【子ども】

2017年6月 8日 (木)

【子ども】 父(同居親)の意に反して母が長女を連れて別居した行為は、当時すでに婚姻は破綻し協議困難だった等の事情から、親権者指定の障害とはならないと判示した事例 東京高裁平成29年1月26日判決

 昨日の続きです。 Kimg6764
 Xによる長女Aを伴う別居に関しては、

 別居当時Aは満2歳4ケ月であり、業務が多忙なYにAの監護を委ねることは困難であり、破綻的別居で予めAの監護について協議することは困難であつたとし、

 Xはそのころ8回にわたり面会交流の場を設け、更に電話による交流もさせていた

 平成22年9月26日以降は面会交流をさせなかったが、これは同月8日にYがXに対し、AとYがテレビ番組で放映される旨、他のマスメディア関係者もこの問題をとりあげる旨等を記載したメールを送り、実際に同日Yがマスメディアに提供した面会交流時のAの映像が、目の部分をぼかしが入れられたものの、放映され、Xがこれに衝撃を受けたことによるものである(Xはマスメディアの取材やYによるAによる撮影がないことを条件に同月26日の面会に応じたもの)から、これをもってAの利益の観点からみて、Xが親権者としてふさわしくないとは認めがたいと判断しております。

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 解説によれば、「最近の家裁実務は、例えば『監護の開始が相手方の承諾を得ていなくても、その具体的な経緯、子の年齢や意思等によっては、それだけでは直ちに法律や社会規範を無視するような態様で監護が開始されたとまではいえない場合もある』とする。」と説明されており、最近の裁判例として東京家裁平成22年5月25日の審判例を挙げています。

 経験上、妻が、夫の同意なしに子を連れて妻の実家に戻るというケースは、度々遭遇しております。

 このようなケースにおいては夫からは強い反発が予想されますが、夫婦間が激しく対立をしている中で、相互の不信感が増している関係の下では、妻が子を連れて実家に戻るということを事前に夫に話をすれば、妻のみがたたき出されるということもありえることから、非常に難しいところです。

 ケースバイケースでの対応になり、微妙な事案であれば、裁判官によっては、母による子の連れ別居は違法と評価される可能性もありうるところですが、母が主たる監護者であれば、幼児を残して一人で別居することは、反対に主たる監護者として無責任とも評価されかねず、判断の難しいところです。

 最近は、特に夫側から、「連れ去り」等と妻のみならず代理人弁護士に対してまで強いクレームを受けかねないような状態になっております。田舎弁護士自身は、別居に至っても、どちらの立場にたっても、面会交流に大きな問題がない事案と判断した場合には、監護親の危惧感を取り除き、面会交流を勧めるようしております。田舎弁護士も父親ですので、子どもに会いたいというお父さんの気持ちはわかります。 

 とはいえ、この裁判例のように、監護親が望んでいない面会交流の際の状況をマスコミ等に取材させるという手段に出られた場合には、その後の面会交流が消極的になったとしても、やむをえなかったのかもしれません。

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 アドバイスが難しい相談の1つです。

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2017年6月 7日 (水)

【子ども】 母と年間100日間面会させるとした父を長女の親権者とした1審判決を変更して、主たる監護者である母をその親権者に指定した事例 東京高裁平成29年1月26日判決

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 判例時報No2325で紹介された東京高裁平成29年1月26日判決です。

 高裁は原審と異なりオーソドックスな判断をしたという印象を受けました。

 高裁は、

 親権者指定の判断基準として、①これまでの子の監護養育状況、②子の現状や父母との関係、③父母それぞれの監護能力や監護環境・監護に関する意欲、④子の意思その他子の健全な生育に関する事情を総合的に考慮して、子の利益の観点から判断すべきであるとした上で、

 面会交流の頻度等に関しては、親権者を定めるにあたり総合的に考慮すべき事情の1つであるが、父母の離婚後の非監護者との面会交流だけで子の健全ね生育や子の利益が確保されるわけではないとして、前記①乃至④について総合的な観点から検討を加える。

 そして、年間100日面会交流のYの主張に対しては、

 本件判決は、

 XとY宅は片道2時間半程度離れており、現在小学校3年生のAが年間100回の面会交流のたびに両宅を往復するとすれば、身体への負担のほか、学校行事への参加、学校や近所の友達との交流等にも支障が生ずるおそれがあり、必ずしもAの健全な生育にとって利益になるとは限らない

 他方、Xは、Y・A間の面会交流の頻度は当面月1回を想定しており、当初はこの程度で面会交流を再開することがAの健全な生育にとって不十分でAの利益を害するという証拠はない

 以上のほか、Aの現在の監護養育状況にその健全な生育上問題はなく、Aの利益からみてAに転居・転校させて現在の監護養育環境を変更しなければならないような必要性があるとの事情はみあたらず、Aの利益を最も優先して考慮すれば、その親権者をXと定めるのが相当であると判断しました。

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 原審は、「フレンドリーペアレント」に傾注し過ぎたものであり、控訴審では逆転が予想されていましたが、案の定、逆転という結果になりました。


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2017年5月 8日 (月)

【子ども】 子どもの意思表示をどう評価するか PAS・PA問題

 判例時報No2323号で紹介された東京家裁平成28年10月4日付決定です。

 PAS・PA問題という言葉自体は知りませんでしたが、その内容は昔から言われていることでした。

 つまり、未成年者の意思表示をどう評価するかという議論のおいて、未成年者の場合、15歳以上の子の場合にはその子の陳述を、それ以下の未成年者でも年齢に応じた子の意思を尊重しなければならないと定められていますが、

 未成年者が意思表示をしても、それは監護権者の影響によるものであり、子の真意ではないとする認定判断がされることがあり、本決定でも同様です(面会交流実施義務が確定した抗告審決定時の12歳(中学1年生)の面会拒否の意思は、監護親にゆがめられたものとして考慮しなかったこと)が、このことが、最近、アメリカで、PAS・PA問題として議論されているようです。

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2017年5月 6日 (土)

【子ども】 面会交流審判未確定の段階における面会交流権侵害(不法行為)に基づく損賠賠償請求

 判例時報No2323号で紹介された東京地裁立川支部平成28年2月5日判決です。

 裁判所は、面会交流の審判が未確定であるうちは、面会交流権は抽象的なものにすぎず、いまだ具体的に形成されているものではないから、不法行為の被侵害利益とはいえないと判断して、損害賠償請求を認めませんでした。

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 面会交流の審判により具体的に形成されているものではければ、原則として難しいようです。

 法律相談の時に、非監護親の方から、今すぐ子どもとの面会交流をしたいと希望されることが少なくないですが、まずは、調停を含むお話し合いから進めることになります。

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2017年4月20日 (木)

【子ども】 面会交流の方法を変更した審判例!?

 家庭の法と裁判No9号で紹介された東京高裁平成28年4月26日決定です。

 面会交流の方法について、原審は、月1回6時間の面会交流をすることを認めましたが、抗告審は、それを変更して、非監護親と未成年者らとの交流が長らく途絶えていたことなどを考慮し、最初の数回は監護親の立ち会いを認め、また、月1回の面会交流の時間について、最初は2時間から始め、回数を重ねながら、4時間、6時間と段階的に伸ばすことを定めました。

 この種の事案は、監護親が、未成年者の否定的な感情を自らの主張の根拠にすることが多いですが、この場合は、未成年者の真意の所在や、未成年者が真に否定的な感情を有するに至ったとするとするならば、その経緯や背景事情を的確に把握することが重要とされています。

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2017年3月 8日 (水)

【子ども】 間接強制可能な面会交流審判の実情と留意点

 判例タイムズNo1432号で紹介された論文です。

 どのような場合に間接強制可能な審判をするのが相当であるかという議論です。

 「再調停・審判型や、面会拒絶型に該当する場合には、間接強制可能な審判をすることが相当といえることが多いといえる。

 また、今回分析対象とした事例の中には、手続非協力型に該当するもので間接強制可能な審判をしたものはなかったが、監護親の手続に協力しない態度から、面会交流に対する非協力的な姿勢がうかがわえる場合には、面会拒絶型に該当する場合と同様に、間接kょう生可能な審判をすることが相当といえることが多いと考えられる。

 もっとも、非監護親の面会交流の内容についての希望や子の年齢、これまでの面会交流の実績、非監護親と子の関係、非監護親の言動等によっては、上記の3類型に該当している場合であっても、間接強制可能な審判をしないことが相当な場合もあろう。

 これに対し、上記の3類型に該当しない場合については、基本的には、監護親側の不合理な事情で面会交流の履行が期待できないとまでは認められないことが多いから、間接強制可能な審判をすることが相当といえることはほとんどないであろう」

と 説明されているのは、今後の参考になります。

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2017年2月 1日 (水)

【子ども】 どっちが、監護権者になれるの?

 判例タイムズNo1431号で紹介された名古屋高裁金沢支決定です。

 抗告人と相手方の居宅を行き来しながら一種の共同監護に服している未成年者に関し、監護者をどちらか一方に定めるのは相当ではないとして抗告人の申立てを却下した原審に対して、

 原審判後の状況を踏まえた当事者双方の監護状況及び監護者としての適格性、両者間の紛争の現状及び未成年者らに与える影響、未成年者らの意向・心情等について、特に家庭裁判所調査官の専門的な視点による調査を含めて、更に審理を尽くし、その上で、監護者指定の要否等を見極める必要があるとして、原審判を取り消し、差し戻しをしました。

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2017年1月12日 (木)

【子ども】 弁護士専門研修講座 こどもをめぐる法律問題

 ぎょうせいから、昨年7月10日に、「子どもをめぐる法律問題」が出版されました。

 5部構成です。

 ① 子どもの手続代理人の実務

 ② 親権・監護権の実務

 ③ 学校問題

 ④ 未成年後見

 ⑤ 児童虐待と法制度

 冬休みでも一読しておく必要があると感じました。

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2016年12月24日 (土)

【子ども】 面会交流と間接強制

 判例タイムズNo1430号で紹介された大阪家裁平成28年2月1日付決定です。

 債務者においては面会交流をするために連れて行こうとしているが、子どもが拒んだ場合にどうしたらいいのかという裁判例です。

 つまり、大阪家裁は、未成年者が面会交流の場に行くことをいやがったために、面会交流の義務を履行しなかったことについて、今後、債務者が未成年者に対して適切な指導助言をすることにより、未成年者の福祉を害することなく義務を履行することが可能であるなどとして、間接強制金の支払いを定めました。

 厳しいですね。

 裁判所は、子が面会交流を拒否している場合には、別の調停や審判で面会交流を取り消すべきだということなのでしょうね。

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2016年12月15日 (木)

【子ども】 未成年者の親権者を、約5年10か月間未成年者を監護してきた母ではなく、年間100日に及び面会交流の計画を提案した父と定めた上で、離婚請求を認容した事例 千葉家裁松戸支部平成28年3月29日判決

 判例時報No2309号で紹介された千葉家裁松戸支部平成28年3月29日判決(庄司芳男裁判官)です。

 親権者については以下のとおり判示しております。

 「原告は被告の了解を得ることなく、長女を連れだし、以来、今日までの約5年10か月間、長女を監護し、その間、長女と被告との面会交流には合計で6回程度しか応じておらず、今後も一定の条件のもとでの面会交流を月1回程度の頻度とすることを希望していること、

 他方で、被告は、長女が連れ出された直後から、長女を取り戻すべく、数々の法的手段に訴えてきたが、いずれも奏功せず、爾来今日まで長女との生活を切望しながら果たせずに来ており、それが実現した場合には、整った環境で、周到に監護する計画と意欲を持っており、長女と原告との交流については、緊密な親子関係の継続を重視して、年間100日に及ぶ面会交流の計画を提示していること、

 以上が認められるのであって、これらの事実を総合すれば、長女が両親の愛情を受けて健全に成長することを可能とするためには、被告を親権者と指定するのが相当である

 原告は、長女を現在の慣れ親しんだ環境から引き離すのは、長女の福祉に反する旨主張するが、今後長女が身を置く新しい環境は、長女の健全な成長を願う実の父親が用意する整った環境であり、長女が現在に比べて劣悪な環境に置かれるわけではない

 加えて、年間100日に及ぶ面会交流が予定されていることも考慮すれば、原告の懸念は杞憂にすぎないというべきである

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 当事者双方ともに親権者・監護権者として適格な事案であると思われますが、ただ、妻は、5年10か月の間、長女を養育してきたというわけですから、従来の現状尊重の基準から考えると、異例な判決ではないかと思われます。

 控訴されているようですが、おそらく、控訴審では見直される可能性も多分にあるように思われます。とはいえ、フレンドリーペアレントルールを示した珍しい判例の1つとして、面会交流に消極的な相手方を相手にする訴訟等では、参考判例として利用が可能です。

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