【親子】

2020年6月23日 (火)

【親子】 老親に会えない子どもたち

 子どもたちの関係が悪いことから、老親を看ている子どもが他方の子どもの老親との面会交流を妨害しているケースのご相談は、都会、地方を問わず、最近は、相談件数としては増えているように思います。

 このようなケースは、まずは、家裁の親族間調整の調停を申し立てることを勧めています。親族間でのトラブルは、まずは、できるだけ話し合いで解決すべきであると考えるからです。

 事案はダイブ異なりますが、駆け出し弁護士のころ、(子どもに会いたくない)老親からの依頼で受けたことがあり、相手方である子どもさんに老親の意向を伝えたことがあります。ただ、この事案は、あることがきっかけで、老親と子どもさんが急速に仲直りをされて、相手方であったはずの子どもさんから、弁護士費用を請求して下さいと言われて、さすがに結構ですと言って、事件を終了させたことがあります。

 数万円の実費を立て替えていましたが、回収不能となりました。

 血縁のある親子の関係は、他人からはうかがい知ることはできません。

 それでは話を戻します。

 調停をしても、面会が実現できない場合には、下の横浜地裁の事案のように、面会妨害禁止の仮処分を申し立てるというのが、一般的ではないでしょうか。

 ただし、背景には、様々なものがあります。親子関係の心情に基づくもの、親の遺産トラブルの前哨戦のものなど・・・・

 駆け出し弁護士のころは、表層的なもののみで、動いてしまうこともありますが、注意が必要です

【事件番号】 横浜地方裁判所決定/平成30年(モ)第4031号
【判決日付】 平成30年7月20日
【判示事項】 子と施設(老人ホーム)に入居する両親との面会の妨害を禁止する仮処分決定に対する異議申立てについて、原決定を認可した事例
【掲載誌】  判例時報2396号30頁


       主   文
 一 上記当事者間の横浜地方裁判所平成三〇年(ヨ)第二四四号面会妨害禁止仮処分命令申立事件について、同裁判所が平成三〇年六月二七日にした仮処分決定を認可する。
 二 申立費用中、本件保全異議申立以後のもの及び本件保全異議申立以前の部分のうち、債権者と債務者との間に生じたものは、全て債務者の負担とする。
       理   由

第一 申立ての趣旨
 一 上記当事者間の横浜地方裁判所平成三〇年(ヨ)第二四四号面会妨害禁止仮処分命令申立事件について、同裁判所が平成三〇年六月二七日にした仮処分決定を取り消す。
 二 債権者の本件仮処分命令申立てを却下する。
 三 申立費用は債権者の負担とする。
第二 事案の概要等
 一 事案の概要〈編注・本誌では証拠の表示は省略ないし割愛します〉
 本件は、債権者が、債権者及び債務者の父であるA及び同母であるB(以下「A」及び「B」を合わせて「両親」という。)が入居している老人ホーム及び債務者が債権者と両親との面会を妨害していると主張し、人格権を被保全権利として、債務者及び同老人ホームを経営する会社は債権者が両親と面会することを妨害してはならないとの仮処分命令を申し立てたところ、横浜地方裁判所が、債務者及び前記会社のため各金二万円の担保を立てさせて認容する旨の決定をしたことから、債務者がこれを不服として保全異議を申し立てた事案である。
 二 主要な争点及び当事者の主張
 本件の主要な争点は、被保全権利の存否及び保全の必要性である。
 債権者の主張は、「仮処分申立書」及び平成三〇年七月九日付け「答弁書」記載のとおりであるので、これらを引用するが、要するに、被保全権利については、債務者は両親を連れ去り、同人らが入居している老人ホームに対し、同人らの所在を明らかにしないように指示をするなどして、債権者が両親と面会する権利を著しく侵害しているところ、債権者には、人格権等により導かれる、親族である両親との面談を不当に妨害されないという地位に基づく妨害排除請求権及び妨害予防請求権が存すると主張する。
 また、本案判決の確定を待っていては、債務者の妨害により、債権者の損害が拡大し、回復困難となる危険性が高いことから、保全の必要性が認められる旨主張するものである。
 債務者の主張は、同年六月二二日付け「答弁書」及び「保全異議申立書」記載のとおりであるので、これらを引用するが、要するに、債務者は、両親から懇願されたため両親を横浜に連れてきたのであり、連れ去りの事実はなく、また、債務者は、両親が債権者との面会を拒絶していることから、その意向に沿って施設にその旨伝えているにすぎず、面会妨害の事実はなく、債権者に対する権利侵害はないと主張し、さらに、両親は平穏な生活を送っており、債権者が施設に来ることに怯えている状態にあり、保全の必要性も認められないなどと主張するものである。
第三 当裁判所の判断
 一 前提事実
 当事者間に争いのない事実及び一件記録により容易に認められる事実は以下のとおりである。
 (1) A(昭和六年××月××日生まれ、住所・横浜市《番地等略》)は債権者及び債務者の実父、B(昭和五年××月××日生まれ、住所・横浜市《番地等略》)は債権者及び債務者の実母であり、債務者が同人らの長男(兄)、債権者は長女(妹)である。
 (2) Aは平成二五年九月一〇日から通院している医院において、アルツハイマー型認知症と診断されている。また、Aは、介護認定審査会において、要介護1に該当すると判定され、平成二九年四月二七日付けで同通知を受けた。
 Bは、平成二七年一二月二一日にアルツハイマー型認知症との診断を受けた。また、Bは、平成二九年四月二五日、前記審査会において、要介護状態の区分を要介護2に変更する旨判定され、翌二六日付けで同通知を受けた。
 (3) 両親は、債権者の住居の近隣である福岡県小郡市内のA所有の自宅に居住していたところ、同年六月二〇日、債務者が両親を連れて同自宅から横浜市に移動したことにより、両親は同自宅を退去した。その際、債権者に対し、事前に両親が退去する旨の連絡はなかった。
 (4) 同年九月二九日頃、債権者は債務者及び両親を相手方として横浜家庭裁判所に、親族間の紛争調整の調停申立てをした。
 同調停の第一回調停期日(同年一一月八日)に債務者及び両親は出頭しなかったため、家庭裁判所調査官が同人らに対し出頭勧告書を送付し、債務者に対し調査を実施するので同月二〇日に裁判所へ出頭することを求めたとろ、同日、債務者は同調査官に対し、調停には一切出席しないこと、両親の希望で債務者が両親の介護の責任を持っていること、債務者が両親に代理して両親の回答をしていること、調停には応じる考えはないことなどを電話で伝えた。
 前記調停は、同年一二月六日に第二回期日が開かれたが、債務者及び両親は出頭せず、不成立となった。
 (5) 債権者は、同年一一月頃、地域包括支援センターに問い合わせをしたところ、両親は施設に入所中であるが、債務者から施設名を教えないように言われている旨の回答を受けた。
 (6) 債権者は、同年一二月頃、横浜家庭裁判所に対し、A及びBについて、それぞれ成年後見開始の審判を申し立てた。
 家庭裁判所調査官による親族調査の際に、債務者は、Aの所在については明らかにしたくないとの意向を示した。また、同調査官が両親が入居していると想定される施設へ問い合わせをしても、入居しているか否かについて回答を得られなかった。
 上記両審判申立事件について、現在に至るまで精神鑑定を実施して判断能力の程度を判定することができていない。
 (7) 両親は、平成二九年六月二〇日以降、債務者の住居で生活をしていたが、債務者が包括支援センターに相談をするなどして、同年一〇月一四日頃から老人ホームに入居した。その後、同年一一月頃、横浜市××区に所在する老人ホーム「Q」に転居し、現在まで同施設に入居している。
 (8) 本件保全異議申立事件の審尋期日において、債権者は、債権者が両親と面会することにつき債務者が応じないのであれば、家庭裁判所調査官と両親が面会することで、債務者に成年後見開始審判申立事件に協力することを求める旨の意向を示したが、債務者は、家庭裁判所調査官の調査にも応じるつもりはない旨述べた。
 二 被保全権利の存否について
 債権者は、両親の子であるところ、前記認定事実のとおり、両親はいずれも高齢で要介護状態にあり、アルツハイマー型認知症を患っていることからすると、子が両親の状況を確認し、必要な扶養をするために、面会交流を希望することは当然であって、それが両親の意思に明確に反し両親の平穏な生活を侵害するなど、両親の権利を不当に侵害するものでない限り、債権者は両親に面会をする権利を有するものといえる。
 そして、前記認定事実のほか、債務者提出の証拠及び本件に顕れた一切の事情を考慮しても、債権者が両親と面会することが両親の権利を不当に侵害するような事情は認められないことから、本件被保全権利は一応認められる。
 三 保全の必要性について
 前記認定事実によると、両親が現在入居している施設に入居するに当たり債務者が関与していること、債務者が債権者に両親に入居している施設名を明らかにしないための措置をとったこと、債権者が両親との面会に関連して、家庭裁判所に親族間の紛争調整調停を申し立てる方法をとってもなお、債務者は家庭裁判所調査官に対しても両親の所在を明らかにせず、調停への出頭を拒否したこと、本件審尋期日においても、債務者は、債権者と両親が面会することについて協力しない旨の意思を示したことが認められる。
 これらの事情を総合すると、債務者の意向が両親の入居している施設等の行為に影響し、債権者が現在両親に面会できない状態にあるものといえる。また、債務者の従前からの態度を考慮すると、上記の状況が改善する可能性は乏しいものといえ、今後も、債務者の妨害行為により債権者の面会交流する権利が侵害されるおそれがあるものといえる。
 なお、債務者は、両親の意向を尊重しているだけで、債務者が債権者と両親との面会を妨害している事実はないなどと主張するが、前記のとおり、債務者の行為が、債権者が両親と面会できない状況の作出に影響していることは否定できない。
 以上によると、債権者が両親に面会することにつき、債務者の妨害を予防することが必要であることから、本件保全の必要性も認められる。
 四 結論
 よって、本件仮処分命令申立ては理由があるから、これを認容した原決定を認可することとし、主文のとおり決定する。
  (裁判官 宮澤睦子)横浜地方裁判所 平成30年(モ)第4031号 保全異議申立事件 平成30年7月20日

 



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2019年4月14日 (日)

【親子】 親に会いたい!

 判例時報No2396号で紹介された横浜地裁平成30年7月20日決定です。

 

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 この事案は、認知症で老人ホームに入居している父Aと母Bの長女Xが、長男Yに、XとA及びBとの面会を妨害されていると主張して、人格権を被保全権利として、老人ホームとYを相手方とされて、XがA及びBと面会することを妨害してはならないとの仮処分命令を申立てた事案です。
 原審は、Xの仮処分を認めたことから、Yが不服として異議申し立てをし、仮処分決定の取り消しを求めたという事案です。
 本決定も、原審と同様、仮処分を認めました。
 解説によれば、「近時、財産のある高齢者を囲い込み、他の親族との面会を拒否する、というトラブルが増えているが、本判決は、前記の通説・判例に依拠し、この両親に面会する権利を認めた初めての画期的な事例であり、今後の類似事案の処理の参考となる重要な決定として紹介する次第である」
 確かに、このような相談は散見されます。。。今までは、どうしようもないねと言っていたのが、今後は、仮処分でもしますか というアドバイスに変わると思います。

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2019年1月 2日 (水)

【親子】 母親の扶養

 家庭の法と裁判No17号で紹介された広島高裁平成29年3月31日決定です。

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 原審申立人B(参加人【母D】の二男)が、原審相手方ら(参加人の長男A及び三男C)に対し、参加人の扶養料の支払い並びに参加人及び同人の亡夫Eへの過去の扶養料の求償を求めた事案について、

 子の老親に対する扶養義務は生活扶助義務と解され、

 扶養料の額は被扶養者の生活を維持するために必要である最低生活費から被扶養者の収入を差し引いた金額を超えず、かつ、

 扶養義務者の余力の範囲内の金額とすることが相当であり、

 また、扶養義務者間の分担額を検討するに際しては、扶養義務者の配偶者の年収を斟酌することが許されるなどして、扶養料及び過去の扶養料の求償額を定めた事例

 原審は、Aにつき、月額1万7200円、Cにつき、月額4万6700円をDに支払うこと、過去の扶養料については、Aにつき、168万6081円、Cにつき、457万4763円を、Bに支払うよう命じました。

 これに対して、Aのみが即時抗告しました。

 その結果、Aは、Dに対して、月1万3450円を支払う、Bに対して、86万2535円を支払うということになりました。

 過去の扶養料の求償も、この手続きで請求できるのですね。

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2016年2月10日 (水)

【親子】 抗告審において、被抗告人(子)が抗告人(母)に支払うべき扶養料の増額が認められた事例

 家庭の法と裁判第4号で紹介された札幌高裁平成26年7月2日決定です。

 お母さんが、子どもに対して、生活費(月額)は27万6700円は必要だとして、年金部分の7万6725円を控除した19万9975円の請求をしたところ、

 第1審は、抗告人の生活費としては月額16万5700円が妥当だとして、扶養料を月額9万円としたことを、抗告人が不服として、即時抗告したという事案です。

 第2審は、扶養料の額は、抗告人の必要とする事故の平均的生活を維持するために必要な最低生活費から抗告人の収入を差し引いた額を超えず、かつ、被抗告人の扶養余力の範囲内の金額とするのが相当であると判示した上、総務省統計局の家計調査報告をもとに抗告人の最低生活費を算出して、第1審を変更して、扶養料を月額11万円としたようです。

 もともと、子どもは、医師でもあり経営の才覚もあったことのようでして、複数の病院を経営して成功した後に、母親(子どもの父親である前夫とは離婚)を理事として遇して、月額40万円の報酬を支払っていたようです。

 また、退職する際には、432万円程度のお金も支払っています。

 ところが、母親は、再婚した夫とも離婚し、また、子どもとも折り合いが悪くなり、結局、理事として再任されずに、ついには、生活保護の申請を行うようなところまでに至ったようです。

 あまりほめられたお母さんではなさそうな印象を受けました。

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2014年12月 2日 (火)

【親子】 夫と民法772条により嫡出の推定を受ける子との間に生物学上の父子関係が認められないことが科学的証拠により明らかであるなどの事情がある場合における親子関係不存在確認の訴えの許否 最高裁平成26年7月17日判決

 判例時報No2235号で紹介された2つの最高裁平成26年7月17日判決です。

 同じような事案が、旭川と大阪であったみたいです。

 最高裁は、夫と子との間に生物学上の父子関係が認められないことが科学的証拠により明らかであり、かつ、夫と妻が既に離婚して別居し、子が親権者である妻の下で監護されているという事情があっても、子の身分関係の法的安定を保持する必要が当然になくなるものではないから、上記の事情が存在するからといって、同条による嫡出の推定が及ぼなくなるものとはいえず、親子関係不存在確認の訴えをもって当該父子関係の存否を争うことはできないものと解するのが相当である

 法律上の父子関係が生物学上の父子関係と一致しない場合が生ずることになるが、同条(民法772条)及び774条から778条までの規定はこのような不一致が生じることをも容認しているものと解される

 嫡出推定の働く場合には、注意しないといけませんね。 

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2014年9月 5日 (金)

【親子】 認知者が血縁上の父子関係がないことを理由に認知の無効を主張することの可否 平成26年1月14日付け最高裁判決

 判例時報No2226号で紹介された最高裁平成26年1月14日判決です。

 血縁上の父子関係がないことを知りながらYを認知したXが、Yに対し、自らした認知の無効を主張して、認知の無効の訴えを提起した事案です。

 最高裁は、結論として、認知者は、民法786条に規定する利害関係人に当たり、自ら認知の無効を主張することができること、この理は、認知者が血縁上の父子関係がないことを知りながら認知した場合においても異なることはないと判断しております。

 もっとも、制限の必要がある場合には、権利濫用の法理などによりこの主張を制限することも可能であるとしております。

 まあ、認知者が認知するに至る事情は様々ということなのでしょう。 

 

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2011年1月26日 (水)

【親子】 産院で取り違えられ生物学的な親子関係がない夫婦の実子として戸籍に記載され実親子と同様の生活実体を長期間形成してきた兄に対して、両親の死後、遺産争いを直接の契機として戸籍上の弟らが提起した親子関係不存在確認請求が権利濫用に当たるとされた事例 東京高裁平成22年9月6日判決

 判例時報No2095号(平成23年1月21日号)で紹介された裁判例です。

 タイトルで記載しているように、東京高裁は、権利濫用を根拠に、親子関係不存在確認請求を棄却しました。

 藁の上の養子の場合には、平成18年7月7日最高裁判決が、権利濫用を理由に、親子関係不存在確認請求を認めませんでしたが、今回のケースのように、「産院で取り違えられた場合」についても同判決の射程範囲であるかどうかが問題となりましたが、高裁はその射程を広げたものとして注目されています。

 控訴人の方は、DNA鑑定の結果に、大変驚いたでしょうね。

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2009年8月 5日 (水)

【親子】 親子関係不存在確認請求が著しく不当な結果をもたらすとまではいえず、権利濫用にあたらないとして、請求が認容された事例(名古屋高裁平成20年12月25日)

 判例時報No2042号(平成21年8月1日)で紹介された名古屋高裁平成20年12月25日判決です。

 いわゆる「藁の上からの養子」に対する他の実子からの親子関係不存在確認請求訴訟が権利濫用として許されないかどうかが問題となった事案です。

 本判決は、親子関係などの身分関係存否確認訴訟は基本的身分関係の存否につき争いがある場合に対世効を有する判決をもって画一的確定を図るものであること等から、真実の血縁関係と戸籍の記載が乖離する場合には原則として身分関係の存否確認を請求し得ると述べた。

                  ↓ しかし

 請求の背景となっている具体的な状況と実際の結果に照らし、これを権利の行使として認めることが社会通念上不当であると判断されるような場合は、例外的に権利の濫用として許されないものというべきであるとした。

                  ↓ そして

 具体的には、

① 実の親子と同様の生活の実体のあった期間の長さ

② 判決をもって実親子関係不存在を確定することにより、子及びその関係者の受ける精神的苦痛、経済的不利益

③ 改めて養子縁組をすることにより子の身分を取得する可能性

④ 親子関係不存在確認請求訴訟をするに至った経緯、動機、目的

⑤ X以外に著しく不利益を受ける者の有無

 を総合して、実親子関係の不存在を確定するkとおが著しく不当な結果をもたらすといえるときには、当該請求は権利濫用に当たり許されない

                    ↓ あてはめ

(1)現時点でABの実子であることを否定されることによるYの精神的打撃は小さいものではないが、Yは中学生のころからABの実子ではないこと知っていたので、その精神的打撃は甚大であるとまでは認められないこと

(2)既にABは死亡しており、Yは改めて養子縁組をすることはできず、その相続権を失うが、YはAB夫婦から大切に育てられ、結婚の際にも事実上の財産分けを受けていたと認められること

(3)他方、Xは大学進学を断念して家業を継ぎ、病弱のAに代わり家業を盛りたて財産を形成維持してきたこと

(4)Xによる訴訟提起の直接のきっかけは、家業廃業に伴いAの遺産である宅地を処分して借入金を返済しようとしたところ、Yが同意しなかったことにあり、本件訴訟の主たる目的はYの相続権を否定することにあると認められること

 から、権利濫用にはあたらないと判断しました。

 事実関係からの記載からは、Xは、Yやその夫に対して資金援助を行っていること、Yが破産申請を行った際に相続により得た財産はないと申告していること、もともとYは土地の売却に判をおすと言っていたのに、自分の相続分が考慮されていないとして判を押さなかった事情をうかがうことができます。

 とすれば、結論的には、Xを勝たせるべきであり、高裁の判断は妥当と考えられます。

 

 

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