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2017年6月

2017年6月15日 (木)

【相続】 遺言能力欠如により公正証書遺言が無効であるとされた事例 東京地裁平成28年8月25日判決

 判例時報No2328号で紹介された東京地裁平成28年8月25日付判決です。

 公正証書遺言なのに、遺言能力なしとして、無効になってしまったという事案でした。。。

 本判決は、Aの経歴、その相続財産の経緯及び認知症の診断歴、本件遺言書の作成過程等を詳細に認定した上で、本件遺言書の作成の直前にAをアルツハイマー型認知症であると診断した医師及び本件遺言書を作成した公証人によるAの遺言能力に関するそれぞれの見解等を踏まえ、大要以下のとおり判示して、本件遺言当時のAの遺言能力を否定しました。

 ①Aに遺言をするに足る意思能力がなかった旨の意見を述べる前記の医師の意見は、Aの経歴、診察経緯及びその内容等に照らし、少なくとも医学的観点から見た当時のAの精神状態の評価に関しては、疑問をさしはさむに足る証拠は見当たらないこと

 ②他方で、Aが遺言能力を有していた旨の前記公証人の供述等は、その前提において医学的根拠がない部分があるなどその根拠が乏しいものであるほか、Aと公証人との面談時のやりとりにおいてAの能力に疑問を抱かせ得る点があることなどに照らし、遺言能力を認めるに足りる的確な証拠であると評価できないこと、

 ③本件遺言当時のAが遺言能力を肯定するに足りるほどのコミュニケーション能力を有していたと看取られないこと

 ④本件遺言当時のAは、Y夫婦に財産の全てを想像させたいとの意思を明示し、他の相続人に財産を分けない理由を自発的に述べていたが、それは自己がおかれた現実の状況を理解・把握する能力を失っているAをY夫婦が誘導することによってされたものであるとみるのが相当であることなどの事情によれば、本件遺言当時のAは、医学的観点はもとより、法的観点から見ても、遺言能力を欠いていたと認めるのが相当である。

 この事案ですが、詳細な付言が付されていること、医師の診断書を作成してもらっていたこと、被相続人の発言を録音する等慎重な対応をしておりましたが、裁判所は遺言能力を認めるには至りませんでした。

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2017年6月 8日 (木)

【子ども】 父(同居親)の意に反して母が長女を連れて別居した行為は、当時すでに婚姻は破綻し協議困難だった等の事情から、親権者指定の障害とはならないと判示した事例 東京高裁平成29年1月26日判決

 昨日の続きです。 Kimg6764
 Xによる長女Aを伴う別居に関しては、

 別居当時Aは満2歳4ケ月であり、業務が多忙なYにAの監護を委ねることは困難であり、破綻的別居で予めAの監護について協議することは困難であつたとし、

 Xはそのころ8回にわたり面会交流の場を設け、更に電話による交流もさせていた

 平成22年9月26日以降は面会交流をさせなかったが、これは同月8日にYがXに対し、AとYがテレビ番組で放映される旨、他のマスメディア関係者もこの問題をとりあげる旨等を記載したメールを送り、実際に同日Yがマスメディアに提供した面会交流時のAの映像が、目の部分をぼかしが入れられたものの、放映され、Xがこれに衝撃を受けたことによるものである(Xはマスメディアの取材やYによるAによる撮影がないことを条件に同月26日の面会に応じたもの)から、これをもってAの利益の観点からみて、Xが親権者としてふさわしくないとは認めがたいと判断しております。

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 解説によれば、「最近の家裁実務は、例えば『監護の開始が相手方の承諾を得ていなくても、その具体的な経緯、子の年齢や意思等によっては、それだけでは直ちに法律や社会規範を無視するような態様で監護が開始されたとまではいえない場合もある』とする。」と説明されており、最近の裁判例として東京家裁平成22年5月25日の審判例を挙げています。

 経験上、妻が、夫の同意なしに子を連れて妻の実家に戻るというケースは、度々遭遇しております。

 このようなケースにおいては夫からは強い反発が予想されますが、夫婦間が激しく対立をしている中で、相互の不信感が増している関係の下では、妻が子を連れて実家に戻るということを事前に夫に話をすれば、妻のみがたたき出されるということもありえることから、非常に難しいところです。

 ケースバイケースでの対応になり、微妙な事案であれば、裁判官によっては、母による子の連れ別居は違法と評価される可能性もありうるところですが、母が主たる監護者であれば、幼児を残して一人で別居することは、反対に主たる監護者として無責任とも評価されかねず、判断の難しいところです。

 最近は、特に夫側から、「連れ去り」等と妻のみならず代理人弁護士に対してまで強いクレームを受けかねないような状態になっております。田舎弁護士自身は、別居に至っても、どちらの立場にたっても、面会交流に大きな問題がない事案と判断した場合には、監護親の危惧感を取り除き、面会交流を勧めるようしております。田舎弁護士も父親ですので、子どもに会いたいというお父さんの気持ちはわかります。 

 とはいえ、この裁判例のように、監護親が望んでいない面会交流の際の状況をマスコミ等に取材させるという手段に出られた場合には、その後の面会交流が消極的になったとしても、やむをえなかったのかもしれません。

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 アドバイスが難しい相談の1つです。

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2017年6月 7日 (水)

【子ども】 母と年間100日間面会させるとした父を長女の親権者とした1審判決を変更して、主たる監護者である母をその親権者に指定した事例 東京高裁平成29年1月26日判決

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 判例時報No2325で紹介された東京高裁平成29年1月26日判決です。

 高裁は原審と異なりオーソドックスな判断をしたという印象を受けました。

 高裁は、

 親権者指定の判断基準として、①これまでの子の監護養育状況、②子の現状や父母との関係、③父母それぞれの監護能力や監護環境・監護に関する意欲、④子の意思その他子の健全な生育に関する事情を総合的に考慮して、子の利益の観点から判断すべきであるとした上で、

 面会交流の頻度等に関しては、親権者を定めるにあたり総合的に考慮すべき事情の1つであるが、父母の離婚後の非監護者との面会交流だけで子の健全ね生育や子の利益が確保されるわけではないとして、前記①乃至④について総合的な観点から検討を加える。

 そして、年間100日面会交流のYの主張に対しては、

 本件判決は、

 XとY宅は片道2時間半程度離れており、現在小学校3年生のAが年間100回の面会交流のたびに両宅を往復するとすれば、身体への負担のほか、学校行事への参加、学校や近所の友達との交流等にも支障が生ずるおそれがあり、必ずしもAの健全な生育にとって利益になるとは限らない

 他方、Xは、Y・A間の面会交流の頻度は当面月1回を想定しており、当初はこの程度で面会交流を再開することがAの健全な生育にとって不十分でAの利益を害するという証拠はない

 以上のほか、Aの現在の監護養育状況にその健全な生育上問題はなく、Aの利益からみてAに転居・転校させて現在の監護養育環境を変更しなければならないような必要性があるとの事情はみあたらず、Aの利益を最も優先して考慮すれば、その親権者をXと定めるのが相当であると判断しました。

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 原審は、「フレンドリーペアレント」に傾注し過ぎたものであり、控訴審では逆転が予想されていましたが、案の定、逆転という結果になりました。


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2017年6月 6日 (火)

【養子】 養子縁組がもっぱら相続人の一人の遺留分を減少させることを目的としたものであり無効であるとした原審を取り消し、実質的縁組意思があるとして右縁組みを有効とした事例

 判例時報No2327号で紹介された東京高裁平成27年2月12日判決です。

 原審は、Aの財産等を巡るXとC及びAの激しい対立という本件各養子縁組の背景から、本件各養子縁組は、Aが、Cの関与の下、もっぱらXの遺留分を減少させる目的で行ったものであると強く推認され、Aには実質的な縁組意思がなかったものと認められるとし、Xの請求を認め、本件各養子縁組は無効であるとしました。

 ところが、東京高裁は、原審と異なり、実質的縁組意思の存在を肯定し、本件各養子縁組を有効であると判断しました。

 養子である被告の供述の信用性が原審と東京高裁とで認定が異なったという事案のようです。

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2017年6月 2日 (金)

裁判例からみた相続人不存在の場合における特別縁故者への相続財産分与審判の実務

 日本加除出版から、平成29年3月に、裁判例からみた相続人不存在の場合における特別縁故者への相続財産分与審判の実務という書籍 が出版されていました。

 マイナーな分野です。

 田舎弁護士も、特別縁故者の申立てについては、過去、3回程しか関与したことがありません。いずれも、申立てのとおりの分与が家裁で認められています。

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 あまり相談のない分野のところですが、それでも、数年に1回くらいは相談がありますので、その時のために高い買い物ですが、購入いたしました。

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2017年6月 1日 (木)

家事事件における保全・執行・履行確保の実務 

 日本加除出版から、平成29年2月に、家事事件における保全・執行・履行確保の実務 が発行されています。

 田舎弁護士も、家事事件絡みで、保全や執行には多々関与しております。

 保全では以下のとおりです。

 離婚と同時にする財産分与請求権の保全

 離婚後の財産分与請求権の保全

 子の監護権指定および子の引渡の保全

 後見開始の審判前の保全処分

 遺産分割に関する保全(財産管理者の選任等)

 執行では、給料や不動産に対する差押

 面会交流執行くらいかな。

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