ご相談の中には、夫が多額の債務を負っているため、夫とは破産して、妻とは離婚して自宅を夫名義から妻名義に変更したいがどうだろうか?というものがあります。
なにやら些かきな臭いですが、ほとんどの場合、しっかりと抵当権が設定され、しかも、オーバーローン状態であるため、その質問に回答する以前に、「破産すると担保を実行されて家を失う可能性が高いですよ」というと、それで終わりになります。
家族法判例百選(第7版)No18に参考になる最高裁判例が載っていましたので、紹介します。
Aさんは、Xから多額の負債を負っていました。Aさんには、妻Yがいましたが、協議離婚してわかれることになり、①生活費補助費として毎月10万円をAさんからYに支払う、②慰謝料として2000万円をAさんからYさんに支払うという内容の公正証書を作成しました。
この事案では、AさんがYさんに一切支払わないので、Aさんの財産を押さえましたが、他方で、Xさんも、Aさんの財産を押さえたため、第3債務者は供託をして、配当手続きに移りました。
その際に、Xさんは、YさんとAとの合意は、虚偽表示による無効ないし詐害行為として取り消されるべきだとして、配当異議訴訟が提訴されました。
原審が、Yさんへの金額は、異常に高額だとして全部の取り消しを認め、Yへの配当を0円としたため、Yさんが上告しました。
平成12年3月9日最高裁は、
①離婚に伴う財産分与は、民法768条3項の規定の趣旨に反して不相当に過大であり、財産分与に仮託してされた財産処分であると認めるに足りるような特段の事情がない限り、詐害行為とはならない
②離婚に伴う慰謝料を支払う合意は、詐害行為とはならない。しかし、当該配偶者が負担すべき損害賠償債務の額を超えた金額の慰謝料を支払う旨の合意がされたときは、その合意のうち右損害賠償債務の額を超えた部分については、慰謝料支払の名を借りた金銭の贈与契約ないし対価を欠いた新たな債務負担行為というべきであるから、詐害行為の対象となり得る
①については、最高裁昭和58年12月19日判決を踏襲していますが、②については、新たな判断のようです。
②については、たとえば、慰謝料として300万円程度が適当な案件の場合には、本件でいうならば、1700万円については、詐害行為となるということでしょう。
①についてはわかりにくいですね。本件では、扶養的財産分与が問題となり、債務名義上は、220万円(22か月分)とされているようですが、感覚的には、扶養的財産分与って、100万円から150万円位だと思うのですが、そうだとすれば、仮に適切な金額を100万円とすれば、120万円部分を詐害行為の対象とするのか、あるいは、220万円程度であれば、不相当に過大であり、仮託されたものであるとはいえないとするのか、どっちなんでしょうね。
①と②の文言の比較だけからすれば、①よりも②の方がより厳格なイメージがありますが・・・ よくわかりません。
差し戻し審の情報ある方教えてください。
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