務額

 相続人として、子ども、A、B、Cがいて、遺言が全ての財産をAに相続させるとした場合、「遺留分権利者が負担すべき債務額」によって、大きく、遺留分の侵害額が異なることになります。

 すなわち、相続人の1人に全て相続させる遺言の場合、債務を含めて相続するのかどうかということです。

 債務を含めて全て相続するということになれば、遺留分権利者が負担すべき債務額はないことになり、そうではなく、相続分に応じて他の共同相続人も均等に負担と言うことになれば、加算されることになります。

 この点について、最判平成21年3月24日からすれば、特段の事情がない限り、債務を含めて全てAが相続するということになりますので、遺留分権利者が負担すべき債務額には加算しないことになります。

 しかしながら、注意しなければならないのは、相続分の指定による相続債務の承継割合を、対外的に主張できるかということですが、これについては、相続債権者に対しては、主張できないということですので、債務が大きいような場合には、注意が必要です。

 第2に、遺留分減殺請求権の行使についてです。

 減殺請求の意思表示は、裁判外、裁判上のいずれにせよ、積極的に、相手方に対して、減殺請求する旨の意思表示をすることが必要です。

 遺産分割協議の申入れが、遺留分減殺の意思表示が含まれているかという点については、遺贈の効力を争うことなく、遺産分割協議の申入れをしたときは、特段の事情がない限り、遺留分減殺の意思表示を含むと判断している先ほどの最高裁判決があります。

 また、遺留分減殺の意思表示が記載された書留内容証明郵便が不在で返戻された場合、意思表示の到達があったかと認められるかについては、

 最高裁は、

 ①受取人が、不在配達通知書の記載その他の事情から、その内容が遺留分減殺の意思表示又は少なくともこれを含む遺産分割協議の申入れであることを十分に推知することができ、

 ②受取人に受領の意思があれば、郵便物の受取方法を指定することによって、さしたる労力、困難を伴うことなく右内容証明郵便を受領することができたなどの事情の下においては、遺留分減殺の意思表示は、社会通念上、受取人の了知可能な状態に置かれ、遅くとも留置機関が満了した時点で受取人に到達したものと認められると判断しました。

 第3に、調停の申立によって、意思表示の到達があったかと見るべきかどうかですが、申立書は送達ではなく送付であることから、相手方が受け取ったかどうかの受領書もとっていないことから、それとは別に内容証明郵便によって通知する方が無難と言われています。

 

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2015年11月11日 (水)

【相続】 弁護士専門研修講座 遺留分ー最近の判例に現れた実務上の問題点

 弁護士専門研修講座で、松原正明裁判官が講演された、遺留分ー最近の判例に現れた実務上の問題点を再読しました。

 かなり難しい講演内容で、(-_-)゜zzz… 方も、いたかもしれませんね。

 ① 遺産分割協議申入れ、遺産分割調停の調停・審判の申立てには、遺留分減殺の意思表示が含まれているか。

 ② 内容証明郵便の不在返戻と意思表示の到達

 という論点については、最判平成10年6月11日を紹介されていました。

 ③ 遺留分の侵害額については、(被相続人が相続開始時に有していた財産の価額+贈与財産額-相続債務額)×慰留分率-特別受益財産額-相続によって得た額+遺留分権利者が負担すべき債務額 という計算式で算出されますが、この計算式の具体的なあてはめについての紹介がなされていました。

 ④ 共同相続人が被相続人より受けた特別受益については、最判平成10年3月24日が、対象説を明らかにしていますが、この講演では、対象説の問題点を2つ程度紹介されています。

 ⑤ 第三者のためにする無償の死因処分は、贈与と同視しうるものについては、遺留分減殺の対象となりますが、最判平成14年11月5日はこれを否定しております。

 ⑥ 遺留分減殺請求と遺産分割との関係は、田舎弁護士には難しすぎて、コンパクトな紹介が困難です。。。。

 

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2014年8月16日 (土)

【相続】 精神上の障害により事理を弁識する能力を欠く常況にある者に法定代理人がない場合と民法158条1項の類推適用 最高裁平成26年3月14日判決

 判例時報N02224号で紹介された最高裁平成26年3月14日判決です。

 Aが長男Yに全ての財産を相続させる内容の遺言書を作成し、平成20年10月に死亡しました。

 Aの法定相続人は、妻Xの他、Yを含む5人の子どもでした。

 Xは、Aの死亡時において、Aの相続が開始したこと及び本件遺言の内容が減殺することのできるものであることを知っていました。

 Aの相続の開始から1年経過経過前の平成21年8月に、Xについて後見開始の審判が申し立てられた。

 Xの成年後見人は、平成22年4月に、Yに対して、遺留分減殺請求を行使した。

 第1審、第2審ともに、時効の期間満了前に後見開始の審判を受けていない者に民法158条1項は類推適用されないとして、時効の停止の主張を排斥して、1年の遺留分減殺請求の時効の期間満了により同請求権の時効消滅を認め、Xの請求を棄却しました。

 これに対して、Xが、最高裁に上告受理申立てを行いました。

 本判決は、

 時効の期間満了前6ヵ月以内の間に精神上の障害により事理を弁識する能力を欠く常況にある者に法定代理人がない場合において、少なくとも、時効の期間の満了前の申立てに基づき後見開始の審判がされたときは、民法158条1項の類推適用により、法定代理人が就職した時から6ヵ月を経過するまでの間は、その者に対して、時効は、完成しないとして、原審を破棄して、差し戻しました。

 差し戻し審では、Xが、時効の期間の満了前6ヵ月以内の間に精神上の障害により事理を弁識する能力を欠く常況にあったか否かについて、審理されることになりました。 

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2013年9月11日 (水)

【相続】 民法900条4号ただし書前段を準用する同法1044条が憲法14条1項に違反しないとされた事例 東京地裁平成25年3月15日判決

 判例時報No2190号(9月1日号)で紹介された東京地裁平成25年3月15日判決です。

 民法900条4号但し書き前段が、非嫡出子の法定相続分が嫡出子の法定相続分の半分であることから、遺留分割合もそれに応じて少なくなっていることが、憲法に違反するのかという論点です。

 先般でた最高裁判決は、憲法違反を認めていたので、この東京地裁判決も、控訴審では憲法違反を受け入れ変更されることになるのでしょうね。

 ただ、この事案は非嫡出子側Xの言動に大きな問題がある事案でした。

 まず、父親Yは、ある女性と情交関係を結んだのですが、その女性はそのことについては誰にも告げず、また、事情を知った戸籍上の父親は、自己の子どもとして育てることにしたため、XはYのことは40歳ころまで知りませんでした。これ自体には問題がありません。

 ところが、その事情を知ったXは、Yに対して、「おやじ、冷てえじゃないか」、「おれはベトナム戦争にいって人を殺してきた」などと言ったり、ほぼ連日のように、Y宅ののぞき込み、℡連続、長時間の座り込み等の行為に及んだりしたようです。

 そして、Xの行為がエスカレートし、また、Yの体調も悪化したことから、接触禁止の仮処分を行い、YがXに対して逆に1000万円を支払う和解を成立させています。

 裁判所も、「原告が松夫に対して接触を求める理由は、主として金銭目的であり、真の親子としての情愛を求めるものであったとは認められない」、「原告の松夫及びその家族に対する行為は、常軌を逸した嫌がらせ、生活妨害行為といわざるをえず」などと判断しています。

 なんとかならないのでしょうか?  

 私は、出生した子どもには確かに何ら落ち度はありませんが、そうはいっても、法律婚の子どもと同じ相続分というのは、どうなんでしょうか? 現時点では、まだまだと思っている国民も少なくないんじゃないかな~と思います。

 そうはいっても、先般、報道されたケースでは、非嫡出子側で被相続人が生活されていたようなので、この場合には非嫡出子の取り分が小さいというのも納得いきませんが、被相続人が遺言書を作成することである程度は対応できます。

 先ほど紹介した例は控訴されているようですが、控訴審ではXの取り分がさらに大きくなるのでしょうね・・・

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2012年6月20日 (水)

【相続】 相続分の指定が遺留分減殺請求により減殺された場合の効果

 金融法務事情1947号(6月10日号)で紹介された最高裁平成24年1月26日判決です。

 決定要旨は、以下のとおりです。

1 遺留分減殺請求に相続分の指定が減殺された場合には、遺留分割合を超える相続分を指定された相続人の指定相続分が、その遺留分割合を超える部分の割合に応じて修正される。

2 特別受益に当たる贈与についてされた当該贈与に係る財産の価額を相続財産に算入することを要しない旨の被相続人の意思表示が遺留分減殺請求により減殺された場合、当該贈与に係る財産の価額は、上記意思表示が遺留分を侵害する限度で、遺留分権利者である相続人の相続分に加算され、当該贈与を受けた相続人の相続分から控除される。

 本決定は、相続分の指定に対して遺留分減殺請求がされた場合における効果および持戻し免除の意思表示に対して遺留分減殺請求がされた場合における具体的相続分に算定方法を示したものであり、実務上参考になるとされています。

 ただ、相続分の指定による遺言って、私は、1回しか見たことがないなあ~

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